とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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あと少しで平成終わっちまう!!令和の前に何とか終わらせたいけど、間に合うか!?そっちの意味でもお楽しみに!


第二十五話 覚悟

「お待たせ!」

 

セインはビルの屋上で待機していたスバルとウーノの前に現れた。

 

「セイン!」

 

「はい」

 

セインはマッハギャリバーをスバルに渡した。

 

「マッハギャリバー…ありがとう…セイン」

 

スバルは自分が捕まってからの事件の経緯をウーノから聞いていた。仲間に迷惑をかけていたことに申し訳ないと感じ戦線に立ちたいと、何か役に立ちたいと思っていた。

 

スバルが身体に違和感がないことを確認する。ザフィーラがなるべく体への負担が少ないように戦っていてくれたのだろう。身体のダメージを確認してマッハギャリバーを装備しようとしたとき、静かな道路を走る車を確認した。

 

急いでスバルはビルから飛び降り、車の前に立って車を止める。

 

「待って下さい!ここは危険区域です!」

 

すると、車から二人の女性が出てきた。

 

「スバル防災市長!」

 

「あなたは…確か…アストさん!!」

 

車から降りてきたのはアスト、そしてギンガによく似た少女フランシスだった。スバルはアストに驚いたが、それ以上にフランシスに驚く。

 

「ギ、ギン姉!?」

 

「タイプゼロセカンド…」

 

「ちょうど良かったです、スバル防災市長!あなたに一緒に来てもらいたいのです!」

 

 

 

ークラウドのアジトー

 

 

 

戦闘が始まって3時間。日が傾き始める時間帯ではあるが曇ってるこの日にそれはわからない。そんな空の下、瞳に怒りを宿したアキラと、その眼の先のクラウドは対峙していた。

 

「アキラ…」

 

「クラウド…」

 

アキラは紅月を構える。クラウドは自身の魔導書を開き、アキラのリアクトバーストの高速移動魔法と同じ魔法を発動させようとした。

 

「…!?」

 

(発動しない…!?)

 

「アクセラレイターハザード」

 

魔導書による魔法の行使がうまくいかず、困惑しているクラウドを尻目にアキラはアクセラレイターハザードを発動させた。

 

「!」

 

「死ね」

 

アクセラレイターハザードの高速移動でクラウドの目の前に移動したクラウドの身体に這っているスタッフの鞭がアキラを感知する前にアキラはクラウドを切った。

 

「ん」

 

紅月はクラウドの腹部にめり込んだ。だがしかし、斬れてはいない。体に這っていたスタッフが攻撃ではなく防御のために集合し、紅月を押さえていた。

 

アキラは瞬時に次の手を打つ。片手を紅月から離し、ヴァリアントシステムを使って片手銃を出現させてクラウドの頭に向けて撃った。

 

クラウドはその弾丸を首を傾けて回避し、スタッフで作った剣で反撃した。アキラはアクセラレイターの加速で剣を避け、クラウドの背後に回った。

 

「ブラスト!」

 

クラウドは自身の周りに魔力衝撃波を放ってアキラを牽制する。だがアキラにそんな技は通用しなかった。アクセラレイターの加速をさらに早め、ほぼ瞬間移動と変わらない速度で衝撃波を回避し、クラウドの腹部に蹴りを入れた。

 

「かっ…」

 

アキラの足はクラウドの小さな腹部にめり込み、ミシミシと音を立てた。そのままクラウドはまっすぐに吹っ飛んだ。だがそれでは終わらないアクセラレイターで吹っ飛んでるクラウドの前にさらに瞬間移動し横に蹴り飛ばした。若干スタッフでガードは張ったが、そんなものはアキラにとってないに等しい。

 

クラウドは岩にめり込み、そのまま落ちた。

 

「ごほっ………がぁ…」

 

(速すぎる……スタッフによる防御が間に合わない…。しかしなぜ…私の魔法が…)

 

「気になるか?お前に高速移動の魔法が使えないのを」

 

「なに…」

 

「前回戦った時、お前に最後に打ち込んだ一撃。そこに、お前の魔力回路に細工を施した。俺が死んでも、その後誰かがお前を殺せるように………。あの高速移動の魔法は俺の魔法によく似ていた。だからその魔法にだけ限定してそこに魔力リソースを回せないようにした」

 

「なるほどな…。だが、それだけで勝てると思うな!!」

 

クラウドは黙示録の書を開く。そこで何らかの魔法を行使し、魔法陣からスタッフを大量に出現させるそれを全身に纏っていく。

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

さらに変身魔法で大人モードになった。全身にはルーラーアーマーのように黒い鎧が展開され、頭のとんがり帽子にはびっしりと瞳の模様が現れた。

 

「ふぅ…こんなものか…さぁ、行くぞアキラ・ナカジマ!」

 

(あの帽子の目……全部アイツの意識と繋がってて360度見えるって考えて良さそうだな)

 

アキラは懐から注射器を取り出し、それを腕に刺した。アクセラレータを使用するための燃料的存在である「ナノマシン」を注入したのだ。

 

「これが最後だ……終わらせる…テメェも!スカリエッティも!全員殺して終わりだ!!!アクセラレイターァァァァ!!ハザァァァァァァァァドォォォォ!!!!」

 

アキラの身体から黒いオーラのようなものが発生し、高速移動でクラウドに切りかかった。

 

「アァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

アキラはほぼ瞬間移動と変わらない速度でクラウドの背後に移動する。だが、今度はクラウドの反応はさっきよりもずっと早かった。クラウドの足元には常にスタッフが堆積している。そのスタッフが巨大な盾に変形しアキラの剣を防いだが、アキラの剣はその盾をも切り裂いた。

 

だが切り裂いた盾の先にクラウドはいない。クラウドも似たような魔法で高速移動を行いアキラの真下に移動し、魔力砲を撃った。アキラはそれを躱し、反撃に出る。

 

「なに!?」

 

ここでクラウドにとって予想外だったのはアキラが高速移動で避けなかったことだ。魔力砲をぎりぎり紙一重で躱してまっすぐ自分に突撃したことだった。

 

アキラの剣が迫るがギリギリクラウドはスタッフで作った黒剣防いだ。成長魔法で強化された肉体、そしてルーラーアーマーと帽子の眼による反応速度がアキラのアクセラレイターハザードと同等のパワーを見せたのだ。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

「はぁぁぁぁ!」

 

鍔迫り合いの末、アキラがクラウドを弾き飛ばす。反応が遅れたクラウドがこの競り合いで若干不利だったのだ。

 

「くたばれクソったれが」

 

アキラはヴァリアントシステムと組み合わされ強化されたマイティギャリバーのカノンをクラウドに向け、魔力砲を放った。

 

クラウドはその砲撃を阻止するためにアキラの砲撃より早くスタッフで精製した矢を5本放った。だが、その矢をアキラは甘んじて受けた。

 

「!?」

 

「バスター」

 

カノンのバスターが放たれた。クラウドはアキラが避けも防ぎもせず受けたことに驚いて反応が遅れた強大な魔力砲がクラウドを巻き込み、地面に当たり、爆風があたりを包む。

 

「…」

 

アキラは再び注射器を取り出し、それを打った。治療用のナノマシンを打ったのだ。

 

クラウドはスタッフを使って自身に乗っている瓦礫を退かし、瓦礫の中から這い出た。

 

「……なるほど…覚悟は…できているということか…。どうやら覚悟が足りなかったのは私の方だったようだな」

 

クラウドは額に手を当てた。

 

(長い……本当に長い時間の間準備を続けてたせいでずいぶん甘くなったものだな…。これは……復讐だ…私の……私の人生をかけた…復讐だ!)

 

クラウドはさらにスタッフを出現させ、自身の手に纏わせる。鎧の上にさらにスタッフの腕が創られる。

 

「高質化、高速移動、伸縮化、拡散」

 

クラウドは何か呟くとスタッフが装着された腕をアキラに向けた。

 

「スネークバイト」

 

スタッフがゴムのように伸び、アキラのほうに飛んでいった。かなりの速度で飛んできたがそれを見てアキラは軽いため息をついて刀を構える。

 

「アクセラレイターハザード」

 

アクセラレイターハザードを使用しクラウドが伸ばしてきた手を無視し、クラウド本体のほうに向かった。その速度は先ほどと変わらない。

 

だがアキラがアクセラレイターハザードを発動させ、移動の姿勢を取った瞬間クラウドが伸ばした腕の拳から肩の間全体からスタッフで出来た小さな刃が四方八方に拡散するように飛んだ。

 

刃にはピアノ線のような糸がついており、それが腕と繋がっている。アキラのアクセラレイターは瞬間移動のように見えるが、ただの高速移動であり前方に障害物があればよけなければならない。だが突然腕から発射された刃とそれに付いた線がアキラの前に出現し、アキラは止まらざるを得なかった。

 

「くっ!邪魔だ!」

 

アキラは目の前に現れた線を切り裂こうとしたがそれよりも早く、背後に迫った気配にアキラが反応し、刀を背後に振った。アキラの刀に弾かれたのは先ほどまでアキラのほうに伸びていた腕だ。

 

その腕が一気に方向転換し、一瞬でアキラの背後まで伸びていた。

 

(速い…)

 

だがアキラが背後に気を取られている間にクラウドが伸ばしたスタッフの腕を外し、アキラの方に向かっていた。

 

「ラッシュ!!」

 

先端が刃になっている十数本の触手がアキラを襲う。

 

「システムオルタ…」

 

アキラはアクセラレイターハザードではない、別のシステムを発動させた。ハザードに比べ、スピード、パワーともに二段階ほど下のシステムだが大した速度ではない触手を避けるには十分だった。

 

触手を完全に回避し、アキラはクラウドに切りかかる。

 

「甘い」

 

クラウドは自身の高速移動魔法を初どうして応戦した。もうさっきのような油断はしない。クラウドの眼は決意に満ちていた。

 

二人の戦闘は加速する。一般人にはもう目にも止まらないスピードだった。ただ、剣がぶつかり合う音と風を切るだけがしていた。そんな現場に一台の車が到着し、フランシスとスバルが車から現れた。

 

「クラウド!!」

 

「アキラさん!!」

 

アキラとクラウドの二人はその声に気づき、一度戦闘を止めた。

 

「スバル…フランシス…」

 

「スバル…」

 

アキラは無事なスバルの姿をみると少し笑みをこぼしたような気がした。

 

「フランシス…貴様何をしている……?」

 

「もうやめて!あなたは…勘違いをしている!!」

 

フランシスはクラウドに訴えた。アキラにとっても、またクラウドの反応も予想外のものだった。

 

「なに…?」

 

「私が管理局を調べてわかったことを教える…だから!」

 

フランシスはポケットからデータが入った端末を取りだした。だがそれにクラウドは興味を示そうとはしなかった。

 

「フランシス」

 

クラウドの声色が急に変わる。重い声だ。その声にフランシスは圧倒された。

 

「私はお前になんと言った?」

 

「クラウド…待って…」

 

「管理局に潜り込み情報をこちらに流し、決戦になったら指揮系統を……地上本部の上の連中を暗殺しろと言ったはずだ!」

 

その言葉に、アキラが反応する。

 

「テメェ………こんなガキまで」

 

「フン!フランシスの姿も身体の中のDNAも!すべてあいつの能力で変化させたものだ!あいつは最初から私の道具なんだよぉ!!」

 

「クラウド!私たちのやってることは……あなたの復讐は………!間違ってる!」

 

「お願いクラウド!話を聞いて!」

 

スバルもクラウドの説得にかかる。だが、クラウドは聞く耳を持たない。

 

「うるさい!何があろうと………どんな理由があろうと!管理局は私にとって、家族の!仲間の仇だ!倒さなければならない!!もう今更!戻る道もない!!!それは!私の手下であるお前らも同じだ!」

 

クラウドの、憎しみの心は想像を上回っていた。フランシスの言葉も、スバルの言葉も届かなかった。そんな様子にアキラがふっと笑う。

 

「二人とも心配するな。何があったかは知らんが、俺がこいつを殺してこの事件は終わりだ!」

 

アキラが再び剣を構えるがクラウドが魔導書を開く。

 

「フン!ちょうどいい!裏切り者には粛清をしなければな!お前の相手はフランシスだ!」

 

「テメッ!」

 

クラウドは魔導書を使用し、発生させた魔力をフランシスに投げた。スバルがフランシスを守ろうとするが、間に合わず、フランシスは魔法をモロに受けた。

 

「あああああああああ!!」

 

「フランシス!!!」

 

フランシスの目付きが変わる。

 

「はははは!アキラ!最も大切な人と同じ顔をした者と殺しあうがいい!お前にフランシスが倒せるか!?こいつはお前たちに味方してくれてたのに敵になってしまって残念だなぁ!!」

 

クラウドは高速で飛んで行った。アキラが追いかけようとするが、フランシスがその前に立ち塞がる。

 

「………テメェ…」

 

「フランシス……」

 

「ルーラーアーマー起動」

 

完全に洗脳状態だ。変身魔法で背丈もギンガと同じになる。だが、アキラの眼には迷いはない。

 

「…今、俺の前に立つものはすべて敵だ。俺はもう……迷わない」

 

姿形はギンガとにているがアキラは容赦のない表情だ。

 

ルーラーアーマーを装備したフランシスが襲い掛かる。アキラはアクセラレイターハザードを発動し、フランシスの攻撃を回避する。そして回避とほぼ同時にフランシスの腹部に強力な蹴りを食らわした。

 

「………!!」

 

すぐにフランシスが立て直すがアキラは一気に追撃する。

 

「アキラさん…」

 

「タイプゼロセカンド…」

 

スバルの前にスカリエッティが現れた。

 

「スカリエッティ!」

 

スバルが構えるが、スカリエッティは何もしない。スバルを一瞬気にかけたが何も言わずアキラとフランシスの攻防を見ている。

 

「…」

 

「大人しく投降しなさい…」

 

「そんなことはしないが…私も、戦いはしない」

 

「どういう意味…?」

 

「まもなく世界は終わる…管理局も消えるだろう」

 

「どういう意味!?」

 

「…すぐにわかるさ」

 

スカリエッティは何か意味ありげな言葉を言い残して魔法で姿を消した。

 

「世界が終わる…?アキラさん!わたしはクラウドを追います!!」

 

アキラはフランシスの攻撃を受け止めながら返事をする。

 

「必要ねぇ。俺がさっさと追う」

 

「でも!行きます!!」

 

「勝手にしろ」

 

アキラはスバルに対し、「聞いた意味ねぇじゃねぇか」という顔をしながら見送る。

 

アキラは全力のフランシス相手にまったく苦戦はしていなかった。あらゆる攻撃を簡単に対処をした。そして、さっさとトドメに行こうとする。

 

「…っ!!」

 

フランシスは最後の手段に出る。フランシスは自分の姿、形、DNAまで変える力を持っていた。それを使ってフランシスはセシルの姿になった。

 

「アキラ…」

 

声色まで同じだ。セシルの姿で、アキラを動揺させようとしたのだ。

 

「悪ぃな」

 

だがアキラは迷いなく拳を振り上げ、フランシスを全力で殴り飛ばした。

 

「俺はもう過去を振り返らないって決めたんだ」

 

 

続く


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