とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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物凄い速さで書きました。ようやく終盤です。戦いが終わるのが次回(多分)。後日談でもう一話くらいです


第二十六話 強魔

アキラはフランシスを撃破し、拘束して適当に寝かせておいた。アキラはスカリエッティとクラウドがアジトにしていた廃ビルを見つめる。

 

(スカリエッティはずいぶん今回消極的だな…まぁ、放っておけばいいか)

 

もうほとんどのゼロナンバーズは倒され、今はクラウドだけだ。あと少しでこの事件も終結するだろう。アキラは最後の標的であるクラウドを追おうとするがその場に跪いた。

 

「ぐぅ…」

 

「無理をしすぎだ。一旦休みたまえ」

 

ウィードが背後からやってきた。

 

「さっきも言ったが、アクセラレイターハザードは危険だ。それを何度も何度も…ギンガ君を助けたら加減するんじゃなかったのかい?」

 

「あいつを殺さねぇ限り…終わりじゃねぇ…」

 

アキラはふらふらと立ち上がり再び飛んでいった。

 

ー数十分前ー

 

これはアキラがなのはを助け、トーレを倒した直後の話だ。アキラはアクセラレイターハザードの連続運用の副作用、というより肉体への尋常じゃない負荷に苦しんでいた。

 

「大丈夫かい?」

 

「あなたは…ウィード!」

 

アキラとなのはの前に現れたのはウィードだった。なのはは当然ウィードに警戒する。

 

「いいんだ…なのはさん。こいつは俺が脱獄させた」

 

「ええ!?」

 

アキラの発言になのはは驚愕する。

 

「アキラ君…自分がやったことがどういうことか、わかってるの?」

 

「俺がどうなろうと、ギンガさえ助かればいい。おい、ウィード。さっさとあれ渡せ」

 

ウィードはやれやれという感じで持っていたアタッシュケースから注射器を取り出してアキラに渡した。

 

「それは…?」

 

「気にすんな。戦うための道具だ」

 

「あまりアクセラレイターハザードを使いすぎないほうがいい。死ぬよ?君を完成させた私の身にもなってほしいね」

 

「うるせぇ……ギンガを助けたら加減してやる」

 

アキラは注射を打って少し安らいだ表情を見せた。打ったのは治療用ナノマシンと、アキラの肉体を強化する薬だ。

 

「アキラ君…」

 

アキラとウィードのやり取りを心配そうに見ていた。そんななのはにアキラは言った。

 

「なのはさん、ちゃんと償いはする。どんな罰でもうける。だから今だけは、放っておいてくれ」

 

「……」

 

アキラの言葉に懸念を抱きながらもなのはは頷いた。なのは的には、それはできない願いだった。だが、アキラに言っても聞かないだろうということはわかっていた。無理に何もしないでいるように言えば、確実に戦闘になるだろう。

 

今ここで仲間割れを起こすわけにはいかない。それに、勝てるかどうかも怪しい。

 

「…ああ、そうだなのはさん。トーレは適当に縛っておく。だから、108に向かってくれギンガがいる。あいつも強いが…念のため、人質救助って点でもあんたに行ってもらいたい。俺は…クラウドを………吹っ飛ばしに行く」

 

「…うん」

 

 

 

ー現在ー

 

 

 

アキラは飛びながらもフラフラしていた。戦闘中は気にならないが、敵と対峙してない今アキラは少し気が抜けていた。

 

(………クソッ…。駄目だ…力が…。身体がかなり限界だ…。だが………あと少しだ…あと少しであのクソ野郎を殺して…それで終わりだ…)

 

その時、アキラは全身で強力な魔力派を感じた。

 

「…っ!?」

 

これだけ疲れてボロボロな体でも、すぐに刀を構え戦闘態勢に移行してしまうくらいの強大で、禍々しい魔力。

 

「なん…だ?」

 

 

 

ー108部隊ー

 

 

 

「…ありえない…こんな…強い」

 

「なに…?」

 

 

 

ー管理局地上本部 防衛ラインー

 

 

 

「一体…なに…」

 

「嘘だろ…」

 

「え……?」

 

「なんなんだよ…」

 

歴戦の魔導士も、新人も、一般人も、口々に肌で感じた強力な魔力に対する感想を零した。本当に思ったことが無意識のうちに口に出していたのだ。

 

「…あそこか」

 

そんな中、その魔力に動じてない人物、小此木が防衛線側、つまり管理局地上本部の西側から見える海を見ていた。そこが魔力の源だと感じ取っていた。

 

 

 

ーミッドチルダ 西側海底ー

 

 

 

ミッドの海底から、封印を破り、一つの生物が瞳を開けた。その瞬間、封印されていた橋よから魔力が噴出し、海面には魔力柱が出現した。

 

「…はははは……間に合った…これで!全部終わりだ!」

 

クラウドが歓喜の声をあげる。

 

「クラウド!」

 

そこにクラウドを追いかけていたスバルが追い付いた。そして、海を見て訪ねる。

 

「クラウド…あれはなに?」

 

「クク…恐れることはない。お前達、戦闘機人…いや、私の娘は私が守ってやる……。あれは星の一つや二つ、簡単に消し飛ばす最悪の力…」

 

「そんな…」

 

「そう…黙示録の獣だ」

 

次の瞬間、魔力柱にヒビが入り、粉々に砕け散った。その中から一人の少女が現れる。

 

「おん…なの……子?」

 

見た目、15~18歳くらいだろうか。それくらいの姿で、黒をベースに赤と緑のラインで飾られた刺々しさのある服。そしてサイドテールでピンク色の髪。顔も結構美形だ。

 

とても、黙示録の獣と呼ばれるには似つかわしくない姿をしていた。

 

クラウド達とは少し離れたところにいる、アキラはその姿を確認したとき、何かのイメージが頭に流れ込んできた。いや、視界に写った。

 

「!!」

 

大急ぎで通信機を取り出し、管理局の通信に繋げ、ハッキングハンドの力で地上本部全体に通信機を繋げた。

 

「管理局地上本部の人間に伝える!!!!俺は108部隊戦闘部隊隊長アキラ・ナカジマ陸尉だ!!!すぐそこから逃げろ!!!特に、70階以上にいるならすぐに降りろ!いや転移魔法で今すぐ脱出しろ!攻撃が来るぞ!全員死にたくなきゃいますぐにげろぉ!早く!!」

 

地上本部の放送用スピーカーからアキラの声が響き渡る。本部の中では、いったい何事かとざわついていた。行方不明になったアキラから忠告。そう簡単に信じられたものではないし、そもそも地上本部はJS事件以降、事件前よりもっと強力で頑丈なバリアで守られている。攻撃が来るからと言って逃げなければならないとは考え辛かった。

 

「早く!早く!早く!逃げろ!頼む!逃げてくれ!死ぬぞ!みんな死ぬ!」

 

アキラの必死の訴えは虚しく、次の瞬間惨劇は起こった。

 

黙示録の獣の胸の前に魔力が一瞬で集束され、魔力砲が放たれた。

 

「Apollon」

 

その威力は目を見張るものだった。魔力砲が通過した場所は開けた道路の上空高くだったが、魔力砲が通過した位置の半径数十メートルが吹き飛んだ。ビルは砕け、道路は崩壊し、衝撃派や爆風は数百メートルにまで及んだ。

 

「うぁぁぁ!!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

魔力砲は管理局のバリアに命中し、それをやすやすと貫通して管理局本部に命中しようとしていた。当たればいくら巨大な管理局本部でも簡単に折れるだろう。だが、その射線上に小此木が入り込んだ。

 

(防ぎきるのは無理か…なら)

 

小此木は懐から持てる限りの球を取り出し、斜めに強力なシールドを展開した。

 

シールドに命中した魔力砲は分散し、主に斜め上に逸れた。だが逸れた魔力砲でも管理局の本部を破壊するのには十分な威力を持っていた。魔力砲は、80階部分、そしてその上下数階分を融解し、貫通した。

 

融解した管理局地上本部の30階以上のタワー部分が折れ、崩壊しかける。

 

「地上本部が…」

 

「させへんで!!!」

 

はやてが瞬時にサポートに入った。氷魔法で本局を支える。

 

「ぐぅぅぅぅぅ!」

 

本局の質量はかなり強大だ。はやてはかなり無理をして支えていた。通常の建物より何十倍も大きい建物だそれを氷魔法だけで支えるのはかなりの魔力を消費し、はやての身体にも負荷がかかっていた。

 

更に分散した魔力砲は街に降り注ぎ、あらゆる場所で爆発を起こしていた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

小此木はなんとか魔力砲を防ぎ切った。だが被害は尋常ではない。魔力砲が通ってきた道とその周りの街並みは焼け野原となっている。

 

「シャマル医務官!結界を奴を閉じ込める強力な結界をお願いします!!私も協力します!」

 

「はい!!」

 

シャマルは結界魔法を発動させ、かなりの範囲を黙示録の獣含め、結界に閉じ込めた。これで少なくとも建物が崩壊する恐れはない。

 

だが次の瞬間。

 

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!」

 

女性の悲鳴のような、獣の叫び声のような、耳をつんざく叫び声を黙示録の獣が発した。その「声」で、結界が崩壊する。

 

「そんな!!」

 

「くそ!」

 

更に、黙示録の獣の胸の前で魔力が収束された。またさっきの魔力砲「Apollon」を放とうとしていた。

 

「またあれが…」

 

「…っ!」

 

刹那、黙示録の獣の背後に、アキラが現れ紅月を振った。黙示録の獣にその攻撃は回避されたが、「Apollon」の発射は免れた。

 

「…」

 

黙示録の獣は表情を変えずにスタッフの触手を出現させアキラに反撃する。

 

「おせぇよ!!アクセラレイターハザード!!」

 

アキラはアクセラレイターハザードで攻撃を仕掛ける。だが、超高速加速状態であるアキラが、触手の動きに先を越され、弾かれた。

 

「!?」

 

触手の動きが、クラウドの時より数段俊敏、そして固い。

 

「こいつ…」

 

そして瞬間で魔力を集束し、無挙動で「Apollon」をアキラに放った。アキラはアクセラレイターハザードでぎりぎり回避し、外れたApollonは空に向かって飛んでいった。

 

アキラは離れた位置で止まった。かなりの距離を取ったアキラに対し、怪しく黙示録の獣が笑う。余裕の笑みだろうか。

 

「クハハハハ!!どうだアキラナカジマ!これが世界の終焉をもたらす!黙示録の獣だ!!誰であろうと止めることなどできん!!人間でも!!戦闘機人でも!!エースオブエースだろうがなぁ!」

 

そして獣の後ろでクラウドが高らかに笑う。

 

「なんでそんなもんがいる…封印されてんじゃなかったのか」

 

「そんなもの…解いたさ。命を使った魔法…封印魔法は協力だ。なら同じもので解除してやればいい。ただそれだけのことだ」

 

アキラの表情が変わる。なにかを察したのだ。

 

「…テメェまさか」

 

「ああ。ゼロ・ナンバーズを一人犠牲にした。それでも封印を解くのに時間がかかって、さっきまで戦闘に参加できなかったがな」

 

アキラは再度刀を構える。そして、歯を食い縛った。クラウドに対する怒りの念が増したのだ。そんなアキラの気迫は普通の人間相手なら怯むくらいのものだった。

 

「やっぱテメェは生かしちゃおけねぇ…ここで俺が」

 

刹那、驚くべき事態が起きた。クラウドの腹部を一本の剣が貫通したのだ。

 

そのことにアキラはもちろん、クラウドが一番驚いていた。クラウドの血が中を舞う中、クラウドを刺して笑みをこぼしていた犯人は、黙示録の獣だった。

 

「なっ…」

 

「…」

 

黙示録の獣は剣を引き抜く。クラウドは腹部を押さえ、吐血しながらも振り向いた。

 

「貴様…なんのつもりだ……私は…黙示録の書の主だぞ………」

 

「人……ごみ…」

 

「なに…っ!」

 

獣が言葉を発した。その瞬間、クラウドが反応できない速度で黙示録の獣が左目を斬った。

 

「ぐ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

クラウドが目を押さえて苦しんでいると、黙示録の獣は触手を自身の指先から伸ばし、クラウドの切られた左目の中に侵入させた。

 

「うぐ!あぁぁぁ!!」

 

「クラウド!!」

 

クラウドを助けようとスバルが黙示録の獣に襲い掛かった。黙示録の獣は指をスバルの方に向けた。

 

黙示録の攻撃が、自分程度では跡形もなく消えるであろう攻撃が来ることをスバルは察し、死を覚悟した。走馬燈が脳裏をよぎるほどだった。

 

「アクセラレイター!オルタァァ!!」

 

即座にアキラはアクセラレイターオルタでスバルをその場から奪取した。

 

「あ……」

 

「死にてぇのか馬鹿野郎!!」

 

「ご…ごめんなさい…」

 

「さっさと逃げろ…あいつらはお前が何とかできるもんじゃない」

 

アキラが獣の方を見た。クラウドはしばらく抵抗していたが、次第に動かなくなり身体の一部がスタッフに包まれた。

 

そして左目には鎧のような義眼が装備された。クラウドには表情はない。洗脳されているようだ。

 

「私は、クラウドを助けたい!」

 

「……クソったれ。…フォローできるかわからないぞ」

 

「大丈夫…たとえ、苦しい戦いでも…私はクラウドを助けてなきゃいけないの!それがフランシスの願いだから…」

 

「あいつの復讐が間違ってるとかいうあれか…あとで俺にも聞かせろ。あいつを殺すかどうかはそれから決める」

 

「うん…」

 

「クラウドは任せた!!行くぞ!」

 

スバルはクラウドに、アキラは黙示録の獣に、それぞれ突撃した。

 

 

 

ー陸士108部隊 付近道路ー

 

 

 

救出されたギンガと108の隊士が乗った車は管理局に向かって走っていたが黙示録の獣の「Apollon」の衝撃で横転していた。横転はしたものの、瓦礫が当たっていないだけマシだった。

 

「うう…なんだったのさっきの」

 

ギンガは車から何とか仲間とともに脱出した。そして海の方を見ると、激しい戦闘が展開されているのが見えた。

 

「あれは……さっき感じた………恐ろしい魔力…戦ってるのはアキラ君…?」

 

 

 

ーミッドチルダ西側海方面ー

 

 

 

アキラはアクセラレイターハザードをずっと発動させながら黙示録の獣と戦っていた。

 

「おぉぉぉぉ!!」

 

「…」

 

激しい空中戦が展開される。黙示録はアキラのアクセラレイターハザードに匹敵するスピードで飛び、剣でアキラと戦っていた。

 

ありえない速度での戦闘のため、その姿を肉眼でとらえられるものはいない。

 

「ぐぅ!!」

 

アキラは剣での鍔迫り合いに負け、吹っ飛ばされた。ビルに突っ込むもすぐに体制を立て直し、そこから離れる。アキラが離れたのとほぼ同時に魔力弾がアキラがいた場所に着弾する。魔力弾が着弾したことによる爆発は半径10メートルほどの威力だった。

 

これは黙示録の獣が指先から簡単に放った攻撃だった。

 

「しぶとい…」

 

「テメェ…しゃべれんのか?」

 

アキラはアクセラレイターハザードをいったん解除して黙示録に話しかけた。

 

「そう……」

 

「なんでクラウドにあんなことした?テメェの主はあいつじゃねぇのか」

 

「あれ…私たちのおもちゃ……?ううん、利用してただけ。あれは、人間は、私の…私たちの主に足り得ない。だから、意見はいらない。指示にも……従う気はない………ただの、魔力のリソース元」

 

「なに?」

 

「あなたも邪魔……」

 

黙示録の獣はスタッフで出来た剣を構えた。アキラは注射器を取り出し、注射を打った。

 

(最後の…ナノマシン…)

 

「…アクセラレイター!!ハザード!!!!」

 

アキラはアクセラレイターハザードを発動させた。

 

「……?」

 

「てめぇ…気に入らねぇな。管理局本部の人間なんか、何人死んでも俺にとっちゃどうでもいい。けど、テメェを生かしておく訳にもいかねぇ!!これはテメェを倒すまで解除しねぇ!!!!」

 

「抹殺」

 

再び激しい攻防が開始された。

 

 

続く


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