とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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すごい。俺こんなに書けるんだと思いました。もうすぐ終わりますが、あと2話くらい続くと思います。お楽しみに


第二十七話 守護

ースバルVSクラウドー

 

 

 

スバルとクラウドの戦闘はスバルの受け身な戦闘が続いていた。

 

「クラウド!しっかりして!!眼を覚まして!!」

 

「……」

 

クラウドの返事はない。

 

スバルはクラウドが繰り出してくる触手をいなしながら必死にクラウドに呼びかける。だが、その行為は何の意味もなさなかった。

 

(こうなったら…魔力ダメージでノックアウトするしかない…)

 

スバルが覚悟を決めるがその決意の瞬間の隙をつかれ、クラウドの触手に当たってしまった。

 

「うッ……」

 

スバルはウィングロードから落とされる。そこにクラウドは一気に追撃に出た。とどめを刺そうと先端が刃になった触手を大量に出現させ、それをスバルに襲わせる。

 

スバルはすぐに新しいウィングロードをは発生させて触手を回避した。そしてウィングロード上でドリフトを決め、クラウドに突進する。

 

「…」

 

クラウドはスタッフで作った剣を振った。それと同時に三日月形の魔力派が飛んだ。スバルは高密度のバリアを張って魔力派を防いだ。スバルはそのままノンストップでクラウドに突進し、拳の先に魔力を集束した。

 

「ディバインバスター!!!!」

 

スバルは拳からディバインバスターを発射した。だがそれはクラウドの剣に弾かれる。

 

「でぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

更にスバルは追撃に蹴りを繰り出した。だがその足をスタッフの触手に絡めとられ、さらに別の触手に右足の太ももを貫かれて投げ飛ばされた。空中で回避行動がとれなくなった時、クラウドが触手をスバルに向けて飛ばした。

 

「しまっ……」

 

刹那、スバルの前に誰かが現れ触手を弾いた。

 

「!」

 

スバルの窮地を救ったのは、オトナモードになったノーリだった。ツインブレイズで触手を薙ぎ払ったのだ。ノーリの身体には所どころに包帯巻かれている。

 

「ノーリ君!?」

 

「油断すんなバカ!」

 

「あ、あなた…そんな身体で…」

 

「悪いが、こんな状況で黙って寝てられるほど肝が据わってなくてな!それにお前は攻撃する気概がないなら黙ってみてろ!!」

 

ノーリに言われスバルはハッとする。さっき確かに覚悟は決めたが、本当に攻撃する気はあったかといわれるとそうでもないかもしれない。

 

中途半端な覚悟では、この状況に立っている資格はない。

 

「おぉぉぉぉ!!」

 

ノーリはボロボロの身体に鞭を打ってクラウドに立ち向かう。

 

「…」

 

クラウドは黙ったまま魔力を行使し、魔力弾を数百発放った。ノーリは大量の魔力弾を完全回避し、クラウドに急接近する。性能が下がったとはいえかつてアキラを圧倒した強さは健在だった。

 

「だらぁ!」

 

「…」

 

クラウドもスタッフの剣で対抗する。

 

 

 

ー防衛ライン付近ー

 

 

 

防衛ライン付近のビルの屋上にいたディエチは、先程のApollonの衝撃波でビルが倒壊し、地面に投げ出されていた。

 

「うう…」

 

目を覚まし、起き上がる。

 

「なんだったの…?さっきの……」

 

Apollonが発射されてから衝撃波で街を吹き飛ばすまで5秒もなかった。ほとんど何が起きたのか理解できてなかったのだ。

 

そこにアキラから通信が入る。

 

(ディエチ!生きてるか!ディエチ!)

 

(アキラ…?うん。大丈夫!)

 

(今俺は西側の海岸付近で戦ってる!例のあれで敵を狙撃できるか!?敵は人の形をしてるだけの化け物だ!殺して問題ない!)

 

アキラから念話を受け、ディエチは近くの大型トラックに駆け寄る。トラックは横転していたが中の荷物は無事だった。

 

中にから取り出されたのは巨大な砲台いや、巨大な銃だ。

 

「ロングバスターカノン、起動」

 

ディエチはロングバスターカノンに装備されているスコープで遠く離れた戦闘中の現場を見た。アキラと黙示録の獣はともに肉眼ではとらえられないスピードで戦っている。だがそのスコープは音速に及ぶレベルのスピードの二人を捕らえている。

 

「よしっ!これなら…!!ISヘヴィバレル!!」

 

ディエチのIS、ヘヴィバレルでチャージを開始する。そしてロングバスターカノンの性能で普段使っているカノンでは出せない出力と射程距離を生み出す。

 

「………」

 

 

 

ーミッドチルダ西側海岸付近ー

 

 

 

「おぁぁぁぁ!!」

 

アキラは変わらずアクセラレイターハザードを連続運用しながら黙示録の獣と戦う。全身に走る激痛にアキラは耐えながら戦うも、若干アキラは劣勢だった。しかし、それは問題ではない。今はとにかくディエチの狙撃地点に誘導することが目的だ。

 

「フロストショット!」

 

牽制技を打ち込むも当然避けられる。アキラは後退しながらうまく誘導していく。

 

「滅殺」

 

獣の剣撃をアキラは紅月で防ぎつつうまく誘導しきった。

 

(アキラさん!今!)

 

「…っ!!」

 

アキラは黙示録の獣が繰り出してきた剣を自ら受ける。

 

「…?」

 

「掴まえたぜ………アイシクル!!」

 

何かを察した獣は「Apollon」をアキラに撃とうとしたが、アキラは黙示録の獣にゼロ距離で氷結魔法を当てた。

 

「!」

 

アキラの左手から放たれた氷結魔法は黙示録の獣を一気に氷付かせた。だが黙示録の獣には氷結魔法はほとんど効かない。すぐに解除されるだろう。

 

(一瞬で良い!隙を作れれば!!)

 

アキラはすぐさま離れる。

 

(いまだ!!ディエチ!!)

 

氷を解除する一瞬、出来た隙にディエチが最大出力の一撃を打ち込んだ。

 

(当たって…)

 

ディエチは願った。

 

だがその一撃は、黙示録の獣の頬を掠めて終わった。

 

(外し……)

 

攻撃が自身の頬を掠めたことを確認すると、黙示録の獣は攻撃が来た方向を向いた。そしてかなりの距離があるのにも関わらず、ディエチを確認した。

 

「…!」

 

その瞬間、ノーリと戦っていたクラウドが突然苦しみだした。

 

「うぐッ!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「!?」

 

「なに!?」

 

クラウドの胸が光り、魔力が右手に持っている黙示録の書に吸収されていった。無理な魔力吸収が行われたため、クラウドはその激痛にもがき苦しんでいるのだ。

 

そしてその吸収された魔力の行先は、黙示録の獣だ。黙示録の獣はディエチの方角に向けて両手を構えた。

 

アキラはアクセラレイターハザードのスピードで妨害しに行くが、周りから巨大なスタッフの触手が現れ、アキラの攻撃を妨害した。

 

アキラは妨害攻撃をすぐさま諦め、ディエチに向かって叫んだ。

 

「逃げろディエチィィィィィィィィィ!!!!」

 

「Hephaistos」

 

刹那、ディエチがいた方向の街が吹き飛んだ。

 

「ディ…うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ディエチはロングバスターカノンごと吹き飛び、更にディエチの後方にあった管理局本局の横にあるタワーが溶解し、消し飛んだ。

 

「ああ…」

 

さっきのApollonの倍以上はある威力だった。ディエチが逃げることも防ぐことも無理だろう。

 

「……」

 

「消滅」

 

「…………俺の…せいか……」

 

 

 

アキラは強く、強く歯軋りをした。その胸に秘めた、怒りと憎しみの熱が身体から魔力のオーラとして溢れる。もう、会えない。死に顔すら見れないディエチの顔が脳裏に浮かぶ。

 

それだけじゃない。さっきの砲撃によって消し飛んだタワーの中の管理局員達。

 

仲間一人、妻一人守れない自身の不甲斐なさ。そして敵に対する怒りが頂点に達し、アキラは封じられていた最終兵器を発動させた。

 

 

「くぅぅ…ヴォワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!アクセラレイタァァァァ!マックスハザードォォォォォォォォォ!!!」

 

アクセラレイターハザードだけでもかなりの負荷がアキラを襲う。それよりもさらに上。ただの人間が使えば負荷のダメージだけで肉塊に変わるであろうモードだ。

 

だが、速度もパワーも格段に上がる。

 

次の瞬間にはアキラの拳は黙示録の獣の腹部に刺さっていた。

 

「!」

 

「ぬぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そのまま拳を振り切り、黙示録の獣を高速でビルに殴り飛ばした。

 

初めてまともにダメージが入った。黙示録の獣は3件ほどビルを突き抜けていく。飛んでいる最中だが、そこに横からアキラの足が黙示録の獣の横腹に命中し、さらに飛んでいく。

 

アキラは止まらない。反撃の猶予を与えないように動けるだけ動き、攻撃を仕掛ける。

 

もちろん、黙示録の獣も反応し反撃しようとするが間に合わない。黙示録の獣が操る高速の触手も、剣も、集束砲も。

 

そして、3、4、と続き5撃目が入り、黙示録の獣は道路に叩きつけられた。アキラは黙示録の上空に移動し、ヴァリアントシステムで強化されたマイティギャリバーのカノンを構える。

 

「出力最大!ヴァリアントバスタァァァァァァァァァァァァ!」

 

アキラが先に砲撃を放ったが、黙示録の獣がApollonをヴァリアントバスターに向けて放つ。Apollonはヴァリアントバスターを貫き、かき消した。

 

しかしその先にアキラはいない。アキラはApollonが撃たれた瞬間、黙示録の獣の横直線上に移動していた。

 

「くたばれぇぇぇ!」

 

黙示録の獣がアキラに気づき、触手による攻撃を仕掛けてきたがアキラはすべて避けた。

 

そして見事なまでの胴切りを決めたが、手応えはない。

 

「…!」

 

アキラがすぐ振り向くと、黙示録の獣の胴体は確かに真っ二つになっている。しかし、再生していく。

 

「テメェもスタッフで出来てやがんのか…」

 

そう、黙示録の獣はかつてのウィード同様、肉体が全てスタッフで出来ているのだ。

 

ほとんど流動体のようなその肉体に正直ダメージがあるかはわからない。さっきの連撃も効いているか怪しいところだ。

 

「だったら魔力砲で跡形もなく…!」

 

その時、アキラは急に動きを停止し、持っていた紅月を落とした。

 

「…?」

 

「…」

 

アキラの足元に血が垂れた。アキラの口から流れている。さらに耳、鼻、目と次々と血が流れてくる。

 

そして口から大量に吐血し、全身から血を吹き出して倒れた。

 

アクラレイターハザードの連続運用、そしてアクラレイターマックスハザードによってアキラの肉体は完全なる限界を迎え、倒れた。

 

「ゴボァ…」

 

アキラは自身が吐いた血溜まりに倒れた。

 

「…」

 

アキラが倒れた地面からスタッフの触手がアスファルトを砕き、伸びてきた。そしてアキラの体を貫き、持ち上げた。

 

そのままアキラを投げ飛ばし、太く、長い触手でアキラを叩き飛ばした。

 

アキラからは苦しみの声も聞こえない。

 

黙示録の獣は指から魔力弾を放ち、アキラに当てた。魔力弾は巨大な爆発を起こし、アキラはさらに吹っ飛んでいった。

 

もうバリアジャケットも消滅し無防備なアキラが地面に叩きつけられそうになった時、誰かがアキラをキャッチした。

 

「アキラ君!」

 

全身から血を流すアキラを見てギンガは顔を真っ青にする。

 

「アキラ君…その傷…」

 

ギンガは地面に一旦降り、アキラの様子を見る。

 

「…」

 

「ひどい傷……アキラ君…あれはいったいなんなの…」

 

ギンガは遠く離れているはずの敵に恐れを感じていた。

 

実質、一番の戦力だったアキラが倒れた今、もう黙示録の獣に勝てる可能性はなくなったも同然だった。主戦力は全員ゼロナンバーズとの戦闘でかなり消耗している。全員が集まり、黙示録に立ち向かったとしても倒せるかどうかわからない。

 

「おい…なんだったんだ今の爆発…」

 

「外ではなにが起きてるの…?」

 

ギンガ達の後方で声がした。ギンガが振り向くがそこには誰もいない。

 

「…?」

 

いや、よく見ると地面に穴が空いている。その穴の中に人がいた。一般人だ。

 

「ここはもしかして…」

 

黙示録の獣がディエチを消すために放ったHephaistosはその威力と火力で地面を抉った。その際、一般人が避難していたシェルターの天井部分を一部削ったのだ。

 

しかも本局が大打撃を受けている今、シェルターの電源は落ち、外に出ることすら叶わない状態だった。

 

そんなとき。

 

「生命反応多数検知……滅殺」

 

黙示録の獣がそれに気づき、人々を消滅させようとHephaistosを撃つため、クラウドから再度魔力を搾取し始める。

 

さっきのやつが来る。ギンガはそれを悟ったが、逃げようとはしなかった。

 

「…ごめんなさい。アキラ君。助けに来てくれて嬉しかったよ……ありがとう。愛してるよ」

 

ギンガはアキラにキスをして力の限りアキラを遠くに投げ飛ばした。

 

「全員!死にたくなかったから部屋の隅へ!!私が守れるだけ守ります!」

 

ギンガはシェルターの穴の前に立った。

 

「イージスシールド!トライアルシールド!ツインガード最大出力!!」

 

ギンガは二枚のシールドを最大出力で構え、Hephaistosに構える。

 

「Hephaistos」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

…俺は何をやってるんだよ……

 

 

 

 

 

守るんじゃねぇのかよ………

 

 

 

 

 

そのための力じゃねぇのかよ……

 

 

 

なんで身体が動かねぇんだ…

 

 

なんでギンガに無理させてるんだ……

 

 

ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!

 

ここで終わってたまるかよ!!

 

なんのために全てを失う覚悟でここまで来たんだ!

 

まだ……………………終われねぇ!

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「アクセラレイタァァァァァァァァァァァ!」

 

アキラの叫びと共に黙示録の獣の足元に落ちていた紅月がひとりでに動きだし、アキラの手元に飛んできた。

 

アキラは全身からの出血と肉を引き裂かれ、ミンチにされるような痛みに耐えながら最後のアクラレイターを発動した。アクラレイターハザードのような性能は出せないが、もうアキラにつかえるのはこれしかない。

 

アキラはアクラレイターの出せる最大のスピードでHephaistosの射線上、つまりギンガの前にとんだ。

 

「アキラ君!?」

 

「アァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

全てを飲み込み、迫ってくるHephaistosに対し、アキラは紅月を構えて突っ込んだ。当然アキラ一人で防ぎきれる攻撃ではない。

 

だが、アキラの紅月の切先にHephaistosが接触した瞬間、アキラの紅月から光のオーラが発生し、Hephaistosが止まった。

 

「!?」

 

オーラはどんどん大きくなり、紅月から結晶が発生した。結晶はアキラの腕に絡みついていき、更に結晶から電子回路のような形の結晶がオーラ内に大きく広がっていった。

 

(護り……たいんだ!!!!)

 

アキラは強く、強く、願った。

 

アキラの身体から出ているアクセラレイターの光が小さくなっていく。アクセラレイターが終われば、アキラは確実に落ちる。もう立ち上がることはおろか、死んでしまう可能性もあるだろう。

 

だが、アキラはあきらめない。最後まで立ち向かった。

 

オーラはさらに大きくなっていく。結晶がさらに広がり枝分かれしていく。結晶の塊となった紅月がHephaistosを吸収しているようだった。

 

「………光…なに」

 

黙示録の獣もそれに驚いていた。ギンガも、ギンガが守ろうとした人々も。Hephaistosは完全に紅月に消滅させられた。

 

それと同時に光のオーラはアキラの胸の中に吸収されていく。そして回路状の結晶が砕け散った。アキラの腕に纏わりついていた結晶も砕け、刀身の部分が変化した結晶も一部砕けて元の紅月に戻った。

 

「…俺は……」

 

 

 

 

続く


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