とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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説明といきさつの話です。ほぼオリキャラのこの話面白いのか


感想、投票、評価、随時募集中です。


第三十話 幻影

「改めて解説しよう」

 

アキラは小此木の説明を目覚めたばかりの頭でよく理解できなかったのか頭に「?」を浮かべるばかりだった。

 

「君の罪は早々許されるものではない。それは君も理解できるね?」

 

「ああ、当然だろうな」

 

アキラもそれは理解している。それなのになぜ檻の中にいないのか、裁判所にすらいないのかが疑問なのだ。

 

「だが、僕ら現場の人間としても君が逮捕されることは望ましくないし、実は君の奥さんに君を助けてくれと言われてね」

 

「ギンガが!?」

 

 

 

-三日前 事件終了直後-

 

 

 

事件が終了直後、アキラは管理局員に連れていかれた。脱獄の手助け、違法な次元転移、無許可での殺害諸々の罪だ。アキラは連れていかれることに抗いはしなかった。しかし、それを見ていて納得がいっていない人物が一人いた。

 

ギンガだ。

 

「やぁ。ギンガ准陸尉。無事で何よりだ」

 

ギンガがアキラが乗せられた車が走り去るのを見ていることしかできないところに、小此木が現れた。

 

「小此木さん…」

 

「アキラ二尉については…まぁ。仕方ないだろう」

 

ギンガが助けを求めるような視線で自分を見てくる理由を小此木は察して先に説明した。

 

「そんな…アキラ君は私を助けようとしただけです!」

 

「それは分かっているが。それでも度を越えている。罪を犯したなら償うのは当然だ」

 

「それでも…!この事件を解決させたのはアキラ君ですよ!?どうにか!どうにかできないんですか!?小此木さん!」

 

「………まぁ私も上に近い人間だ。できることは全部やるよ」

 

「え?」

 

「僕とてミッドを救った英雄を、みすみす塀の中に入れたりしたくない。彼の力はきっとまだ必要だ」

 

「お願いします!!絶対に、絶対にアキラ君を助けてください!もし助けられなかったら…あなたを許しませんから!!!」

 

「わかった」

 

 

 

-現在-

 

 

 

「なるほどな…」

 

「君の意識いつ戻るかわからなかったからね。僕が勝手に弁護させてもらったよ。アキラ陸尉は危険な存在じゃない。ギンガ準陸尉を護ろうとしただけだとね」

 

それを聞いてアキラは少し照れくさそうな表情をする。だがすぐに頭を捻らせて考える。

 

「ん?待て、いつ目覚めるかわからない俺をコンクリートのベッドで寝てたのはなんでだ?」

 

「医者が言うには回復に向かっていて、君はもうすぐ目覚めると聞いたからね。君が視力を得た状態でここに来るのは望ましくなかった」

 

「秘密の場所ってか」

 

アキラの言葉に小此木は笑って頷く。

 

「その通りだ。君はこれからここで3ヶ月みっちり鍛えられ、我々「ファントム」にふさわしい人間なってもらう」

 

「ファントム………都市伝説かなんかだと思ってたがな」

 

アキラは頭を掻きながらファントムのことを伝えた。すると小此木は少し考えてから尋ねる。

 

「ちなみに君が知っている知識は?」

 

「管理局の滅茶苦茶つえー連中だけで構成された管理局の奥の手中の奥の手の秘密部隊ってことだけだ。存在そのものが確認されてないからただの噂だと思ってたもんだが」

 

「ファントムの存在はごく一部の人間にしか明かされていない。S級秘密事項だ。だが、そんなものがあるんじゃないかという噂だけは流している。内部のスパイや外部に牽制をかけるためにね。存在しているのかしていないかわからない、幻影のような部隊。故にファントム」

 

小此木は得意げにファントムの成り立ちを伝えた。

 

「その実態は、あらゆる脅威に対して「絶対に負けることはない」力を持った人間が選ばれる特殊組織だ」

 

「絶対に負けることはない…」

 

「僕たちは絶対防衛線。超えられてはならない壁ってことだ。逆に我々が負けるとき。それは、管理局が終わるときだ」

 

ファントムという部隊について大体が見えてきた。管理局の絶対防衛ライン。それは逆に言えば管理局が絶対的に管理下に置いている組織。末端の陸士部隊なんかよりずっと管理しやすいだろう。

 

だから罪を犯したアキラが生き残るにはファントムに入るしかないのだ。

 

「ちなみに、メンバーは?」

 

「三人だ。僕と、女の子一人、それからシグナム君」

 

「シグナムぅ?」

 

アキラは微妙な顔をしてシグナムを見る。シグナムは確かに強いが、シグナムがいるなら、はやてやなのは、延いてはフェイトがこの組織にいたっておかしくない。

 

「私はお前と同じだ。我らが主、八神はやてを管理局のお偉方が監視する名目でここに所属させられた」

 

「そうかい。つーか小此木、お前がファントムとか信じられねぇんだけど」

 

「ああ、そうだね。僕の能力ともう一人の実力を君には知ってもらう必要があるな」

 

小此木は制服を脱ぎ、自身の右腕を見せた。右腕には鎖が巻かれている。

 

「僕、小此木は生まれた時から特殊な能力を持っていてね。先祖からのギフトか、偶然の呪いか。それに気づいたのは小学生の頃だ。攻撃と見なすものを吸収して体内を通して放つことが出来る。体内に溜めて固形物として持つこともね」

 

小此木は懐から色が付いた球体を取り出した。黙示録事件で小此木が使ったものだ。小此木がその球体を握り、空に向けると小此木が持つ魔力色とは違う色の魔力砲が放たれた。

 

「2段階の能力制限にが付いていてね。何もしてないと右掌だけで吸収、1段階で両腕、2段階で全身で吸収が可能となる。まぁこれくらいの説明で良いかな?」

 

腕に巻かれている鎖はその制限だろう。

 

「大体わかった………だが一つ聞かせろ」

 

「なんだい?」

 

「なんでそこまでの力があるのに管理局に大人しくついてるんんだ?」

 

「………どうしてそんなことを聞く?」

 

「お前みたいにアホみてぇな力を持ったやつを知ってる」

 

アキラの脳裏にはリュウセイが想い浮かんでいた。

 

「そいつはなんでか知らんが俺らの味方をしてくれるが管理局にも、多分何処の組織にも着いて無い。自由にやってる。お前はなんで管理局にいる?」

 

「………確かにこれだけの力があれば、世界を自由にできるかもしれないね」

 

小此木は悪戯っぽく笑った。

 

「けどね、私は孤独が嫌いなんだ。私の能力が明らかになってから、学校の友人どころか家族すら疎遠となった。その時の孤独と言ったら……。そんな時、管理局に僕は引き取られた。家族が僕を恐れて局に売ったんだ。正直もうどうなろが良かったが、管理局である人にとてもやさしくされた。その人は任務中の事故で亡くなってしまったが、僕は彼女が守ろうとしたこの世界を護りたい。そんな思いで管理局に努めているんだ」

 

小此木は胸にかけていたロケットペンダントを取り出してその中を眺めながら言った。アキラはちゃんとした理由があったことに安心しながらもあまり聞くべきではなかったかと思った。

 

「そうか…」

 

「まぁ僕の話はそれくらいにして、そろそろ最後の一人の話をしようか。最後の一人の名前は「カエデ」会ったことはあるかな?」

 

小此木がカエデの写真を宙に表示した。映し出されたのは黒髪の少女。それは黙示録事件でアキラが度々見かけていた少女だった。その少女はクアットロとフィフスを確保、アキラの暴走を止め、黙示録の獣の攻撃で死にかけたディエチを救出した少女だ。

 

「コイツだったのか……」

 

「彼女の能力は異常なまでの力。そして技だ。説明なんか必要ない。単純な力とそれを最大限生かす技術。それだけ。ある意味唯一僕を倒せる人間と言っても過言ではない」

 

「へぇ」

 

「これから会いに行くついてきたまえ」

 

 

 

ー廃市街地ー

 

 

 

廃市街地の一角。やや倒壊したマンションの中の一室にアキラは案内された。

 

「ここにいるのか?」

 

「ああ」

 

アキラが扉を開く。中の部屋はそこまで汚くはなかったが薄暗かった。玄関から続く廊下の先の扉が開き、奥から少女が現れた。

 

「来たの」

 

アキラは現れた少女に違和感を感じた。事件中出会った時とは様子が違った。

 

「ん、今はツムギだったか」

 

「あ?」

 

「彼女には二つの人格がある。主人格はツムギという名前だ」

 

小此木はそれを伝えてツムギの家に上がった。シグナムも同じように家に上がる。

 

居間に上がった三人は取り合えずテーブルに座った。

 

「…その人が、新しいファントム?」

 

「ああ」

 

「…………アキラ・ナカジマ二尉だ。よろしく」

 

「………」

 

ツムギの反応は無しだ。用意したお茶をちびちびと飲んでいるだけだ。

 

「とても、小此木に勝てるような強さを持ってるようには見えねぇな」

 

「…」

 

挑発しても反応無し。しばらく経ってからツムギは席を立つ。ようやく何かするのかと思ったが、お茶をおかわりしただけだ。

 

「シグナム…なんだこのガキ…」

 

「私に聞くな。私だって会うのは初めてなんだ」

 

アキラは少し苛立ちながらシグナム聞いたが、そのシグナムも驚いているようだ。

 

「すまないね。ツムギは昔から他者に関心を示さないんだ。ツムギ、悪いがカエデに代わってくれないか」

 

「………うん」

 

ツムギは頷き、顔につけていた眼帯を外した。眼帯の先には傷付いた皮膚と右目とは色の違う瞳があった。

 

「……君がアキラか。初めましてではないかな」

 

先程のツムギとはまったく違う言葉遣いと声色。二重人格というのは本当らしい。

 

「ああ、事件の時に会ったな」

 

「私ともう一人の私……正しくは主人格の私であるツムギの二人で君を鍛える。時間がないのでね。えらくハードになるが耐えられるかい?」

 

ツムギと違ってえらく饒舌だと思いながらアキラは頷く。アキラの返答にカエデはにっこりと笑った。

 

「ではさっそく」

 

刹那、アキラの背後にカエデはとんでいた。それをアキラは感知できていなかった。

 

「!!」

 

「うむ。いい刀だ」

 

更に飛んだだけでなく、アキラの刀を奪っていた。しかも奪ったのは「紅月」。アキラがセシルにプレゼントされた大切な刀だ。

 

「お前っ!」

 

アキラはすぐに立ち上がり、カエデに一発入れようとしたが次にアキラがみた景色は床の景色だった。

 

「え?」

 

何が起きたかわからなかった。ただ席を立っただけなのにいつの間にか倒されていた。そんな認識しかできなかった。

 

「こらこら。焦ってはだめだよ」

 

「何をしやがった……」

 

「いずれわかる」

 

「てか紅月返しやがれ!」

 

「…この刀はどこで?」

 

急に変なことを聞かれ疑問に思いながらもアキラは答えた。

 

「それは、昔俺の大切な子が、俺の為に…職人に打たせた剣だ」

 

それを聞き、カエデは少し驚いた顔をする。そしてその後、紅月をいつくしむように眺めた。

 

「そうか……お前はよっぽど愛されていたんだな」

 

 

 

-屋上-

 

 

 

カエデはアキラの紅月を持ったまま全員を屋上に案内した。屋上には巨大な溶鉱炉が用意されていた。

 

「なんだこれ…」

 

「…………ここは、鍛冶場だよ。見ての通り。此処で私があんたに刀を打ってやろうと思ってね。正しくは、こいつの打ち直しだけど」

 

カエデは金槌を握ってにっと笑った。

 

「はぁ?」

 

「この刀の刀身使われているのは普通の鉄じゃない。ある特殊な鉱石が使われている」

 

カエデは近くにあった金庫を開け、そこから一つの鉱石を取り出した。その鉱石は美しく透き通っていた。

 

「この鉱石は数百年前から突如地上に現れたと言われている鉱石だ。取れるのが一定の年代の地層でね。それ以前の地層には一切見つかってない。名を「サイコメタル」」

 

「サイコ…なんだって?」

 

「サイコメタル。人間の感情に反応する特殊な金属でな。魔力があれば持つ者の意思で無限増殖する」

 

「なんだそりゃ………」

 

「覚えはないか?お前がその剣に助けられた時のことを」

 

「え?」

 

アキラはハッとした。そういえば黙示録の獣と対峙した時、シェルターの一般人を、正しくはそれを護ろうとしたギンガを護るために無策で獣の砲撃の前に行った。そのときに紅月が獣の魔力砲を受け止め、飽和させたのだ。その際に紅月は増殖し、回路状の何かを空中に展開させたのだ。

 

「あれか…」

 

「守りたい、殺したい、サイコメタルは単純かつ強い思いにより強く共鳴する。あの時、お前の「大切な人を護りたい」という強く、純粋な思いに反応したんだろう」

 

アキラは何となくサイコメタルに対して理解はできたが、一つ疑問が出てきた。

 

「で、なんで打ち直す?別にいままでどおりでも問題ねぇだろ?」

 

カエデは紅月を抜き、その刀身を撫でた。

 

「これを見ろ。紅いだろう?これはこの剣に使われたサイコメタルに誰かしらの感情が込められている」

 

「誰かの?」

 

「ああ。その想いがこの剣に残り続けている。恐らく………その剣を送ってくれた少女、セシルといったか?その子がお前に送るときに込めた想い……なのだろうな」

 

本来サイコメタルは透き通ったクリアな鉱石だ。それを使った刀である紅月が紅色なのはセシルの込めた思いが紅月の中に残留しているからだ。

 

「だ、だったら打ち直す必要はねぇ!あいつの思いを…無駄に出来ねぇよ」

 

「無駄にはならない」

 

カエデは微笑んだ。

 

「死して尚、メタルにその想いが残り続ける。これほど強い想いなら一度溶かした程度では消えはしない。ただこのままではこの刀がお前の想いに反応しづらいであろうことを考えてのことだ」

 

「…」

 

それを聞いてアキラは少し不安だったが小此木の説得で了承した。説得とは、アキラがファントムに入るにはサイコメタルを操れるようになる必要があるとのことだった。ファントムになる条件は一つ。絶対に負けることはない力を持つこと。それをアキラが可能にする方法で最も現実的なのはサイコメタルを使いこなすことだった。

 

作業はすぐに開始された。用意された溶鉱炉に紅月の刀身が入れられ、ゆっくりと時間をかけて溶解してやがて溶鉱炉の中で溶けていた鉄と同化した。

 

カエデによるとサイコメタルの精錬は特殊な方法でないとならないらしいがアキラにはよくわからなかった。

 

「アキラ二尉」

 

鍛冶の様子をアキラがじっと眺めていると、カエデが声をかけた。

 

「?」

 

「ここに手を」

 

カエデは溶鉱炉を指さして言った。

 

「はぁ!?」

 

いきなり訳の分からないことを言われ、アキラは動揺する。当然だ。

 

「俺に死ねと」

 

「安心してくれ。サイコメタルは溶解してる状態の溶鉱炉は触れても安全だ。それに、精錬には君が触れることは必須だ」

 

「………」

 

半信半疑といった感じでアキラは手を伸ばす。近くまで来たところでアキラは気づく。溶鉱炉の目の前だというのに全く熱くないことに。

 

「…」

 

「そこに手を入れたら、強くイメージするんだ。どういう刀にしたいか。何のために使いたいか」

 

カエデに言われ、アキラは頷く。そして一気に手を溶鉱炉に突っ込んだ。その瞬間、イメージがアキラの頭のなかに入り込んできた。

 

「!!」

 

(どうか、アキラを護る加護となって。誰よりも優しいアキラの、楯となり、槍となって。それがあなたにはできるから)

 

それは、セシルの願いだった。刀を打ったとき、セシルがアキラのために込めた願い。

 

(そうか、これがセシルの願いか……)

 

紅月の刀身は薄い紅色だ。それはセシルの魔力色の色。ずっと刀の中に宿っていたのだろう。

 

「願いを込めろ。お前がその剣で何をしたいのか」

 

「………」

 

(俺が、こいつで、したいことは………)

 

アキラはかっと目を見開き、溶鉱炉から手を一気に引き抜いた。その手には、白く光輝く刀が握られていた。

 

「それを台の上に。これはまだ実態を持ってない。打つことでこの世界に定義される。ちゃんと握って置きなよ。でないと溶けるから」

 

特殊な金槌で刀を打つと、そこが白から紫色に変わる。カエデが刀を満遍なく打ちつけることで全身が透き通った紫色になった。

 

「さぁ、そこの水へ」

 

打ち終わった刀を水につけると大量の蒸気が発生し、輝きは消えた。

 

「…完成だ」

 

「…………刃がないのだな」

 

アキラが作り上げた新たな刀は刃がなかった。形だけの刀、模造刀のようなものだ。

 

「俺の復讐は終わった。俺はもう、誰も傷つける必要はない。だから。どんな驚異からでも、大切なものを護る力が欲しかったんだ」

 

 

 

つづく

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