とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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あと一話続きます。駆けていきます。感想待ってます


第三十二話 決断

アキラの生存をかけて行われた管理局のエース・オブ・エース、高町なのはとの本気の模擬戦。明らか戦闘能力が上昇したアキラとなのはの戦闘は拮抗していた。しかし経験の差か、僅かになのはが上を行っていた。

 

 

 

「マイティギャリバー!ガンモード!」

 

アキラは空中でマイティギャリバーを起動し、自身を追尾する魔力弾を打ち落とす。さらにアキラの真上から降り注いだ追撃の魔力砲を翼で防ぐ。

 

完全に防ぎきることはできず、アキラは地面に落とされかけるが空中で翻り、地面を蹴って再度上昇した。上昇しながらマイティギャリバーでなのはに牽制弾を放つ。

 

なのはもアキラに接近されないように上昇しながら牽制弾を躱す。

 

(やはり空中でのスピードも機動性も経験と才能の差で追いつけない!)

 

「フロストデフュージョン!!」

 

アキラは上空にマイティギャリバーを構える。銃口の先に魔力が収束し、それが拡散した。氷の弾丸が辺りの浮遊孤島に命中したが大した威力はなかった。

 

(拡散攻撃?でも威力がない…)

 

「マイティギャリバー!ガトリングモード!!」

 

マイティギャリバーをガトリングモードに変形させ、なのはに向けて放つ。当然なのはは回避しながら反撃する。

 

アキラは刀を納刀し、小回りの利く懐刀を抜いた。それでなのはの攻撃を弾きながらガトリングを打ち続ける。

 

(あそこから動こうとしない…何か狙って…)

 

なのはがアキラがなにか狙っていることに気づき、それに思考を割いたことで勝負への集中がほんの少し途切れる。

 

それによって生まれた僅かな隙。アキラはそれを見逃さなかった。

 

ガトリングモードの銃身の下に増設したグレネード砲塔。そこからグレネード弾をなのはに向けて発射した。

 

しかしその程度の攻撃、なのはは自身に弾が到達する前にハンマーバレットで打ち落とす。

 

「え?」

 

打ち落とし、爆散したはずのグレネード弾が爆風を突き破り、なのはの眼前に来た。

 

(ブラインド…っ!)

 

アキラはグレネード弾を二発ほぼ同時に放っていた。一発は先を飛び、その真後ろを隠れるように二発目が飛んでいた。うち一発、後から放たれた弾うを氷の防御膜で包み、先に打った弾丸の爆発から守ったのだ。

 

グレネード弾はなのはの目の前で爆裂し、なのははバランスを崩す。さらにそこにガトリングの連撃を受け、なのはは墜とされた。

 

「…っ!!」

 

なのはは少し落下したところで再度飛行を開始するため、一旦浮遊孤島に片足を着く。その瞬間、なのはの足首までが凍り付き、孤島に固定された。

 

「!!」

 

(アイスバインド!さっきの拡散弾の!)

 

さっきアキラが放ったフロストデフュージョンはただの拡散弾ではなく打った場所に接触すると発動するアイスバインドを仕掛ける攻撃だった。アキラは魔導師ではなくどちらかと言えば魔導騎士だ。攻撃以外の魔導はそこまで得意としていない。

 

チェーンバインドは得意だが一流の航空魔導師を捕らえられるほどの技術は有していない。よってこういう方法の方が無理やりではあるものの、確実だったのだ。

 

アキラはガトリングと懐刀を捨て、刀を抜いて一気に接近した。

 

(こいつで一気に決める!これが最初で最後の確実な隙!!)

 

「一閃必倒!竜閃禍!!」

 

アキラの刀から放たれた強力な斬撃。それはなのはが捕まっている孤島の上にある孤島を砕き、なのはに迫った。

 

なのはがいた孤島はアキラの一撃で崩壊した。辺りに破片が飛び散り、爆煙が舞う。

 

(…墜とした?)

 

アキラが構えていると、爆煙からなにかが飛び出し、アキラにバインドをかけた。

 

「!」

 

「フルドライブ。ブラスター4」

 

爆煙が晴れた先には周囲にブラスタービットを飛ばし、ほぼ無傷で佇んでいるなのはがいた。

 

アキラの技が当たる寸前、フルドライブを発動させ、発動の衝撃派でバインドを砕いた上でアキラの技を防いだのだ。

 

「少し、侮ってたかな。でも今からは本気で行くよ」

 

なのははレイジングハートを構える。ブラスタービット4基もアキラの方を向く。アキラは必死にバインドから逃れようとするがバインドは強固だった。

 

「ディバインバスター!」

 

「!」

 

アキラは光に飲まれた。リミット解除したなのはの一撃。中級程度の技でも撃墜される恐れがあった。なのはが打ち終えるとその先にはバリアジャケットがボロボロになったアキラがいた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、そんなもんかよ…なのはさん」

 

アキラは余裕を見せるが明らかに効いている。

 

(さっきまでだって結構押されてたんだ。ここで急なパワーアップは困るぜ…)

 

アキラは覚悟を決めて腰に携えているもう一本の刀に手をかける。

 

「…こっからはこっちも本気だ。行くぜ」

 

白い鞘から引き抜いた刀は紫皇だ。美しい紫色の刀身。刃を持たぬ刀だ。

 

(「こいつ」の起動に必要なのは大量の魔力。次、なのはさんが打ってきた時がチャンス!)

 

「…」

 

なのははブラスタービットを散開させ、次の一手に出ようとした。

 

「やめろよなのはさん」

 

「?」

 

「俺は動かねぇからよ。本気で打ってこいよ。それともそんなにガチガチに警戒しねぇと俺一人倒す自信もねぇってか!?」

 

アキラはなのはを煽る。これ以上ないくらい分かりやすい挑発だ。だが、なのはに取っては好都合だった。どう考えても罠があるだろうが、相手が動かず甘んじて攻撃を受けるというのであれば罠ごと粉砕するまで。

 

「ブラスタービットセット、エクセリオンブラスター!!!」

 

(来た!)

 

アキラは紫皇を前に突き出し、エクセリオンバスターを受けた。アキラにはなにか策があると踏んでいたなのはは打っている最中と打ち終わった後、警戒していたが何も起こらなかった。

 

それどころかアキラは壁の方へ追いやられ、さらにボロボロになって倒れていた。

 

「…?」

 

「がはっ…」

 

アキラは刀を杖にして無理やり立ち上がる。

 

「お、おぉぉぉぉぉ!!!」

 

アキラは斬撃をなのはに放ち、それをおとりに上空へ逃げた。

 

(クソっ!どういうことだ!?どうして発動しなかった!?ツムギとの戦闘じゃ確かに発動したのに…)

 

アキラが考えながら飛んでいると、その前方にブラスタービットが飛んできた。

 

「!」

 

「シュート」

 

ブラスタービットから魔力砲がノータイムで放たれる。アキラは何とか翼でガードするが一気に後退させられる。さらに飛んできた二基のブラスタービットにバインドを掛けられる。

 

「うぐっ!」

 

何とかバインドから逃れようともがくアキラだったが、直後、それを止めて上を見た。上空には光が収束されていた。相手がかのエースオブエース、高町なのは相手であれば何が起きているのか誰でもすぐに理解できる。

 

なのはの最大にして最高の魔法。打たれれば99%撃墜されるだろう。

 

「クソったれ…」

 

アキラはなんとかバインドを砕いたが、再びバインドで縛られる。それを繰り返し、アキラを絶対に逃さないつもりだ。

 

その様子を見ていた小此木は少し訝しんだ表情をした。

 

「………妙だな。トレーニングの成果を出し切れていない」

 

「そんな!このままじゃアキラ君が…」

 

「……仕方あるまい。彼はここまでの様だ」

 

「!?」

 

なにやら観覧席の空気が怪しくなってきている間にも魔力は収束され続け、発射可能域に達していた。

 

「スターライト………ブレイカァァァァァァァァァァ!!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

アキラは何とか凌ぎ切ろうとシールドを数枚重ねたものを展開した。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

全身が消滅しそうだった。シールドを展開する腕は今にも砕け、身体は地面に叩きつけられそうな衝撃が常時アキラを襲い続ける。

 

『アキラ陸尉聞こえるかい?』

 

その時だった。観覧室の小此木から通信が入った。

 

「なんっだ………今、話してる状況じゃ…」

 

『君は此処までだ。どうやっても君はそれを防ぎきれない君の負けだ』

 

「そんなん………やってみなくちゃ…」

 

『それだけじゃない肝心なとこでファントムにいられる条件の「力」を行使できなんじゃ君はファントムに相応しくない。君は永久凍結。封印処置とする』

 

「な…」

 

『ああそうそう、ギンガ準陸尉のことは心配しなくていい』

 

「なに?」

 

『私が責任をもって幸せにしよう』

 

『きゃあ!』

 

ギンガの悲鳴が通信越しに聞こえてきた。

 

アキラは砲撃に耐えながら視線を観覧席に向けた。そこには小此木に拘束されているギンガの姿があった。

 

「テメ…ェェェェ!!」

 

『そういえばアキラ陸尉。君は私に聞いたね。力を持っているのになぜ管理局に味方するのかと。理由は孤独が嫌だと言ったが………あれは嘘だ。本当の理由は。都合のいい女が簡単に手に入るからさ』

 

「なんだ………とぉ…」

 

『私を心配してくれた心優しい女性がいたと言っただろう?彼女がいなくなったのも、私が「使いすぎて壊してしまった」からなんだよ』

 

観覧席のギンガは必死に抵抗していた。しかし小此木の力は戦闘機人のギンガの力すら抑えるほどだった。

 

「離してください!やめて!」

 

「ツムギ、彼女を黙らせろ」

 

「了解」

 

ツムギが瞬間でギンガの横に移動したと同時に首の後ろに一撃入れて気絶させた。小此木は倒れかけたギンガを支え、顎に指を伝わせる

 

「美しい顔、良いスタイル。君には少々もったいないと思ってたんだ。まぁ抵抗するなら洗脳でもなんでも手はある……壊さないように気を付けるから、君は安心して逝ってくれ」

 

スターライトブレイカーの砲撃に耐えるアキラの腕の皮はボロボロになり、シールドも最後の一枚になっていた。紫皇を握っている右手には血が滲み始める。それはスターライトブレイカーのダメージはない。刀を握るアキラ自身の力だ。

 

「ふざけるな…」

 

最後のシールドにヒビが入り、中心部分に穴が開いた。そこから漏れ出した細い光線がアキラの身体を貫く。

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

アキラが叫んだ瞬間、アキラの胸のあたりが光る。そして紫皇も輝き、刀身から結晶が発生し、それが回路状に広がっていった。結晶の回路はなのはのスターライトブレイカーを吸収し、伸びた回路の枝から無害なただの魔力として放出された。

 

そしてその放出された魔力をアキラの体内の賢者の石が吸収し、覚醒を始めた。

 

スターライトブレイカーが放たれ終わるのと同時にアキラが上空高く飛び上る。頭の上に光のリングが出現し、背中の翼は模擬戦を行っている部屋の天井を通り抜け、外の空、即ち天に繋がった。

 

黙示録事件中にアキラがなった状態と同じだ。いや正しくは同じではない。翼は前より一段と輝き、アキラの全身が白く輝いている。瞳の色も蒼く輝いていた。

 

その状態のアキラが手を横に振るとあらゆる攻撃にも耐えれるように造られた観覧席の防護ガラスが砕け散った。

 

「まずいな…挑発が過ぎたようだ…。暴走一歩手前…いや、前回よりも神格化が近くなっているかも…」

 

「どうする。試合は中止してあいつを止めるか?」

 

いつも間にやらカエデに人格変更したツムギが話しかけてきた。

 

「いや…これは」

 

小此木は状況を見て少し考える。辺りに展開された結晶の回路が一部砕け、その破片がアキラの周りに集まり結晶の鎧を精製した。鎧がアキラの身体に装着されると、アキラの身体の身体の輝きは消え、頭の上のリングも消滅した。

 

「…………っは!?」

 

覚醒しているときは完全にアキラの意識は飛んでいたのか、鎧装着によって覚醒が終了するとアキラはハッとする。そして小此木の姿を見てすぐに激高する。

 

「…小此木!テメェェェェ!!」

 

腕の鎧が一部バラバラになり、浮遊する。アキラが腕を小此木向けると結晶が再集合し、ニードル型になって飛んでいった。ニードルは小此木に向かって飛ぶが、カエデがそれを繰り落とす。

 

ニードルは蹴り落とされると同時にバラバラに砕け、再びアキラの腕に戻って鎧を形成する。

 

「カエデ!どけ!」

 

「落ち着け。お前の紫皇を覚醒させるための挑発だ」

 

「だが…!」

 

「アキラ君、大丈夫」

 

ギンガの声がした。気絶させられたはずのギンガが目を覚ましていた。ツムギに気絶させられる直前、ツムギに言われたのだ。

 

「気絶のフリだ。アキラを挑発する」と。その一言でギンガは小此木の行動はアキラを本気にさせるための演技だと気づいたのだ。

 

「ギンガ…」

 

「君はやはり、「何かを護るため」にしかその力を使えないようだ。紫皇に刃を作らなかった理由が影響してるんだろう」

 

「…」

 

紫皇が造られたとき、アキラは「誰も傷つける必要はない。だから。どんな驚異からでも、大切なものを護る力が欲しかった」と願って打った。だから「なのはを倒す」ためには紫皇は起動しなかったのだ。

 

ツムギとの訓練で発動していたのは、ツムギの本気の攻撃に自信の生命の危機を感じ、自己防衛のために発動したと思われる。

 

「まだ模擬戦は終わってない。君の敵は私ではなく彼女だ」

 

小此木がギンガを離し、なのはを指差した。

 

「…。ギンガの身体に勝手に触ったケジメはつけさせる」

 

アキラはそういってなのはに向き直る。

 

「結構だがその前に彼女を倒さなければ君は再び私の前に立つことすら出来ない。忘れないことだ」

 

「安心しろよ」

 

アキラは一旦地上に下り、刀を拾い上げてなのなに切っ先を向けた。

 

「もう俺は、負ける気はしねぇ!」

 

 

 

続く


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