竜騎絶哮アルビオン   作:蒼穹の命

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何故か筆が乗ったので1週間経つ前に投稿完了。大分文字数増えたしかなり感覚で書いてしもうた……。


歌姫と慰霊と騎士/槍再び、そして再会

 あのライブ会場での悲劇から、2年の月日が流れた。

 当時はあんなに騒がれていた生存者へのバッシングは鳴りを潜め、民間団体による生存者たちへの生活のサポートも順調に進み、ノイズ災害への対策や避難の円滑さは格段に向上したことによって、ノイズの被害が世界で全体的に落ちていると発表されていた。

 半年前にはライブ会場の近くに当時ノイズ災害にあった死者たちのために慰霊碑も作られ、そこに花束を携えて死者への祈りを送っている人は少なくはなかった。

 

 そして彼女──天羽 奏もその1人であった。

 

 彼女はあの日以来、歌姫として、装者としてもすでに限界であった。ノイズと戦うためのシンフォギアとの適合率が低かった奏はLiNKERという薬を使用することによって適合率を無理矢理上げて戦場を駆け巡っていたが、その薬は使用者への高負荷と副作用が伴うために下手をすれば死へと至りかねない程の危険性があった。今では研究による負担と副作用が軽減された改良型があるが、改良前から使い続けていた奏の身体はボロボロで体内洗浄を施しても消えずに残留している毒素の影響と怪我により、いつ具合が悪化してもおかしくない状況ではあったが、突如研究室に匿名による毒素洗浄の大幅な改良案が直接データベースに送られてくるという事態が起こり、「シンフォギアシステム」の開発者である櫻井 了子が一から全て検分し、ところどころ粗があるが、もしかすれば……との事で急ピッチにそれを基に研究した結果、今はこうして自分の足で歩いていけるくらいに回復するに至り、これには相方である翼も人目を気にせず嬉し泣きをしていた。

 だが以前のようにはという訳にはいかなかった。歌えないわけではないがライブをするにはまだ程遠いし、装者として戦うのはもってのほか。そして結局セキュリティを掻い潜って改良案を送ってきたものの正体はわからずじまいであった。

 

 途中までは護衛もかねて二課の人に送ってもらい、慰霊碑までの整備されたばかりの木々に囲まれた道を、奏は花束を持って向かっていた。人が少ない時間帯を狙って訪れた為に、枝と葉から漏れ出る橙色に照らされた道には彼女以外は誰もいなかった。

 

 

 ──慰霊碑の前にいた1人を除いて

 

 

 奏がたどり着いた時には、その先客であった黒いコートにフードを被った人物が、5つの花束を慰霊碑前に置いて祈っていた。

 やけに多いなと思いながら奏も続けて花束を石碑前に置いて、無言で死者たちへの祈りを送る。

 

 1分2分あたりであろうか、短いはずなのに長く感じた時間の中、黒コートの者が沈黙を破った。

 

「ニュースではまだ療養していると流れていましたが、歩ける程には回復してたんですね、天羽奏さん」

 

「あー、それは……」

 

 声のトーン的に男だと勘づきながらもどう返答すればいいか迷っている奏を見て、ふふっと笑いながら黒コートの男は彼女の方へ顔を向けながら話し続ける。

 

「ご安心を。周りに言いふらすつもりもないし、僕はあなたたちのファンですから、迷惑をかけるようなことはしませんよ。なにより……」

 

 彼女に向けていた顔を、今度は慰霊碑に向けながらさらに話を続ける。

 

「ここは死者たちを慰め、祈るための場ですから」

 

「ああ、そうだな……」

 

 そうして再び2人は慰霊碑に向かいながら祈りを捧げた。

 

 

 

 

 

 

「にしても、良かったです」

 

「え?」

 

 二度目の沈黙を破ったのはまたもや黒コートの男であった。

 

「見た感じですと、どうやら僕のとこが提案したLiNKERの毒素浄化改良案は功を制した、と捉えていいんですかね? 二年前のライブ会場でぼろぼろの姿見た時から気になっていたので……」

 

「なっ!?」

 

 黒コートの男から出た衝撃的な発言に奏は固まった。

 今この男はなんと言った? 

 LiNKERの毒素浄化改良の件もだが、それ以上に無視できない内容が飛び込んできた。2年前のライブ会場でぼろぼろの見た時、とこの男は確かにそう言った。あの場にいたの自分と翼とあの少女、そして──

 

「まさか、お前……」

 

「漸く気づいたみたいだね。人の出が少ない時間帯を狙ってここに来た矢先で君に会えるとは思わなかったよ」

 

 そうして、先程とは口調が砕けた黒コートの男は深く被っていたフードを取った。夕焼けに照らされている白い長髪、額に青いバンダナが巻かれている橙色の瞳をした少年──ランスロット。当時はバイザーで一切表情が見えなかったために、あの時助けに来てノイズ相手に無双していた騎士とは思えないほどの優しげな雰囲気をしていた。

 

「ふふっ、やっぱり驚いたって顔してる」

 

「おまえなぁ……」

 

 悪戯の成功を喜ぶ子供のように笑うランスロットを見て、奏は思わずため息が出る。先程は思わず身構えかけてしまったが、そうしてた自分がバカらしく思うぐらいに一瞬ですっかり毒気が抜かれてしまった。

 

「しっかし、あの時助けに来てくれた騎士様に会えたどころか、素顔を拝めるとは思わなかったよ。あの時はちゃんと言えなかったけど、アタシとあの子があそこから生きて帰ってこれたのはアンタのおかげだ。本当に、ありがとな」

 

 先程のささやかな仕返しも兼ねて2年前に伝えそびれた事をここで本人に言い、まさかお礼を言われるとは思わなかったのか、笑っていたランスロットの顔が驚きに染まった。

 そういう顔もできるんだなーと奏は自分の表情に見入っている事に気づかずにランスロットは彼女に再び話しかける。

 

「……こちらこそ、生きていてくれてありがとう。ファンとしてもそれを抜きにしても、とても嬉しいよ。それに、あの女の子が生き延びることが出来たのは君があの時ギリギリまで踏ん張っていたからだよ。あの子を助けたのは紛れもなく君だ。僕は最後の後始末をした程度さ」

 

「でも、やっぱアンタのおかげだよ。来てくれなかったらアタシは自爆してまであの子を救おうとしてたよ。あの後翼には泣かれたし旦那たちにはしこたま怒られたし。ああいうのは、自分がよくても周りは納得しねーし、悲しませちまうって事が身に染みてわかったよ」

 

 やれやれと言った感じでどこか煤けてるような雰囲気を出している奏を見ていると、これは相当泣かれた上に怒られたんだなとランスロットも理解した。自分もその辺りは似たような事があったというのも大きかった。

 

「そう、だね。残された側の人間は失った悲しみは受け止めなければならないし、その悲しみの大小は人それぞれだ。とはいえ2年前に関しては、それに加えて周囲からバッシングを受ける事態になるのは想像もしなかったけどね……」

 

「……それを聞いた時は自分の身体のこと忘れて飛び出しちまいそうになったよ。アタシがベッドで療養している間に、生き残った人たちが周りから責められ続けてるって全然知らなかった……」

 

「アレらに関しては仕方ないとしかいえない。今と違ってノイズ災害の対策や生存者の処遇とかが不十分だったり、あそこまで火種が飛び火して拡大するなんて予想していなかったとか……悪い意味で様々な問題が重なりすぎていた」

 

 当時起こった悲劇から連鎖した不幸な出来事。責めていた側の大多数の人間たちは、それが正しいと信じて流されてしまった故に過激な行動に出るケースがそれなりにあったのもまたたちが悪い。悪意なき悪意、暴走する正義がどれだけの危険があるのかという事を、今を生きる人たちに対して知らしめるキッカケであるのも皮肉というかなんというか。

 ふと奏は、さっき話した研究室での一件と、二課の司令である彼からバッシングに関する話を思い返してみた。そしてどちらもインターネットが関連している点に気づき、それを確かめるためにランスロットに聞いてみた。

 

「そういえば、そん時あった警察に匿名でバッシングの届け出やらネットにバッシングしてた連中の映像やらなんやらがばら撒かれたりとかがあった所為で大炎上して、そいつがきっかけで生存者たちへの支援団体が立ち上がったり対策改善が更に高まったって旦那たちから聞いたんだが、もしかしてそれも……」

 

「ま、さすがにさっき研究室の話をしたから気づくかもとは薄々思っていたよ。ご明察! と言いたいけど、厳密には僕の仲間がやってくれたんだ。まぁ、その件に関しては僕のわがままみたいなものだ」

 

「わがまま?」

 

 大勢の生存者たちを助けるために動いていたことをわがままだと表現してきた彼にに奏は疑問を抱き、それに気づいたランスロットはそのことについても話し始める。

 

「2年前、僕が自分の事をどう名乗っていたか覚えてる?」

 

「んなもん覚えるにきまってんじゃねえか。ノイズと人知を超えた者たちから戦えない人たちを守る正義の味方かな、だろ。あんなん忘れるわけないだろ」

 

 忘れてはいないとは思っていたが、まさか一言一句間違えずにそのまま言ってきた事に少しむず痒い気分ではあったが、すぐに意識を切り替えて本題へと入る。

 

「そう。あくまで僕は……いや、僕らはノイズと聖遺物に纏わる問題に対する専門家と言えばいいかな。それ以外では不必要に世間に大きく関わる案件には極力踏み込まないスタンスをとってるんだ」

 

「なんでそんなことしてんだよ。お前ら別に悪いことコソコソやってるわけじゃねえだろ。少し聞いただけのアタシが言える立場じゃねえとは思うけどさ、アタシやあの子だけじゃなくて生存者の人たちを助けるために必死こいて動いてくれたんだろ。ウチの司令から聞いた話じゃ、バッシング受けてた生存者たちに起こった石投げやいじめとかの過激な行動が事前に防がれまくってたり、誰かに対処されてた痕跡があったってな。それ、おまえがやってたんだろ? ノイズ相手にあんな大立ち回りできんならバッシングしてきた連中が何かやらかす前に対処するなんて余裕じゃねえのか?」

 

 またもや奏から飛んできた指摘にランスロットは顔を歪め、頭を抱えて唸り始めた。数分たった後、大きくため息を吐いてから彼女へと返答した。

 

「君、ホント鋭いね……その通りだ。あの大炎上が起こる前から落ち着くまでの間は僕が彼らの警護とフォローに回ってたんだ。この件に関わるきっかけを作った身としてはそのくらいはしないと、ってね。まあ結果は少しどころかかなり世間を騒がせてしまったのは予想外ではあったけどね……正直やりすぎたよ」

 

 とランスロットはそこで話を一旦区切り、どう話せば良いのやらと悩んでいるその時だった。

 

 ピーッ! ピーッ! ピーッ! ピーッ! 

 

 ランスロットの黒コートについてるポケットから何かのアラームがけたたましく発信されていた。ポケット内を探り、取り出したのは携帯端末。

 

「ちょっと失礼。こちらランスロット、どうしたんだ?」

 

 奏に断りを入れたから通信に応じ、聞こえてきたのは長い付き合いである管制・通信担当の少女──フェアリーの声であった。

 

『慰霊の最中すいません、フェアリーからランスロットへ緊急通達! 日本にてノイズの出現反応を多数検知しました! 至急対処をお願いします!』

 

「大丈夫だ、既に彼らへの祈りは済んでる。すぐに向かうから位置情報の送信を頼む」

 

『わかりました! 気をつけてくださいね……』

 

「もちろん」

 

 通信を切ってすぐに端末の画面を見て位置を確認すると、反応があった場所同士、そう遠くない距離で展開されているのと、今自分がいる場所からならすぐに駆けつけられる場所であった。

 

「すまない、急用が出来た。話の途中ですまないけど……」

 

「構わねえって。ノイズだろ? この距離なら通信は聞こえるっての。偶然とはいえ話ができてよかったよ。ありがとな」

 

「こちらこそ、君と話ができてよかったよ。とはいえ、話がまだ途中だったけどね……お詫びといってはなんだけど、これを」

 

 と、ランスロットはポケットから小さな紙切れを奏へと渡す。そこには走り書きで電話番号らしき数字があった。

 

「こいつは?」

 

「僕の連絡先。と言っても足をつかれないために複数ある内の一つだから、この番号に出られるのは一回だけって注意点があるけどね。どうするかは君に任せるよ、それじゃあ。もし次会う時があるなら、戦場以外の場所で、ね」

 

 と、言うべきことは伝え終わったランスロットは奏から背を向け、空を見上げながら戦いに行くためのコードを言い放つ。

 

「アクセス!」

 

 その瞬間、黒コートを着ていたランスロットは光に包まれ、晴れた時にはもう青い鎧とバイザーが装着されていた。

 その光景に驚いている奏に気づかないまま、地面を強く蹴って空へと飛び、そのまま彼方まで行きかねないスピードでその場から去っていった。

 

 それを最後まで見ていた奏は、貰った紙切れをポケットにしまって二課の者が待ってる車のところまで走っていく。

 

「アタシも、リハビリさっさと済ませてステージに戻らねえとな! いつまでも翼1人に任せるわけにはいかねえし、あの騎士様に助けられっぱなしは性に合わねえしな!」

 

(それに、話の続きは電話越しじゃなくて直接だっての)

 

 と、まだ激しい動きはダメだと言われていたのを忘れていた奏は二課の者にこっぴどく叱られながら、それでいてどこかスッキリした顔であった。

 

 

 

 

 帰っている最中、二課から来た連絡を聞くまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(また、日本……ここ数日のノイズ出現率があまりにも高すぎる)

 

 すぐさま現場の一つに到着して、一気にノイズの群れを殲滅しながらランスロットは思考する。本来ノイズは人が一生のうち、東京都民が一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回るとされている程の低さである筈が、ここ最近はほとんど同じ場所でノイズが大量発生していた。

 これまで日本だけではなく、世界中を飛び回りながらノイズたちを倒してきたランスロットからすれば異常であった。

 

(どう考えても何かが裏で糸を引いている……人の身で呼び出したり操るなんて話は聞いたことがない。なら、聖遺物を使ってノイズを?)

 

 考えている内に周囲のノイズは、彼1人によって瞬く間に駆逐されていた。

 

「考えても、仕方がないか……とにかく被害が出る前にさっさと次の場所に行って片付け『フェアリーからランスロットへ緊急通達! ノイズ出現場所からアウフヴァッヘン波形*1が検知されました!』なに!?」

 

 次の場所へ行こうとしたランスロットは、フェアリーからの衝撃的な情報に驚きながらも空へ飛び上がりながら先程の情報の詳細を聞いてゆく。

 

「他にわかっていることはある?」

 

『今調べて……出ました! 以前にも反応が記録されてます! これは……ガングニール! ガングニールです! 恐らく、シンフォギアの可能性が高いです!』

 

「なんだと!? ありえない……!」

 

 ガングニールを使ったシンフォギアを纏っていたのは天羽奏だ。だが彼女は戦場に立つには今の身体の状態を考えれば無謀だ。その上先程慰霊碑で会ったばかりだ。その場から現場へ急行したとしても距離が遠すぎる。

 

「ノイズ殲滅も兼ねてその反応を確かめに行く! フェアリーはそのまま観測とサポートを」

 

『わかりました!』

 

 と、すぐに方針を決めてながら飛ぶスピードをさらに早めて現場である海沿いに作られた工業区画へと辿り着き、そこで見たのは……

 

「なっ……!」

 

 何かの施設の屋上に2人の人間がいた。ガングニールを纏っている装者と、その女の子に抱えられている幼き少女。装者の顔を見た瞬間、ランスロットは驚愕した。

 

「なんで、君がそれを……っ! まずい!」

 

 

 

 

 

(なん、なの、これ。わたし、どうなっちゃったの?)

 

 ガングニールを纏った装者──立花 響は困惑していた。

 少し前までは新作CDを買いに学院からお店まで走っていたのに、ノイズ出現によりシェルターに向かおうしていた時にノイズの手にかけられそうになっていた幼い少女を助け、逃げ回っているうちにシェルターから遠ざかり、いつのまにか工場地帯に来てしまった。

 何度か転んだり、水路を必死に渡ったりであちこち汚れながらも逃げ切るために走り回っていたが、ついた先は逃げ場のない屋上とノイズの群れ。

 迫り来る死に恐怖してしがみついて来た少女を抱え、最後まで諦めずに生きるために必死に考えた。脳裏に思い浮かんだのは、2年前に聞いたあの歌声、青い光、そして本物のヒーローみたいな小さな騎士。

 彼らに助けてもらった命をこんなところで終わらせたくないし、この少女を死なせたくない。

 

 だから──

 

生きるのを、あきらめないで! 

 

 かつて自分に言ってくれた命の恩人の言葉を少女に、自分自身へ

 

 その時だった。

 

「──―Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 胸に聖詠(うた)が浮かび、それを紡いだ瞬間、胸の古傷から光が溢れ出した。

 同時に胸の鼓動が強く早鐘の様に打ち、心臓を中心に何かが自分の体中へ広がっていく感覚がし、痛みが襲いかかってきた。

 それに耐え抜いたと思えば、自分の姿が2年前助けてくれたあの2人の歌姫と似たような格好になっているのに気づいた。

 

 そして、今に至る。

 

「お姉ちゃん、かっこいい!」

 

 と、戸惑う響を少女が目を輝かながら彼女を見ていた。純粋な眼差しを見て、今自分がなすべきことを思い出す。

 

(よくわからないけど、今確かのは……)

 

 困惑しながらも少女を守るために胸に浮かんでくるものを口から紡ぎ、歌う。

 それは意識せずとも理解し、どんどん形をなして歌として紡がれてゆく。

 

(この子を私が助けなきゃいけないってことだけ!)

 

 あの時の2人みたいに、騎士みたいに、支援団体の人たちみたいに、とはいかなくても、今は自分がこの子を助けなければならない。

 そして気づいたら、少女と手を繋ぎ、歌いながら一緒に屋上から飛び出していた。

 

「あわわわわわわわわ!?」

 

 ほんの少し力を入れて踏み出しただけのつもりが、予想以上の力が入ってしまった。既に自分も少女も落ちていっている。咄嗟に足を地面に向け、そのまま着地してゆく。だが、かなりの高さと力が入ったことによりコンクリートで作られだ地面に大きくヒビが割れて土煙が舞ってきたことにより少しむせてしまった。その隙を逃さないと言わんばかりに屋上にいたノイズは大雨の如く降り注いできた。

 それに気づいた響は横へ転がって回避。だがまたしても勢いが強すぎてゴムボールみたいにバウンドしながら距離を離していく。地面に少女が当たらないように気をつけながらノイズが落ちた方へ視線を向けると、ノイズの着弾によってさらに立ち込めた土煙の中からノイズは、己が形状を変化させながら勢いよく体を伸ばして2人に迫ってくる。

 思わず咄嗟に腕でそれを払ってしまった響。本来なら触れただけで炭化して終わる結果が、腕に命中したノイズの方が炭化した。

 

(もしかして、倒した? ノイズを? 私が?)

 

 信じられないものを目の当たりにした響は、オレンジ色のラインが入った自身の白い装甲に覆われた腕を思わず見つめてしまう。

 気を取られている瞬間を狙ったのか、今度は群れをなしてノイズが襲いかかる。

 一体だけならまだしも、複数で一斉に狙ってくるノイズたちへ対処ができるわけがない。自分だけならこのよくわからない力でどうにかなるかもしれないが、抱えている少女にはノイズから守ってくれるものは何もない。

 とにかくその場から離れようとした瞬間、屋上よりもさらに高い所から飛来して来た高速の青い光に掻っ攫われた。

 

「え? え? え? えぇ!?」

 

 気がついたら先程までいた場所ではなく、少し開けた高台にいつのまにか移動している上に、少女を抱えたまま誰かにお姫様抱っこされていた。

 一体誰がと、恥ずかしさで赤らめた顔を少し横へ向けた方にいたのは──青いバイザーと鎧をつけた白髪の騎士。

 

「──え?」

 

 助けてくれた人物を見て、さっきまでの恥じらいが嘘みたいに消え去り、思考が驚愕に包まれた事によって自分が地面に降ろされていくのに気づかなかった。

 

「その子と一緒にここから動かないで。大丈夫、すぐに終わらせてくるから」

 

 2人を助けた騎士は高台から飛び降りて、躊躇いなくノイズの群れに飛び込んだ。

 

「殲滅する」

 

 この瞬間、襲う立ち位置であったノイズたちは、襲われる側へと切り替わった。

 

 

 

 

 

 2年前と重なった。

 そうだ、あの時もすぐに終わらせるといい、数分も経たぬ間に有言実行を果たした。今もそうだ。あれだけ山ができるくらいの量のノイズたちに躊躇いなく飛び込んで、拳や蹴りで吹き飛ばし、両腕についてある剣の鞘から溢れた蒼き光が刃となってスパスパッと包丁で野菜を切るかのようにノイズを切断していく。

 さっきまでの脅威が幻だったかのように、ノイズはたった1人の騎士によって蹂躙されていた。

 さっきまでの緊迫感が薄れたのと、必死に走っていて足が限界を迎えたのもあったが故にそれを高台で地面にペタリと座り込みながら見ていた。

 

「すごーい! あの小さくてかっこいい青色の騎士さん、あんなにたくさんいたノイズをどんどん倒してる! まるでテレビで見たヒーローみたい!」

 

「うん、そうだね……本当に、凄いね……」

 

 抱えていた少女は、先程自分に向けていたように目を輝かせながら騎士を指を差して言い、響はそれを肯定するように呟いた。

 

 あの日からずっと胸の奥に刻まれたもの。夢に何度も出てきた命の恩人にして憧れの存在。

 黄昏の空から舞い降りた青い光。

 空よりも青く、綺麗な湖面を思い浮かばせるような美しさ。

 小さい背丈でありながらも頼もしい背中。

 あの日から何もかもが変わっていなかった。

 

 見ていて胸が熱くなる。痛みなく鼓動が高鳴る。気づけば顔も赤く再熱し始めているような気がした。こんなにも彼から目が離せなくなっている自分に少し驚いている。いつかの時と同じ思いが彼女の内に蘇る。

 

 ああ、まるで──

 

「本物の、ヒーローみたい……」

 

 今度はソレを言葉にする。同時に、最後の一体を鞘から抜剣した淡く蒼き光を纏った剣で切り裂いた。

 切り裂かれたノイズだった炭と、剣から溢れた青光が辺りにキラキラと舞っているところまで、本当に2年前と同じだった。

 

 全てのノイズを倒しきったのを確認した騎士は響たちの方に戻ってくる。

 響は座り込んだまま、騎士を、ランスロットに視線を向ける。

 対するランスロットは響を見て、バイザーの裏で顔を歪ませていた。

 

 

 この日、覚醒してしまった少女は騎士との再会を果たした。/騎士は戦場で少女と望まぬ再会を果たした。

 

 

 

 これは彼の長い旅路の途中にあった、宝石のように煌めく大事な記憶のカケラの一つ。

 

 彼女たちと紡ぐ物語の始まりであり、ほんの一部。

 

 

 

 

 

 

*1
聖遺物又はそのかけらが起動した際に発せられるエネルギー波形。それはランスロットからも波形が確認されているが、それが何の聖遺物なのかは現状二課では不明として扱われている




ミニしないフォギア お試し版

奏「そういや、慰霊碑で会った時に聞いてなかったんだけどさ」
ランスロ「うん?なんだい」
奏「あの時のお前の背丈、あたしと同じぐらいだったよな?本当なら、こう……」
ランスロ「素直に小さいって言っていいよ。事実だしね。実は特製の厚底ブーツをつけてたからだよ。普段のなりだと夜はもちろん、平日の昼間1人で歩いたりしてる時、お巡りさんに何度も1人で何をしてるんだいとか親とはぐれたのかって声かけられてね……小学生か、よくて中学生扱いされてたから……」
奏「おまえ、苦労してたんだな……」



次回は二課から見たランスロットの説明と戦闘かな……バリバリ動かしたいんよなあ……メリ子のモーション何度も見直したんや……

今回は
2年後(原作一期)突入
ライブ会場での被害者を祀る慰霊碑設立
奏のぼろぼろになった身体の治療
ランスロットと奏
響覚醒とランスロットとの再会

あれだけのことありましたし、ノイズ災害に対する見方や対応が変わる一件でもあったから慰霊碑ありかなーって感じから始まりました。正直こんなに文量増えるとは思わなかった……あとはキャラの口調だな……
あとはちょいとワイルドアームズからネタを少しずつ仕入れたいかなーと試しも兼ねて。とはいえ今回はそんなありませんがね。大分記憶薄れてるし、プレイ途中なのもあるしなぁ……

お気に入り登録してくれる方、感想を送ってくれた方が結構いたので気合い入れて書きましたよ!内容はまあ、俺は俺の思いを貫く!うおおお!みたいに勢いなんでまあ(汗) 励みになったし感想内容は笑ったり、ああ、そういうのアリだなと思わせるものがチラホラと。

プリミティブドラゴンみたいな風に動かすのは真面目にやってみたいですね……最終回のプリミティブ浮遊からの変身大好き。あの少年9歳で2m以上の高さでワイヤーに吊られながら満面の笑顔を我々視聴者に見せてくれたとのこと。ほんと良く頑張ったし、ありがとう……初期フォーム3人同時変身やらライドブック無双からのグランドフィナーレはほんまよかた……(筋肉ムキムキの妖精じゃないピーターファンタジスタには驚きましたがww)色々言いたいことはそれなりにありましたが、まあ、いいでしょう。
なんだかんだ仮面ライダー好きだなーと改めて認識。セイバーに関しては個人的にライダーたちのデザインはストライクでしたし。推しはエモーショナルドラゴン。
今後も登録や感想を送ってくださると嬉しいのでぜひお願いします〜

とはいえ、今日は月姫発売でダウンロード版でプレイ中なんで次回投稿はどうなるか不明ですが()
3時間もロードするなんて、私聞いてない!でもいざ少しプレイしてみたら不満吹き飛び。手のひらドリルでしたわ(笑
fgoもプリヤのイベかなにか来るか?とハンティングクエからなんか要素チラホラと。美遊ちゃん強化来ないかなーと期待。
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