Lostbelt No.EX-異聞統合封土ガイア-地に落ちた林檎   作:飴玉鉛

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第一回目のレート集計中。
感想は一言。草。幸運E組は人気もEランクであったか…。



因縁収束

 

 

 

 

 

 異聞聖杯戦争に召喚されるサーヴァントは、例外なくマスターに協力的だ。

 

 基本的にマスターの世界に属する者として召喚される故に、至って自然な事かもしれない。協力も何もない狂戦士のクラスが除外されているのも大きい。聖杯(ガイア)によって詳細に事情を把握している背景も手伝い、危機意識の強さはマスターを上回っているとすら言える。

 

 真っ当な英霊にとって、未来は宝だ。自身が関与し、織り成された未来に生きる全ての人間が、彼らにとって自らの生きた証なのである。その証が失われようとしているのだ、本気になって護りに掛からない者などいないと言っていいだろう。少なくとも……異聞聖杯戦争に召喚されるサーヴァントの中には、過去一度もいなかった。全員が当事者として死力を尽くしてきたのである。

 モルガン・ル・フェは真っ当な英霊ではない。だが彼女も世界を守るために馳せ参じた。モルガンにとっての全てであるブリテンまでも、世界諸共滅び去るというのなら抗わない訳にはいかない。マスターの草十郎よりも鮮明に、瞭然と大きな危機感を懐き、自身の備える手練手管の限りを尽くして勝利しようと固く誓っている。艱難辛苦の全てを乗り越えようと過去最高に燃えていた。

 

 故にモルガンの独断専行も仕方のない事だった。

 草十郎は魔術知識のない素人で、戦略と戦術にも疎い。彼の采配に任せていたら勝ち目は薄い。

 モルガンがサーヴァントの領分を超え、主導するのも自然な流れである。

 故にモルガンにとって幸運だったのは、草十郎が彼女の価値観からしても好ましい在り方の存在であり、モルガンに全てを任せる事に抵抗感を抱かなかった事だ。

 おかげで――全力を発揮できる。魔術でも、陰謀でも、戦争でも、だ。

 

(――ソージューローには申し訳ないけれど。代わりに貴方に勝利を捧げ、私の夫として迎え入れてあげるのだから……許して頂戴ね?)

 

 艶然と魔女が微笑む。危険な橋を渡ることにはなるが、危険も犯さずして得た配当に旨味は少なく、安全策で出し抜けるほど生易しい敵ばかりではないだろう。

 そう考える故に、モルガンは草十郎へ()()()()を吐いていた。

 隠し事はある、しかし嘘は一つしか吐いていない。それもこれも、全て勝つ為だった。

 眠るマスターの髪を梳きながら、彼女を知る者が見ると信じられない思いに駆られるだろうほど、魔女は穏やかな貌をしている。それはひどく優しげで、慈悲深く、淫蕩さや残忍さ、野心家な面のない乙女のような貌であった。

 彼女は支配を望んでいる。ブリテンの玉座を求めている。逆らう者は嫌い、騎士王に仕え賛美する者は憎んでいた。だからこそモルガンは魔女と謗られて――魔女であるからこそ、自身へ純粋な信頼と感謝を向けてくれる存在には、とんと弱かった。

 

 草十郎は自身の分際を弁えている。だからかモルガンを頼り、信じて、力になってくれるモルガンに感謝をしていた。野生児ゆえの純粋さで、だ。――悔しいが、ガイアの見る目は確かだった。この少年ほど己と相性の良いマスターは存在しないだろう。

 大事なのは精神性だ。容姿の美醜、嗜好の好悪、能力の高低など見ない。そんなものは至極どうでもいい。ただただ心が綺麗で、嘘を吐かないモノをモルガンは好むのである。

 妖精眼を持つ者の宿業だろう――モルガンは魔女らしからぬほど潔癖で。とある妖精國の女王とは異なり、汎人類史の人類最後のマスターと出会えば、身の丈に合わない重荷を背負って()()()()()()()様を、痛ましくて見てられないと吐き捨て遠ざけるだろう。

 自然のままに生きてきた草十郎だから、このモルガンは好意を覚えた。基本的に人間に対しては辛辣で、大半の者を駒としてしか見ない魔女が、庇護すべき存在だと見做すほどに。

 

(――戦いが始まったみたいね)

 

 新都の何処かで二騎のサーヴァントが接触している。

 サーヴァント同士が出会ったのなら、戦いは避けられまい。

 戦闘が発生した()()()()()()()()()()、モルガンはちらりと室内にある鏡を一瞥した。するとそこに、槍兵と剣士のサーヴァントの姿が映し出される。

 自身の領域で知覚したものの座標を元に、その座標付近の情景を複製し映像として出力したのだ。草十郎が眠っている内に、手慰みにただの鏡を魔術品へ加工した物である。

 遠見の水晶の類似品にして、高性能版だ。道具作成のスキルをEXランクで保有する魔女モルガンなら、この程度の物は容易く製造できる。神域の天才魔術師の力量の一端が示されていた。

 

 戦闘の様子を眺め、彼女は形の良い眉を顰める。

 

(……この朱槍、権能クラスの呪詛を帯びている……? 加えて獣のような敏捷性と、身に着けているルーン石の肩当て……ケルトの戦士ね。この霊格の高さはケルトでも最高位に近い……いえ、最上位そのもの。オークニーのルーの砦から感じる神性に似ている……なるほど。この槍兵はクー・フーリン。なら神代の魔術師としても高位の力を持っているはず。なのに……)

 

 自らの生前、拠点にしていたオークニーにて、ルーの砦と称される場所に魔女は居た。当時の夫であるロット王が、ルーの砦の主人だった事もあり、太陽と光の神の神性(ケハイ)も知っていたのだ。

 槍兵の真名を見ただけで判別できたのはそれが理由である。油断ならない強敵であると魔女は断じた。アイルランドの光の御子は、モルガンと同一視される女神を打ち破った逸話の持ち主だ。明確な弱点など持たないモルガンにとって、唯一の天敵であると言えよう。

 この槍兵とだけは交戦を避けねばなるまい。()()()()()()()。負けるのはいいが、恐らく負けたらそのまま死ぬだろう。危険な相手だった。だが……それよりも気になる点がある。

 

(光の御子は原初のルーンの使い手。影の国の女王の一番弟子なのだから、当然ルーン魔術も教わっているはず。なのに私の領域に気づけていないという事は……最初から意識して注視しないと気づけない出来栄えという事ね。それは重畳なのだけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なのにはっきりとした座標を掴めないという事は、もう一騎はアサシンかしら?)

 

 高ランクの気配遮断スキルを保有するサーヴァントまでは、流石に居るのは分かっても居場所の特定はできない。問題として認識するべきなのは、アサシンのサーヴァントの近くに()()()()()()()()という事だ。つまり、アサシンは依り代の近くにいない。敵マスターはアサシンを単独で動かしている。……単独行動のスキルでも保有しているのか?

 剣士のサーヴァントも近くにマスターがいないが、こちらは令呪によるバックアップがある。こんな序盤も序盤で令呪を切るとは、大胆不敵なマスターもいたものだが……。

 

(情報がほしい。策の確度を上げるには、もう少し出揃った駒を整理しないと……)

 

 瞑目し、考えを纏める。

 

(早い段階で他陣営の様子見を終わらせる。その為の舞台をセッティングしてあげましょう。アサシンは論外としても、ランサー、セイバー、アーチャーの三騎士、そこにライダーは加えたいわ。無いとは思うけど、できれば――には出て来てほしくないわね……)

 

 やることは決まった。魔女は草十郎に魔術を掛ける。今少し眠っていてもらおう。

 令呪も封印しておいた。これで令呪の気配も一時的に消え、例え近くに敵が来ても令呪の存在を気取られる事はない。あくまで一時の間だけとはいえ、安心していいだろう。

 モルガンは己のマスターの寝顔を見下ろし、目を細める。

 

(ライダーを探し出し、誘いを掛けなくては。……私からの招待、喜んでくれるといいのだけど……フフフ。待っていて、ソージューロー。すぐに戻るわ)

 

 霊脈から直接魔力を引っ張ってきているモルガンもまた、単独行動スキルを有したサーヴァント同様に、依り代から離れて行動が出来る。――マスターが死亡した場合は自身の消滅は避けられないにしろ、実質的にフリーハンドを手にしているモルガンが出陣する。

 

 霊体化した魔女の足取りは、散歩にでも出掛けるかのように気軽なものだった。

 

 目指すは、ランサーとセイバーの決着に水を差した少年の許。あの少年からは、()()()()()()()()()()()()()()()()。数奇な運命だ……幸運である。運が向いている内に回収してしまおう。

 細かく分解され、体内に隠されている故に、本来の担い手である騎士王ですら直接触れない限り気づけないだろう。だがモルガンは違う。彼女には見ただけで識別が叶った。

 

 ()()()()は、いい魔術触媒になる。望外の拾い物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

「こん……っの、バカ士郎――!!」

(ごふ)ッ!? な……何、すんだ……()()!」

 

 慌てて駆けつけた赤い少女が、ランサーとバゼットに詰め寄る少年の脇腹に拳を叩き込んだ。

 八極拳を修めた少女の一撃である。

 不意打ち気味に炸裂したそれに士郎は地面へと崩れ落ち、悶絶して横腹を抑えた。涙目になって蛮行の下手人を睨みつける士郎だったが、彼女のすぐ傍に間桐桜の姿があるのを見つけて瞠目する。

 

「せ、先輩、大丈夫ですか……?」

 

 桜。間桐桜。士郎にとって、藤村大河という姉貴分と並ぶ日常の象徴。そんな桜がなぜこんな所に? 士郎は混乱した。凛が来てくれたのは良い、だが桜が共にいる理由が全く分からない。

 状況は急転している。士郎の混乱を解いている余裕は凛にはなかった。

 

「さ……桜? な、なんで桜が……」

「衛宮くんは黙ってなさい! あぁもぅ、なんだってこんな……!」

 

 頭を抱えそうになりながらも、遠坂凛は自身の連絡ミスを嘆きながら場の収拾をつける為に頭を回した。ひとまず凛はランサーとバゼットに向き直り、魔術師としての顔を取り繕うと、()()()()()()()()()のフリをして言うことにする。今はそれが最善のはずだ。

 

「――貴方達、こんな真っ昼間に何を考えているのかしら? この地のセカンド・オーナーとして厳重に抗議させて貰うわよ。責任を容赦なく追及するからそのつもりでいて。いいわね、バゼット!」

「……行きますよ、ランサー」

 

 果たしてバゼットは苦虫を噛み潰した顔をする。部外者――現地人をどうこうする訳にはいかないのである。へいへい、と気の抜けた様子で槍兵が応じるのを横目に、バゼットは折角の好機を無にされた憤りを押し殺しながら、見知らぬ少女達に対して背を向けた。

 呼び止められても無視する。関わるだけ損しかない。バゼットはランサーを伴ってその場を後にし――凛は安堵の溜め息を吐いた。いくら相手が自分達を害せないとは知っていても、その相手がサーヴァントと封印指定執行者だ。怖いものは怖いのである。

 

 士郎はなぜ凛がバゼット達を見逃したのか納得できていなかったが、桜の手前なにをどう言えばいいのか分からず、ただ視線に不満の色を乗せることしかできずにいた。

 しかしそんな士郎を尻目に、桜は気後れしつつも行動する。――兄が頼ってくれたのだ。事情を話してくれて、除け者にはせず、頼ってくれた……。凛が連絡ミスを犯した事を知り、だが自分が表に出るわけにもいかないから、士郎を探すために駆り出されただけと知っていても嬉しかったのである。今は言われた通り、士郎を慎二の所に連れて行く。その為にしないといけない事を桜は弁えていた。それは冬木のセカンド・オーナーである凛のフォローである。

 

「……今のは映画の撮影です! 皆さん、お騒がせしてすみませんでした!」

「え? ……そ、そう! 映画! 映画の撮影なの!」

 

 凛は多くの一般人の目に触れてしまい、どうしたものか必死に知恵を絞っていたが、その横で声を張り上げ周りに頭を下げた桜に目を白黒させる。だが今はそう誤魔化すしかないと悟り便乗した。

 人の数が多すぎる。幾らなんでも暗示を掛けて回れはしない。凛は神秘の秘匿に関する重大な責任問題に、その端正な顔を青褪めさせていた。

 置いてけぼりにされたのは士郎だ。何がなんだか分からない。凛だけならまだしも、その凛が桜と一緒になってここに来た意味も分からなかった。自分を探していたのか? なぜ?

 多くの目撃者達も戸惑っているようだった。無理矢理に納得しようにも、映画の撮影だというならカメラがないとおかしい。なのに彼らの周辺にそれらしいものはなかったのである。

 

 却って悪目立ちしている。凛と桜の頬に汗が浮かんだ。アイコンタクトを交わす――もう逃げるしかない。その意思は確かに疎通されて、

 

「あら。映画の撮影だったのね? それなら(みな)も納得し、さっさと散りなさい。目障りです」

 

 息をするように行使された魔術の気配に、凛はぎくりと身を強張らせた。

 一般人達は目を虚ろにさせ、まるでたった今の超人的な戦闘を忘れたように立ち去っていく。

 数十、あるいは百人を超える人間が一斉に、である。

 異様な光景だ。凛は恐る恐る背後を振り返る。するとそこには、現代風の衣装を纏った傾城の美女がいた。どこか――自分達の知る剣士の少女に似た風貌の美女だ。

 

「あ、あんた……」

 

 人の身には有り得ない高密度の神秘の気配。人ならざるモノ。

 桜の顔に怯えが走る。凛は悟った。サーヴァントだ――恐らくは魔術師の。

 美女は酷薄な一瞥を凛達に向け、煩わしそうにポニーテールの形に結っている髪を払った。

 

「退きなさい。おまえに用はない」

「ぅ……」

 

 木っ端を見るような目で、さらりと掛けられた暗示。それに、凛はなんとか対抗した。

 魔術回路をフルに回し、極めて高度な魔術を必死にレジストする。

 そして凛は、キャスターのサーヴァントと思しき女を睨んだ。

 

「ど……退けと言われて、退くと思ってるの? いったい私達になんの用なのか話して貰うわ、キャスター……!」

「? ……ああ、もしかしてこの地の管理者でしたか? 私をキャスターと呼んだという事は聖杯戦争に関する知識もある、と。そこそこ見所のある魔術師のようね」

 

 うっかり口を滑らせた凛を指して、()()()()と称する。自身の暗示に抗った事を褒めているようではあったが、明白に見下してもいた。

 無理もない、所詮現代の魔術師、神代の魔女から見ると遥かに格下である。

 屈辱を感じながらも、凛は毅然と背を伸ばす。背後に桜と士郎を庇いながら魔女を睨んだ。

 掛けられた暗示の感覚からして、この女があの裏切りの魔女メディアにも劣らないと直感している。しかしメディアには通じた凛の奇襲、八極拳による格闘は通用しないとも感じていた。

 なまじ格闘の腕を磨いているから分かるのだ。――騎士王ほどではないが、この魔女は白兵戦でも強い。メディア並の魔術師でありながら、白兵戦にも精通しているだなんて反則だ。

 

 冷や汗を隠せない凛に、魔女モルガンは冷笑を浴びせる。

 

「安心なさい、私におまえ達をどうこうする気はない。そこの人間が隠し持っている、()()()を返して貰いに来ただけよ」

「……衛宮くんが隠し持っている?」

「おまえ達には分不相応な宝物ね。持っていても腐らせるだけなら、私の役に立たせた方が賢いでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そう……お断りよ! 行くわよ桜、衛宮くん!」

 

 なんのことを言っているかは知らない。心当たりはあったとしても、確証はないのだ。

 しかし、はいそうですかどうぞ差し出します、とは言えなかった。なんであれ相手は別の歴史からの異邦人、敵対者である。敵に差し出せるものなど何一つとしてありはしない。

 

 桜の手を取り、士郎を急かして走り出す。そんなことをしても逃げられるわけがないのに、だ。

 モルガンはせせら笑う。凛をそこそこと称した。その程度には評価したのだ。――実力の差が分かる程度には賢いはずだと。

 であるのに、あの逃げようはなんだ? まるで()()()()()()()()()()()と知っているかのようではないか。

 

「あまり悩ませないように。楽しくなるでしょう?」

 

 やろうと思えば今すぐ、容易く捕らえられる。だがモルガンは敢えて泳がせてみることにした。

 ()()()()()()()()()の協力者だと看破した故に、泳がせたらその者の許へ案内してもらえると予見したのである。

 

 逃げる三人の少年少女。密かに追うモルガン。

 計算外はどちらにもあった。凛達は拠点から出たキャスターが追ってくるとは思っておらず。モルガンは――既に敵マスターはサーヴァントを召喚しているものだと思っていたのだ。

 自身が追った先で、敵マスターが聖剣の鞘を触媒にサーヴァントを召喚し。一日目にして発生する二回目のサーヴァント戦を、自身が飾ることになるとはモルガンからしても予想外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に誰が勝ちどんな結末を迎えるか決まってますが、それはそれとして読者は誰が勝つと予想しているか知りたい感じです。アンケートという体の人気投票的なものです。感想欄では勘弁な!

  • 衛宮・キリツグ(アサシン組)
  • エミヤ・シロウ(鉄心組)
  • バゼット・ランサー(幸運E組)
  • 慎二・SNオールスター(ライダー組)
  • 元祖山育ち・モルガン陛下
  • 人類最後のマスター
  • 月の王・柳但
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