Lostbelt No.EX-異聞統合封土ガイア-地に落ちた林檎   作:飴玉鉛

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鬼門

 

 

 

 

 

 やっぱりサーヴァントってすごい。ぼくは改めてそう思った。

 

『突然如何なされた』

 

 遠い目をして呟いた声が聞こえたのか、霊体化して一歩後ろに付いて来ているセイバーが怪訝そうに訊ねてくる。それに岸波白野は苦笑いして、「なんでもない」と短く返した。

 白野は留置所から出ていた。ランサーと交戦して撤退したセイバーが迎えに来て、留置所の壁を斬り破り白野を外に出してくれたのだ。……鉄格子ではなく、壁である。そろそろ精神科医が来るか、違法薬物検査をされそうなところだったから助かったが、やはり凄い。『凄い』を連呼すると貧弱なボキャブラリーが露呈してしまいそうだが、とにかく凄いとしか言い様がなかった。

 

 ――何はともあれ、白野は方針を固めた。

 今後この方針が転換される事はない。

 多分。

 きっと。

 恐らく。

 

 制服は流石に目立つので、セイバーに衣料品店から服を掻っ払って来て貰いそれを着ている。適当なジャケットとジーンズという姿だ。人混みに紛れたら埋没してしまうだろう。没個性万歳だ。

 今後雨風を凌ぐのにはラブホを使おうと思っている。金銭に関しても服と同じようにセイバーに調達して貰った。現地の人達には迷惑を掛けて申し訳ないが、こちとら生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。大目に見てくださいよ、戦略的な意味でなんでもしますから!

 一応セイバーが反発しないか心配ではあった。が、戦時の略奪は至極当然の戦術だと言って、特に不満もなさそうだったから気にしない事にしていた。

 留置所での静かな時間は実に有意義だった。落ち着いて心の整理ができた上に、色々と考察する必要があった事柄にも答えを見い出せた。自分一人だけで考えたに過ぎないが、当たらずと雖も遠からぬ答えのはずだと思う。そこに関してはもう疑う余地はないと考えていた。

 

「マスターも落ち着かれたであろう。そろそろ貴殿の真意を明かして貰いたいものですな」

「ああ……ランサーと戦う前に、とにかく目立てって言った事かな」

「然り」

 

 ラブホに一人で入って、コンビニで購入した弁当を食べる。ペットボトルの水を飲んで一息吐くとセイバーが当然の質問をして来た。

 彼は突然の指示にも忠実に従ってくれたが、疑問には思っていたのだろう。無二の相方と認識をすり合わせ、今後の立ち回りを検討する為にも元々話すつもりでいた。白野は空になった弁当箱をビニール袋に詰めてその口を縛り、ベッドに腰掛けたまま虚空を見る。

 視線はセイバーに向けない。目と目を合わせて話すには、ちょっとセイバーさんの目力が強すぎて腰が引ける。おじいちゃん怖いよ、とはなかなか言いづらいものがあった。

 冗談とか通じるのだろうか、この武士様は。怖いもの見たさでジョークを口にしてもいいが、流石にそんな悪ふざけをしていい空気でもない。白野は真面目腐って言葉を選んだ。

 

「特に深い意味はないさ。アレはね、アサシンやキャスター辺りなら情報を重視するだろうし、多分だけど弓兵あたりも含めて見ていたはずだから、あわよくば誰かにセイバーを尾行して貰って、俺の居場所を突き止めてくれないかなと思っただけなんだ」

「……ふむ。意図が読めませんな。それはどのような腹積もりで?」

「アサシンは論外。アーチャーは怖い。その二つは無しとしても、キャスター辺りとは是非とも接触したいと思ってる。結論から言うと、よその陣営と同盟を組みたいんだ、俺は」

「――無礼を承知で申し上げるが、正気ですかな?」

 

 実体化したセイバーは立ったまま、胡乱な目で己がマスターを見た。

 しかし白野はそちらを見ない。自身の考えを出す為に、己を見つめ直している。

 セイバーが辛辣に反駁した理由は分かる。どうあれ勝者は一組だけなのだ。であれば生き残るのも一組だけであり、他陣営は全て例外なく敵である。生きるか死ぬかの二者択一なのだ、同盟の余地はないと見做してしまう気持ちは理解できた。――だがそれは、あくまでこの異聞聖杯戦争の定石、常識の類い。白野はそこに囚われていなかった。

 

 故に、白野は言う。

 

「正気だよ。これも先に言っておくけど、セイバーにはもしかしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「――――」

 

 正気じゃない。それは狂気の沙汰だ。意味が分からない。謀略家であり、剣の天才たる剣聖であり、先見の明に長けた柳生宗矩をして岸波白野という主君の考えがまるで理解できなかった。

 だがセイバーは、今生での己の主君が、いたって真剣に、正気のまま、理性と智略、戦略を以て話していると感じている。――セイバーは悟った。もしや己がマスターは彼の竹中半兵衛、あるいは毛利元就にも比肩するか――或いは両雄すらも超える策謀家やも知れぬ、と。

 えもいえぬ凄みが白野にはあるのだ。平和な時代の日本人には有り得ない、戦国の世の古豪に似通った肝の太さがある。セイバーは己の鑑定眼を信じて、ひとまず話を聞く事にした。

 

 セイバーは我知らず、笑みを浮かべていたのだ。とんでもないマスターに召喚されたのだという予感が、彼ほどの剣聖をして昂りを覚えさせている。

 

「最初、俺は勝つための作戦を考えた。――で、冬木から逃げようかなと思った。そうすれば事の重大さを理解して真面目に戦う連中ほど、出て来ない奴は穴熊を決め込んでると判断するだろうからね。そうすれば安全地帯で最後まで生き残れる。いわゆる戦略的撤退という奴だ。幸いセイバーは俺でも魔力供給できる程度には燃費がいい、それをしたらまず終盤までは生き残れるだろう」

 

 ――それは。意図せずしてとあるマスターの戦術を取り沙汰した言葉だ。

 だが白野は辛辣に断じる。

 

「――だけどそれだと駄目だ。仮にそんな事をした奴がいたとしても、俺でも対処する策がザッと三通りは思いつく。いや策すらいらない。その戦術だと致命的に詰むからな。手に入れられるのはシード権だけだし、それだけだと他の利点を捨てた事への損益が釣り合わない。セイバーは何故か分かるか?」

「愚問ですな。此度の聖杯戦争、仮に冬木からの撤退が他の者の発想になかったにしても、既にマスターの策により戦略的撤退は無意味となっております。――市街であのように目立つ戦闘をした。これだけで潰せたと言っても過言ではありますまい」

「うん。俺がセイバーに目立たせた以上、他の陣営に目立つつもりがなかったとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()。現地で騒ぎになるのは目に見えてしまったんだから、他の陣営も堂々と、それもなるべく早期に決着を付けようとするだろう。なにせ――」

「現地の者らが……魔術師共が神秘の漏洩を抑える為に出張って来ますな」

「そう。終盤まで穴熊を決め込んでも、出てきた頃には街中は攻撃できない現地の魔術師で溢れ返ってる。そうなると早い段階で対処してる他の陣営の方が有利になるはずだ。冬木から出ないとアサシンやキャスターの索敵から逃れられないだろうから、シード権を得ようとする奴なら冬木から出ているはずで、そうなると戦場の状況を何も知る事ができないだろうね」

「冬木から逃れているのが、そのアサシンやキャスターである可能性は?」

「それこそ愚問だ。戦闘力に劣るアサシンのクラスが、他のサーヴァントを倒せる可能性は低い。最後に残って一騎打ちをしても勝率が低いなら、冬木から出るなんて選択肢は有り得ない。敵と敵をぶつけての漁夫の利を狙うのがアサシンにとってのベストだ。キャスターにしたって同じ事だよ。最後までキャスターが逃げ隠れしていたら、即席の場当たり戦法で他のサーヴァントと戦わないといけなくなる。そんな事は避けたいだろう? だから俺はセイバーを目立たせたんだ。戦略的撤退をするような奴がいたとして、計算し辛いソイツの勝率を零にする為に。そしてキャスターあたりに俺を見つけてもらう為に」

 

 なるほど、とセイバーは頷く。頷いてはみたが、実のところそこまでは読めていた。白野の言う策なら確かにイレギュラーは潰せる。自身の盤面を外から俯瞰して、されたら嫌な事から潰したのは理解できる話だ。だがキャスターに見つけてもらう? 自分には最悪自害してもらうだと? 明確な論拠があるなら一考の価値はあるだろうが……果たして納得させてもらえるのだろうか?

 

 白野が水で口を潤す。

 

「……話は変わるけど、セイバーは聖杯戦争の運営は信頼できると思う?」

 

 セイバーは首肯した。

 

「無論。星の意思なるモノ、尋常ならざる力の持ち主でありますれば、此度の儀にて一切の虚飾は介在しておりますまい。星の意思は強大故に、我らが如き塵芥を謀る理由がないのです。故に星の意思は誠実であり、その言葉は十割信頼できるかと」

「……そっか。なら、やっぱり決まってるな。一から説明するよ。セイバーに納得してもらえないと、俺には何もできないからね」

「お頼み申す」

 

 白野は腹を割る。元々隠すつもりもない。その意味がない。即席の主従なのだ、言葉なくして認識を共有することはできなかった。信頼関係を構築するには時間が足りなさ過ぎる。

 仲を深めるよりも、考えて動かないと、いざという時に詰むのだ。合理的にいくしかない。特に自身が貧弱である白野は。

 

「おかしいと思わないか? なんで異聞聖杯戦争が開催されるまで、俺達マスターに異聞聖杯戦争に関する知識がなかったのか。……まあ俺にはそもそもの記憶がないんだけど、素人には暗示を掛けて意識を聖杯戦争に向けさせるってやり口を見るに、俺含めて全員に事前知識はないはずだ。普通、世界の命運を賭けた戦いがあるなら周知徹底して、対策を講じる為にも各々の世界で相応の教育がされていてしかるべきだろ?」

「それはそうですな。恐らく他のマスターも疑問には思っておるでしょう」

「うん。そして多分全員が遅かれ早かれ気づく。――最初の異聞聖杯戦争に勝利した奴の願いが関係してるんじゃないかって。そうなると想像できる願いは二つだ。『異聞聖杯戦争の開催地を自分の世界にする事』と『参加した全ての生存者と、関係した人間全てから、異聞聖杯戦争に纏わる記憶を消す事』だろう。もちろん自分の世界の人間に関しては対象外にして。そうしたら、後は自分の世界の人間だけが情報という大きなアドバンテージを得られるからね」

 

 聖杯が叶える願いは、何も一つだけと限定されているわけではないのだ。恐らく聖杯に焚べられたサーヴァントの魂の分、獲得したリソース分だけ願いを叶えられる。

 となるとカルナやヘラクレスのような大英雄が焚べられた聖杯があったとしたら――それは他の聖杯よりも、願いの出力が強くなっている事だろう。それは想像するに容易いことだった。過去の勝者のほとんどが、自身の保身、身内の保身ばかりを願ったという話だが、中には例外もいたと聞く。その例外が現状を招いているとしか思えない。そして、

 

「けど二回目の勝者も同じ事か、もしくは似たような事を願ったんだろう。そのせいで願いが上書きされたのかもしれない。確かサーヴァント一騎の魂は数千人から一万人ぐらいの人の魂に匹敵するんだよな? なら仮に2018回異聞聖杯戦争をしたとしても、そこに参加した全てのマスターや関係者から記憶を消すぐらい簡単なはずだ。……そうした事が何度か繰り返されたら願いが重複して、なんらかのバランスが崩れるなりする。そうなったら流石に運営も手を講じて、参加者の条件を対等にする為に、そうした類いの願いを棄却するようになった可能性が高い。その上で『全マスターと、それに関係した人間の記憶から、異聞聖杯戦争に関する記憶・記録は消去する』という状態がデフォルトになったのかも、だ」

 

 仮に初回の異聞聖杯戦争を勝ち残った者が、元の世界で危機を訴えた処で、時代背景的に情報の発信が難しく、情報を広めるのは更に難しかったはずだ。何せ初回の異聞聖杯戦争は西暦元年である。

 仮に神霊の耳に話が届いても、真に受けてくれるかはまた別問題であるし、人と精神構造の違う神霊がまともに取り合うかどうかも不明である。少なくとも今現在の状況から察するに、神霊に話が届く前に『願いの上書き』による記憶の喪失を経て、情報は広まらなかったか……一部の神霊には届いたが人の生存など知ったことかと捨て置かれたのだろう。

 

「真面目に、そうとしか考えられない。……それをルールを開示する時に伏せてるのはちょっとどうかと思うけど、ガイアって奴は最低限度の義理は通してるんじゃないかとは思うね」

「……ゲームバランスの調整という奴ですな」

「そう。運営のガイアは有用なデータって奴がほしい。それが主題で、主目的だ。それに差し障るようなら調整するだろう? もしも俺がデバッガーなら、正規プログラムのクオリティを上げる為に同じことをする。となると俺が考えてる願い、『俺の世界に異聞聖杯戦争とそれに類する情報を周知させ、各国の上層部を一致団結させて真剣に対策を講じさせる』というのは棄却される可能性が高いってことだ。とっても嘆かわしいことにね」

 

 白野は苦笑いを深める。

 もしこの予想が当たっているなら、白野もまた勝利する以外に道はないことになるのだ。

 ここまでは、ちょっと考えたら誰でも辿り着く答えだろう。その上で全員が『それなら仕方ない』と切り替えて、何らかの妥協策を考えているはずだ。もしくは自分のことしか考えていない奴もいるかもしれない。そこから先はもうどうでもいい範囲である。考えるだけ無駄だ。

 

 故に――岸波白野の案は一歩先に踏み込んだものである。

 

「で。ここから先が本題。俺はこの異聞聖杯戦争で、必ずしも勝つ必要はないと思ってる」

「……その心は?」

「――単純計算で七分の一の確率でしか得られない勝者の権利、そこに全賭け(オールイン)なんてのはナンセンスだって話だ。生憎と命懸けの賭け事をするにしても、自分以外の命なんて背負いたくないよ、俺は。そんなわけでキャスターに限らず、利を説いて聞く耳を持つ陣営と組みたい。だからセイバーに目立って貰ったっていう面もある」

 

 利。つまり、計算の話をしている。

 相手の人となりも分からず、まともに話し合いもできそうにない以上、情に訴えかけても効果は期待できない。故に純粋な利益を追求し、同盟を組もうと言うのだ。

 だがどうやって? 生半可な利では、一蹴されておしまいだろう。セイバーは愉快な気持ちになって、マスターとの対話を楽しみながら反駁した。――では、マスター。貴殿の説く利とは? と。

 

「それは――――だ」

「くっ……」

 

 セイバーは大口を上げて呵々大笑した。あんまりにもあんまりで、愉快な発想に、彼は手を打ち鳴らす。そうして彼は決めた、今生の主の命とあらば、この腹、見事に縦へ横へと割ってみせよう、と。

 介錯はもちろん、マスターにしてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

 『錬鉄の英雄』は、揺るがぬ鉄の心のまま策を練っていた。

 セイバー、ランサー、()()()()()の顔は割れた。……ライダーも。セイバー、キャスターのマスターは不明。ランサーのマスターはバゼット。他はアサシン、そしてエクストラクラス。

 最後の座のみ、要警戒だ。戦力的な意味ではなく、未知数故の警戒である。

 

 顔の割れている対ランサー戦を想定した場合、勝ち筋となるのは『如何にしてランサーをマスターから引き剥がすか』に掛かっている。ランサーは恐らく今回最強のサーヴァントだ、幾ら投影での反動がないとはいえ、正面対決で勝てると自惚れてはいない。

 バゼットが一人になれば、サーヴァントとしての力を抜きにしても完封できる。戦闘技術は脅威的だが、それでもエミヤシロウは今のバゼットより数倍強い未来のバゼットを知っているのだ。手札が完全に割れていることもあり、負ける事はほぼない。そこにサーヴァントの力も加算されている今なら、打ち倒すのに十秒もあれば充分だと結論付けられる。

 ランサーが他のサーヴァントと交戦に入った隙に、バゼットに奇襲を仕掛ける。エミヤの切り札は固有結界だ、それを発動せず強力な宝具の投影のみに徹すれば勝てる。理想的な対決のタイミングは、ランサー陣営を中盤辺りで脱落させる事だ。それまでにランサー陣営との対決に邪魔になりそうなライダー、エクストラクラスを始末しておきたい。

 

 ――という案は破棄する。

 

 エミヤは自身に出来る範囲の仕事というものを弁えていた。全陣営を自分だけで倒さないといけないわけではない、ならば無理を押して強敵と戦う必要はないのだ。

 幸いにも敵マスター全員の顔は割れている。

 バゼット、岸波白野、間桐慎二、そして衛宮切嗣。後は名前も知らない少年が二人だ。これだけ分かれば充分である。()()()()()()()()()()、最低で……いや、最高で一人。

 簡単な仕事だった。たった一人を殺すだけで、自分の世界を有利にできるかもしれないだなんて、破格の好条件であるとすら言える。本音を言えば他六つの世界も救いたいが……自分の器を弁えているからこそ諦めた。世界一つですら手に余るというのに、他にまで手を伸ばして自分の世界を取りこぼしたのでは笑うに笑えない。

 

「――投影、開始(トレース・オン)

 

 密やかに呟き、じっくり時間を掛けて刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)を投影する。……剣ではないから負荷は掛かった。が、無視できる範囲だ。問題は自分では使いこなせない事ぐらいだが――問題ない。螺旋剣の贋作同様、改造したらいいだけの話である。

 普段の自分ならコストパフォーマンス的に螺旋剣を使うが、デミ・サーヴァント化して投影の反動がない今の状態なら呪いの朱槍を使う。これを矢の形状に変形させ、槍弾として放つ。真名を設定、偽・死棘の槍(ゲイ・ボルクⅡ)でいいだろう。対人宝具として分類されるこれなら、混戦が予想される今後の戦いでも躊躇なく使用できる。

 何時間も掛けて投影宝具の設定を行い、それを終えたエミヤは投影宝具の魔力をカットし幻想に還した。一度設定さえすれば、後は任意のタイミングで投影し直せばいいだけだった。

 

 エミヤは今、下水道に居た。()()()()()()()()()に位置する所だ。

 彼は世界の異常に敏感である。魔術としての固有結界の使い手だからだろう。故に現状、エミヤだけが気づいていた。()()()()()()殿()()()()()()事に。

 

 故にキャスターと思しき者の領域外に仮初の拠点を見繕った。新都にいればアサシン以外、常に神殿の主に居場所を特定されるだろうと判断したからだ。

 エミヤはそこで、必勝の策を練っている。弓兵のサーヴァントとして、ではない。人間エミヤシロウとして、だ。故に、彼の培った真なる心眼は一つの必勝の策を見い出している。

 

「――令呪を以て、我が肉体に命じる――」

 

 エミヤは条件を満たした瞬間に自動で令呪が発動する仕組みを組んだ。

 

「――重ねて命じる――」

 

 二画。二画もの令呪を、彼は一度に使った。

 敵との交戦の最中ではなく、自身の策を確実に的中させる為に。

 エミヤは運が悪い。彼は自らの不運を自覚していた。だが――エミヤはその生涯に於いて、ただの一度の敗北もせず、ただの一度も敗走していない。常に勝ち続けたのだ。それは何故か。

 単に、運などで左右されない戦上手だったからである。

 冬木の聖杯戦争以後、エミヤの戦場に偶然はない。全て必然しかなかった。

 皮肉な事に、剣の才能は並であっても――理想に反して殺し合い、戦闘を自身が有利に運ぶ才能だけなら、エミヤは英雄と称されるに足る天才だったのである。でなければ、たったの三十代で、鍛錬の末に開眼する心眼スキルを得られはしなかっただろう。本当に凡人だったなら、百年近い生涯を弛まぬ鍛錬に費やしても、エミヤの境地に辿り着けはしないのだから。

 

「………」

 

 今次異聞聖杯戦争中、()()()()()を実行するエミヤは、この戦いでも無敗を貫くだろう。

 彼の戦績に敗北はない。今までも、そしてこれからも。

 例え他の世界を殺し尽くす事になっても――アラヤの守護者は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ガイアくんからのアナウンス。開示可能情報。

・戦略最優、セイバー陣営。
岸波白野の戦略と戦術は王道。実は藤丸立香の天敵。同時に藤丸立香が早期に打珍したら協力してくれて、最大の味方になりえた人。そうなったら勝ち確だった。そうなったら(大事な事だから二度云々)
ホームズがその推理力の全てを、戦略戦術に全振りしたようなものと言えばヤバさは伝わるだろうか。

・戦術最悪、アーチャー陣営。
切嗣を超える錬鉄の英雄クオリティ。戦略、戦術、双方で岸波白野には譲るが、最悪さ、凶悪さで上回っている。
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