Lostbelt No.EX-異聞統合封土ガイア-地に落ちた林檎 作:飴玉鉛
蜘蛛の巣
「――するとキャスターの真名は
笑顔で訊ねる遠坂凛の背後には、隠し切れぬ怒りの炎が燃え上がっていた。
若干引き気味に、ライダーは応じる。
「はい。別の歴史を経ている為か、私の知るモルガンとの差異はあります。ですが、彼女は間違いなく妖姫モルガンです。槍を持っていたのではじめはランサーかとも思いましたが……」
「さっきも言ったけど、ランサーは俺達の知ってる奴だぞ、セイバー……あ、いや……すまん、今はライダーだったな」
「いえ……アイルランドの光の御子ですか。知名度補正のない此度の聖杯戦争でなら、あのヘラクレスと並ぶ霊格を取り戻しているでしょうね。ランサーとして光の御子がいるなら、やはりモルガンがキャスターだと考えるのが妥当でしょう」
ライダーの勘違いを訂正したのは、彼らが今居る屋敷の主、衛宮士郎だ。士郎と凛、そして桜。これだけならいつぞやの面子だが、そこには現マスターである慎二とその祖父、間桐臓硯もいた。
臓硯は無言である。離れた位置に座り、黙って若人達の話を聞いていた。不気味な妖怪だが、対モルガンでは有効な存在であるのは分かっている為、追い出したくても追い出せない。慎二も慎二だ。彼はテーブルに頬杖をついて、よそごとを考えている。
彼は「遠坂をマスターとして扱ってくれよ。僕はただの令呪発動係になるから」と言ったきり精神的に距離を置かれていた。臓硯の手で魔力のパスが凛に移っている為、心置きなく戦えるが……またしても変則的な主従になった事にライダーは複雑な心境だった。
理解できる体制なので納得はしているのだが、どうにも腑に落ちない。
そんなライダーの心境を横に、魔女の真名を聞いた凛はふるふると肩を震えさせ、俯いた。
魔術師としての力量の差を感じているせいで、怯えているのだろうか――なんて心配をするライダーではない。何せこの少女は遠坂凛なのだ、恐怖ではなく怒りが彼女を燃えさせているのだろう。
ライダーの予想は、果たして当たった。
「ふふふ……いったいどうしてくれようかしら……」
「……落ち着けよ、遠坂」
「これが落ち着いてられるかぁ! アイツのせいで私は大損よ! 私の家の防衛設備は工房以外全滅してんのよ!? どれだけのお金が掛かってると思ってんのよ!? 誰が補填すんの!? 私!? ざっけんなぁ!」
テーブルを叩き、立ち上がって吼える凛に、士郎とライダーは目を見合わせて苦笑する。
怒りの種類が真っ先にそちらへ向くあたり、流石、と言うべきだろうか。
なんだか懐かしくも感じるこの空気は、マスターには悪いがやはり居心地がいい。
凛も叫んだら落ち着いたのか、フー、フー、と息を荒げつつ腰を下ろした。
「……で、これからどうすんのよ? モルガンほどの魔女ならあの時、私達を殺そうと思えば殺せたはず。あの場面で私達を殺さない理由なんてないし、慎二の言った通り私達を害せないってのは確かなんだろうけど……だからって無策で挑むのは馬鹿のすることだわ」
「ああ。死人が出ないって保障があるのは良い。けど魂喰いはしてくる、油断はできないな。対策しないと近づくだけで俺達はほとんど無力化されるぞ」
「そうね。さっきのアレのおかげで、私達はモルガン相手に何もできないって事は分かったわ。魔力を吸い取るなんて大魔術を即席で使ってくるんだもの。私はお手上げだし、投影を見せちゃった衛宮くんにも次からは警戒してくるはずだから、正直アテにはできないわね。……やっぱりセイバー――じゃなかった、ライダー頼みになっちゃうのかしら」
「俺達に出来る事は、いざという時ライダーの盾になるぐらいだな」
「アンタね……いや、それで正解なんだっけ?」
さらりと士郎が言うのに凛は苦言を呈そうとするも、ルールを思い出してそれはそれで有りなのだと思い直した。
ライダーは苦笑を深める……思い出すのは第五次聖杯戦争のバーサーカー・ヘラクレスとの初戦、危険なのにアーチャーの狙撃の範囲内から自分を連れ出した姿だ。あれを見ると、士郎は躊躇なく自分の盾になりに来そうで、気持ちは嬉しいもののなんとも言えない気分になる。
現地人である士郎を攻撃するのはルール違反だ。ルールの抜け穴で、魔力吸収の魂喰いは通るのだが、それでも殺したり、魔力吸収以外の攻撃は当てた時点でアウトである。ルール違反を犯したら問答無用で脱落させられる為、現地人を盾にするという判断は正しい。
が、騎士としてそんな真似はしたくない。個人的な信念を優先している場合でもないため、ライダーとしては止められないが……マスターである慎二も止める気がないらしい。
「――どうでもいいけどさ。衛宮の事なんかより、僕の事をどうするか考えてくれよ。僕は足手まといにしかならないんだぜ? 僕がいたらライダーは本気で戦えない、だから裏に引き籠もってるしかないわけなんだけど……その肝心の拠点が使えないんじゃどうしようもないじゃんか。遠坂がキャスターに尾行されてたせいで、絶対僕の家も場所が割れてるぜ」
「う……それは……そうだけど。衛宮くんの家は防衛に向かないし……」
「そうだな……それなら慎二にはいっそ、冬木から出て行ってもらうってのはどうだ? それでほとぼりが冷めるまで大人しくしていてもらったらいい」
「それよ!」
「それじゃないよ。衛宮にしてはいい案だけど、それは無しだ」
手を打ち鳴らした凛に、呆れたような一瞥を向けつつ、慎二は嘆息する。
「まず第一に、冬木を出るまでに襲われない保障は? 第二に、敵が追って来たらどうすんの? 第三に、そもそも依り代の僕が冬木から出て、ライダーは十全の戦力を発揮できんのかよ? 離れるにしたって限度があるだろ、常識的に考えてさ。流石に市外まで出たらライダーの現界に差し障ると思うんだけど……そこんとこどうなんだよ、ライダー」
「……私に単独行動スキルがあればどうとでもなるでしょう。ですが、流石に市外まで出られると、私も現界を保つのは難しいでしょうね。サーヴァントとはあくまで使い魔、マスターという依り代がいてはじめてこの時代に存在できるモノですから……」
「ほら見ろ……衛宮はともかく、御三家の遠坂がそこを忘れてるとか大丈夫なのか? 頼むからしっかりしてくれよ……なんか不安になっちゃったじゃん」
「うぐっ……し、仕方ないでしょ!? 私のサーヴァントはアーチャーだったんだから! ちょっとド忘れしてただけだっての! ……あーもう、調子狂うわね。慎二に指摘されるまで忘れてたとか、本気で落ち込んじゃいそうよ」
「は、知識だけならそこそこあるんだ、舐めないで貰いたいね。これを機に僕に対する認識を改め……待った。アーチャー、だって?」
「え? アーチャーがどうかした?」
「……なぁ、遠坂。お前、アーチャーのマスターなら、ソイツの真名知ってるよな。教えろよ」
「な、なんでよ……?」
唐突に何事かを思い出したような顔をする慎二に、凛はぎくりと身を強張らせて士郎を横目に見た。ライダーも複雑そうな目を向ける。とうの士郎は座りが悪そうな、いたたまれない顔をしていた。
慎二は嫌な予感を覚えつつ、思い出したことを報告した。情報の共有は基本中の基本だ、特に実際の戦闘では役立たずの自分が役立てる場所なら、積極的に発言するつもりだったのもある。
「……僕が最初どこにいて、異聞聖杯戦争に関して説明を受けたかって話はしたよな? そこにいたんだよ……マスターとして、アーチャーが」
「……………え? ……………うそ」
「嘘なもんか。だからソイツの素性が知りたいんだよ。知ってるなら対策ぐらいは打てるだろ? 英霊になるような奴がマスターとか反則もいいとこなんだし、対策を打たないなんて……まさか」
場の微妙な空気に、慎二は察した。
凛と、ライダーの視線が士郎に向いている。
……マスターとして召集された七人。面子は服装を見るに、中東っぽい服装のアーチャー以外は生きてる時代が近いのが一目瞭然だった。となると生前のアーチャーだけが例外とは考えづらく、奴もまた同時代の人間と見てまず間違いないだろう。
こんな現代で、英霊になるような奴……背丈も、肌の色も違うが……よく思い出してみたら、顔はよく似ている奴がいる……奴は宝具を投影していた、慎二の知る奴もアーチャーと同じ双剣を投影していた……まさか、本当に? 馬鹿みたいな話だ、そんな事が現実に有り得るのか? こんなお人好しのバカが英霊になんて……いや、ヒーローという意味ならお似合いかもだが……。
「慎二……なんか、察しちゃったみたいだから言うけど……」
「………」
「アーチャーって、そこで難しい顔してる、衛宮くんの未来の姿なのよ」
それを聞いた瞬間、慎二は愕然とした。
色々と思うこと、感じることは、ある。だがそれらを抜きにしても、未来の衛宮士郎が敵だということは、慎二にとって考え得る限り最悪の結末を想像させられるものだったのだ。
故に、慎二は訊ねる。「アーチャーの能力と、宝具はなんだよ」と。間桐臓硯がいるせいか、話すのを渋る凛に慎二は嘆息する。
「……言いたくないなら後でもいいけどさ。普通に考えてヤバいだろ。だってアイツが衛宮だったら、
「ぁ……」
「……隠れるとこ、なんとかしないと詰むじゃん。……桜! 飯作ってる場合じゃない! こっちに来てお前も知恵出せよ!」
やっと状況を理解したのか、青褪める凛を尻目に台所に慎二が怒鳴る。
凛も理解しているのだろう、アーチャーなら――生きている人間のエミヤシロウなら。
その
彼女は、理解していた。
士郎も。ライダーも。
エミヤなら、きっと此処に来ると、悟った。
† † † † † † † †
嫌に、時間の流れが早い。
――弛んでるんじゃないか?
そんなはずはない。過去一番と言っていいほど緊張している。
――視野が狭くなっているんだろう。
それも、ない。緊張しているからって、萎縮して自身の性能を落とす愚は犯さないさ。常に周囲に気を配り、一つの策に拘泥していないか、環境が変化していないかを気にかけている。
――手元が疎かになっていないか? 暗躍が僕らの専売特許だとは思わないことだ。
バカにするな。キャスターは策を練るだろう、アーチャーはマスターから離れ、単独で潜み一撃必殺の狙撃を目論んでいるかもしれない。現地のマスターは地の利を活かそうとするだろうし、ランサーはどの陣営と戦っても勝利できるだけの力がある。侮れる敵は一人もいない、こちらの想定を超える敵が出て来ることは百も承知だ。僕らが一番弱いと弁えている。
――
構わない。僕が死んでもアサシンは単独行動スキルで一週間は活動できる。その一週間以内にお前が勝てば、僕の勝ちだ。僕の生死に関わりなく、勝つ為の準備と策を練る。
――死を前提にした捨て身は、躱されたらそれまでだ。アンタが死ねば、僕の勝率は更に下がるんだぞ。僕らが敗北する要因は理解しているのか?
愚問だ。僕らの居場所を特定される事、敵サーヴァントと一対一で交戦してしまう事、
――そんなこと、少し頭の回る奴がいたら簡単に読まれる手だ。本当にそれでいいのか?
これでいい。読まれていようと、僕に出来るやり方はこれだけだ。よそ見をせず、自らの武器の使いどころを間違わなければ勝てる。
――油断している魔術師の思考だな、僕にとって格好のカモがしている思考そのものだぞ。
……。
――勝てるわけがない。僕らの勝機は限りなく零に近い事をもう一度思い出せ。敵と敵を争わせての漁夫の利を狙う……こんな運頼みの戦いは衛宮切嗣らしくない。定石や希望的観測に縋っている時点で『魔術師殺し』失格だ。もう一度聞くぞ、衛宮切嗣。いいのか、それで。
……良くはない。状況は最悪だ。盤面は今、膠着状態に陥っている。ああ、全く以て最悪だ。
――打開策は?
ない。
――運頼みで都合よく事が進むのを待つのか?
待つ。ああ、待つとも。やる事は決まっている、事態が動くタイミングも分かっている。
――なら、
アサシンと切嗣は別行動をしていた。切嗣は常に潜伏し、表舞台に立つ気はないが、それでも探知能力に優れた敵に見つかる可能性は常にある。見つかったら終わりだ、既に捕捉され泳がされているだけという状況下に在っても、こちらがそれに気づいてないなら詰みである。
切嗣が掴み得る勝機は一つしかない。ならばそれに向けて邁進するのみ。だからと言ってそれに拘るつもりもなかった。戦況次第で勝機の数、道筋は変化する。状況は流動的なもので、視野を狭めて一つの事柄に集中すれば、致命的な失態を晒すことになるだろう。
(……確実に信頼できる点は、たったの二つ。一つがアサシンの隠密能力だ。本気で隠れているアサシンは誰にも見つからない。もう一つが……僕だ。隠れ潜んでいる僕を見つける事は、少なくともマスターには不可能だ)
今の切嗣は深山町の民家に潜んでいる。家族旅行にでも出掛けているのか、運良く見つけられた拠点だ。ここから切嗣は動くつもりは今のところない。状況次第だ。
(
今の装備では、一度の戦闘でキャリコは使い切ってしまう。そうなると後は起源弾を撃てるコンテンダーと、手榴弾、ナイフしかなくなる。こんな装備で何度も戦えるとは思えない。
やはり一度だ。切嗣が戦えるのは、一度きり。その一度だけの戦闘に留め、後は逃げ隠れするしかないだろう。となると切嗣の勝利への道筋は、如何にして盤面を把握し続け、的確な判断を下せるかに掛かっている。つまりアサシンに
(――初日は終わり、二日目。だがアサシンはセイバーとランサー以外発見できていない。遠坂邸に向かわせはしたが、戦闘の痕跡があるだけでもぬけの殻になっていた。間桐邸もだ。二日目はどの陣営にも動きはない。もうすぐ日付が変わる、三日目から盤面が混乱するのは、馬鹿でもない限り察しがついているはずだ。混戦になりかねない状況だというのに誰も動かないのは……)
切嗣は元々第四次聖杯戦争に参加する直前だった事もあり、冬木の御三家、遠坂と間桐の拠点の所在地は調べていた。そしてこの聖杯戦争で現地マスターが頼った場合、厄介なことになると判断して注意は向けていたが、その二つが無人の館になっている。
現地のマスターが説得し、両家を動かした証拠だ。どうやら地の利を取られたらしい。
まあそれはいいのだ。そうなる可能性も考慮はしていた。遠坂邸で一度サーヴァント戦が起こっただろう事も含めて考えると、最低でも四騎のサーヴァントは戦闘を経ていると推測できる。
初日で二回の戦闘。誰かが倒され、脱落した可能性もなきにしも非ずだが、アサシンか自分で確認するまで気は抜かない。そして二日目に何もないという事は、現状を整理し、作戦を立て直しているか、手傷を負ったサーヴァントの回復を待っている可能性が高い。
(いや……もう一つあるな)
誰も彼もが敵の居場所を掴めていない場合、慎重になり過ぎて身動きが取れていないケース。なくはない。寧ろ大いに有り得る。となると少しの時間経過はキャスターに利する為――
(……このまま三日目になれば、一番最初に動き出すのはキャスターだろう)
切嗣はそこまで予測した。切嗣がその思考に辿り着いたということは、アサシンも同じ結論を下すということだ。アサシンも、切嗣も、互いの出す結論が同じである事は分かっている。結論が食い違わないように、どちらかが情報を得たら共有するようにもしていた。
三日。キャスターならもう少し時間がほしいだろうが、この三日というのは別のタイムリミットの関係上、じっくり時間を掛けられる最後の日だ。ここで動かないと、時間を味方にできるはずのキャスターは逆に不利になる。故に、キャスターは動く。三日目で、だ。
(恐らく、大半のマスターはそこまで読む。各陣営に動きがないという事は、キャスターの初動に合わせるつもりなんだろう。となると……苦しいはずなのはキャスターだが、勝算もなく動き出すなんて事はまず無いと言っていい。なら――お手並み拝見だ、魔術師の英霊。思う存分活躍してくれ。盤面が混乱すれば混乱するほど、僕にとって都合が良くなる)
切嗣は焦らない。虎視眈々と、好機を伺う。
† † † † † † † †
体を鈍らせない為だろう。腕立て伏せなどの簡単な筋力トレーニングをした後、締めに柔軟運動を草十郎は行なっていた。一頻り汗を掻いた草十郎がシャワーという物をおっかなびっくり浴びて、その便利さに感心しながら出ると、モルガンがタオルを手渡してくる。
草十郎は裸だ。しかし彼の体に残る傷跡や、男の裸を見たというのに、モルガンはまるで恥じらう様子もなく、微笑みさえ浮かべていた。――が、内心は初心な小娘のように混乱している。
男の裸なんてものが、なぜこんなにも直視し難いのか。モルガンは草十郎の目を見て、そこから下をなんとか見ないようにしつつ、平静を取り繕いながら言った。
「ソージューロー、後少し時間が経てば、貴方には拠点を移ってもらいます。よろしい?」
モルガンがそう訊ねると、草十郎は眉を顰めた。異論があるのではなく、彼も彼で裸でモルガンと相対してしまっている状況に困っているのだ。しかし、モルガンが気にしていないなら、見られて減るものでもなし……気にしないでおこうと思う。できるだけ。
二枚あるタオルを受け取り、とりあえず一枚を腰に巻いた草十郎は、もう一枚を濡れた髪の上に置いた。
「分かった。何処に行けばいい?」
「ヴェルデというショッピングモールの一画に簡易な工房を用意しました。しかし貴方が直接足を運ぶ必要はありません。時が来れば私がソージューローを転移させます」
「てんい……うん、とりあえず俺は動かなくていいってことか」
「ええ。我が夫の城としては余りに粗末ですが、城を作るのは全てが終わった後にします。その時はこの私が手ずから背中を流してあげましょう」
「え?」
召喚直後も言われたが、またも夫呼ばわりされ困惑する。しかしさらりと言いながらモルガンは訂正を聞かず、背中を流すと言うのは
草十郎は嘆息して、髪の水気を取り、体を拭いて服を着る。そんな草十郎を眺めながら、モルガンは今後の展望に思いを馳せた。
(下準備は完了したわ。後は
モルガンの真の強みは、魔術にある。その悪辣な策略も、槍の腕も、全ては武器という選択肢の一つに過ぎないのだ。本命である
モルガンの敵は、サーヴァントではない。マスターでもない。――時間だ。時間さえ稼げたらブリテンの円卓をも崩壊させた魔女が確信できるのである。己の策の成就を。
(ごめんなさい。ごめんなさい、ソージューロー。私を信じて……お願い、貴方さえ私を信じてくれたなら……私は、きっと……いいえ、絶対に勝ってみせるから)
――着替えをジッと見られている草十郎は、凄く居心地が悪そうだった。
† † † † † † † †
工房に潜入する。庭の荒れ具合から察してはいたが、空振りらしい。
間桐邸ももぬけの殻だった。となると、次に有力な候補に向かえばいい。
(……投影した宝具『
そこには恐らく、自分が破局を迎え、決裂し、訣別した少女もいる。
置き去りにして、第六次聖杯戦争――冬木における最後の聖杯戦争でこの手に掛けた少女も。
そして、セイバー……いや、ライダーもいるだろう。
(参ったな。厄介な陣営は先に潰しておこうと思ったんだが……流石に現地人が多すぎる。
エミヤは慎二が現地のマスターだと確信している。何せ慎二がマスターであり、異聞聖杯戦争の情報が真実だと判断した時点で、真っ先に
故にエミヤは慎二が現地人を利用しての穴熊戦法を取ると見抜いている。慎二は最初の印象とは裏腹に……いや、その人柄や性格を抜きにして、純粋に能力だけを見ると切れ者だと知っているのだ。
だから
(……まあ、いいさ。
個人的には嫌だが、生憎個人の情など捨てている。判断は誤らない。
エミヤはゆらりと、夜の闇の中に消えて行った。