Lostbelt No.EX-異聞統合封土ガイア-地に落ちた林檎   作:飴玉鉛

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サーヴァント召喚無理でした…次回こそ…!




異聞聖杯戦争

 

 

 

 星。

 

 天に煌めく星座――ではなく。

 

 宇宙に並ぶ天体――でもない。

 

 星。

 

 遍く生命体の母なる大地、あるいは海ありし地球。

 

 星には星の抑止力が存在する。抑止力、カウンター・ガーディアン。人類の集合無意識によって作られた世界の安全装置であり、人類の破滅を回避する為に機能する抑止力をアラヤ、星の延命の為に機能する抑止力をガイアと呼ぶ。どちらも世界の破滅を防ぐ為に存在し、世界を滅ぼす要因が出現した途端に現れ、その要因を徹底的に消滅・抹消させるのだ。

 

 強大な力を持つ抑止力だが、それにも弱点は存在する。

 

 いや、弱点ではなく欠陥だ。惑星内、つまり地球内で発生した『世界を滅ぼす要因』へのカウンターは発動するが、地球外生命体はどちらの抑止力の影響を受け付けないのである。その機能的な欠陥、外に目を向けていなかったが故の怠慢が、世界に滅亡の危機を齎した。

 

 一度目はアラヤの失態だ。人類悪、ビーストⅠゲーティアによる人理焼却の最終目標は、『地球と成り代わる』というものであり、人理の崩壊と地球の危機を同時に招いたのである。

 だがこの失態を、人間の言う『ガイア(わたし)』は寛容にも許した。地球と成り代わるという、地球殺害の目的を持った人類悪は、とうの人類最後の砦により打倒されたからだ。

 元々ゲーティアの暗躍にはガイアも気づいていなかった為、心境としては後から『あの時は危なかった』と報されたようなものであるし、殊更に責めたり罰したりするつもりはガイアにはなかった。

 

 しかし、二度目。地球白紙化現象。

 

 これは駄目だ。どうあっても見過ごせない。

 山も、海も、何もかも消え去る。人工物が消えるのは一向に構わないが、自然を消し地表を平らにしてしまう事は赦し難い。しかもそれは異星の存在による侵攻の結果であり、七つも()()()()()()()異聞帯とやらは、異星の神を降臨させる為の装置であるのだ。

 異聞帯は看過できない。だが打つ手はなかった。こういう時に対抗する手段としてアルテミット・ワン――星の究極生命が必要になるのだが、地球にはそのタイプ・アースが空位だったのである。

 一番近いのは失敗作の真祖、タイプ・ムーンとの合作。だがあのブリュンスタッドは朱い月の後継機でもある。朱い月が地球の乗っ取りを企てていた以上アレをタイプ・アースに据える気はない。

 

 異星の神が地球を自身にとって住みよい環境に改造し、移住してこようとしている。これを人の感覚に例えるなら、外部から飛来した寄生虫が、寄生先の器を勝手に改造しているようなものだ。恐らく人間の尺度でもこんなもの、受け入れられまい。

 故にガイアは異星起源種に対抗する為に動き出したのだ。一度ならず二度までも、地球の危機を招く霊長など宛てにはならない。自身の手で問題を解決する。異聞帯に関しては自業自得と言うのは酷であるが、そこはどうでもいい。ガイアは、人類が死に絶えようと気にしない。 

 

 急務とするべきは、耐え難い玉座の空位を埋める事。真祖如き失敗作など問題にもしない、タイプ・アースの制作こそ至上命題だ。

 

 幸いというか、教材には困らなかった。異星の神とやらと同じように、剪定された世界を掘り起こし、七つもある空想樹の仕組みを学んで同じ物を作ればいい。なんなら汎人類史の残党に伐採された空想樹の残骸を回収し、サンプルとして解析したりもした。

 星の内海で解きほぐし、溶かし尽くし、空想樹を理解したガイアは同一のものを創造した。しかしここで困った問題に直面する。――地球(ガイア)のガイアによるガイアの為だけの世界を作ろうとしているのだが、その代表者タイプ・アースの作製をどうするか思いつけなかったのだ。

 

 嘗て月に相談しタイプ・ムーン――朱い月を地球に招き入れた失敗がある。もう地球外の存在に救難信号は出したくない。そう思い、悩みに悩んだガイアは結論を下した。

 

 元々、抑止力(ガイア)自体はカタチのない強大な力の渦であり、具現化する際にカタチを持つ。此度の案件によりガイアはカタチを持とうとしたが、その先になるモノが存在せず、本来は無意識的な働きしか持たないはずの抑止力は半端な形で思考(イシキ)だけを持ってしまった。

 救世主が必要なのだ。ガイアの意思を出力する為の器が。それを創り出す。その為に意識的な思考だけを持った抑止力は手を打った。どんな器を創るにしても、モデルが必要だろう。そのモデルとは、地球上で最も優れた生命体、すなわち霊長である人類が相応しい。

 人類が死に絶えようとガイアは気にしないが、利用できるなら利用する。

 ガイアは地球産の空想樹を星の内海に仮想顕現させ、七つの異聞を掘り起こした。その七つの異聞こそが異星の神が選ばなかったもの。異星の神が掘り起こした異聞帯は、異星の神が降臨するまでの()()()であり、そうである故に異星の神が()()()()()として捨て置かれた歴史だ。

 

 ほんの些細な間違いにより閉ざされた歴史達である。

 

 ――例えば、ガイアが主催する2004回目の聖杯戦争にて、マスターとして選ばれた衛宮切嗣の世界。そこにある冬木の聖杯は真に万能であり、汚染されておらず、更に全能にも近い代物だった。衛宮切嗣はその聖杯戦争で勝利し、恒久的な世界平和を成し遂げてしまった結果、人類の発展は完全に停止してしまい、『先がない』として剪定されてしまった。

 ――例えば、バゼット・フラガ・マクレミッツの世界。そこは衛宮切嗣のいた歴史とは方向性が異なり、聖杯は万能だったが悪の概念に汚染されており、バゼットが紆余曲折の末に『繰り返される聖杯戦争』にて最弱の英霊アンリ・マユを受肉させてしまった結果、シンプルに人類が絶滅の危機に瀕し、世界は呪詛で満たされ発展の余地が潰えてしまった。故に剪定された。

 

 ――例えば、例えば、例えば――そんな()()()()()で剪定されてしまった歴史達。

 

 ガイアはそうした敗残者達を拾い上げた。そして幾度も七つの異聞から人類の代表者を一人ずつ選出し、何度も何度も聖杯戦争を行なった。

 聖杯戦争を、である。そうである以上、ガイアは勝者には報酬を渡し、叶えられる範疇の願いを聞き届けてきたが、それでも未だにガイアの目標は達成されていない。

 

 何かが足りないのだ。タイプ・アースの作製のためのデータに、何かが。

 

 それはきっと2003回にも及ぶ聖杯戦争の勝者達は、いずれもがほぼ例外なく利己的であり、大部分がガイアに『新しい霊長の一員に加わる』事を願って、自己や親類縁者の保存を果たしてきたからだろう。

 中には変わり種な願いを叶えた者も居るが、それらは総じて不必要なデータだった。故に2004回目――タイムリミットが近づいてきた今回、ガイアが選出したのは稀有な性質の持ち主達である。

 

 衛宮切嗣。このニンゲンの願う恒久的世界平和。その特異な過去からくる精神性と、戦闘力、生存戦略、戦術パターンが好ましい。無駄がないのはいいことだ。

 類似例として、エミヤシロウ。正義の味方という概念の代表者にして霊長の抑止力のお気に入り。アラヤの抑止力が好んで用いるこの人間の能力は、サンプルデータとしてもってこいだ。単純に人間として破綻している在り方は、衛宮切嗣の上位互換でもある。

 バゼット・フラガ・マクレミッツ。戦闘者として類稀な人間でありながら、精神の脆弱さは目を覆うもの。力と精神の比率が釣り合っていない者として、力に偏った者のサンプルとして相応しい。

 岸波白野。忌々しい朱い月の出身地、月世界を制した月の王、そのオリジナル。疑似サーヴァントという霊基を参照し、それを応用して月世界のデータを憑依させた故に、月の王となった実力を見られるかもしれない。岸波白野はバゼット・フラガ・マクレミッツの対比として優等であり、力と精神の比率で精神に大きく偏った者だ。

 静希草十郎。力と精神のバランスがいい。自然な生物、野生の人間である彼は、発展した文明の倫理感も合わさり、過去の類似例とは違ってガイアとしても好ましい存在だ。

 

 他二名も、そうした別々の選出理由がある。

 

 ――年に一度の周期で開催してきた聖杯戦争。今回2004回目を数えるその戦争では、タイムリミットである2018回目が目前に迫っている事もあり、趣向を変えての聖杯戦争を行う事にした。

 今まではトーナメント形式だったのだが、2004回目以降は全て戦場を設定してのバトルロワイヤル形式に変更する。ガイア(わたし)は騙さない、ウソを吐かない。詳細に情報を開示した、後は条件を開示しよう。

 ルールは以下の七つだ。傾聴せよ。

 

 

 

 一、以下のルールは例外なく遵守せよ。違反者はその時点で脱落とする。またルール違反により脱落した者の世界は、以後の聖杯戦争や『最終戦』に参加させない。

 

 二、聖杯戦争の景品は名の通り聖杯である。

 この聖杯は万能であり、聖杯の性能は以下の通り。個人の願いであれば大凡のものは叶えられるが、願いの規模に比例して効力は弱まるもの。

 例として、過去に聖杯戦争の勝者が「自分の世界の住人全てを新しい霊長にしてほしい」と願った。しかし世界中の人間全てを作り変えるにはリソースが足りない。召喚され聖杯に焚べられた英霊の魂の分、つまり七騎のサーヴァントの魂相当の数を作り替えるのが精々だ。

 逆に「自分だけ新しい霊長にしてほしい」と願えば問題なく願いは叶い、発生した余剰分の魔力で当該者の性能を底上げする。――このように聖杯で叶えられる願いは範囲を限られており、万能であっても全能ではないという括りがあることを留意するように。

 

 三、聖杯戦争の知識は全参加者へ刷り込み済み。全参加者の有する知識に誤りはない事を保障。

 

 四、聖杯戦争とは、サーヴァント、マスターの二人で一組である。マスターが死亡した場合、サーヴァントもまた死亡する。如何なる蘇生・延命手段も受け付けない。逆にサーヴァントが死亡した場合マスターは死亡しないが、以後の聖杯戦争への参加資格は永久に剥奪され、『星側の新しい霊長』へ移籍する権利も失われる。なお、狂戦士のクラスは不適格として除外済み。代わりにエクストラクラスの者がランダムに召喚される。触媒を所有していた場合は、それが機能するものとする。

 

 五、サーヴァントの召喚はこちらで補佐するため、送付した呪文を唱えた時点で召喚可能。また現時点より24時間以内は戦闘行為を禁止とする。24時間後であれば、サーヴァントを召喚していなくとも戦闘は開始される為、サーヴァント未召喚は推奨しない。

 

 六、戦場として設定するのは、七つの異聞のいずれかの世界における冬木とする。朝、昼、夜のいずれであっても戦闘行為は許可するが、マスターやサーヴァント以外に危害を加える事は禁止とする。ただしサーヴァントの魂喰いによる魔力回復は許可する。また戦闘技能の高い()()を除き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 七、2017回目の聖杯戦争を最後とするが、その戦争の終結に伴い『ガイア由来の異聞帯』を一つに絞る為、2018回目を七つの異聞における最終戦として発動する。この最終戦の形式はバトルロワイヤル形式の聖杯戦争とするが、聖杯等の景品は存在しない。各々の世界の代表者が敗北した場合、敗北した者の世界は破棄する。以後、最後に残った異聞帯はガイアの意思であるタイプ・アースを王として地球上に表出し、他の異聞帯の駆逐、汎人類史の残党の掃討、異星の神の討伐を目的に行動する。

 

 

 

 ――以上。

 

 編纂事象、剪定事象、汎人類史、異星の神、他の異聞帯、現在の地表の状況も、聖杯戦争に纏わる知識の刷り込みに伴い行なっている。故に解るはずだ、諸君に逃げ場はない。自らが各々の世界の代表である事を理解せよ。

 』

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

「――な、んだ……それ……」

 

 呆然と呟いたのは、切嗣ではなかった。動揺して瞳を揺らすバゼットでも、不動のまま沈黙した褐色の男でもない。愕然とする白野や、難しい顔をして黙り込む草十郎でもなかった。

 それは、たった今奔った電撃にも似た天啓で目を覚ました二人の少年の片割れ、独特な癖を持った髪の少年だった。その少年の顔を見たエミヤが目を見開く。

 

「慎二……?」

 

 少年の名は間桐慎二。年齢は、第五次聖杯戦争当時のもの。余りに場違いな少年がこの場に居ることにエミヤは目を疑うも、間桐慎二には間桐慎二の選出理由があった。

 ――間桐慎二。彼は彼の世界が剪定された理由とは完全に無関係だ。にも関わらず彼が選ばれた理由は簡単である。一般とは言えない家に生まれ、しかし特別(魔術師)にはなれず、平凡にもなりきれず、ひねくれ、自滅してしまった少年。元の能力は非常に高いのにそれを発揮できず、最後まで道化だった有象無象。善良であるのに小悪党に落ちた――そうした理由で、彼はもう一人の少年との対比として採用されたのだ。

 

「なんなんだよ、いきなりさぁ! ぼ、僕が……僕が世界の代表者だって!? 僕なんかが……何もできなかった僕なんかが!? 衛宮や遠坂で良いじゃないか! お似合いだろ!? アイツらの方が! なんで僕なんかを選んだんだよ、ふざけるなぁっ!」

 

 ――間桐慎二は、第五次聖杯戦争で敗退している。

 英雄王に聖杯の核にされて、不出来で不細工な肉塊になり、最後には惨めに助けられるだけだった。犯してきた愚行を義妹に許され、憑き物が落ちた慎二は己の分際を受け入れたのだ。だからこそ義妹に償いながら、普通に生きていこうと思っていたのに――これだ。

 いきなり訳の分からない所に召喚され、挙げ句の果てには自分の世界が剪定されていて、敗者復活戦めいた戦争で再び戦わされる? しかも負けたら自分だけが咎を負うわけではない?

 

 慎二は全て理解していた。与えられた情報を呑み込めている。何故ならそういうふうに暗示を掛けられているのである。故に慎二は悟らざるを得なかった。

 

 ――本命の戦いは2018回目の最終戦。一年に一度聖杯戦争が行われてきたというのが本当なら、後14年後に世界の命運が決する。それまでに自分の世界の勝利を積み上げて、有利な材料を揃え、14年後の戦いにて勝利しなければ、自分の世界は滅びてしまう。

 しかしガイアとかいう奴の言葉が本当なら、今までの2004回も行われた聖杯戦争で、自身の世界に利する材料を残した奴はいない。全ての勝者が、自分か自分含めた縁者しか救っていない。

 頭を掻き毟る。こういうのはヒーローの仕事だろう。慎二はヒーローではない。それはあの危機的状況でも自分なんかを見捨てず救い出した遠坂凛や、衛宮士郎のような奴の事だ。

 

 断じて、自分ではない。

 

 逃げたかった。だが、逃げられない事を彼は理解している。仮にここで負けても即座に死ぬことはないのかもしれないが、他の参加者がマスター殺しを狙わない保障はないし、もし負けたら仮に自分の世界の人間が最終戦で勝っても救われず、世界から切り捨てられる。

 

 ――それは駄目だ。それだけは嫌だ。だってまだ、自分は何も償えていないのだから――

 

「………!」

 

 考えろ、考えろ、考えろ――!

 慎二は他の面子の顔を見渡し、すぐに全員の顔を記憶する。自分以外に男五人、女一人……どういう奴らだ?

 

(――遠坂のアーチャーがいる!? いやマスターになるなら、アーチャーは人間? ……英霊になるほどの奴がマスターになるとか反則だろ!?)

 

 慎二は驚愕して内心毒吐く。その間にも大急ぎで面子の把握を済ませた。

 

(他の奴らは……魔術師か? 普通に考えたらそうだ。だとしたら一番劣ってるのは僕だ。サーヴァントを召喚するのにコストは掛からないみたいだけど、維持の負担を請け負うのはマスターのはず。なら僕は魂喰いを前提にして行動しないといけない、けどそれは――)

 

 良い悪いは別にして、魂喰いをした場合、人目につく。痕跡が残る。

 戦場は冬木だと言っていた。なら地の利はあるはずだ、だからこそ分かる。テレビのニュースにでもなったり、被害状況を調べられたら魂喰いをした地点を割り出して、こちらの行動範囲がバレる。

 自分がマスターになったら、魔力供給の関係上、サーヴァントのスペックは大幅に低下するだろう。……あのいけ好かないデカ女(ライダー)みたいに。

 拠点もなく行動するのはナンセンスだし、居場所が割れたらアウトだ。魂喰いは露見のリスクを考えたら避けるべきだろう。召喚したサーヴァント次第では、魂喰い自体拒否されかねない事も留意しないといけない。ならどうしたらいい? ベストは弓兵のサーヴァントだ、だけどそれが喚べるとは限らない。

 

(絶対的な前提として、僕は逃げられないし、負けてもいけない。最低でも遠坂と衛宮に借りを返さないといけないんだ……桜にも、償うって決めた。だから本気で、慎重にやらないと……)

 

 だがどうしたらいい? どうしたら……。

 

 ――間桐慎二という少年は、魔術の才を除くと万能の天才だ。全ての能力が高く、とりわけ頭脳という面では天才達の中でも頭一つ抜けている。魔術へのコンプレックス、幾つもの性格的な欠点さえ悪い方に作用させず、自らの能力を十全に活かせさえすれば、間桐慎二はもっと違った結果を手に入れられていただろう。

 

 その違った結果を、今の慎二は出せた。

 

「――――」

 

 閃き。慎二の目に勝機を見い出した者の光が宿る。

 彼は深く息を吸い、吐いて、無理矢理にでも自分を落ち着かせる。

 そして周囲の動向を見定めた。

 

 まず衛宮切嗣が動いた。同盟など他のマスターと結ぶ余地はないと見切り、異界が解かれ普通の地下駐車場になった事で現れた出口に向かっている。

 アーチャー(エミヤシロウ)がそれに遅れて出て行った。白人の女(バゼット)は逡巡しながら続く。流石にこの場でサーヴァントの召喚に踏み切るような馬鹿ではないらしい。

 それらを見届け、慎二は未だに残り続けている面子を見渡した。四人いる。

 

 ――全員、敵だ。そしてこの中の一人を除いて、自分と同じような精神状態になっているだろう。暗示を掛けられ、先程の『声』の話を本当だと信じ込まされている。自分達が剪定された側の存在だと。

 

(手を組まないか、なんて誘うのは馬鹿のすることだね。結局、最後には戦うんだ。ヤバい奴を袋叩きにする為に手を組むってのは()()()()()()()()。僕の戦略には邪魔でしかない。大体よく知りもしない奴と手を組むなんてナンセンスだ)

 

 悪いとは思わなかった。慎二は、ヤバそうな三人が出て行ったのを見計らってから行動に移る。

 

(多分初動の早さからして、アイツらは荒事のスペシャリストなんだろうさ。ならアイツらが最初にやることなんか決まってる、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだろ。猶予は今から24時間、この時間を有効に使わないほど馬鹿じゃないはずだ。僕は僕の持つ地の利(アドバンテージ)を活かさないといけない)

 

 グズグズしてる暇はなかった。勝機を手繰り寄せるにはこの猶予期間を最大限活かす必要がある。一分一秒も無駄にはできない、さっさと出て行かないといけなかった。

 だがその前に。

 

「――なぁ、お前ら。状況は理解()()()()()()んだろ? なら僕から提案があるんだけど……ここにいる四人でさ、まずは手を組まないか?」

「………え?」

「………」

「………」

 

 この場に残っている四人。慎二と、後は外見上年頃の近い連中が三人だ。

 慎二と同じ高校の制服を着た茶髪の奴(キシナミ・ハクノ)は無言。――同じ高校なら慎二がどういう奴か知ってるかもしれないが、慎二にはソイツの顔に見覚えはない。

 ウスノロっぽい奴(シズキ・ソウジュウロウ)……黒髪の体格が良い方も、無言。

 だが最後の一人、いまいちパッとしない平凡な少年は反応した。ソイツに狙いを定める。

 

 友好的(にこやか)に笑い掛けながら歩み寄り、腕を伸ばして無理矢理肩を組む。――緊張してか身が強張っていた。コイツは、もしかして……。

 

「なぁ、アイツら明らかにカタギじゃなかったぜ。僕らみたいなか弱い一般人はさ、纏めて掛かって先に出て行ったアイツらを倒した方がいいと思わないか? ああ、僕は()()()()っていうんだけど、君の名前は?」

「お、オレは……()()()()だ」

「――あっそ。じゃ、もういいよ。お疲れさん」

 

 やっぱりだ、と慎二はほくそ笑みながら邪険に少年――藤丸立香を突き飛ばした。よろめいて尻餅をついた藤丸は、何をされたか分からないといった顔をしている。

 確信した。最低限、確認をしておこうと思ったが、()鹿()が紛れ込んでいた。こんな時なのにあっさり本名をバラすだなんて能天気過ぎる。そこそこ体は鍛えてたみたいだけど、アイツは脅威じゃない。あんな馬鹿なら与しやすい。それさえ分かればもう用はなかった。

 

 慎二は見向きもしないで駆け出し、地下駐車場から出ていく。

 

 ――この2004回目の異聞聖杯戦争で、最も早く、そして確実に近い勝算を立てた少年は、目的の場所に向かったのだ。

 

 そこは、()()()

 

(――まずは舞台が()()()()()()()()()()確認しないとだ。頼む、七分の一の確率なんだ、賭けに勝ってくれ……!)

 

 もし此処が慎二のいた世界なら、間桐邸に慎二はいない。あの妖怪爺や桜にでも聞けば、一発で分かる。今日の慎二はどこにいたのか確認し、自身の記憶と照らし合わせたら。

 そしてもしも此処が慎二の世界だったら――

 

(衛宮と、遠坂。それに爺様や桜に協力してくれって頼める! 爺様は令呪の仕組みに詳しい、遠坂か桜に僕のサーヴァントへの魔力供給を肩代わりさせるぐらい簡単なはずだ。衛宮もそこそこやれるみたいだし、何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なら、アイツらに他の奴らを殴らせて僕は引き篭もってればいい!)

 

 ――逆に、慎二が他にもう一人居たら。

 それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

 間桐慎二もまた、本気で、必死だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




聖杯戦争参加者
・間桐慎二
Fate遠坂√を経て漂白した慎二。
全ての蟠りが氷解し、手持ちの札で遣りくりできるように。
地の利があるため普通に優勝候補。
この慎二は漂白され、説得力のないホームズめいた知性の冴えを発揮可能。
公式での特技「名推理」を機能させ、工藤新一(江戸川コナン)みたいな頭脳を持っている事に。

・藤丸立香
fgo主人公。
どこかで詰んだ。第一部は突破している。
平凡な一般人、善悪中間。人間の平均点ど真ん中。
であるのに非日常の体験が豊富。
経験はあるが、能力はあくまで一般人の範疇。
藤丸を(体力を除いた)能力値を50点としたら、慎二は(体力以外)90〜100点。
礼装がないので魔術も使えない。サーヴァントへの支援は無理。
しかし立ち回りだけは熟練。




下馬評
・運の良し悪しを抜きにした場合、慎二の方が生き残りの目はある。が、他の面子がえぐいので余程クリティカルな立ち回りをしないと無駄。なお全参加者に主人公補正が皆無。「ここに例外が存在した」はない。藤丸は聖杯戦争の経験で、慎二は持ち前の頭脳を活かさないと駄目。
なおガイアの見立ては、藤丸は強力なサーヴァントに全て任せ、パーフェクトコミュニケーションしつつ運がよかったら他の面子が潰し合い終盤まで生き残り、棚ぼたでなんとかなる可能性はある。
慎二は度胸と頭脳と忍耐力で他の面子を上回れたら、もしかしたら……といった程度。実は地頭はこの面子で一番良い。必死で本気で冷静な慎二のスペックをフルに発揮した場合、本作では「説得力のないホームズ」ぐらいと仮定する。しかし実践(戦)経験が第五次しかないのが難点。






参加マスターの一覧
エミヤシロウ(鉄心)
衛宮切嗣(モチベMAX)
バゼット(話の都合で外れる事がない魔槍の兄貴持ち)
静希草十郎(色んな意味で未知数)
岸波白野(オリジナル、月の覇者の戦闘データ憑依)
綺麗なワカメ(万能の天才肌&特技「名推理」装備)
藤丸立香(聖杯戦争スペシャリスト)
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