何かに夢中になるということ   作:砂々時計

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4.バッセン

ライチと約束をした日から数日、今日は日曜日だ。

別に次の日にでも会いに行くことはできたけど、向こうの感じ、俺んちよりさらに貧乏そうだったから、平日はやめた。

ライチの親父って人も働いて疲れてるかもしれないし、逆に日曜日は暇を持て余してそう。まあうちもそうだからわかるんだけど。

それでも少し迷った。日曜日はバッティングセンターが混むからね。まあ結果日曜日にした。

 

父さんと母さんには話した。

なのでちょっと多めにお金貰った。500円。

あと、ちゃんとバッティングセンターの場所も調べた。

ついでに値段とか球種とかも見た。

値段については250円24球。球種は前まで行ってたバッティングセンターと変わりはなし。

今の季節は秋なので、ジャケット(安い奴)を着る。

ジャケットの裏ポケット的なところに、交通費、俺とライチと一応親父さんの分(バッセン)と、さらに少しお金を入れる。

 

「気を付けて行ってくるのよー」

 

「駅で迷子になるなよーー」

 

「うん。いってきまーす」

 

いつもバッティングセンターに行くときは楽しみでうずうずするけど、今日は特別に楽しみだ。

 

 

*****

 

 

土手の方に行く前に、一応だけどバッティングセンターの場所を直接確認しておく。一応ね。

確認し終わったら、前回どの道を通って行ったのかわからないので、土手をゆっくり歩きながらライチたちを探す。

ライチはたぶんイメトレに集中してて周りを見ていないだろうから、俺が見つけないと話にならん。

しばらく探していると、見つけた。

やっぱりバットを振っている。近くに寝そべったおじさんがいるけど、たぶんあれがライチの親父って人だろう。

 

「おーい!ライチ!」

 

ライチが一瞬ビクッとしたが、俺だとわかったようで普通に振り返って手を振ってきた。

 

「久しぶり!ミナト!」

 

俺は少し走って近づく。

今日はライチ以外の人もいるから緊張してきた。と言ってもライチみたいにどもったりはしないけど。

おまけに歳が離れている分マシだ。俺が無口になるのは主に歳が近い人の前だからな。後なんかこわい人とか。

 

「こんにちは。ライチの親父?さん」

 

「おう、俺は轟雷蔵だ。よろしくな。いやー雷市にも友達が増えてよかったよかった。」

 

「俺は山崎湊です。」

 

なんかすげー話しやすかった。コミュ力に関してはこの二人親子だとは思えん。

 

「バッティングセンターは硬球だったらどこでもいいぞ。金払ってもらうことになって悪いな。」

 

「いえ。平気です」

 

でもやっぱり結局は口数少なくなるんだよなー。

 

「?なんかミナト前と違う!」

 

「………実を言うとライチほどじゃないけど、俺も人と話すの苦手、なんです。どもったりはしないけど、口数が少なくなって声が小さくなる。まあ長い間一緒にいれば今度は喋りすぎるようになるんですけど。ちなみにライチは最初に会ったときに俺よりきょどってたので逆に落ち着いたから、普通に話せる。」

 

「なるほどな。コミュ障二人か。あと、別に敬語外してもいいぜ。」

 

「うん。じゃあこれからバッティングセンター行こう。」

 

「俺は買い物に行ってくるから二人で楽しんで来いよ。あと雷市、迷惑かけるんじゃねえぞ」

 

「迷惑かけないから、早く行こう!!親父、じゃあな!」

 

親父さんとライチはかなり仲がよさそうだ。根本的な。

 

「じゃあ行ってきます。」

 

「おう」

 

そして親父さんとは別れた。

 

 

 

 

 

 

「ライチ、そのバット持っていくのか?」

 

「カハハ!うん!楽しみ!」

 

………これは返事したみたいな感じになってるけど、絶対聞いてないな。

 

 

*****

 

 

「着いたよ」

 

「おー!すげぇ!人が沢山!球がびゅんっって!ここがばってぃんぐせんたー!!カハハハハ!」

 

お金を払ってチップというかコインをゲット。ライチに渡す。

同じところに二人で並ぶ。

さっきまで元気だったライチも周りに人が多いため段々としぼんでいった。やっぱ緊張するのな。

ちなみに俺はただ周りに人がいるだけだったらなんともない。話しかけるのは無理だし話しかけられるのもやめてほしいけど。

そんなことを思っているうちに俺たちの番になる。

順番はライチが先。

球種の設定は俺がいつもやっている奴にする。ライチの感じだと、ただ同じ球種だけじゃホームラン量産して終わるだろうからな。

 

「カハハ!」

 

ライチが位置につく。

 

一球目。

 

カキーン。ホームランとまでは行かないけど、割と遠くまで飛んだ。やっぱライチ凄いな。

そんなことを思っていたら、ライチがぐりんっと顔をこっちに向ける。満面の笑みだ。

 

「カハハ!ミナト!すげえ!すっげぇ!本物の球が飛んできて、バットに当たった!!」

 

ちなみに今ライチが使っているのは、金のなる木、のバットだ。

 

「ライチ、こっちばっか見てるけど、すぐに次の球くるぞ」

 

それを聞いてライチは慌てて振り返る。すでに球は来ていて振り返った拍子にバントみたいになってボールが転がった。

まあ此れもライチの反応速度が速いからできた事なんだろうけど。普通だったら避けるので精一杯だと思う。

 

それから、三球、四球、時々ライチがカハハハ!だとか、すげえすげぇ!だとか言いながらホームランを打っていた。

残り半球になったところで、ライチを球の当たらない端に引っ張って、普通の金属バットを持たせてみる。

まあそりゃああのバットよりは打ちやすいだろうけど、バット変えてから毎回ホームランはちょっと驚く。急いで金のなる木のバットにもどさせた。

 

それからはまたホームランを打ちつつで全球打ち終わった。周りの人たちは、はじめは驚いていたけど、今はもう叫んでいる。うるせえ。

 

「ミナト!次お前の番!」

 

「ああ」

 

俺の方がバッティングセンターの先輩なわけだし、ライチより多くホームラン打ちたいな。

 

それからかなりの頻度でホームランを打った。

もちろんライチより多かった!というかほとんどホームランだった。ここは120km/時くらいの球が上限だしな。

 

「じゃあ帰ろうぜ」

 

「うん!カハハ!曲がる球、凄かった!ミナト!でも負けたの、悔しい!」

 

「まあ俺の方が慣れてるしな。今度からまた定期的に来ようぜ。ここ以外の場所でもいいし。いろんな球種試せるぞ。」

 

「カハハハ!楽しかったし、次も楽しみ!ミナトもすげえ!」

 

それからライチとは別れて家に帰った。

 

ライチは変化球に感動したようだけど、やっぱり一番驚いてたのはバットのことみたいだった。

というか今まで普通のバットを握ったことがなかったようだ。やっぱうちより貧乏らしい。

今日は記念日(俺と初めて遊んだ)ということで、肉が食べれるといっていた。一番好きなのはバナナらしいので、今度バナナもってこようかな。

冬限定だけど。

 

 

 

 

 




作者、生まれて一度もバッティングセンターに行ったことがありません。
値段とかは調べてみただけなので、何か気になるところがあればご指摘お願いします。
他のところのことでもありがたい。

ついでに言うと、「橋の下のバットマン」なるものを読んでおりません。
設定と違ったりするかもしれないけど、そこは見逃してくだせえ。
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