何かに夢中になるということ   作:砂々時計

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6.入部

教室に入りしばらくぼーっとしていた俺だが、懐から古本を取り出す。

金はないけど本を読むのは好きだ。もちろん野球が一番だけど、やっぱり親しい友達が少ないので、野球以外では貯金した金で買った古本を読んでいる。

昨日は入学式をしてそのまま解散だったため、教室でのクラスメイトとの顔合わせ的なものは今日が初めてだ。

きっと自己紹介とかするんだろうけど、俺はそういうのは得意じゃない。

とりあえず当たり障りのないことを言って周りに合わせておこうと思う。

 

そういえば、今日は放課後に初めての部活がある。

実を言うと、入寮をしたのが数日前で、その次の日から練習に参加していた。

けど、やっぱり部活って言うと放課後なイメージがある。

だから俺にとっては、今日が初めての部活。まあこの数日間とやることはほとんど変わらないだろうけど。

ちなみに、俺のクラスには俺含めて野球部は三人。

二人ともまだ話したことはないけど、とにかくすごく目立つ奴。

名前を知ったのは入部希望者たちが集まった時。

俺は目立つのが嫌だからフツーに立っていたが、あの二人はかなり目立っていた。

きっと俺は誰にも注目されていないだろう。これに関しては、周りの奴等のキャラが濃すぎると思うのだ。

 

 

 

 

だってまさか、初日から遅刻する奴がいるなんて思うわけないだろ?

 

 

*****

 

 

今日は入寮の日。

青心寮と書かれた入口、見上げた空には輝く星の多い事。

まあ気分はセンチメンタルでもなんでもなく、緊張で歩を進めるごとに心臓バックバクなんだけど。

俺の部屋は二階らしいので、迷わず階段を上る。

一緒の部屋の先輩はどんな人なのか。緊張で足はガクブル。

俺の場合、確かに誰かと話すときは声が小さくなるだけだが、こんな一大イベントの時は別だ。

発表会とかも、緊張しすぎると足がガクガク震えるのだ。これはどうしようもない。

 

震える足で扉の取っ手に手を掛ける。

今日から俺の新・野球ライフの始まりだな。

 

ガチャリ

 

 

………

 

……………

 

 

「山崎湊です。よろしくお願いします」

 

「ああ、新入生か。俺は二年の丹波だ。よろしくな」

 

部屋に入って一番に目にしたのは、タラちゃんカットな厳つい先輩が、腹に重そうなボールを落として鍛えてる場面。

そりゃあ一瞬無言になる。よく見るとタラちゃんよりは髪の毛少ないかな。というか帽子かぶったら完全に禿げてるように見えそう。

とりあえず、扉を閉める。

 

めっちゃ静か。俺自分からはなかなか誰かに話かけられないけど、こういう気まずい空気めちゃくちゃ苦手。

とりあえず荷物の整理。

 

それにしても、寮の外にもこの部屋にも、野球の道具がいっぱいだ。

全部で何円するのか。そして今先輩が腹を叩いてるあの黒ボールは何だろう。

 

「……これはメディシンボールだ」

 

どうやらじっと眺めすぎていたようだ。この先輩顔は怖いけどいい人かも。

 

「メディシンボール………」

 

俺は相変わらずのコミュ障なので、小さくつぶやくだけ。直したい気もするけどやっぱ無理。

まあ毎日同じ部屋だし、俺がこの先輩相手に饒舌になるのも時間の問題かも。

 

「持ってみるか?」

 

先輩が話を振ってくれたので俺は頭を振ってうなずく。

 

「お、重っ!」

 

「それは5kgの物だ。それで腹筋を鍛えるが、重すぎると故障に繋がるから、もしもやるんだったら気をつけろよ」

 

「はい」

 

思ったよりも重かった。

 

「明日も朝から練習だ。俺はまだしばらく起きてるが、気にせずに今日は早めに寝ておけ。」

 

「はい!」

 

やっぱ顔は怖いけど凄くいい先輩かもしれない。

言われた通り今日はさっさと寝ることにしよ。

 

 

*****

 

 

ピピピピ………ピピピピ………

 

 

目が覚めたので、顔の横にあるタイマーを止める。

ちなみに部屋には二段ベッドが1つ。もちろん後輩の俺が下。これは自然の摂理ってやつ。

 

というか、、丹波先輩はもう起きたのか。早い。

 

「俺は先に行く。山崎も準備が済んだら早めに出ろよ」

 

「はい」

 

先輩を見送って俺も練習着を手に取る。

これが新品の練習着!

それだけで感動するけど、これ以外の道具にも一つ一つに金がかかっていると思うと、余計に思い入れが強くなる。

早速練習着に袖を通して、朝練に向かう。

 

すでに校庭にはそれなりに人がいて、俺も目立たなそうな後ろの列に並ぶ。といっても二列しかないけど。

 

しばらく待ってると、先輩たちを引き連れた、凄い極道みたいなグラサンの人が来た。

 

「監督の片岡だ。これで入部希望者は全員か」

 

「「「はいっ!!」」」

 

か、監督らしい。

周りの人の返事も凄いでかい。俺なんかびっくりして小声でしか返事できなかったんだけど。

 

「順番に、自己紹介をしてもらおうか」

 

「「「はいっ!!」」」

 

またでかい返事!俺これから大丈夫かな。

 

 

 

端から順に自己紹介が始まった。

 

 

「〇〇中学出身、川上憲史。希望ポジションはピッチャーです。よろしくお願いします」

 

とか

 

「△△中学出身、白州健二郎。希望ポジションはライトです。よろしくお願いします」

 

とか

 

「ヒャハッ!××中学出身、倉持洋一。希望ポジションはショート。足には自信があるっす」

 

………とか。

 

 

ヒャハッってなんだよ。ヤンキーかよ!!

心なしか襟足が長く見えるぞ………。

 

そんなこと言ってるうちにそろそろ俺の番だ。

あ、ちょっと足が震えてきた。

 

「□□中学出身、山崎湊です。希望ポジションは野手ならどこでもいいです。よろしくお願いします」

 

うん。やっと終わった。

 

 

 

それからも結構な人数が自己紹介をしていった。

その途中で、遅刻してきた人がいた。強心臓。

俺には見えてたけど、ほとんどの人は違う方向を向いていたから気づかなかったみたいだ。

名前は御幸一也。

自己紹介の時にはもう何食わぬ顔して名乗っていた。希望ポジションはキャッチャーらしい。

 

自己紹介を終えたら、朝練。

それを終えたら朝ごはんの時間。

 

"必ず()()()()食べる事!"とかいう地獄の文言が書いてある。

先輩は皆3杯食べている。

こんな量の飯が毎日食べられるのは大変ありがたいけど、ちょっと多すぎる。

一年は俺を含めてうっぷうっぷ言いながらも頑張って食べた。

キモヂワルイ。吐く………。

 

朝ごはんの時間も終わり、これから本格的に練習をするみたい。

一年は希望ポジションに別れて能力テストをするようだ。

ちなみに俺は希望していた人数の少ない外野手の方に行った。

そこで一つ分かったのは、俺にはボールを投げる才能が全くないってこと。

だから注目もされていないだろう。

 

能力テストが終わったら、まだ一年の俺達は体力強化のためにランニングとかをしまくった。

練習が終わる頃には、初日だからか皆だいぶ疲れていたけど、俺は全然平気。

まあ結局、夜ご飯で逆に体力失うけどね。

 

寮に戻ったら、丹波先輩と丁度入れ違いになった。

挨拶をして別れ、部屋に入る。

 

俺は雷蔵さんから貰ったバットを持って素振りをしに外に出ることにした。

毎日の習慣だしな。

おまけに、高校に入ってからはライチや雷蔵さんとは会わない。次に会うのは高校野球の試合でって約束したしな。

ここでサボったりしたら怪物ライチに抜かれるから、油断はできない。

そもそもバットを振るのは楽しいから毎日やってるってのもあるけど。

 

なるべく人のいなさそうなところがいいな。

それで見つけたのが、寮の裏の少し離れたところ。こんなところに来る奴なんてあまりいないだろう。まあ視界の端に自販機はあるけど。割と距離も離れてるし。

 

 

ライチみたいな高度なイメトレができないのは相変わらずなので、俺の場合は、バットを持ってても痛くない手首のひねり方とか、スイングの途中で素早くバットを曲げる方法とかを考えながら素振りをしている。

あとは基本的に、スイングのスピードを意識してるかな。

腕が置いていかれたりしないようにうまく体重を乗せたりとか。結構難しい。

 

でもやっぱり、素振りって楽しい。

風を切る音とか、凄い爽快感というか。

早く人が投げた球を打ちたい!

 

 

 

 




いざ書くとなると、皆さん口調がむずいことに気づきました。
寮は、丹波さんと同じ部屋。
時々思うけど、さすがアニメ。選手の髪型のバリエーションがすごい。
倉持の髪色って、深緑なのか?
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