何かに夢中になるということ   作:砂々時計

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7.紅白戦

入寮して日にちも過ぎ、クラスでの自己紹介も無難に済ますことができた俺。

前に言った同クラの野球部ってのは、御幸一也と倉持洋一って人。倉持クンは席遠いけど、御幸クンは俺の二つ前の席。

「み」と「や」だしな。

ライチは別だが、やっぱり初対面の人って苗字だろうが名前だろうが、呼び捨てでは呼べない。といってもこちらから話しかけることもないけど。

そういえば、倉持クンは足がめっちゃ速かったな。御幸クンは遠投がすごかった。

 

俺の言う放課後の"部活"もすでに始まってから一週間が経過している。

いまだに同学年の人とは必要最低限の"ああ、うん"ぐらいしか話していない。そろそろまずい。ボッチにはなりたくない。

部活自体の内容も、朝練含めて基本体力強化。

基礎は大事かもしれないけど、ちょっとつまらん。

俺の場合校庭走ってるときとかは割と余裕があるので、先輩たちの練習を横目に見てる。

個人的に凄いと思ったのは、キャプテンの東先輩と、二年の髪の短い人。結城先輩というらしい。

この二人は、見てればすぐに凄いバッターだとわかる。

スイングの勢いもスピードも、怪物ライチを彷彿とさせる。

ライチが高校生になったら、こんな感じ、いや、これ以上のバッターになるんだろうな。

俺も頑張らないと。

 

ちなみに、今日は先輩たち一軍の練習試合を見に行った。

さすが"打の青道"と言われるだけあって、打撃は勢いがわりとあったと思う。

投げていたのは、三年の先輩と丹波先輩。

丹波先輩が投手だとは知らなかったので、俺がもっと喋れるようになったら先輩の投げた球を打ってみたい。

投手不足とか言われてたけど、丹波先輩の球は割と通用しそうだと思った。他の先輩によれば、丹波先輩は精神面がダメらしいけど。

あと、先輩や同輩から凄い期待を込められている人がいた。

少し外人っぽく見えるから多分ハーフかクォーター。

その人はキャッチャーだから俺からしたら皆ほど凄さはわからないけど、それでも、何度も盗塁阻止していたのは凄かった。

あれこそ強肩というんだろう。

二年だけどバリバリのスタメンみたいだし、凄い人なんだな。

 

今日も帰ったら、外で素振りして捕球して、少し走った。

部屋では軽く筋トレと、丁寧に柔軟。

先輩の試合を見たばっかりで、素振りには少し熱が入ったかも。

 

そういえば、俺が青道高校に入ると決めたときに、さすがに120キロの球だけしか打ったことありませんとかだと心もとないので、いろんなバッティングセンターを調べたんだよな。

流石に東京ということもあって、ライチたちとは反対の方角に、140キロの球が打てるバッセンがあった。変化球はなかったけど。

140キロとなると、やっぱりコツをつかむのにも前よりは時間がかかった。まあでも普通と比べたら速かっただろう。

一週間通い詰めして、ほとんどの球を遠くまで飛ばせるようにはなったけど、流石にホームランの数は少ない。

それからは、速い球に慣れすぎて遅い球が打ちづらくなった、とかいうことがないように、120の球と140の球を日替わりで打っていた。

ホームランを打たなければただ券が貰えないので、これを入学するまでの二か月ほど続けた俺の貯金は、底をつきかけた。

だから、今年の最後の方ぐらいからはアルバイトをしなければいけない、という訳。

 

ついでに言えば、俺もライチみたいにイメトレをしようとしたことがあった。ライチほどじゃなくてもいいから、ある程度なら出来そうじゃね?みたいな。

結果は、普通に無理。

投手が投げてるとこまでは想像できるんだけど、投げた球が俺の手元に来る頃には、イメージがあやふや。

何というか、俺の都合のいいような球のイメージをしてしまってるようで、他人と戦っている気がしない。

ここでまた一つ、怪物ライチの凄いところに気づいてしまったってわけだ

まあ俺もそこまで負けているわけでもないので、特に妬みとかはない。友達だしな。

 

ちなみに、俺の場合下の名前で呼ぶ人はだいたい親しい人。ライチのことは最初から下の名前で呼んでたけど、あれは何となく。なんだか轟クンとか言う気にも慣れなかったのだ。

           

 

*****

 

 

今日は、なんと、一年対先輩の紅白戦。流石に主力の先輩方は出ないみたいだけど。

だけど、それでもやっぱり、先輩たちには勝てないと思う。何というか野球への挑み方が一年の俺達とは違う気がする。凄く重いものを背負っているみたいな。

それに比べて、俺達一年は浮かれている奴が多い。

そもそも久しぶりの試合ってのもあるし、何より名門の先輩と戦えるってこととか、自分の実力を本格的に示す場面が来た!みたいな感じ。

 

スタメンとか、交代とかは監督が決める。

一年はだいたい30人と少し。監督は全員出る機会を与えるって言ってた。ここで一年の実力を見るってことだろう。

今回のスタメンには、俺は入っていない。

まあでも、俺にもすぐ順番がまわって来るだろうから、その時に精一杯やれるだけのことをやればいい。

あ、ちょっと緊張してきた。

 

 

*****

 

 

一回表。攻撃は一年、守備は先輩。

 

これもあっという間に終わった。

三者凡退。先輩の投球、守備の迫力に押され、あっけなく。

この一回表のみで、先輩の執念のような迫力にビビるやつらが増えた。

腐っても青道。いくらここ最近甲子園に行けていなくたって、相手が主力じゃないからって、油断してはいけない。

今俺たちが戦おうとしているのは、引退を背負いながら、常に主力の座を狙って努力してきた人たちなのだ。

 

交代に関しては、監督が決めている。ダメそうだと思ったり、イニングの都合上でね。

 

時は飛んで、四回表。ちなみに俺はまだベンチにいます。

今まではヒットした人も何人かいたけど、ほとんどゴロ。

守備の迫力にも負けて、またもや三者凡退。ここまで驚異のランナーゼロ。

 

続いて四回裏。投げるのは川上っていう人。どうやら注目されている人のようだ。

投げ方はサイドスロー。球種はスライダー。

俺から見れば、たぶん甘め。結局三人ともに打たれてしまった。ゴロだったけど、先輩の走塁に負けた感じだ。

 

五回表で、初のランナーが出た。

白州って人で、ヒットしたボールを三塁手が取れず、そのまま一塁へ出たのだ。

どうやら狙って三塁側に打ったみたい。コントロールが凄いのかも。

まあ後ろがダメだったので、点は取れなかったけど。

 

五回裏は、キャッチャー交代。なぜか凄い注目されてる、御幸クンだ。

きっと中学時代に、俺とは天と地ほども違う野球生活を送ったのだろう。そんな気がする。

 

 

御幸君は、凄かった。川上クンの球を強気にリード。

二人を奪三振、一人は内野ゴロでとどめた。さらには盗塁も阻止。

どこかで見たような強肩。俺から見ても凄い。

この回で先輩の勢いが完全に止まり、逆に一年側には活気が生まれる。

 

六回表。一年の攻撃。

御幸クンが打つ番になったけど、割と普通だったかも。

ちゃんとヒットはしていたけど、場所が場所だったため塁には出れてなかったし。

 

飛んで七回表。ようやく俺の番が来ました!!

といっても俺が今居る場所は、次の打者が待機する丸い円の中。

ネクストバッターズサークルというらしいが、名称として長すぎると思う。おまけにそのまんま英語で言っただけだし。

俺の前に、あのヤンキー疑惑の倉持クンが打つのだ。

 

倉持クンは普通に出塁した。なんていうか、足速すぎだと思う。

まあ能力テストの時に50m5秒台とかいう記録をたたき出してたし。

打ったボールは三塁側にいたショートが捕ったけど、足の速さでカバーして出塁。

当の本人は、ヒャッハ!と言っていた。

 

そんで、次は俺の番。ネクスト以下略に入る前に重バットで軽く素振りしておいたし、ネクスト以下略に入ってからも金属バット(学校の)で素振りをした。

打席に立った今も、かるーく素振りをしようと思った。

そう、思ったんだけど、ヤバい。

今になって足が震えてくるとかいう鬼畜ゲ―。

緊張して素振り出来ねえんですけど!!

いやもう無理これ。おまけに捕手のすぐ後ろに監督がいるとかいう無理ゲー。

とりあえず一球は見送ろ。

 

「ストライク」

 

とりあえず息をはく。

今の球は全然見えた。

人が投げた球を打席で見るのは初めてだったけど、次も今みたいな球だったらたぶん全然打てる。まあ此れも相手によるんだろうけど。けして先輩をバカにしてるわけじゃない。

やっぱ見送って正解。なんというか、落ち着いたし謎に自信着いたかも。

倉持クンは盗塁仕掛けそうだと思ったけど、俺が打つ気なかったの気づいてたみたい。まああんなに足震えてたしな。

 

もう一度息をはく。

今度は緊張してないし、足も震えてない。ただただ投手の投げる球に集中。

今相手してる投手は、五回からずっと投げてる。

そして相手は三年生。監督への最後のアピールチャンスかもしれないんだから、すでに2イニング投げてるし、出し惜しみなどしてるはずがない。

今までに投げられた球は、ストレートと甘めのシュート。つまりこの二つが相手の持ち球。

どっちが来ても、打つ。

相手の投球フォームの違いで判断するより、そっちの方がいい。

 

 

 

 

投手が構え、投げる。

最初はストレートだった時のスイングをする。

球が途中で動き、シュートだとわかれば、それに合わせてバットの角度か軌道を変える。

 

 

カキ――ン!!!

 

 

誰がどう見てもホームラン。

一塁走者、打者走者ともにホームベースへと還る…………。

 

 

 

 

 

 

「うおっ」

 

「ヒャッハ!お前いきなりホームランかよ!」

 

「あ、まあ」

 

「やっぱお前気弱なのな!あの足の震えからのホームランで先輩たちもあっけにとられてるぜ」

 

「ほんとだ。まあ二点入ったし、ちょっと嬉しいかも」

 

「ほかの奴等も今のでやる気完全に戻ったみてぇだし、さっさと続きやろうぜ!」

 

「うん」

 

 

友達ができそうな予感。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<高島礼:一軍昇格メンバーメモ、ページ1(紅白戦後)>

 

①倉持洋一

 

・千葉のボーイズリーグ出身、スカウト組

 

・特徴は足の速さ。ニ三年も含め、おそらく運動神経はチーム1。出塁率も高い。また、スイッチヒッターでもある。

 

・ポジションは遊撃手。足の速さも相まって、広範囲の強力な守りが期待できる。二年小湊くんとの連携が嵌れば、高度な守備を誇る二遊間になるかも。

 

・ヒャッハ!という笑い方が特徴。何気に周りをよく見ていて、常にチームを鼓舞する側にいる。

 

リードオフマンとしての才能、二遊間の連携の練習のため、一軍へ。

 

 

 

 

②御幸一也

 

・江戸川シニア出身、スカウト組

 

・ポジションは捕手。強気のリードで投手をひっ張り、打者を翻弄する。捕球力も高く、盗塁阻止の際の強肩も特徴。

 

・打撃に関しては、チャンスに強い。その分走者がいない時は実力を全くと言っていいほど発揮できない。

 

・二年クリスくんと並び、今年の正捕手候補。

 

・食えない性格。年上にも大体は物怖じしない。思慮深く冷静な判断ができるが、その分直球な物言いをする面もあり。

 

正捕手候補として、投手陣への影響も考えて一軍へ。

 

 

 

 

③山崎湊

 

・西東京出身。一般入試合格組。

 中学は野球部に所属していたが、弱小だったためほとんど自主練状態。少し貧乏なようで、学校との距離を見て青道に入学したと思われる(入寮しているが)。

 

・特徴は、体力に長打力。他の一年が練習で疲れを見せる中、唯一全く疲れを見せなかった。

 

・打撃に関しては、スイングのスピード・威力ともに驚異的だが、一番はバットコントロール。球に合わせてバットの軌道を変えるのがうまい。

 

・ポジションは、基本ライトをやっているが、特に決めてはいない様子。捕球は完璧だが、球を投げるのが壊滅的に下手なため、守備力にはあまり期待はできない。

 

・性格は、少し内気で緊張しやすい。打席に立つと足が震える。

 

 

※一般入試組なので情報はまだ少ない。

 

微妙な守備力をカバーできそうな長打力を見込んで一軍へ。

情報が少ないため不確かだが、恐らく超高校級長打力の持ち主。今後に期待。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




野球のルールとか、あってるでしょうか。
気になるところがあれば是非とも教えてほしいです。

倉持とは会話させやすいけど、御幸って口調が微妙にわからないから、今回は絡ませなかった。
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