信じられないかもしれないが、この小説世界の住人は馬鹿ではない。
作者が描写出来ない科学技術が存在し、作者が描写してしまった矛盾を成立させる為に技術の進化がとんでもない速度で行われている。
当然彼らはこの世界が誰かの創作だとは思っていないが、作者がこの世界のジャンルを異世界やファンタジーではなく現実世界の恋愛と設定してしまった為、作者の行う奇行(描写)に疑問を持つことがある。
謎の擬音やスラッシュ等の語尾、現実世界ではあり得ないものが存在し、何故か自分も使ってしまう。
ゲームの発売日だとかで走っていた主人公が廊下で人とぶつかり、転んだ拍子に覆いかぶさりながら胸を揉んだサブヒロインの少女は主人公に平手打ちをし、そのまま元気に走り去った。
そのまま本編では半年後(小説では2話ぶり)に元気な姿で登場し、胸を揉まれた体験から主人公を軽蔑しつつもそれが意識してしまうきっかけとなるのだが、このサブヒロイン描写外では後頭部強打と胸部の圧迫による肋骨のヒビで通院しており病み上がりだった。
普通に考えて胸を揉まれたことより気にすることがある筈なのだが、そんな作者の力量では手に負えない感情は反映されない。
俺がそのことについて指摘すると、先ほどまで全くその件に触れなかったサブヒロインはめちゃくちゃ激怒しつつ主人公のケツを蹴り上げ去っていった。
どうやら俺が介入することで精神にかけられたデバフ(描写不足、矛盾)を解除し認識させることが出来るらしいが、作者が投稿する最新話で再びデバフがかかるようだ。
昨日までは意識して語尾に『スラッシュ』を付けていなかったヒロイン達が再び躊躇せず『スラッシュスラッシュ』言っていた事ですぐに気付いた。
この世界に来る前、寝る前には必ず小説の更新分と修正分を確認している、でないとどんなぶっ飛んだ展開や描写が来るか分かったものではないからだ。
この前は俺が絶対にやらないと誓っているクソ演出のやたら長い空白、同じ言葉を無駄に連続させてのヤンデレ狂気アピールがあり、笑い過ぎて腹筋が攣るかと思った。
分からないか、こういう事だ。
分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね分かったよね。
と言う感じだ、クソださすぎる上に読みにくいし、どうせ同じセリフの連続なんて皆読み飛ばすから雰囲気なんて伝わらないしテンポ悪いから、せいぜい連続して言わせるのは3~4回にしとけ、作者は文字数稼げて楽かもしれんがこういう描写は読み手にはただ退屈だ、声に出して読んでみろ。
作者はキャラの心情を完璧に把握しているので不便を感じないが、文章からそれを読み取るしかない読者は無駄な空白での溜めや言葉の連続より地の文での描写が多いほうが当然感情を読み取りやすい。
○○は狂っているとか、直球な解説だけで終わるなよ。
個人的に『この後俺はこの選択を後悔することになる』的な描写も好かない。
先の展開に対するワクワクが失われるし、一部の文章が上手く展開も読めない作品以外は大抵『あ、これやらかすんだろうな』と誰もが自力で察しているからだ。
冒頭で熱っぽいと言っていたヒロインが描写され、この日の体育はマラソンで主人公がヒロインに張り合う展開とか、それはもう伏線とかではなく芸人の前振りだ。
この後はヒロインは風邪が悪化しマラソン中に倒れ、ヒロインの部屋に俺が悪化させたとかうじうじした主人公が友人に励まされお見舞いにいく話へと続くのだが、この後どうせ風邪うつされる展開でもやるんだろとは皆がなんとなく思い身がまえることだろう。
深く考えなくていい分この世界は対応しやすい、前振りが露骨すぎる。
今朝は16時頃に強い雨の予報があり、それを休み時間に聞いた主人公が傘を忘れたと言っていたので、まぁそう言うイベントが放課後にあるんだろう。
ちなみに俺がメタ発言を自重しなくなり始めたからか、小説での俺は第4の壁を突破するキャラとして扱われていて、感想欄はあのキャラ要らないと荒れていた。そりゃそうだろ、デップーくらい振り切ったユーモアがないと劇中キャラが展開や作者に何か言ったりするのはクソ寒いだけだ。
所詮アマチュアの小説など趣味のオナニーとは言え、人様に見せようと始めたなら見れるオナニーにして欲しい。
「天上院さんって、子供の頃に公園で結婚の約束したことない?」
「え!?な、なんでその事を口田くんが?まさか」
放課後、他のヒロインと相合傘で帰る主人公を教室の窓から悲し気に眺める姿に、つい俺は話しかけてしまった。
小説ではこのシーンはどうせ今相合傘してる別ヒロインと主人公のイチャイチャしか描写されてないんだろうなと考えたら、この少女がどうにも哀れに思えたのだ。
「約束を思い出して欲しいと願っても、そんなのは何時になるか分からないよ。自分から言ったほうがいい」
読者人気でヒロインを変えるどころか、信じられないが昨今は直接アンケートで結ばれるヒロインを決める作品もある。
俺はヒロインを決めてからその他の人間関係や展開を構築し、矛盾や無駄な寄り道を省くタイプだったので、その手のノープラン作品は読むのを辞めてしまう。
だってヒロインすら誰でもいい展開しか考えていないなら、それまでの話に伏線はなく全て後付けになり、方向性が変わることで登場人物の性格さえ変わっていく場合があるし、何より更新が止まりやすい。
俺tueee系は基本的に主人公があっさりとトラブルを解決するので、前振りとなるピンチに陥るのは殆どがヒロインだ、だと言うのに読者に展開を委ねる程に存在を軽視されている。
例えるなら水戸黄門のゲストキャラだ、トラブルに遭っている町人がヒロインで、敵は悪代官、水戸黄門が主人公なので、ヒロインなど読者人気や作者の性癖ごり押しでいい、悪者をぶちのめすという本筋になにも影響がないのだから。
これが最初からヒロインを決めていればヒロインを活躍させる話や過去の掘り下げ、人間関係の構築が楽で話を展開させやすいのだが、昨今はヒロインは盗賊に襲われていたりチンピラに絡まれている所を助けたら惚れてエッチな事をしてくれるだけのランダムエンカウントする便利アイテムなので、物語の花であるのに根幹にかかわって来ないのだ、悲しい。
それはそれとして天上院さんは俺の言葉に再び窓からかろうじて見える主人公の背を眺め、静かに息を吐いた。
本当なら男から告白してもらいたかったのだろうが、昨今はヒロインが押せ押せで告白しないと結ばれない度胸無し系主人公が主流なので諦めたほうがいい。
ヒロインに告白させることで『でも俺もう○○と付き合ってるから』、『2番目でもいい』と言う【俺は断ったんだけどそこまで言うなら断ったらかわいそう】だとか、別のヒロインも同時に告白して来て『しかたないから両方幸せにしなさいよね!』みたいな展開から、【どうしてこんなことに】みたいなあくまで好かれただけで俺はハーレム望んでませんよ~みたいな楽な展開にしたいのだ、死ね。
小説なら合わない作品はただ読むのを辞めればいいのだが、この世界と元の世界で二重生活する俺はこの健気なヒロインに同じ人として同情してしまう。
あの優柔不断で、鈍感で、難聴で、思い込みが激しく、友達やヒロイン以外人間と思っているのか怪しい主人公にはもったいないが、この世界でヒロインとして存在してしまった以上主人公と結ばれるのが一番幸せになれる選択肢だ。
仮に俺が約束の相手だと彼女を騙して付き合ったとして、待っている展開は【主人公を裏切った女として不幸が訪れ破滅する】か【俺が彼女を騙した事を何故か知った主人公に俺が破滅させられる】、そんな行き過ぎた一方的な【ざまあ】展開が発生することだろう。
ちなみに口田とはこの世界の俺の苗字で口田語(ぐちだかたる)がフルネームだ、終わってる。
「どうやったら気持ちって伝わるんだろうね」
顔を真っ赤にし目元を潤ませた女子に休日遊びに誘われても、自分に気があると全く考えない主人公に察しろと言うのは無理だ。
「たまに明らかに人の心読んでるような発言してるんだけどね」
いやマジであれ辞めてくれないかな、話によって鈍かったり鋭かったり。
「わかってて、あぁなのかな。私に興味ないって意思表示なのかな」
闇落ちしそう。いやそれは無責任すぎるか、なんとかフォローしないと。
全然関係ないんだけど付き合ってたり、自分の子供でもない女性の頭を撫でる主人公多過ぎないか、無意志とか故意とか関係なくあり得ないシチュエーションだろ、犬猫じゃねーんだぞ気持ち悪い。
「それは極端すぎるよ、あいつは自分が好意を向けられるとは思ってないだけだよ」
まさか俺がな、とか言っときながら何かあるとついヒロインの頭撫でちゃうとかサイコパスすぎるけど。
「口田くん、もしかして私の恋に協力してくれるの?」
「それはむり」
馬鹿ぁぁ!それを明言して連絡先交換なんてして、人がいるところで連絡取りあったり行動したりすると、不人気ヒロインが物語中盤から別キャラとのカップリング匂わせられてサブヒロインになるか、俺が間男に仕立て上げられて破滅する可能性があるんだよ。
「ま、あいつにはそれとなく天上院さんと、例の約束を意識する様に誘導してみるよ、ばいばい」
主人公に貸すとどうなるか検証でもって来たが、タイミングが悪く受け取って貰えなかった折り畳み傘を天上院さんに押し付けて言いたいことだけ言って教室から出た。
置き傘は一本も残ってなかったし、傘をもっている様にも見えなかったので、これもしかすると雨に濡れて帰った天上院さんがまた風邪でもひくか、主人公に執着するヤンデレが生まれる展開だったのかもな。
続かない
この後小説の更新が止まって主人公補正がなくなり、小説主人公は冴えない普通の高校生としての生活が始まったり
それを彼女とイチャイチャしつつ現実では独り身なことに口田が悶々としたりするんじゃないですかね