大学内にあるコンビニの奥の棚には惣菜パンが売られている。きっとどこのコンビニでも売られているでしょうが、我が結東大学のコンビニにしか売られていない惣菜パンがある。
結東焼きそばパンと言われるそのパンは濃厚秘伝のタレを絡ませた特製焼きそばをパンから溢れんばかりに詰め込んだ至極の一品である。
無論僕もその焼きそばパンに心奪われた一人だ。家で弁当を作るのだが、この弁当はあえての米抜き、主食はそう、結東焼きそばパンと決めている。弁当はパンのためのおかずに過ぎない。
なのに、朝から課題が僕を追い詰める。昼が落ち着いた頃、やっと課題から解放された僕は急いでコンビニへと向かった。入店音を置き去りにする速さでパンが並ぶ棚に駆け込んだ。
あ、あ、ある!一個だけ!ある!
もう売り切れていると覚悟してたけど、あった!
手を伸ばし掴もうとしたが、横から大きな手がまた焼きそばパンに迫っていた。
「あ」
「お」
横にいたのは身長190はあろうかというタンクトップに短パンのムキムキの大柄な男だった。顔も眉は太く、目はカッと見開いていて髪は角刈り、肌は全体余すことなく焼かれている。うわ、ゴリラだ。上腕二頭筋の太さが僕の太ももはありそうな男は僕と視線が合うと手を引っ込めた。
「あなたも、好きなんですかこれ?」
「そ、そうですよ」
敬語で話しかけられた。声が思ったより渋くてかっこよかった。
「俺、鋼山筋太郎っす。文学部一年っす」
「僕は国光遊飛、同じく文学部一年」
「あ、同じ一年か!よろしくな!」
「うん、よろしく!」
差し出された手は野球のグローブかって位でかい。握手すると僕の手首から先は見えなくなった。
「これ、すっげー美味しいよな」
「そうそう!ソースが濃くてやみつきのに、そんな焼きそばが漏れてきそうなほど詰められてるもんね」
「しかも値段も税込み110円!財布にも優しい」
あ、この焼きそばパンを一緒に熱く語ってくれる人がいるんだな。ここに来て変な人ばっかりだけど、やっと、やっと、共感できる友達ができたよ。
「じゃあこのパン賭けてデュエルしようか!」
は?
「ほらディスクの準備をしな」
くそ結東市め、油断したらすぐこれだ。
「いや、筋太郎君に譲るよ。僕お腹減っててさ、デュエルは止めておくよ」
「いいや、貰えん。デュエルして、勝ってこそ気持ちよく食べれるのだ!」
僕の意見ガン無視かよ。お腹減ってるって言ってるじゃないか。
「ほ、ほら、筋太郎君もお腹減ってるよね。僕のことはいいからさ、パンをレジに持っていきなよ」
「だめだ!デュエルをしてパンを食べる。これぞ俺の昼休みなのだ!」
もうデュエルしたいのかパン食べたいのかどっちなんだ。話の目的が変わってるぞ。
「遊飛、その優しさがデュエルで仇となるぞ」
突然何言い出すんだ。デュエルしないって言ってるじゃん。何デュエルする前提で話してるの君。
「こらこら、ここでデュエルしちゃだめだ」
すると初老の店員さんがレジからやってきた。しめた、このスキに逃げ出せる。
だが店員さんは店の奥を指さして
「あそこでやりなさい」
「うっす!」
ドリンクが売られているケース前は異常に広い。人7.8人は通れそうなほどにスペースがある。おかしいなと思っていたが、まさか店内でデュエルするために設けられていたのか...!?
「さぁ国光遊飛、俺とパンを賭けて男の勝負だ」
あ、だめだ。逃れられない。