オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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女王歴 2017年 おしまい
嫌がらせ


それからはあっという間に話が早く済んだ。

 

「おぉぉぉろら!!!!」

「メリュジーヌ」

「ごめん!ごめんよぉ!!!結局僕は何も出来なくて!最後の最後まで君に辛い責務を任せてしまった!」

「そんなことないわ。あのままだったら多分、巫女も認めてくれなかったと思うの。彼女が求めていたのはこの島で生まれた英雄だもの。人身御供じゃない。だから座に刻まれたって、それが強制されて嫌々やっている物なら意味がなかった。……貴方がいたからなの。あっちの私は英雄として頑張っていこうって決意出来たのは」

「うん!僕たちは、どんな形であれ最後まで一緒だ!」

 

くるくると楽しそうに回る二人。彼女達が敵に回ったら、ビーストと言えど逃げの一手に走らなければならないと誰が思うだろうか。

 

「ムリアン?な~んで、戦争なんてしてるのかしら?議会で決まったわよね?冬の國は妖精達の為に残す必要があるって?それとも、何?私抜きで、この数日の間に、議会を開いて、皆の承認を得たのかしら?メリュジーヌは知らないって言ってたけど?」

「い、いや……これには……深い、訳が……」

「罰として、円卓の人道的解体、それと暫く悪魔のドリンクはナポリタン味だけね。もし出来なかったら、貴方の家にある私の写真集。全部燃やすから」

「ヒエッ!?」

 

瞬く間にブリタニアの軍は足を止め、円卓の人たちは剣を置いた。

ブリタニアの人たちはともかく、円卓は冬の國にいる人間の解放を目的としていたので、それにしてはあっさりしているような気がするが、彼女の演説が上手かった。

 

 

このまま冬の國に攻め込めば、その守ろうとしていた同朋達も傷つけることになってしまう。

そして冬の國を滅ぼしても、彼ら全員を一度に受け入れることは出来ない。

最低限の権利どころか、家や明日食べるご飯すら失った彼らがどう生きればいいのか。

 

オーロラは冬の國でも令呪による懲罰の対象に人間を含めることを、()()()()()()()()()()()()()()確約させた。

 

事故のような物とはいえ、アルトリアを狙ったことで遂にキレたらしい。

 

『いいわね?』

『…………』

『は?返事は?無視するの?』

『は、はい』

 

借りてきた猫みたいな目をして、その場で何度も頷いていた。

 

これには円卓も納得せざるをえない。彼らはパーシヴァルからの提案もあり、ブリタニアに拘束されることを選んだ。目的の為に悪を為している自覚はあったのだろう。

決して悪いようにはしないと、最後まで彼らの身を案じていた姿が印象的だった。

 

「それで、貴方達は……ごめんなさいね。指名手配は解除させたわ。けど、まだ末端まで行き渡ってるか分からないから、暫くはうちで匿うことになってしまうの───あ、ストーム・ボーダーだったかしら?あれは、裏庭に運んでおいたわ。下手にこの國の空気に当て続けていると、外の物は朽ちてしまう。だから私の領域の中に置いておいた方が船にも良いと思ったの。皆さんも屋敷に誘ったのだけれど、貴方達の帰る場所を守る責務があると断られてしまったわ。食料と燃料は受け取って貰ったから、お腹は空かせてないと思うけど」

 

ストーム・ボーダーはいつの間にかソールズベリーの屋敷の裏に運び込まれていた。藤丸達は急いで向かったが、キャプテンがドン引きするぐらいの大量のQPを受け取ったため、その搬入にマリーン達は嬉しい悲鳴を上げていた。

 

「お、おぉ……藤丸か。よくぞ、帰った」

「新所長?」

「すまんな。彼女に悪意はないのは分かっているのだが、どうにも心臓に悪くて。いきなりアルビオンと対面するとか、寿命が縮むって。

──ごほん。お前達が無事で良かった。うん、ダ・ヴィンチ女史も、何もなかったようで……マシュのことは聞いている。彼女の言葉を信じるなら、命に別状はないとのことだ。この空間ではストーム・ボーダーの出力も安定している。安心して彼女を迎えに行ってやりなさい」

 

どうやらオーロラの屋敷周辺は、ブリテンではなく『アルビオンの土地』という扱いで、英霊も問題なく召喚出来るようだ。

あまり広くはなく、一歩でも外に出れば消えてしまうそうなので、召喚する英霊の数は最低限に絞られているようだが、シェイクスピアだけはオーロラの要望で呼び出されていた。

 

「ハハハハ!!!こんな面白い仕事、いつぶりでしょうか!筆が踊るようですぞ!!!」

 

何やら一筆頼まれたようで、余程良いネタを貰ったのか、原稿用紙がコピー機みたいな速度で消費されていた。

 

ストーム・ボーダーでメンテナンスを受ける為にダ・ヴィンチとは別れ、藤丸はマシュ探しを再開することにする。

捜索とはいってもマシュは過去に飛ばされ、そこで数年ほど活動したのちに、封印され現代まで眠ることで、戻ることにしたようだった。

幸いにも、その過去で知り会ったのがハベトロットであり、彼女はマシュがどこに封印されているかを覚えていた。

 

「そうそう。この木だよ。マシュはこの木の下に埋められる」

 

そこはソールズベリーにある学園の大木の下だった。

ハベトロットに案内された藤丸達は半日かけて、マシュを掘り起こした。

 

「これは……結晶?」

「棺らしいよ。よく分かんないけど、君が触れば彼女は目覚める」

 

苔の生えた水晶のような物の中にマシュが眠っている。

藤丸はその言葉を聞いて直ぐに手で触れた。

 

「せん……ぱい?」

 

結晶が砕けて、彼女は直ぐに目覚めた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 

そして堰を切ったように泣き出した。

数日ぶりに再会したマシュは髪が伸びていた。

色々と……本当に、自分の人生を一から見直すぐらい色々な出来事があって、そこで10年もの月日を過ごしたらしい。

 

「わたし、ダフネさんを救うことが出来なくて!絶対に助けるって約束したのに、それなのに!」

 

過去での影響か、老いることはなかった。

それでも、とても長い間、時間を共にし初めて出来た親友を失ってしまった。

妖精がどれだけ危険な存在であるか分かっていた筈なのに、無垢なふりをして大切な人を失ってしまった。

 

「私があの時、盾を取っていれば彼女を救えた筈なのに!誰かの為ではなく、自分の為に盾を取れば」

「…………!」

 

藤丸は何も言えなかった。

気づいたのだ。自分は選択を間違えた。

何もしなくていいは何もしてはいけない訳ではない。マーリンはそれを肯定した。

 

きっと、藤丸はモルガンとの面会が叶った時、マシュと同じ時間に飛ばすように願うべきだった。

 

ブリテンの事情は初めから彼女達だけで解決出来た。

自分がいればマシュが守りたかったという人を救えるとは限らない。けれど、何千年もこんな暗い土の下で悲しませ続けることはなかった筈だ。

 

彼ら二人は、それから長い間。強く抱き締め合った。

もう自分たちは間違えないと、強い決意を新たにして。

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

「バーゲスト。貴方を正式に私の後継者として任命します」

「わたしなんかに務まるのでしょうか?」

「務まるに決まってるでしょ?貴方は私の娘で、頑張り屋さんで、今回、確かな結果も残してきたもの」

 

それから数日。

戦争騒動もあらかた収まったあと、オーロラは娘達に告げた。

ブリタニアは当分オーロラが統治するらしいが、正式にバーゲストが後任だと定められたのだ。

アルトリアは本人のやる気がゼロなため、何の立場も柵もない代わりに、自由に生きられることを許された。

 

第二王女としての王位継承権を捨てろと言ってるに等しいが、元から彼女には王族としてではなく人並みの生活が性に合っていたのだろう。

 

後日、藤丸達が顔を伺に行けば、仕留めた猪を担いで、サムズアップしてきた。

 

「やっぱ、私って村育ちだし、村での生活が性にあってたんだよ。血抜きすませてるし、どう?今からバーベキューしない?」

「バーベキューですか。良いですね、先輩」

「うん。皆でやろう!」

 

いつまでブリテンにいるのか。あの戦争の騒動以来、事件らしい事件が起きていない。

だが手に入らなかったロンゴミニアドの代替品についてオーロラに当てがあり、その交渉がブリタニアの最高幹部達を挟んで続いている。

新所長とダ・ヴィンチちゃん、それとホームズがこれを担当していた。

藤丸は精神的に摩耗したマシュの側に出来るだけいるようにと言明されている。

 

「このまま何も起きなければ」

 

そう願うのは罪だろうか。

藤丸達はつかの間のバカンスを謳歌していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

秋の森

 

「……おーい、どこに行ったんだ?」

 

その日、朝から姿の見えない相棒をオベロンは探し回っていた。

 

「寝床を新調したのがよくなかったのかな?でも気持ち良さそうに寝てたし、思い当たる節は……」

 

「……オベロン?どうしましたか?」

 

「え、……と、君は?」

 

すると見なれない、けれど不思議と親近感の湧く妖精が空から降りてきた。

翅の氏族だろうか?随分と綺麗だが、風の氏族の翅は自分と同じく飾りなので飛べない筈だ。

 

「貴方の相棒/妻の、ブランカ・ティターニアですけど?」

 

「は?」

 

「そう言えば、オーロラ様からこれを渡すように頼まれて……うん?オベロン。少し小さくなりましたか?」

 

今、とんでもないことを言われた気がした。

……いや、そんな筈はない。きっと気のせいだと、オベロンは震えながら一枚の紙を受け取った。

 

『なんと!妖精王オベロンに付き添う、健気な虫の妖精ブランカの正体は彼の妻、ティターニアだったのだ!──ティターニアを召喚出来たらってお願いしたけど、シェイクスピア的にはこっちの方がありなんですって。捏造じゃなくてキャラが勝手に動いた、彼女達がそう望んでいるから一つの形になったそうよ→と吾輩が申しております+(丁寧なサイン付き)』

 

紙を引きちぎる。

 

……やっぱ、ブリテン滅ぼそっかな。

 

そう思うオベロンなのであった。

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