オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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団長とメリュジーヌ

新しい物事を始めると時間はあっという間に過ぎると言うが、メリュジーヌと主従関係になってから3年は本当にあっという間だった。

 

 

まず彼女が本当に厄災になってしまわないかの確認から始まり、騎士団や街の人たちへの説明。今後の展開の打ち合わせや、メリュジーヌに好奇の目を向ける他の領の領主達への対応、まるで狙いすましてきたかのようにソールズベリーに直撃する今期の厄災への対策等々、既に死に体だった体に鞭を打って走り回った。

 

 

「あぁん?てめぇ何様のつもりだコラァ!」

「何様も何もオーロラの騎士様だけど!?」

 

一番大変だったのは、当時の団長とメリュジーヌがどちらがオーロラの側近として相応しいか喧嘩しだした()のことだった。

うちの団長は腕っぷしの強さは勿論、人望が高い人間が就任する傾向が強いのだが、私が似てる気がするからとベオルフと名付けた彼は歴代の中でも飛び抜けて強く、普段は理性的で非常に頼りになるが一度プツンとキレたら誰も手の付けられなくなってしまう癖のある人物でもあった。

 

最初メリュジーヌを紹介した時は、彼もこれからの同僚として紳士に当たってくれていたのだが、あのバカ……メリュジーヌはベオルフの武勇伝である近隣で悪さをしていたドラゴンを倒したことがあるという話を知ると、めちゃくちゃ煽った。

それだけ自慢にするからにはさぞかし名のある竜を討伐したのだろう……え?名もなきはぐれの竜?ぷぷっ!そんな蜥蜴倒したぐらいで武勇伝とか笑っちゃうねー!

 

自分にはまだろくに騎士として自慢出来る話がないことに嫉妬したのだろうか。

その時はまだ足も治っていなかったので、割って入ることが出来なかったのが災いし、言い争いから取っ組み合いになり、そのまま場外乱闘へと縺れ出た二人には頭の痛い思いをさせられた。

 

意外だったのが、メリュジーヌ相手にベオルフが想像以上に食い下がったことだが、後のメリュジーヌ曰くベオルフは自身の武勇伝として語っている竜を殺した時に呪われており、その呪いがメリュジーヌに対して不利に働くものであったらしい。

本気を出せば瞬殺出来るが、それをやるとちょっと自分を保ってられなくなるからと……メリュジーヌとベオルフの戦いは三日三晩続き、街は大変な大騒ぎとなって、修繕費は目を覆いたくなるような金額になった。

 

幸いにも死傷者は出なかったが、損失分を取り戻すには10年は必要という計算になり、「たった三日……喧嘩だけで?」恐らくメリュジーヌの手を食べて耐性が出来ていなかったらそのままモース化していたぐらい青ざめた。

 

「ふっ、やるじゃねぇか」

「キミも人間にしてはやるようだね」

 

二人は拳を交えたお陰で分かりあえたそうだが、その日から1ヶ月ぐらいは殆ど寝ずに被害の復興に当てさせられ、気づいたらまたおっぱじめそうな二人には一時も目を離せなかった。

メリュジーヌの身体の一部を食べ続けた効果がその頃に出始めて、いつの間にか歩けるようになっていたが、そんなことに喜んでいる暇のない忙しい毎日だった。

 

それに比べたら厄災なんてどうってことはない。

今回は2部六章の一番最初にも出てきた枯れ木を思わせる厄災が形となってソールズベリーに襲ってきたが、メリュジーヌがこれ幸いにと飛び出して、一息で吹き飛ばしてしまったのだ。

 

 

「これで僕にも箔がついたね!」

「箔、箔ねぇ…………」

 

そして三年が経った今、ある程度メリュジーヌについて分かってきたが、目下の悩みは彼女の立場についてだった。

 

名目上、妖精の守護者に在籍していることになっているが、あれはどこの領主にも認められたわけでもないソールズベリー内だけの騎士団だ。オーロラ一人でこの街を回している以上あまり強い権限は持たせられないし、せいぜいトップの団長でも私の政策におかしいと判断した時に限り意見する事ぐらいしか許されていない。他と比べれば高給取りであるが騎士とは名ばかりで、言っては何だが現状の妖精の守護者はお貴族様が気まぐれで作った傭兵集団のようなものだった。

これで上手く回せているので、今のところ変えるつもりはないが、果たしてここに彼女を押し込めておいて良いものだろうか。

 

せめて側付きぐらいにはするべきなのかと思ったが、問題があった。

 

「……ねぇ、メリュジーヌ。もし私が殺してといったら直ぐに殺せる?」

 

「うーん。直ぐには無理かな。出来るだけ説得して百年ぐらい心の準備をしてからならいけるけど」

 

「なら例えば……私がこの國を出たいって言ったら?」

 

「え、普通について行くつもりだけど、もしかして一人旅が好きなタイプなのかい?」

 

ケロッと言ってしまうが、この國を出るということは汎人類史に行きたいということになってしまい、それについて行くとは原作の彼女を知っていればあり得ない話だった。

 

「いや、でもあれじゃない?外って人間の支配する世界でしょ?この街の人間達は好きだけど、外の人たちは根本的に違うって言うか危ないじゃない?」

「それは承知の上さ。だからこそ僕が護衛に付くんだろう?」

「とは言いつつ、いきなり刺したりしない?」

「……なんで?」

 

オーロラの中身が『俺』のせいなのか、それとも単純に目覚めた時期が早かったからなのか、根本的な部分で彼女が求めているオーロラ像が変わってしまっている。

 

綺麗だ、可愛い、とはよく言ってくれるので見た目を好いてくれているのは分かるのだが、根本的なそこが分からないといつ彼女の地雷を踏んでしまうか恐ろしくて容易に踏み込めなかった。

 

「もしこの國を出て人間の世界で暮らすなら、空気の清んでいる泉のほとりで暮らすなんてのはどうだい?」

「そうね、もし隠居するんだとしたら、なるべく人と関わらない片田舎でひっそりしていたい()

「……もう。二人の時ぐらい口調は元に戻していいって言ってるだろう?」

「五百年こうだったのよ?今さら変える方が難しいわ」

 

少なくとも『俺』の存在は知っていて受け入れてくれているようだが、自分を含めてのオーロラとしてなのか、それともカルデアに召喚された時と同じノリなのか、後者なら俺のことを恋人だとでも思っているのかと、まだまだ分からないことだらけで、そんな彼女への対応に困り果てていた。

 

何で聖杯戦争で間桐臓硯が令呪を設けたか心底理解させられる。言うこと聞かない超常の存在とか首輪もなしにつれ回せない。

 

「ハァ……まぁいいわ。それより今回のことで団長になる箔は出来たと思うけどやるの?」

 

ここで次の団長は誰かという話になったが、ベオルフはもうすぐ任期を終えて引退することになっていた。

ベオルフは 取り替え子(チェンジリング)でも、その子孫でもない、この國の人間の為、騎士でいられる期間は8年と極端に短い。ちなみに 取り替え子(チェンジリング)その他子孫、妖精は40年が限度であるとされているが、その違いはこの國で産まれた彼らの一生が30年足らずに設定されている為であって、特別贔屓している訳ではなかった。

8年経てば定年退職扱いで、一度卒業してもらう。希に死ぬまでやり遂げたいという人もいるので再雇用することもあるが、ベオルフは任期が終わったら、嫁さんと穏やかな余生を過ごすのだそうだ。

 

二人とも子供は好きだったが、彼もその嫁も子供を成すことは出来ない身体だった。

この街なら養子を取るという手もあったが騎士団に入っている時はいつ死ぬかもしれない自分が子供を育てるなんて無責任なことは出来ないとぐっと堪え、もう辞める時期になった今では子供が育ちきるまで生きられないからと諦めることにしたらしい。

 

「団長の話……君と一緒にいる時間が減るから本当はやりたくないんだけど……やるよ。ベオルフが俺の後はお前に任せたってうるさいんだ。確か40年ぐらいだったよね?後継者を育てるなんて器用なこと僕には出来ないから、その頃に良い感じの人材をピックアップしててくれないかな?」

「そう、あの子が……ふふ、もしかしたら貴方のことを自分の子供みたいに思ってるのかもね」

 

最近良く絡んでいるなと思っていたが、まさか団長の座を託されるほどだったとは思いもしなかった。

それにメリュジーヌも頭オーロラではなく人と関わって、受け取ったものを果たそうとしてくれるとは新しい発見である。

 

「分かったわ。それはこっちで何とかしておく。でも団長になるんですもの。これからは暴れる側じゃなくてそれを止める側だってことを肝に銘じておいてね」

「……うぅ善処はするよ」

 

 

 

 

それから半年が経ち、ベオルフの後継者としてメリュジーヌの名が上がった。

彼と彼女の街を半壊させた喧嘩の話はこの街で知らないものはいないほど有名で、そこそこ頭も回るという話だったので反対の声が上がることはなかったが、冬になると布団に丸まって絶対に出てこようとしない芋虫団長に団員達は散々苦労させられたんだとか。

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