オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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秋の戦争

「ねぇオーロラ様!どうして夜になるとキラキラお空が輝いて見えるの?」

 

「あれの一つ一つがね星って言って自分で輝いているのよ。あんなに小さいけど、本当はこの大地よりもずっと大きいの」

 

「ええ!ブリテンより大きなのがあんなにたくさんあるの!?たいへんじゃん!」

 

「あら?どうして?」

 

「だってブリテンより大きいなら何処に逃げるのさ!落っこちてきたら皆潰れちゃうよ!」

 

「ふふっ潰れ………ふふふふふふ!!」

 

ある日のことだ。

祭りの夜に子供を一時的に預かることになった。

子供の名前は……なんだったか。もしかしたら聞いていなかったのかもしれない。

 

ここは危ないから離れた場所でお話しましょう。

 

満天の星が望めるそこで語り出すこと少し。あまりにも面白いことを言うのだからオーロラは噴き出してしまう。

 

でもそうだ。この街で生まれ育ったこの子にとってはこの街こそが世界の中心で、空に浮かんでいるならいつかは落ちてくる筈だと考える方が自然ではある。

 

まだ小さいし、学校にも通っていないからこその純粋な発想だったのだろう。

 

訂正するべきかもと思ったけど、どうせ何れは分かることではあるし、もう暫くはその感性を大切にして欲しいと真実は打ち明けないことにした。

 

 

 

 

「お……ろ、ら……さま」

 

そして血塗られた大地に大人になった彼が倒れている。

あの日と同じ満天の星。

あの日と違うのは年月と血の匂い……ただそれだけ。

彼の胸の中心には槍のような物が刺さっており、今にも息絶えそうなその口は必死に最後の言葉を絞り出そうと酸素を吸い込んでいた。

 

「えぇ……大丈夫。私はここにいるわ」

 

優しく抱き抱える。血で汚れるなんて気にしなかった。

 

「けっきょく……ほしは……ふってきません……でした」

 

「そうね。だってまだあんなに遠くにあるんだもの」

 

「もしふってきたら……ぼくが全部ぶっこわせばいいんだって……きしになりました。だってこの街をまもりたかったから……母とみんなをまもりたかったから……」

 

「…………」

 

「おーろら……さま。どうか。どうか。このせかいをにくまないで…………あなたをきらいにならないで。ぼくは死ぬけど……きっとこの戦争は無意味なんかじゃ。ない……きっとおわれば…………いわ……。に」

 

あぁ眠ってしまった。

全く仕方ない。私がおぶって両親の元まで送り届けよう。あの日と同じように……彼を大切にしていた両親のもとへ。あの日と違うのは彼を迎えいれるのが温かい家庭ではなくて冷たい土の中であること。ただそれだけだ。

 

 

…………。

 

 

「絶対に許さない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋の戦争が始まる。

 

 

トネリコを筆頭とした円卓を名乗る武力勢力は妖精國統一を掲げ瞬く間に他の氏族たちを制した。そしてロンディニウムにて人間の王ウーサーがブリテンはじめての統一王になると宣言。

 

だがしかしソールズベリーはどうした?風の氏族の長オーロラはそれを認めたのか?

 

妖精たちは疑問を口にした。

それというのも彼らはソールズベリーにだけ進軍しなかったのだ。

 

ウーサーのお目付け役トネリコは彼女(オーロラ)は再三の呼び掛けに応じなかった。よってソールズベリーは例外とする。そう言って終わらせようとしたが、彼らはならばウーサーが統一王を名乗るのは分不相応だと訴えた。

訴えるだけならいいが、それだったら従う理由はない。これまで通りやらせてもらうと声を上げ始める。

 

「このままではダメだ。風の氏族長が言葉で従わないなら街を制圧して無理やりにでも従わせるべきだ」

「だめです!あそこだけは、あそこだけは血で汚すわけにはいかないのです!」

 

そこで初めてウーサーとトネリコの意見が対立した。

 

「だがこのまま指を咥えてみているわけにもいかないだろう」

「そんなことをすれば円卓内に亀裂が生じかねません!我々はこの戦争でソールズベリーは戦場にしないと誓いを立てたではありませんか!」

 

円卓ははじめからソールズベリーには武力を向けるつもりはなかった。

あの街はあくまで自分達が理想としているこの國の理想系。秘密の花園のような場所だ。

そこを踏み荒らすようでは、自分達の目的が分からなくなってしまう。

 

だから他の氏族たちがみんな従うなら、そして圧倒的な力の格差を見せつければ、あのヒトに優しいオーロラのことだ。イタズラに兵士を消費するような真似はせず無血で降伏してくれるだろうと思っていた。

 

しかし秋の戦争が始まってからソールズベリーの門は完全に閉じられていた。

まるで嵐が過ぎるのをじっと待っているかのようで、戦争から逃げてきた妖精や人がいくら訴えても堅牢な壁の中から返答はない。

門を開けないのなら城壁を登るか、壊そうとする連中はいたが大妖精オーロラが何百年と魔力を注ぎ込んだそれは見掛けだけの大きさではなく街全体を覆っており、そして並大抵の存在なら髪の毛一本侵入も許さない頑固な結界のようになっていた。

 

「君ならあの結界を破壊することも出来るだろう」

 

ウーサーの言う通り、トネリコなら破ることは可能だがそれをやると攻め込んできたと勘違いさせてしまう。何としても荒事になるのは避けたかったトネリコは神代に迫る魔術を駆使して、何度もソールズベリーの中に手紙を送ったが、これまで返事が返ってくることはなかった。

 

味方なのか敵対するつもりなのか、それとも中立でありたいからなのか。

手紙を返してくれない理由が分からずトネリコは困り果てたが、それだけで敵認定して円卓を向かわせるのは憚られた。トネリコにとってそれだけあそこは大切な場所だったのだ。

 

きっと彼方にも返事をすることが出来ない特別な事情があるのだろう。

 

そう自身を納得させ、仕方がないのでソールズベリーはないものとして計画を進めようとしたが、今になってソールズベリーという例外をいいことに不平不満を訴えてくる勢力が増えてきてしまった。

 

「……思えば円卓が剣を掲げた時点であちらと平和的に交渉出来る余地などなかったのかもしれない。だがこのまま僕達がしてきたことを無意味に終わらせるわけにはいかないんだ」

 

「そんな……どうして」

 

「僕だって嫌さ。君と誕生祭の日に見た春の思い出を忘れることはない。だけどこれは戦争なんだ。僕は死後どれだけ貶められるのだとしても、ブリテンの統一を成し遂げなければならない」

 

旗色を示さないなら強引に染め上げるしかない。

最後まで反対の意を示していたトネリコだが、ウーサーに押しきられる形でソールズベリーへの進軍が決定した。

 

 

 

円卓とソールズベリーの全面戦争。

それはトネリコとオーロラの間に取り返しのつかない確執を生む原因となる。

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