オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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女王歴
グランドキャスター


人間としての死に様は己が考える限り最悪だった。

子供を助けて大人が犠牲になるという美談にもなり得たそれは人が持つ無邪気な悪意。それに歪められた。

 

パシャリ パシャリ パシャリ

 

一体こんなものを撮って後でどうするつもりだと言うのか。

 

真っ赤に染まり、臓物が飛び出した男の姿だ。

 

SNSに上げるのだろうか。週刊誌にでも売り込むのだろうか。それとも酒の席のツマミにでもするつもりなのか。

 

「きゅ、……きゅう……しゃ」

 

 

 

「うわ、起きたよ。気持ち悪ぃ」

「生きてる生きてる!」

「ちっ、うるさい。声が拾えねぇだろうが」

 

こんなものを平気で撮る人間が普通である筈がない。

普通であっていい筈がない。

 

だけれど、この世界はいつからかおかしくなり、死にゆく人間をコンテンツとして消費しようとする人間よりも、学校に行かない、働かない人間の方が普通ではないと差別される。

 

くそが くそが くそが──

 

もしも今日。家から出なかったら、子供なんて助けなかったら、まともな人間がこの中に一人でもいれば。

 

誰一人として自分は無関係だとシラを切り通す見下げた悪意には吐き気がする。どうしてこんな奴らがのうのうと生きてる。どうしてこんな奴らを当たり前のように量産する社会が先進国だと称賛される。

こいつらも、俺を虐めたアイツらも、こんなゴミだらけの世界なんて滅んでしまえ。

埋没していく意識の中、文句ばかりが頭に浮かんだ。

 

そして「あぁ……」こんなになっても親に感謝の言葉の一つも考えない俺も同類か。

 

虐めが原因で引きこもりになって数年。親不孝な俺の最後なんて、所詮こんなものかもしれない。

 

そのまま最低で最悪の気分のまま『俺』は死んだ──

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

そのまま消える筈だったんだ。

最後に助けた子供の声がしたような気がした。そんなものは気のせいだ。

オーロラに生まれ変わって千年近く。頑張ったけど、また最低で最悪の気分のまま死んだ。

もう駄目なんだ。私の運命はそういうものなんだと、諦めて真っ暗闇の中に体を放り投げた。

 

このままどこまでも沈んでいって、自分が何者なのかも分からなくなりながらひっそり消えていきたかったのだ。

 

だけど……真っ暗闇の中で明るく照らす星があった。何日も何年も何百年も。呆れるほど長い年月が経っても飽きずに私を照らしている。

私が私を忘れないように。遠いけど近い。そんな星が語りかけてくる。

 

「ありがとう」

「僕は幸せでした」

「おはようございます!オーロラ様!」

「こりゃー参った。戦闘だけが取り柄だと思ってた俺にこんな幸せがあるなんて。ありがとうございますオーロラ様。貴方がいなきゃこの色を俺は見れなかった」

「まーま!大好きです!」

 

「なぁオーロラ。本当にこのまま消えてもいいのかい?」

 

 

「いいわけ……ないでしょ」

 

あぁズルい。もう自分たちは終わったくせして、自分たちよりもずっとずっと頑張ってきた私にはもっと頑張れと背中を押すのだ。

 

やっぱり人間はくそだ。妖精と同じぐらいくそだ。

 

こんなに一緒に居たいと願ってるのに、もう全部捨てて楽になりたいと思っているのに、私が目指した星は温かい光で私を包んで、星が照らした道を歩けと背中を押してくるんだ。

 

「まだ残してきたものがあるもの」

 

戦争に負けて、街も民もいなくなったけれど、こんな半端者の為にどこまでも堕ちてくれるという騎士がいた。

 

「まだ私はあの子に名前を告げていない」

 

あの子の瞳を見たときメリュジーヌじゃなくて、────と、ひらめきのように浮かんできた名前があった。

 

だけどその時の私は気に入って貰えるか不安だったから、間違いなく彼女が気に入る名を告げた。

 

『君があの時、本当に思い浮かべた名前もいつか教えてほしいな』

 

今もきっとあの子は待っている。私の口からそれを伝えることを。

 

彼女は妖精……だけど私は知っている。

彼女は私のことが大好きな変態で、誰かの厚意を無下には出来ない優しい子。そして一人になるのが怖いから戦うような寂しがり屋だ。

彼女だけが例外、とは言わない。妖精であっても最後まで街の為に戦ってくれた者達は大勢いた。

 

もっと視野を広げるべきだったんだ。

バカみたいに人間だけを特別視して、戦力になった彼らに見むきもしなかったから戦争で負けたんだろう。

 

「──おみやげ!いっぱい持ってくるから!それまでちゃんとそこで待っててよ!」

 

 

なら次だ。妖精の守護者(フェアリーガーディアン)なんて、人間擁護の偏った集団ではなく等しく妖精と人間が手を取り合うような騎士団と街を作る。

 

それは途轍もなく険しい道になるだろうが、振り返ると変わらず私を照らす眩しいぐらいの星があった。

 

……あれが照らしてくれるなら怖くない。

 

私は星と正反対の方を向いて歩き出す。

 

光が作った妖精オーロラの影。

それを一歩、一歩、踏みしめて、バサリっと翼を広げて空を舞う。

 

それは風の氏族に出来ることではなかった。

翅の氏族にしては立派すぎる翼であった。

まるでドラゴンのようなその大きな翼をはためかせて……。

 

 

どこまでも暗い闇の中。光とは無縁のその中に、今度は堕ちるのではなく上を目指して私は飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、起きたかい?」

 

そして目が覚めたら、グランドお兄さんが目の前にいた。

 

「とは言ってもここはまだ夢の中。本当に目覚めたわけではないんだけどね。──君とは楽園(アヴァロン)()()()()()だったんだが、アルビオンの子は随分と嫉妬深いようだ。僕と目を合わせたらオーロラが妊娠してしまう!と霊洞の途中で足を止めてしまったんだ」

 

 

「………………」

 

 

「おっと。そうだった。先ずは自己紹介をしよう。私は花の魔術師マーリン。気軽にマーリンお兄さんとでも呼んでくれたまえ」

 

体が軽い。ふと下を見ると私は全裸であった。

 

 

「ッッゥッ!!?」

 

「これは羞恥の感情……成る程。今の君にとって異性に裸を見られることは恥ずかしいと感じるのか。これは失敬失敬」

 

取り敢えず……あれだ。全力でマーリンをぶん殴る。

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