オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

2 / 103
決意

取り敢えず風の氏族として風に声を乗せて運ぶという『風の報せ』ぐらいは使えるようになろうと工夫する事、数時間。

何となく要領を掴んで妖精郷全体にその網を伸ばしてみれば、妖精暦の年数が粗方予想が付いた。

 

北の妖精と南の妖精が戦争をしてから数千年。六氏族体制が確立してからちょうど千年目。『夏の戦争』と『秋の戦争』の間で、女王暦から逆算すると妖精暦1050年といった所だろうか。

どうやらオーロラは次代として発生してからまだ若く、しかし先代とは比べ物にならないほど完成された美しさから妖精郷全体で話題になっているんだとか。

 

「どうりで、ソールズベリーの街並みが質素だと思った」

 

窓を開けた外の光景があまりに挿し絵と違っていたので、だいぶ昔なのだろうなぁとは思っていたが、まさかオーロラが誕生したばかりだとは思いもしなかった。

 

「そういやオーロラって三千年ぐらい生きてたんだっけ?」

 

妖精暦1050年となると一番近いイベントの秋の戦争まで六百年近くある。

百年生きられたら長生きしたなんて思っている俺の感性からしたら六百年……はては三千年なんて途中で発狂しそうな物だが、まあオーロラとして慣らす分には有難い期間だと思って今は感謝するとしよう。

 

「先ずはソールズベリーの発展に取り組むべきか?人と妖精の共存出来る街を目標として事業とか起こした方がいいのかな?」

 

そして善は急げ。早速これからの事について考えてみる。

 

大前提としては『命を大事に』。

転生先は聖杯の泥を煮詰めて出来たような劇物だが、前世……の死に方はあれだし、折角の第二の生なのだから十二分に満足して死にたい。

 

そして満足と言えば―――俺はFateが好きだ。

別にイベントに足を運んだりグッズを集めていた訳でもないが、FGOはサービス開始当初から遊んでいた思い入れのある作品だし、このメインシナリオでは2部六章に当たる『妖精円卓領域アヴァロンルフェ』は何度読み返したか分からないほど大好きで、登場鯖の宝具レベルを5にする為に貯金を全て使い果たしてしまったのは苦い思い出だ。

出来れば全員と会ってサインと握手、叶うなら2ショット写真を撮らせていただいたりなんてしたら、これ以上の幸せはないだろう。

 

しかし、この2部六章は本当に綱渡りをしているようなギリギリの中で、何とか主人公組は全滅せずに済んだという鬼畜シナリオである為、少しでも展開を狂わせると全滅バッドエンドに直送してしまう可能性があるし、それは難しいかもしれない。

 

安牌を狙うなら原作の流れをなぞる形でキャラと邂逅を果たし、その為原作を崩壊させるような行動は避けつつ、あわよくば原作で悲しい最後を迎えてしまったキャラ(バーゲストとか)を助けたいといった具合か。

 

 

まぁ前半は兎も角、まだ右も左も分からない状況に加え、原作開始まで千年単位の待ち時間がある為、これらについてはまだ考えなくていいだろう。

 

ならば何をするかと問われれば、やはりソールズベリー領主としての仕事だろう。

街作りなんてやったことはないが、幸いにもそれ系のゲーム《ジャンル》は一時期ハマってやり込んでいた。

…この手の知識が役に立つかは分からないが、取り敢えず役に立つと仮定して、まずモース。あの対妖精特化の黒い化け物対策である。

 

風の報せから得た情報だと、この街の近隣にモースが現れた場合の対処は、各地を転々とする牙の氏族の兵団に連絡し、数日から数十日かけて出向いて貰ってやっと駆除するのだと。何ともまぁ……非効率的なもの。

()()()()()()()()()()()()娯楽が一杯な今の妖精國では湧いてくる数こそ少ない為、今までは問題なかったらしいが、個人的な感情として触れただけでオワタしてしまうようなヤツが自身の生存圏内をウロウロしているとか……怖すぎるだろ。

だから対抗出来る人間や牙の氏族を集めて兵団を作りたい。何なら百年周期で来る厄災なんかにも対応出来る規模にしたいとすら思っている。

 

それと楽しいからという理由で愚かな真似をする妖精も出てくるだろうから治安維持目的で衛兵とかも必要になるかもしれない。

出来れば鏡の氏族を呼び込んで、そういった輩が事を起こす前に投獄や追放なりしたい所だが、ここで問題となってくるのが、はたして俺にオーロラほどの妖精を惹き付けるカリスマがあるかという話だ。

 

 

仮にも風の氏族の長なのだからトップアイドル並みの知名度と影響力はあるのだろう。しかしファンへの対応が悪いアイドルは自然と敬遠されるように、中身が俺ではその内嫌われるのは目に見えている。

そうなってしまったらオーロラとしては終わりだ。

ムリアンとかウッドワスみたいに他に特筆すべき能力でもあればいいが、彼女はその点、研ぐ牙も妖精領域もない。

 

だから嫌われたらオーロラの物語はそこでおしまい。みんなの嫌われ者となったオーロラは人形のように玩ばれるのか、それとも泥水の中で身も心も怨嗟を唄う怪物へと落ちぶれてしまうのか。

確かなのはろくな最後を迎えないだろうということ。

 

「……これから空いた時間は練習に当てるか」

 

最悪の未来を想像してぶるりと震え上がる。いくらなんでもリョナ系やモース化エンドはごめん被りたいものだ。

 

演技力の獲得は何よりも急務かもしれない。

教師や御手本となる者を雇える立場ではないので、原作のオーロラをなぞるような形になるが、欠落が多い箇所は似たようなキャラをトレースして何とかするしかないだろう。

 

 

「ソールズベリーの発展とオーロラとしての演技力。

…六百年もあるんだ。せいぜい下らない所で躓いて退場しないように頑張ろう」

 

これからを思い、俺は小さく肩を落とした。




主人公の独り語りに二話も消費してすまない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。