オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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ムリアン

「あっ、その…………大変恐縮なのですがぁ……今回の氏族長会議に出席してくれませんかね?」

 

いま大量の菓子折りを持って気まずそうにしているのはムリアンだ。

ついでに言うとここはグロスターで、ソールズベリーの復興で疲れたので、私とメリュジーヌは小旅行に訪れていた。

 

「あらどうして?私はもう風の氏族長ではないのよ?」

 

「そうなんですが……その事情がありまして。ほら!最近になってブリテンが統一されたではないですか!」

 

「ええ。ソールズベリーは含まれないけど」

 

「ぐっ!ま、まぁ~ソールズベリーは復興途中だったんで見送られたのでしょう。それでなんですけど次回の氏族長会議では女王陛下も出席なされまして、それなりに〝ちゃんとした〟会議ですので街の有力者達には御声がけをしてるんですよ」

 

「つまり……意思統一を図りたいのね。裏切らないように脅しでもかけるのかしら?」

 

「そ、それはぁ………恐らくないんじゃないかな~って思います、アハハハ……」

 

顔を青くして、乾いた笑い声を発するムリアン。

時々メリュジーヌの方を見ては、脂汗を滲ませているがそんなに彼女が怖いのだろうか。

 

実は風の知らせで彼女が誕生したと聞いて、その確認もかねての旅行だったのだが原作の彼女はこんなんだったか記憶を振り返ってみる。

 

「…………ふむ」

 

『俺』の記憶では絶対こんなキャラじゃない!おかしい!と警鐘を鳴らしているが、まだ翅の氏族は滅んでいないし若いので精神的に未熟なんだろうなと勝手に納得することにした。

 

そんなことよりも、と紅茶を味わって氏族長会議に参加するか否か。これが結構悩ましかった。

 

妖精歴の頃なら蹴っていたのだが状況は変わり、冬の戦争が終わって、すべての氏族長はモルガンに膝を折った。大きな街にいる有力者達も軒並み彼女へ従う姿勢を見せている。

ここでソールズベリーだけが例外扱い……なんてことは難しいだろう。

 

私たちも表向きはモルガンの支配下に加わったと旗色をアピールしなければ妖精國全体が敵に回る可能性だってあるのだ。

 

だからモルガンの妖精眼に引っ掛からないで従う方法は考えているのだがこれが一向に思い浮かばない。

そもそも身近に妖精眼が使える妖精がいないのだから、どこまで真実を暴けるのか。その対策のしようがなかった。

 

その為必要以上に距離を取っていたのだが……。

 

 

「ん?僕の顔に何かついてるのかい?」

 

呆けたような顔をしてクレープのような物を頬張るメリュジーヌを見る。

 

彼女を街の代表として出席させようか。

 

悪くはない気がする。メリュジーヌなら何を聞かれても墓穴を掘ることはないし、一時期は代理で領主もやっていたのだ。

 

今街は復興途中だからその点の有耶無耶も利用出来るだろうし、それで不審に思われても、オーロラは純粋な妖精ではないのだから國の命運を左右する場で意見を出すのはおかしいとでも言っておけばいいのではないだろうか。

 

秋の戦争の感じからしてモルガンとメリュジーヌの実力はほぼ互角。令呪の貯蓄もそれほどたまっていないだろうしキャメロットの維持で魔力量を分けているだろうから何が起きてもメリュジーヌが殺されるということにはならない筈だ。

 

「ねぇメリュジーヌ。私の代わりに会議に出てくれない?」

「会議?別にいいけど……そういう駆け引きは君の方が得意なんじゃないのかい?」

「どうにもあぁいう格式張った場所って肌に合わないのよ。この埋め合わせはいつかするから、お願い」

 

「え、今何でもするって言った?」

「言ってない」

 

相変わらず頭の中は真ピンクで不安を覚えるが、引き受けてくれるようだ。

 

「それでいいかしら?」

「ぁ…………いやぁ。それはちょっと困るかなぁ……」

「なぜ?」

「実は………女王陛下からオーロラ様を出席させるようにと圧をかけられておりまして、それを断ると私の立場が大分怪しくなってしまうのです」

 

これで一件落着かと思ったがメリュジーヌ()()の参加は不味いといい、もう隠してられないといった感じで渋々ムリアンは口を開いた。

何でも彼女の先代はモルガンに嫌われており(トネリコの時にグロスターを出禁にされたから)、元々良い印象はなかったが、危険思想があるだとか難癖を付けられて処分するかもと脅されたそうだ。ここで手柄をあげないとかなり不味い状況らしい。

それで先代をボコボコにしたメリュジーヌの手前、胃をキリキリさせながら話していたという訳か。

 

命は惜しいので交渉はしますけど先代がやらかしているから自分の印象は最悪の筈。はぁぁぁぁよりによってなんで私に頼むんだよあのクソ女王陛下!とトイレで叫んでいるイメージが浮かび上がった。

 

ムリアンが苦労人概念とは新しい。なんてくすりと笑ってしまったが、本人にとっては笑い事ではなかった。

 

「お願いします!」

 

なんと土下座である。

プライベートルームであるので人目にはつかないが、完全に余裕を失っていた。

 

 

「でも、ねぇ…………」

 

それで、分かりましたと頷くわけにはいかなかった。

ぶっちゃけて言うとここで彼女に恩を売っておいても大した見返りは期待出来ない。

 

そもそも原作で殆ど交流のなかった相手であるし、危険を犯してまで助けようとは………………思わなくはない。

だって故郷を燃やされて、同族を皆殺された。

長い年月をかけて復讐は成功したけど、〝まとも〟だったせいで狂ってしまい最後は邪悪な虫の一刺しで亡くなった彼女。辛いことばかりだったけどコヤンスカという友達も出来た彼女の生涯がこんな呆気なく終わろうとしているのだ。

 

出来れば助けてあげたいんだけど、リスクが高すぎる。

 

「申し訳ありません……。見苦しいものをお見せしてしまいました。お詫びと言ってはなんですがこの店での料金は私のポケットマネーで支払わせていただきます。どうか今回の旅行が貴方にとって素晴らしいものでありますように…………」

 

「待って。モルガン陛下と直接顔を合わせず、言葉を交わさないって条件なら……いえ、流石に厳しいわね。顔は合わせても会話しない。うーん。私は一言も発しないという条件なら……」

 

何だかこのまま消えてしまいそうで、つい口を開いてしまった。

 

「本当ですか!」

「ええ。でもあれよ?本当に一言も喋らないわよ?モルガン陛下が私に何か言ってきても何も返さないからね」

「分かりました!それなら私がオーロラ様と女王陛下の間に入れば何とかなる筈!軽い相づちなどは?」

「……まぁいいんじゃない?」

「ありがとうございます!」

 

先ほどまでの死にそうな表情から打ってかわり水を得た魚のように生き返り、何度も何度も頭を下げて感謝の言葉を述べるムリアン。

 

 

本当に良かったのか。あぁ……言わなきゃ良かったと後悔しても今さら遅く、ソールズベリーの領主として私の参加は決定してしまった。

 

 

 

 

「いざとなったら僕がモルガンをやるよ。君は絶対に守るから安心して」

「そうねぇ……その時はお願い。私も真面目に訓練とかしようかしら」

 

 

不安で仕方がない今回の氏族長会議。

当たり前だが、何も起きない訳がなかった。

 

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