オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
女王歴が始まってから初めての氏族長会議の開催場所はグロスターになった。
ソールズベリーにするという案もあったそうだが、あの街は現在復興途中で物資も人材も足りていないから期待しているようなおもてなしは出来ない。何よりムリアンやモルガンが乗り気ではなかったので最終的に満足の行く娯楽を提供出来るグロスターで行われることになった。
「ふぃ…………もうそろそろ引退かのぅ」
「そんなこと言って、あと百年は生きるつもりでしょ?知ってるんだから、アンタがオーロラに大聖堂の壁画を任されたんだって」
サラマンダーとマヴ。
すっかり真っ白になってしまった髭を撫でながら今回の会議が最後になるだろうと言う彼にマヴはまだまだ現役じゃないと激励を送る。
「はぁぁぁ……緊張する。本当に私なんかが風の氏族の代表でいいのでしょうか?」
「何気に私たちって同世代ってやつですよね。お互い先代からの苦労を担う身。仲良く行きましょう」
新たな風の氏族の長『シルフ』とムリアン。
片方は先代が偉大人?すぎて、そしてもう片方は氏族長全員を爆殺しようとしたとんでも戦犯として、気苦労の絶えない日々を送っている二人は疲れたように歩いている。
「陛下、今回の会議では本当に彼女が出席なされるのですか?」
「えぇ。意識がある状態で会うのは初めてですね」
ライネックとモルガン。
その他ムリアンが抜粋した有力者達が次々に参加会場へと入門していく。
「…………ふん。私が中途半端な時に入るのもあれですね。少し寄り道してきます」
「はっ」
ふと、モルガンは少し早く来すぎたと思った。
この國の女王なら待つのではなくむしろ待たせる立場にあらなければならないという考えがあったので、一番最後に入れるように一旦ライネックと分かれて街を散策することにする。
「あれも、これも……ソールズベリーの猿真似ばかり。しかも芸術性を優先させて、娯楽の街を謳う癖に遊園地すらないとは。コインで動くパンダさんを幼稚だと切り捨てるようでは翅の氏族の程度が知れますね」
街並みを見て回る。
妖精歴で何故か出禁にされてから久しぶりに入るが、全盛期のソールズベリーほどではないな、と内心グロスターの評価をするモルガン。
特にコインで動くパンダさんがないのは致命的だ。
あれは乗りすぎて路銀が失くなり、真面目にトトロットとエクターから怒られたとかつての情景に頬を緩めていると、何やら言い争っている妖精二人を見つけて足を止める。
「はぁぁぁ~たく分かってないわね!オーロラ様にはこっちの赤いドレスの方が似合ってるんだよ!」
「いいや!こっちの青のドレスの方がオーロラの魅力を引き立ててくれてる!芸術肌だか何だか知らないけど、オーロラのことなら僕が一番分かってるんだから!」
「…………え?」
それは夢か幻か。
私は今信じられないものを見ている。
何度も何度も心が折れそうだった私を支えてくれた私だけの星。
『ごめんなさい……私は貴方が誰だか分からないの…もう自分の名前も………全部使ってしまったから……でもあぁ泣かないで……私なんかの為に勿体ない。綺麗なお顔が汚れてしまう』
今にも熱を失いそうな冷たい手が頬を撫でる感触は今でも覚えている。
この國唯一の良心。私が本気で幸せにしたいと願った彼女がそこに居て、まるで休日にショッピングを楽しみにきたみたいにドレスについてあれこれ言いあっていた。
あの妖精は確か……メリュジーヌ。何故あの娘と一緒に彼女が?
「赤!」「青!」
理由は分からないが随分白熱している様子。
先代の彼女にはヴィヴィアンという名を与えていたのだが、それはもう剥がれてしまっている。だからメリュジーヌの手が出たら危ないと割って入ろうとしたら、赤でも青でもなく紫色のドレスを着た麗人がパンっと手を叩いた。
「こら喧嘩しない。他のお客様の迷惑になるでしょう?」
「オーロラ!」「紫!なるほど流石はオーロラ様!」
「貴方達がいつまで経ってもこないから店員さんに見繕って貰ったの。どう?素敵だと思わない?」
「はい!素敵です!」「綺麗だけど……脱がしにくそうだね」「お前はマジでもう黙れ!」
……あぁ。そうか。貴方か、貴方がやってくれたのか。
まるで姉妹のやり取りのようなそれ。そしてその二人を親のように諌めているオーロラを見て、モルガンは人知れず心満たされた。
自分が幸せにしたいと願った。だからその幸せが他人によってもたらされたことに思うところがないわけではなかったが、もう絶対に失いたくないと私の名を与えた前の彼女はそれでも誰かの為に摩りきれてしまった。
……次も諦めるつもりはない。だがこれでダメなら次はどうしたらいいのかと頭を抱えていた。
そしてあのオーロラなら何とか出来ないか。それを考えていた矢先のことだ。
やはり彼女は
「ふふっ赤と青のドレスも買いましょう。会議は長引きそうだから次の日にでも着ればいいわ。それより予想以上に時間がかかってしまったけど大丈夫かしら?」
「あっ、大変!もう始まってるかも!」
「待たせたらいいんじゃない?それよりご飯食べに行こうよ」
「バカお前!オーロラ様の顔に泥を塗るつもりか!」
「だって来るつもりはなかったのに女王陛下が来いって命令したから来る羽目になったんだろ?なら少しぐらい待たせても大丈夫でしょ」
「その命令に逆らえなかったから来たんだよ。何で遅刻して許されると思ってんだ」
「そうね。ヴィヴィアンの意見の方が正しいわ。待たせてもいけないし急ぎましょうか」
足早に去っていく三人を見送って、少し待ったあとにモルガンも会場に入った。
「オーロラを次期後継者として私の娘にする」
「ファ!!?」
そして自信満々にそう告げるモルガンにオーロラは心臓が口から飛び出るほどの衝撃を受けることになった。