オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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とんだ茶番だね

「いいわね!王の氏族は賛成するわ!」

 

「土の氏族も賛成しよう」

 

「牙の氏族に異論はない」

 

「オーロラ様が王になられるのなら風の氏族は全面的にバックアップいたします!」

 

「ふっ、鏡の氏族も賛成しよう」

 

「えっとその…………翅の氏族はオーロラ様のご意見を聞いてから結論を出そうと思います」

 

 

「皆、異論はないな。ならば私の退位と同時にオーロラがこの國の女王となることを宣言する。それで私の任期だがソールズベリーの復興まで……」

 

 

「お待ちになって!?」

 

面白いぐらいの早さで女王にされそうになった。

オーロラはムリアンの首根っこを引っ張りこれはどういうことだと小声で訴える。

 

 

「どういうこと!どういうこと!どういうこと!?」

「すいません!すいません!すいません!」

 

「オーロラがこの國の女王かぁ…………いいね!」

「何だあの女王様。辛気臭くていかにも暴君って感じだけど、分かってるじゃん」

 

その混乱する様など知らぬ花。だとしたら僕が王様だよなぁ……、見た目は怖そうだけど優しい人なのかも?と付き添いの両者もこの意見に賛成であった。

 

「私はこんなこと知らないわよ!?」

「私だって知らされてなかったんです。まさかこんなことになるなんて……ちなみに女王になる気とかは?」

「ないわよ!ソールズベリーだけで手一杯なのにブリテンすべての住人の面倒なんて見れないわよ!」

 

一時期はやってもいいかと考えていた時もあった。

だが冷静になって考えてみると、どう考えても手が回らず取り零す命が山ほど生まれる。

 

「私も手伝いますから……」

「妖精領域をこの島全域に展開出来るようになってからお言いになって!?……絶対!断るの!いい!?」

 

流れで女王になどなってたまるか。

きっとここにいる妖精達は面白そうだから賛同しているだけだろう。オーロラが女王になっても忠誠心なんて欠片もないだろうし、せいぜいモルガンよりはマシぐらいに思っているに違いない。

それでモルガンと同じことをしようものなら、絶対反旗を翻す。

 

 

「あー、皆さん。オーロラ様がおっしゃられたのですが、いくらなんでも結論を出すのが早すぎるのでは?ここは一度落ち着いて……そうですね。何故女王陛下がオーロラ様に玉座を譲る気になったのか。その真意を知ってからでも遅くはないのでは?」

 

「ふむ。何故オーロラではなくお前が指揮を取るのか疑問ではあるが道理ではある」

 

ならば答えようとモルガンは杖を振るい──ソールズベリーの景色を映し出した。

 

「これは……ソールズベリーか」

「妖精が木を切り、人間が加工する……」

「なるほど共存関係にあるって言いたいのね」

 

それは私達が不在の中でも街の復興に取り組む妖精と人の関係を映し出していた。

 

「このように、この者は我らが悲願である妖精と人間。両者の利点を生かした理想郷に近い街作りを成功させている。

これを見て私は思った。

私はブリテンを統一したがお前達に興味はない。私はお前達がいくら媚びへつらおうと愛さない。私はブリテンさえ手に入れば満足だ。お前達がどこで野垂れ死のうがどうでもいい。だが私にも王として一欠片の情はある。

ブリテンは私のものだが、私の代わりに王として優れたものがいるなら統治は任せても良いと以前から考えていた。

オーロラ。彼女ならば問題ないと私は確信したからこそ玉座を譲り渡そうと言うのだ」

 

まさに傲慢。これでは絶対者としての立場は崩さずに統治という面倒事だけをオーロラに押し付けているようにも聞こえた。

 

実際そうなのだろう。キャメロットの所有権と令呪による魔力の徴収は引き続きやるとも言われて、氏族長達は顔をしかめた。

 

 

「(流石公認の口下手妖精!)」

 

その真意はオーロラにも分からない。

ただ本人が思っている本心は誰一人として理解出来ていないことだけは察した彼女はそのままモルガンに喋らせるようにムリアンへ促した。

 

「女王陛下、お言葉ですがそれではあまりにもオーロラ様が報われません」

「なに?」

「民草をまとめあげる手腕、文明を刺激する知謀、全てを包み込む愛があったとしても、この國すべての管理は一朝一夕で行えるものではありません。それもソールズベリーの光景をブリテン全土で再現するとなると恐らく下級の妖精にとってみれば一生ものの長い年月が必要となるでしょう。それで國をまとめあげて、あくまでこの國の主は私なのだからと〝何もしなかった〟陛下に頭を垂れろと言われて誰が納得出来るでしょうか?」

「ふむ…………確かに不愉快だな」

 

働きもののオーロラと、血税を搾り取って好き放題に怠けるモルガン。

それで立場は後者が上だと言われればオーロラは勿論、民草も納得出来ない。

 

「よかろう。ならばオーロラは私と対等であることを許す。もとより娘なのだからな。頭を垂れる必要はない」

 

モルガンの認識ではもうオーロラは娘になっているらしい。

そうじゃない。甘い蜜だけ啜ろうとするのは諦めて隠居しろ。この場の誰もが思ったが口には出せなかった。

 

「……オーロラ様、どうしましょう。このまま喋らせたらオーロラ様を旗印にクーデターが起こりそうなんですが」

「それは不味いわね…………でもあと一息よ」

 

「女王陛下。貴方はブリテンは私のものだとおっしゃられましたが、ならばせめて存在税の方だけはどうにかならないでしょうか?恐らくオーロラ様が王になられればこれまでにない変革の時が訪れるでしょう。妖精が資源を生み出し人間が加工する、そして妖精と人とで消費するような時代です。そんな時妖精達は令呪による徴収分の魔力を集める余裕がなくなるでしょう。それでも上級妖精なら何とか賄えるかもしれませんがそれ以下のものたちは厄災を待たずして滅びてしまいます」

 

「ならぬ。令呪による徴収はお前達が背負うべき原罪である。それなくしてブリテンの守護はないと思え」

 

 

……あぁ。これ、ケルヌンノス対策に魔力必要だから集めてるんだが?元はと言えばお前らのせいだろ?って言ってるんだろうな。

オーロラはこれについては完璧に理解出来た気がしたが、やはり言葉足らずだと思った。

 

「オーロラ様……この人、話が通じません!」

 

ムリアンはもう無理だと涙目になっていた。

周りの妖精達の空気も悪い。冬の戦争でモルガンの強さを知っているから行動に移していないだけで彼女が隙を見せたら一斉に襲い掛かるようなピリピリとした殺気を放っている。

 

「オーロラ。いい加減私はお前の声を聞きたい。喉の調子が悪いなら私が診てやろう。さぁ遠慮することはない。近う寄れ」

 

だが我関せず。

もう完全にお母さん気取りのモルガンはオーロラが話そうとしないことに病気だと思って心配している様子。

 

 

……このまま話すことになったら全部バレてしまう。そして串刺しにされてしまう。

 

オーロラは最早これ以上打つ手がなく詰みかもしれないと思った。

こうなったらここらにいる妖精達をけしかけて二人を連れて逃げるかと、そんな事を考えていると、メリュジーヌが挙手した。

 

「ちょっといいかな?」

 

「なんだ?」

 

「さっきから聞いてみればさぁ……おかしいよね」

 

お、言うのか。言ってくれるのかと妖精達がメリュジーヌの次の言葉に期待を抱く中で、オーロラはどうせまたバカなことを言うんだろうなと白い目で見た。

 

「オーロラは千年以上生きた妖精だ。何で年下の君の娘にならないといけないのかな?」

 

ほらやっぱり。

 

「私は四千年生きた魔術師だ」

 

それでモルガンも張り合うのかと、肩を落とす。

 

「四千年………成る程。それは失礼した」

 

気になったのは年の差だけだったのか大人しく席についたメリュジーヌ。今度こそモルガンの視線が自分に向き、もうダメだろうかとオーロラは諦めて彼女の元に歩いた。

 

こうなったら一か八か。本当のことだけ言って……とか攻撃してきたら竜の力で戦ってみようだとか、取り敢えず最後まで諦めずに頑張ろうと精一杯の作り笑いを浮かべた。

 

「やっとお前と話が出来るな」

 

「ええ、本当に。光栄ですわ(クソ食らえ)陛下。この妖精郷すべての民のため、喜んで(なわけないだろ)引き受けさせていただきますわ」

 

「ッゥ!?」

 

この反応。見られている……終わった…………。

 

 

「そうか、そうか……喜んでくれるのか。こんな私を……心から」

 

ならば逃げねば。と、足に力を入れると、ポロポロとモルガンの瞳から小粒の涙が零れ出した。

 

「えっ」

 

「お前はやはり私の理想通りの存在だよ。お前にならこのブリテンの統治を任せられる」

 

「それはどういう……まさか!陛下。私に愛しているかと聞いて下さいませんか?」

 

流石にショックだったのかと若干罪悪感を覚えたが、電流のように走り抜けるもしかしたらという疑惑。それを確かめるべく心にも思ってないことを聞いて下さいとねだった。

 

「愛、流石にそれは高望みし過ぎだが……そうだな。お前は私を愛しているか?」

 

「私は貴方を愛しています(ぶん殴りたいです)。だからもう一人で背負わないで。これからは私も手伝いますから(ふざけるなこの女郎)

 

「ッッッゥ!!!?」

 

モルガンの瞳がひときわ大きく見開かれる。

さぁどっちだ!とオーロラが身構えると、モルガンは立ち上がり──私を強く抱き締めた。

 

 

 

「う、ううわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そして情緒が滅茶苦茶になったように泣いた。

まるで赤ん坊が母親に甘えるように、公衆の面前で恥もなく泣き叫ぶ。

 

ただその涙には幾千年の苦しみと痛みがあって。終わりの見えない旅路。道を違えた仲間と志半ばで力尽きた同士達の骸を背負いながら歩き続けて……その地獄がやっと報われたような彼女のこれまで全てが籠められていた。

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

……ふふ、フフフフ

 

 

 

 

 

 

フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

どうやらモルガンは竜になった私の〝ホント〟を妖精眼では視抜けないようだ!

 

まるで辛いことがあって母親に慰めて貰う子供のようにみっともなく泣き叫ぶモルガンを見てオーロラは頬をつり上げる。

 

詳しい理由は分からんが、妖精眼が効かないのならこれまでのように徹底してモルガンを避けて動く必要はなくなり、堂々とこの國の滅びの時まで過ごすことが出来る。

あからさまな動きをすればバレるだろうが、要はこれまでやってきたことをモルガンにもすればいいだけのこと。

妖精眼がないならバーゲストやウッドワスとも積極的に交流が持てるように動けるようになるし、なにより原作オーロラ様ムーヴも夢ではない。

 

まさに、やった!勝った!第二部六章完!!!と勝鬨を上げたいぐらい嬉しい話で、思わず抱き返してしまう。

 

 

 

 

 

 

「良かった……良かった」

「何よ……こっちまで泣けてくるじゃない」

「女王様も寂しかっただけなんだなぁ」

「私はこれからも女王様とオーロラ様に忠誠を捧げます」

「きっと存在税にも訳があるんだよ。例えば厄災対策にいっぱい魔力を使うとかさ!」

「あの女王様を泣かせるなんて……やっぱりオーロラ様はすごい!」

 

…………ん?

 

ふと回りが騒がしいと顔を上げると、いつの間にかムリアンまでもが彼方側に回っていた。

 

なぜ?

 

「我が娘ェ……もうぜったいはなざない!」

 

抱擁する私とモルガン。

それを温かい目で見守る妖精達。

 

理由を探そうとこれらを客観視に見て、紅潮したテンションが一気に冷めた。

これはすごく、(私にとって)良くない絵面な気がする。

 

「ま、待っ!」

 

「新女王オーロラ様万歳」

 

「新女王オーロラ様万歳!」「新女王オーロラ様万歳!」「新女王オーロラ様万歳!」

「新女王オーロラ様万歳!」

「新女王オーロラ様万歳!」

 

「ちょ、だから待っ!」

 

 

 

オーロラの発言は勝手に勘違いしだした妖精達の歓声に掻き消された。

まるでもう決まったも同然という空気になり、そしてそのままの流れでオーロラは正式にモルガンの後継者になった。

 

 

「……集団心理って怖い」

 

頭の上に乗せられた後継者の証(ティアラ)の存在を感じながら身に染みてそれを理解したオーロラであった。

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