オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

25 / 103
人の世代交代

近頃北の妖精達の動向が怪しくなってきた。

時期的には百年ほど早いがマヴがモルガンと袂を別つ時が近づいてきたのだろう。

 

これから百年掛けて北と南の妖精達の間に溝が産まれ、原作のように決裂してしまうのか、それとも私がいるせいで変わってしまうのかは今のところ分からない。

ただ最近はマヴとの関係は疎遠だ。私が女王になることに一番最初に賛成だと言ってくれたのは彼女であるが、後継者になったあとは何というか絡まれなくなった。

 

こちらから話し掛ければ応じてくれるのだが、以前までのガツガツとした感じではない。私のことを妻だとか婚約者だとか言っていたが、それが冷めてしまったのだろうか?

 

 

「オーロラ!元気かい?元気ならちょっとカーテンを閉めて運動しないかい!?」

 

だとしたら…………いい。

嫌われるのは悲しいことだが、恋とはうつろいやすい物。未だ千年以上も生きて、女性や男性にそういった感情を抱いたことのない私であるが、いつまでも相手が振り向いてくれないなら恋の病とやらも完治してしまうだろう。

 

「返事がないってことは同意したと見るよ!」

「なわけないでしょ。ふざけたこと言わないで、暇ならパトロールでもしてきたら?」

 

だけどこの子のこれは一生治る気がしないなーと、遠くに思考をやりながら仕事の書類に目を通す。

 

「生殖によって子供を授かることが出来るようになって…………まさか性教育が必要になるだなんて」

 

それは人間牧場の件からの延長線上の話だった。

 

現在モルガンの魔術により〝第二世代〟と呼ばれるようになった人間達には生殖能力が復活している。寿命はそれ以前の〝第一世代〟と同じだが、既に何件か子供を授かれるならと希望するカップルがいる。しかし「子供ってどうやれば出来るんですか?」と予想外な問題が発生していた。

 

助産師や産婦人科などそういった施設面については頭が回ったが、よくよく考えてみれば両親のいない彼らにとって子作りとは未知の領域の話だろう。

 

これをどうやって教えたらいいものか……『俺』の時の知識で保険体育の教科書を再現してみたが、生殖器については無駄に詳しく載っている癖に性行為のセの字も出てこなかった。

 

「なんだいこれ?人体図鑑?」

 

不登校気味で高校にはろくに通っていなかったが、メリュジーヌから見て高校レベルの性教育は人体図鑑に見えるらしい。

 

これから性交渉のなんたるかを学ぶなんて不可能だろう。

 

だが、これ以上の引き出しはもうエロ本かAVぐらいしかなかった。こういった知識がだいたい間違っているのは時間停止物の9割が嘘だと同じぐらい知っている。

 

つまり、役に立つものがなかった。

 

これは不味い。何気に無視したら大変なことになる不味い事態だ。

 

「僕とオーロラが身体を張って教えるしかないね」

「黙りなさい」

 

いつの間にか脱ぎだしていたメリュジーヌにはタオルを投げつける。

 

「……ダフネ、ロビン。こんなんなら二人に夜のこととか聞いておくんだった」

 

ここで下手な知識を出すのは憚られた。

出来るだけ健全で正しい性教育というものが求められていた。

 

それも第二世代の寿命を思えば急務だ。

 

「モルガン陛下なら……こっちの陛下は男性経験がない筈。博識のムリアンは……見た目的にもアウト」

 

妖精達の中にはそういう経験があるヒト達も結構いるが、快楽目的のそれであり、子作りを意識したものではない。

それでいて、かつてのように 取り替え子(チェンジリング)で流れてきた人間は今のところ確認出来ていない。

 

恐らくモルガンが何かしたのだろう。

 

現在この島には父親か母親になったことのある経験者がいなかった。

 

「前世含めて未経験の私に任せていい案件じゃあないのでは?」

 

今抱えている仕事の中で一番頭を悩ませるのがこれだった。

 

「…………う~ん」

 

「オーロラ……実はここだけの話。僕って雄型にも変形出来るんだよね。タチでもウケでもどっちでもOKだよ」

「そうねぇ……その発情期が収まるんなら考えなくもないわ」

「本当かい!?」

「でも一回やったぐらいじゃ収まらないでしょ?」

「だね!」

「ほんっと…………なんでこんなんになっちゃったのかしら?」

 

もうこっちは悩むのもバカらしくなってしまったが、どうしてうちのメリュジーヌはこうなのだろうか?

 

この奔放さはカルデアに来たメリュジーヌを思わせるが、それよりも大分ひどい気がする。

 

「ねぇ。貴方はどうしてそんなに変態なの?」

「オーロラが悪いんだよ?だって君、僕の性癖にドストライクなんだもん」

「性癖って……仕事のオンオフぐらい切り替えれない?」

「それぐらいは出来るよ。でも今はオフでしょ?」

「まぁそうなんだけど……」

 

事実、私がいない時は真面目にやっているらしく、結構住民からも慕われていた。

妖精の守護者(フェアリーガーディアン)の団長をやっていた時なんてファンクラブがあったほどだ。

 

「私といる時も出来ない?」

「公正な場で自粛しろって話なら別だけど出来ない。それだけは無理だ!そんなことしたら僕はオーロラへの膨れ上がった愛で破裂しちゃうよ」

 

まるで自分を風船のように例えた。

定期的に愛を抜かないと、どうにかなってしまうらしい。

 

 

「う……ん」

 

 

これを聞いて先ほどは一蹴したが、メリュジーヌとの間に子供を作るのはどうかと考えてみる。

 

どうにも私にはヒトを性的に愛するというものが向いていないが、もし相手を選ぶのならメリュジーヌ以外に他はいない。

それは付き合いが長いこともあるが、多分心の底ではメリュジーヌ以外のヒト達に気を許せていないからだろう。

それに人間の子達はどうにも子供のように思えてそういった感情は抱くことすら悪いことのように思える。

 

「サンプル……サンプルには……あら?そう言えば竜って卵生なのかしら?」

「人型なら胎生だよ」

「そう」

 

妊娠周期は概ね人間と同じらしい。

まさか行為を撮影してそれを見せるなんてことは出来ないが、経験者の言う話なら説得力は全然変わってくる筈………………ただその為だけに命を生み出すという神聖な行為をしていいものだろうか。

 

「やっぱりダメね。子供が可哀想」

 

これが最善というわけでもなかった。

仮に生まれてくるのが竜なら私なんかよりずっと長生きするだろうし、自分の子供に生まれ故郷が滅ぶ様を見せたくはなかった。

 

 

「色々なヒトから知恵を借りましょう。無知でも集まれば正解を見つけ出すことは出来るわ、きっと」

 

 

それから私たちは街を周り、様々な立場のヒト達と意見を交えて、教本としていたって健全な性教育の本というものを作り上げた。

 

適任がいなかったので恥ずかしながら教鞭を振るったのは私だ。

 

そのお陰で変なプレイによる事故や妊娠期間中にトラブルが起きるようなことはなくなったが、第二世代から生まれた第三世代の寿命が60年ほど伸びて、体制を見直さなくてはならなくなる新しい問題に直面することになった。

 

 

 

 

 

そしてキャメロットにて。

 

「どう言うことだ!!どうして兵団が私に無断で動いている!?それに翅の氏族への攻撃だと!?氏族争いでもする気か!?」

 

「そ、それがライネック様のご命令だと副団長様が……」

 

「私はそんなことは言っていない!ええいっ北の氏族とのいざこざを利用されたか!これは何者かの罠だ!!!」

 

 

この國の滅びを望む闇が水面下で動き始めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。