オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
いつか、グロスターはソールズベリーの猿真似だと女王陛下に言われたことがある。
実際その通りで、先々代の翅の氏族の長がソールズベリーの景色に感銘を受けてパクろうとしたらしい。
ただ途中で飽きて、こっちでは芸術性を重視しようと方向性をシフトしてしまったので全く同じにはならなかったが、今もソールズベリーを知ってるヒトならこれはあれをパクってるんだなと思うものがそこら中に残っている。
一番特徴的な物と言えばラムセウム・テンティリスと呼ばれている建造物だろう。
ともかくそれがグロスターという街が出来た経緯というやつだ。
「もしオーロラ様がいなければ、この街もまだ牧歌的な雰囲気だったんでしょうね~」
ムリアンは他と比べて発展した街並みを見てそう言葉を溢した。
ソールズベリーは例外だがこの街は他の街は勿論、首都であるキャメロットよりも圧倒的に文明レベルというものが突き抜けていた。
成長が早い訳ではない。ただ先々代がパクった数百年前の文化に周囲が未だに追い付けていないのだ。
「なんて理不尽」
もし先々代がパクろうだなんて考えていなければグロスターも他の街と同じぐらいの発展具合で、街というより村と称した方がいいような、レンガの建物なんて一つもない田舎だった。
それでパクり元であるソールズベリーはオーロラが積極的に人間を擁護していたからこそ文化に多様性が生まれ、あのような発展を遂げたのかと思えば、街の造形の殆どはオーロラが一人でやったのだという。
一体彼女には何が見えているというのか。
ムリアンは少なくとも今のソールズベリーやグロスターレベルの街並みを参考なしに作ろうと思ったら数千年はかかるとにらんでいる。
万人を虜にする容姿に竜の寵愛を受けた姿。おまけに妖精も人も圧倒する智謀の主とくれば理不尽だと言わずして何と言うのだろう。
「女王陛下の方がずっとやりやすかった。出来れば彼女には表舞台には立って欲しくなかったですが……」
折角消極的で、お庭遊びで満足してきた〝私を超える天才〟を無理やり連れ出したモルガンには昔から思うところはあった。
だがああいうタイプの人はルールに従ってさえいれば何も手出しが出来ない。
ムリアンは勝負が好きだ。駆け引きも好きで、ライバルを蹴落とし、商業で儲けることに生き甲斐を感じている。
あくまでルールの中であってもそれが出来たモルガンの体制にはさして不満はなかった。
その点、オーロラは優しいが、優しさ故に時にルールをねじ曲げてでも理想を広げようとする。
結果的にそれは正しいのだろう。皆が幸せになれるのだろう。
貧富のない世界はさぞかし美しいだろうが、勝者の生まれない世界は死ぬほど退屈だろうと想像出来た。
それでも……なってしまったものは受け入れるしかないと思えた。
オーロラは不思議だ。彼女には人間のようにただ側にいるだけで幸せになれるようなカリスマがある。だから皆が美しい風の氏族でなくなったあとも彼女へ従った。
ムリアンも理性では否定するものの、本能で彼女に惹かれていた。彼女の前ではそもそも歯向かう意思というものが浮かばない。
モルガンとオーロラ。今の妖精國は二人の女王がいるが、自分のやりやすい体制が前者にしろ、どっちに従うべきかなんて考えるまでもなかった。
「オーロラ様!助けて下さい!」
「分かったわ。彼ら牙の氏族に次代へと替わって貰えばいいのね?」
牙の氏族が訳の分からない建前を述べて侵略戦争を仕掛けて来たとき、ムリアンは真っ先にオーロラに連絡した。
この時はまだ正式には女王には即位しておらず、立場的にはモルガンを頼るべきだったが、この選択が正しかったことは直ぐに証明されることになった。
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