オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
*オリ土の氏族の長注意
サラマンダーは土の氏族の長で火と鉄を何よりも愛した土の氏族の鑑のような存在であった。
彼は次代として誕生した時から、作る、より良い物を作る、それより良い物を作る…、といった土の氏族としては差程珍しくない目的を持って鍛治場仕事に名乗りを上げ、そして本人の才能もあってかメキメキとその実力を伸ばしていき、三百年もするとサラマンダーは『ノリッジ』
ただサラマンダーは妖精にしては珍しく目立つのを嫌っていたので、自分の作品は印を彫らずに適当に市場に流してしまう。だからサラマンダーの技量を正しく評価出来たのはノリッジ内でもごく一部。その他の妖精はサラマンダーという土の氏族はどうやら凄い武器を作るらしいという噂を知っているだけで、実際はサラマンダーの顔も知らないミーハーであった。
たまに「悲しくないか」と
「何故そんなにも素晴らしい物が作れるのに自慢しないのだ」と不思議がって聞いてくる妖精がいたが、サラマンダーは心から、孤独でその金槌を振るう音が一定のリズムを刻む生活に満足していた。
誰に評価されなくてもいい。このまま死ぬまで熱い鉄を叩き続けることが何よりの幸せだと微塵も疑っていなかったのだ。
そんなサラマンダーの人生が変わったのは当時の領主がモース化してしまった時の話。作った武器の試し切りに子飼いの人間で遊んでいたその領主は逃げ惑う人間を追うのに夢中で、気がついたらモースの群れに囲まれていたという。
サラマンダーがそれを聞いた時は何だそれはと
だが、ペンを握って薄っぺらい紙を相手にする……そんなんなら金槌を振るっていた方がマシだ。六氏族の長と会議をする……客と商談した方が実になるに決まっている。
ノリッジはよくも悪くも、働き者で飯の種よりも安定を望む偏屈家が寄せ集まって出来た街だ。
だから中々次の領主へと名乗りを上げる妖精が現れない。
サラマンダーは土の氏族長であったが、それは先代がそうだったから取り敢えず継いだだけの物。
故にサボりがち。しかし領主ともなると仕事をサボれば街の業務が回らない物だから、彼も当初は領主の席に腰を据えるつもりはなかった。
―――が、
「領主に相応しいのはサラマンダー!」「ノリッジ1の鍛治師だもの!」「しかも土の氏族長だって!」「もうサラマンダー以外に務まらないよ!」と次々に声を上げる勝手な野次馬達。
その勢いに押され、群衆のど真ん中に引っ張られたサラマンダーは、まるでもう自分に決まってしまったと言わんばかりに周りから囃し立てられた。
「……ぐぬぬ。おんどれらぁぁぁ……」
サラマンダーは目立つのが嫌いだ。だが、これで断れば罵詈雑言が飛び交い、ノリッジから追い出されそうな勢いだった為、甘んじてその責務を引き受けた。
そしてボチボチと領主仕事の傍ら、鍛治仕事を続けていたサラマンダーだったが、今日は珍しくノリッジを離れてソールズベリーへと訪れていた。
「たくっ、領主というのは面倒な物じゃの」
風の氏族長が次代になったから領主として挨拶しに行かないといけない。そんな決まりごとらしいが、何で儂が…とサラマンダーは悪態をつく。
そんなに挨拶したいなら自分から来ればいいじゃないか。
何で儂が足を運ばなければならないのだと、その
「まもなくオーロラ様がお見えになります」
「おおそうかい。なら早くしとくれ、儂は忙しいんだ」
サラマンダーの横暴な態度にオーロラの召し使いは顔をしかめるが、それお構い無しとサラマンダーはオーロラのいる部屋の扉へと目をやる。
(噂では、えらく美しいらしいが……)
前もって言っておくとこの世界の妖精や人間には生殖能力はない。
しかしその名残のような物で、何故か性欲はあるのだ。子供も出来ないのに結婚の概念があるのがその証拠で、ある程度仲を深めれば身体を重ね合い、平気でS○Xもする。
鍛治商売に生涯を捧げたサラマンダーとてオーロラの前評判には自然と鼻の奥を膨らませていた。
(そうさな。顔次第ではモデルにして、久しぶりに陶器の類を扱うのも悪くない)
顎に手をあて、果たして噂のほどはどこまで信憑性が高いのかと熟慮するサラマンダー。
暫くして、扉が開く。
「こんにちは、サラマンダー様」