オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
誰も愛さないとは公言しつつ露骨に妖精びいきなモルガンと、皆を愛するとは言いつつ人間びいきなオーロラ。今まで何だかんだで上手くやっていた二人だが、ある意味対立するのは必然で、時間の問題だった。
その切っ掛けがモルガンがオーロラの大切な妖精を手にかけたことになるとは誰も予想していなかっただろうが、その日を境に國は真っ二つに割れた。
モルガンと彼女が敷いた権力の蜜に堕落した妖精達、そして一部の臣民がいるキャメロット。
モルガン派のライネックが統治するオックスフォードと同じくモルガン派のダーリントン。
それを囲うようにあるマンチェスター、グロスター、その他すべての街の統治者から支持を得ているソールズベリーの主、オーロラ。
意外なことに今回の事件でモルガン派から寝返るものは少なかった。
以前からモルガンに対して強い不満があった者が街を出てオーロラ派閥の街に移り住むぐらいで街単位で鞍替えしたものはない。
理由は二つある。一つはモルガンは暴君であったが狂王ではない。最低限従っていれば理不尽に消されるということもなく厄災時には対処に動いてくれるので一応の信用があった。
そしてもう一つだが、これがかなり大きくモルガン派の街は令呪による三禁の対象に人間が含まれていないのだ。モルガンは人間から絞り取れる魔力量など高が知れているからと
今回のことで交易は一時凍結され、オーロラ派の街ではモルポンドは発行を停止し、ロポンドという通貨が代替品として使われるとムリアンから発表がされた。六氏族全体としてはまだ声明は出されていないが翅の氏族と風の氏族はいち早くオーロラ派であることを表明し、また牙の氏族もモルガン派につくだろうと見なされている。
「たくっ、不便なものだぜ。これからは関所ってやつが出来て行き来するのにも一々許可がいるんだろ?」
「ソールズベリーにあった物を大々的に、オーロラ派とモルガン派で分ける為に導入するみたいだぜ」
「発表があったロポンド?あれってモルポンドは換金出来るよな?じゃないと来月の家賃払えないんだけど……」
「これからはモルガン様ではなくオーロラ様の貨幣を使いましょうってだけで流石に換金は出来るだろ」
「でも面倒臭くね?所詮金だし、モルポンドを黙って使ってても文句言われないでしょ」
「それが今だけ1モルポンドを換金すると1.5ロポンドになって返ってくるって話だ。何もしなくても金が1.5倍になるんだぜ?やらない手はないだろ」
「マジか!」
「それに今だけグロスターの街はロポンド限定で全品半額セールって話だ!ソールズベリーでは近々オーロラテーマパークって娯楽施設を開くらしい!ロポンドならモルポンドの三分の一で入れるってよ!」
「マジかよ!あ、でも誕生祭でもないのに他の街のやつがぞろぞろソールズベリーに入っても大丈夫なのか?」
「それがオーロラ様の旗を掲げてるここ……まぁオーロラ派って呼ばれてる街の住人は誕生祭に限らず、簡単な審査で入れるって話だ!」
「マジかよ!!?そりゃ換金するっきゃねぇな!」
オーロラ派の街では不便なことに苦言を漏らしつつ、確かに予感させる新しい時代の到来にヒト々は期待を寄せていた。
「どうすんだこれ?」
「そりゃオーロラ様と戦争になるんじゃねぇの?」
「勝てるのか?」「妖精歴の頃にあの街は一度陥落したらしいが……」
「あの邪悪な人間の話か」「人間にも出来るなら俺たちにも」「バカ。ウーサーは人間じゃねぇ。人間なんかに俺たち妖精が負けるかよ。実は厄災が人の皮を被ってたって噂だ」
「オーロラ様の治世は素晴らしいが……今の生活を失うのは惜しい」
「肝心のモルガン陛下はあの日から姿を見せぬしライネック殿も、まるで老妖のように白くなられて」
「どうなるのだ?」「牙の兵団は団長があの様子で使えるのか?まるで老いて死にかけのようだぞ」
「人間も令呪の対象……あれさえなければ、オーロラ様は完璧なのだが」
「何故、あの方は変化を望まれる?次代へ託せと急かすのだ。安定した平和の繰り返しこそ我ら妖精にとって望むものであるというのに」
「陛下は何をしておられるのだ」「第一こうなったのは陛下がオーロラ様の忠臣を手にかけたからだと聞いたが」「私はオーロラ様の長年の友であるサラマンダー氏を手にかけたと聞いたぞ」
「なに?サラマンダーが死んだと?」「あのこの國一番の名匠が」「ついに寿命が来たのか?」「だからモルガン陛下が殺したって言ったろ」「あいつ何千年生きてたんだ?」「オーロラ様より長生きなのは確かだ」「この前話した時は雨の氏族が何だとか言ってたが……まさかな」
「しかし氏族長の中でもオーロラ様と仲の良いサラマンダー氏を手にかけたとは……成る程。確かに決別もされようものだ」
「ライネック殿は止めたらしいぞ。それを無視して殺したらしい。あと忠臣は巻き添えで死んだらしい。わざとやったんだそうだ」
「「何を考えてるんだあの女王は?」」
モルガン派の街ではトップの動きがないものだから情報が錯誤し、戦争するのかしないのかそれすらはっきりしない期間が暫く続いた。
「…………やった。やったぞ。うおー!!!やったぁぁぁぁ!!!!まさか、あんな単純なことで!ちょっと嫌がらせしてやろうと思ったあんなことで、勝手に喧嘩別れしてくれやがった!最高っひゅー!!!!この機を逃さずに次は凄い厄災作っちゃうぞー!!!!」
そして、この國の滅びを望むそれはひとしきり騒いで、至福の時を楽しみにしながら力を蓄えることにした。
また何かの間違いで二人が和解でもしたら恐ろしいので次で滅ぼせるように確実にと、その徹底ぷりには次の厄災の期間までモース一匹も見掛けなくなったほどだ。
「ハァァァ……まさか、サラマンダー様も最後の作品がこんな有り様になるなんて夢にも思ってなかっただろうな」
「外観だけなら取り繕えるが、中身は駄目だ……完成品を見てないから真似ることも出来ん」
「浮かばれないなぁ……あれだけ熱意を持っておられたのに」
「せめて彫像の一つだけでもと思ったが……この有り様では」
モルガンがサラマンダーごと破壊した聖堂。そこに集まったサラマンダーの弟子達は瓦礫の山を退けながら、全て壊されただろうとは思いつつ師の遺作の欠片を少しでもかき集めようと破片の一つ一つを見ながら嘆息していた。
この國の誰よりも芸術という分野において飛び抜け、尊敬されていたサラマンダーという妖精が最後の灯火を燃やしつしてまで完成させたという聖堂は見る影もない。
あぁ、浮かばれない。同じ道を歩むものとしても師の最後はこれ以上ないぐらい侮辱されてしまった。
「ん?おいこれ……鐘か?」
「鐘だぁ?そんなもん作る材料は用意してねぇぞ」
皆が下を向くなか、一人が瓦礫の中から黄金に輝く鐘を見つけた。
まさか、師の最後の作品かと一斉に食い付くも……分かってしまう。これは大層立派だが、師が作ったものではない。
あのヒトは作ったものに名を打たないのは有名だが、何百何千とも見ると流石にあのヒトが作ったか否かは分かってしまうのだ。
それはあのヒト限定ではなく、ノリッジ産なら大体分かるのだが……………これは誰が作ったのか分からない。
それにしても立派だ。これほどのものを作れるヒトがこの國に今何人いるだろうか。
見ていると不思議と惹き付けられるようで...……鳴らせ。鐘を鳴らせと幻聴が聞こえたような気がした。
まぁ、美しいものに見慣れている彼らはそれには飲まれなかった。これが妖精ならまた違ったが、サラマンダーは人間しか弟子を残せなかったのだ。
むしろ捜索に邪魔だろうと吊り上げ道具を用意する始末。
「おーらい。おーらい。おーらい……」
と重い鐘を滑車で吊り上げ………その下で大切に隠されていたものが顕になった。
「これは……」「おおおぉ……」「素晴らしい」
「間違いない!これこそ我らが師が残した最後の作品!!!!」
【風の氏族オーロラ】
狂おしいほど美しいというその彫像は後に弟子達の手によって再建された大聖堂の要として飾られることになった。
(尚、各々)
モルガン…(もう二度と過ちを犯さないように悪辣に)
ライネック…心労で死にそう
ムリアン…何故あの場で開戦しなかったのかは分からないが今の状況は自分の得意分野だ!と張り切り中
奈落の呪い…サラマンダーを使って最後の悪足掻きをしようとしたら準備も終わらぬ内に葬送のモルガンが来てしまい、やけくそ気味に放った嫌がらせが会心の一撃を出して笑いが止まらない。
オーロラ…聖堂から鐘が見つかったと聞き、色々な感情が込み上げてきて吐いた。
メリュジーヌ…内心ずっとキレ散らかしているが、今のオーロラから目を離したら本当にヤバいので大人しくセコムしてる。
マーリン…知ってるか知らないかで言えば知ってたし、自分が余計なちょっかいを出さなければそうならなかったのも知っている。でも必要だからやった。後悔はしている。