オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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戴冠式

妖精の寿命は長いとは言っても怠けられる時間は少ない。

彼らはまるで泳ぐことを止めたら死んでしまうマグロのように、楽しい、悲しい、情報を取り込まないとあっという間に干からびてしまうのだ。

 

「では、一時的なものですが六輪の氏族。そして妖精國に流れ着いた数多の種族達。我らが良き同朋である人間達を代表してムリアンが戴冠の儀を進めさせていただきます」

 

その日、まだサラマンダーとヴィヴィアンを失った心の傷も癒えない内にオーロラは正式にこの國の女王として即位した。

今までも女王としての仕事はしていたが今回のことで國は割れ、モルガンとオーロラで女王が二人いることが問題になってしまったからだ。

立場上、モルガンが作ったこの國で養子になることで王位を得たオーロラはモルガンに女王になることを許されている状況だ。それが決別した今、女王として地位が危うく、最悪モルガンが没収することが出来た。

そうなってしまえばいざ戦争が始まった時、色々と不都合が起きてしまう。

 

ならばとムリアンは先手を打ち、新しい時代が来る。新しい國が生まれる。ならば新しい王も必要だろう。そうだ力の強い者が一方的に名乗りを上げて嫌々従うのではなくあくまで公平に。みんなが理想だと思う人物を王にするべきだと選挙を開いた。そして自分やオーロラ、各氏族長などこの國の有力者が次々と名乗りを上げる中──当然のようにぶっちぎりで票を集めたオーロラこそがこの國の女王として相応しいと喧伝する策を講じたのである。

 

 

 

「『ブリテンの赤き竜』オーロラ。どうぞ聖堂の祭壇、戴冠の座にお進み下さい」

 

使おうと思っていた大聖堂はモルガンが壊したので、孤児院を片付けて使っている。

 

彼女が身に纏う天女のような装飾はモルガンが殺したサラマンダーが用意したものである。

 

裾が長いので転ばないように裾を持ち上げる役はヴィヴィアンに頼みたかったが、モルガンが肉片残さず消し飛ばしてしまったので、側付きの妖精達が代わりを務めていた。

 

「………………」

 

美しい、けれど氷のように凍てついた表情をしたオーロラが皆の前に立った。

 

 

 

 

 

 

「始まったか……」

「何故今なのだ。時期はずらせなかったのか?」

「仕方がないだろう。六氏族が集まる機会なんて早々ないんだから」

「まさかライネック氏も参加なされるとは……牙の氏族はモルガンを裏切る気か?」

 

急遽決まった今回の戴冠式。不在である土の氏族長を除いてすべての長が参列していた。

 

「おぉ……お美しい」

「騎士様、私に何かよう?」

「いやぁ、別に?」

 

しかし感涙の涙を流しているシルフを除いて、純粋な気持ちで今回の戴冠式を喜んでいるものは少ない。

これから始まる激動の時代を思って出遅れないように相手の動向に目を光らせていたり、これまで不気味なほど動きを見せなかった『三人目の女王』を警戒してメリュジーヌは参列席にいた。

 

 

「では女王の誕生を祝い、ここに祝福の印を与えるものとします。新女王オーロラ、公正と勤勉、共存と潔白を示す宣言をどうぞ」

 

「――――いいでしょう」

 

こんな回りくどいことをせずとも大義名分というには充分過ぎるほどあったあの場で開戦を告げれば何の憂いもなく女王になれていたオーロラが口を開く。

 

 

「私は『ブリテンに生まれたもの』として公正であることを誓います。

 

『すべての種族の長』として勤勉であることを続けます。

 

 

『楽園に赦されたもの』としてソールズベリーでの行いをこの國全土に広めることを宣言します。

 

 

『皆に選ばれたもの』として生涯、潔白であることを――」

 

「――――異議あり」

「メリュジーヌ!?何の真似だ!」

「まさか貴様が裏切るだと!?」

「何という!!!」

 

「オーロラの処女は僕のモノだ!!!!」

 

 

「「「……………………」」」

 

メリュジーヌの背後から巨大な獣の手が生えて、彼女を押し潰した。

 

「ぴぎゃ!」

 

「………………『我らが神の寵愛を受けたもの』として正しく彼らを導くことを約束します」

 

 

まるでギャグ漫画のように地面に埋もれたメリュジーヌを汚物を見るような目で見ながら、オーロラは宣言する。

 

誰も異論を唱えるものはいない。宣言通りになるなら最高の國になると新女王の誕生を祝福した。

 

これにてブリテンには二人の女王がいるが一方的な暴力で無理やり従わせたモルガンと多くの賛同を得て選ばれたオーロラ、全く異なる成り立ちで生まれたものとして誕生することになった。

 

 

 

 

 

「お疲れ様です。大変な時期なのにご立派でした」

「ええ、ありがとう。いつも突然こういう役をやらされるから事前に伝えて貰って嬉しかったわ」

「それでなのですが、この後ライネック氏が面会を願っています。何でも渡したいものがあると……」

「そう。可愛いぬいぐるみだと嬉しいわね」

 

 

「そして、残念な知らせですがやはり王の氏族との戦争は回避することは難しそうです。彼らが秘密裏に竜殺しの毒を開発していると知らせが届きました。マヴは勘繰られないように出席したようですが、逆に警備が薄くなったのが災いしましたね」

「…………そう。これからも仲良くしたかったけど仕方ないわね。マヴはモルガンの親友だから、私が女王になることはやっぱり反対だったのでしょう」

「より詳しい情報を引き出せるようスパイには言っていますが、一度開戦してしてしまえば兵士の八割以上の無力化、及び強制的な武装解除を理想とし最低でもマヴには死んでもらうしかありませんね」

「……どうしてこんなことになってしまったのかしら」

 

マヴが亡くなってノクナレアが生まれるのが運命だとでも言うんだろうか。

サラマンダーが犠牲となり、近々ノリッジへの移転が決まっている鐘を見ながらオーロラは呟く。

 

 

「鐘を、巡礼の鐘を鳴らさなければ……足りない鐘も揃えないと」

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