オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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ブリタニア

「ごめんなさい。本当はもっと早く用意したかったんだけど思ったより時間が掛かってしまって。……でもどう?ともだちに頼んで造花を習ってみたの。この土地では本物の花は育てられないけれど、いつか見てみたいって言ってたから私頑張っちゃった」

 

ヴィヴィアン達が亡くなってから一ヶ月経った。

その間に小さな暴動の鎮圧や女王としての立場を明らかにする表明を各々の街で行うなど世話しなく働き、二人のお墓を用意するのに時間が掛かってしまった。

 

「もう次代は生まれたのかしら?もしそうだったら一度ぐらい顔を会わせに来てくれたら嬉しいわ。また一緒に暮らせたら嬉しいけれど、次の貴方には次の貴方の人生があるものね。貴方が元気でやっていればそれだけで私は嬉しい」

 

先日、スプリガンという土の氏族の長が誕生した。

ナカムラ某ではなく、恐らく彼が成り代わる前の本物だ。

 

『探窟……探窟……石を……炭を……石炭を!掘らねばなるまい!それこそが俺の目的なのだから!』

 

私がそうであったように本来なら各氏族長や上級妖精達に挨拶回りをしに行かなければならないが、ツルハシ片手に現在失踪中である。

またサラマンダーとは似ておらず、彼の次代ではないそうだ。そもそも鐘になったサラマンダーの魂がまた妖精として復活するか分からない。

 

「ノリッジの時計台...鐘が飾られることになったわ。サラマンダーの弟子達が作ったのよ。貴方の事だから自分ならもっと良いものが作れると言うでしょうけど、それを貴方が言う時は嫉妬してる時だって、私知ってるから」

 

 

二人の墓には遺体は入っていない。

妖精の死体はこの國の一部になるが、肉片すら残らなかったので葉っぱの一つも現場からは発見されなかった。

 

「………………」

 

ぎゅっとスカートの裾を握り締める。

この國では死者を弔う文化はない。

妖精に次代という生命の循環システムがある以上、根付かないのは仕方のないことなのかもしれないが、それでも墓を用意して、弔おうとするのは私の弱さの象徴だ。

 

何も眠っていやしない墓が一つ、また一つと私が視線を上げればホムロから始まった墓の草原が辺り一面に広がっている。

 

 

壊されたことも何度もあった。その度に作り直して、忘れられない悲しみを私は増やし続けている。

 

「きっと……次こそは」

 

そうでもしないと私はこの翼で飛んでいってしまうだろうから。みんなの想いを重しにして。いつか潰れてしまうだろうけど、それは今じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ!!?人間牧場の稼働停止って本気で言ってるんですか!?」

 

晴れてモルガンと敵対國となって10年。

人間30年……いや、今では80年だった。そう考えると8分の1ともなる長い時間だが妖精にとっては数週間前のような短い期間だ。

 

その間に私たちはモルガンが統治した國から独立し、【ブリタニア】という新生国家を作った。

また組織図も改め、今までは私とモルガンのツーオペだったが、

 

 

総統を私、オーロラ

副総督兼軍事の総責任者にメリュジーヌ

広報や諜報、時には軍事における戦略の立案者としてムリアン

外交、入国管理、人事にシルフ

武器等々物資生産にはドゥーニ

 

国内の令呪執行権、又は迅速な拘束処置が必要と判断された危険人物の管理にプーカ

 

その他にも細かく分布図は広がっているが主要幹部は彼らになる。

人間達には悪いが完全な実力主義で選ばせて貰った。ここに人間の名前がないのは寿命が短いからではなく、人間で彼らより能力が高かった者が居なかったから選ばれなかったのだ。

プーカ、それとドゥーニという名前には聞き馴染みがないかもしれないが、ドゥーニはコーンフォールの街の領主で、土の氏族だ。武器作りより集めるのが趣味で、有力な鍛冶師達と太いパイプを持っている。

プーカは鏡の氏族の長で、いつも眠たそうにしているのが特徴的だ。彼女の予知の精度は鏡の氏族の中でずば抜けていていて、その能力の高さから犯罪の抑止力として期待されている。怠け癖があるが性格に問題はない。補佐には彼女の妹を名乗る人間の少女がおり、彼女がしっかりしているので、仕事をサボるということもないだろう。

 

彼女たちを地盤にブリタニアは動き出している。

不満を訴えたり、離反していく人達も出てきているが、一度決めてしまった以上、私が止まるわけにはいかない。

國としての最終到達点が緩やかな滅亡であるからどこまで発展させるべきかという……贅沢すぎる悩みがあるが、目先の問題は、モルガンがこれをどう見るかということだ。

 

 

これまではあくまで政治のみ私が実権を握り、ブリテンの真の主はモルガンであるという体制を崩さなかった。だが二つに分かれたとはいえ私が正当な国の女王だと宣言してしまっている。

 

極々例外を除いて彼女の至上とする願いはブリテンの王になること。

今は混乱して、私の行動を好きにさせているが、いざ王位が危ういとなったら実力行使に出てくるかもしれない。

 

 

今のところ、国民の犠牲を無視してメリュジーヌと二人がかりなら危なげなく勝てるだろうと踏んでいる彼女だ。

ここにライネックが加われば少し危うく、また防衛にも気を配らねばならないとなると、戦況は悪くなる一方だ。

 

個人としてなら勝てるが、國同士の戦争では間違いなく負ける。それが一言だろう。

 

所詮竜と言っても出来るのは戦術規模で、彼方は戦略規模の大魔術使いなのだ。

それの対策があるとすれば……キャストリアか、マーリンに来てほしいところ。

自分から呼び出すことは出来ないので、今度夢で呼ばれたら知恵を貸してもらえるように交渉しようと思う。

 

「で!!!!何でそこまで分かってて!人間牧場の停止とか言ってるですか!?国力の象徴こそが人間の数!!!生殖でも人間の数は増えますが生産性としては悪く、安定しません!それであっちがバカスカ生産している最中だというのに停止ィィ!!!?益々国力に差が生まれれば戦争前に負けますよ!!!」

 

ダンっとムリアンが机を叩いた。

 

これは彼女の知らないことだが、北と南の妖精達の勝敗を分けたのは人間の所有の有無だったから妖精にとって人間の数とは無視出来ない。

娯楽以外にも人間が与える影響はそのまま妖精の活力へと繋がるのだ。

 

 

「勿論、スパイには動いてるように見せかけるわ。生殖による繁殖だって供給量はもう随分前から安定値に達しているでしょう?今さらやめても問題はないじゃない」

「だ~か~ら~!それは平時においては!です!人間は病気や怪我で簡単に死んでしまいます!戦争になればいっぱい死にます!虫みたいに!私なら自分より強い相手と戦うならそうして弱体化を図ります!」

「……そうね。医薬部門の責任者も決めてもっと医療のレベルを上げないと。適任者は……誰かいたかしら?」

「話を逸らないで下さい!」

「大丈夫よ。いつものバカだと思うかもしれないけど停止するだけで解体はしないもの。有事の際は動かすわ」

「え?……それならまぁ……いや、しかしですね。それならわざわざ停止する意味も」

「簡単な話よ。戦力増強の見せかけ、かさ増しよ」

 

かつて無知な私はモルガンを納得させることが出来ずに、人間牧場という悪性の腫瘍を除去することが出来なかった。

 

 

「かさ増し?」

「考えてみて。人間牧場から生まれる人間の寿命は30年足らずで、生殖により誕生した人間の寿命はおおよそ80年。生産数として見るなら人間牧場の方が優秀かもしれないけど、人間には育成期間がある。中途半端な教育で無知な子を育てても、それは妖精にとって好ましくない。だから良い人間を育てるには学園に入れるなり幼少のうちから色々な経験を積ませたりとコストがかかる。それが過ぎても雇用出来るまで時間は限られるなら、長い方が長期的に見るならずっといい」

「ですがそれは()()()()もやっていること」

「ええ。それは承知の上だわ。でも彼女の國では人間は三禁に含まれないから、命はずっと軽い不安定なもの。そんな國で子育てしようだなんて考える人間が少ないのは当たり前…………チッ…………足りない数は人間牧場で補っているわ」

 

 

増やしすぎてもいけないから数は厳しく管理されている。

それはこちらも同じだ。

モルガン派の國と私の國の違いは、牧場から生まれた第一世代が人口密度の大半を占める彼方とは違い、生殖によって生まれた第二世代、第三世代が大半をしめているということ。寿命以外に区別出来るものがないので外見的特徴で見分けるのは先ず不可能だ。

 

だから人間牧場を停止するのは戦略的な意味でも好ましかった。

 

 

「それは…………あ!」

「ここまで言えばわかったでしょう?人間牧場で生まれる人間の寿命が短いのは周知の事実。モルガンも伸ばしたいならとっくの昔に伸ばしているはず。伸ばさないのではなく伸ばせないのよ」

「かさ増しとはつまり……あちらに見せかけるというのですね。こちらは第一世代の寿命を伸ばす術を見つけたと、モルガンにすら出来なかったことをしたと」

「少なくともモルガンは思うでしょうね。自分よりも優れた魔術師がいると。まさか人間牧場を停止するだなんてバカなこと、この私がするとは思わないもの」

 

どういう訳かモルガンは私を買っている。

青王セイバーことアルトリアが自分より優れたものを王にしようと聖杯戦争に参加していたように、私という存在を王として自分より優れていると信頼の大半を預けていた。

 

 

そんな優れた王が、ブリテンという土地で安易に人間を増やしやすい策を死蔵にするとは考えもしないだろう。

 

 

まさか……彼女は人間牧場の寿命を……いや、優れた魔術師を味方につけたのか。一体だれを?セタンタ?……いや、彼はもう座に還った筈……となるとまさかマーリン?

 

 

「これだけは誰にも負けないと思っていた得意分野に突如、自分よりも優れた存在が現れた。……怖いわよね。でも素性の知れない相手、勝てる保証もないのに攻め込むわけにはいかない」

「なるほど……少しでも稼働していればバレてしまう策ですが完全に停止させれば確かに」

「でしょ?」

 

 

一番知恵の回るムリアンさえ納得させてしまえば後はどうとでもなった。

 

これについてはあの日からずっと考えてきたのだ。こんな状況でなければ使えない作戦でも、使えるなら使わない理由はない。

 

「ブリタニアは今日限りで人間牧場の稼働を停止します。これまで國の為に尽力していただいた巫女様には最大限の敬意を払うと共に穏やかな眠りを提供致しましょう」

 

 

 

この日、人知れずブリタニアの人間牧場は稼働を停止した。

 

けれど工場の灯りは消えることはない。これが見せかけなのを知るのはブリタニアでもごく一部だ。




ケルヌンノス「加護倍プッシュノス」
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