オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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女王の死 

バーヴァン・シーを迎え入れてから少しづつだがモルガンはかつての活力を取り戻していった。

 

ソールズベリーを追放された当初は何も手につかない状態だったが、オーロラが居なくなったことで回らなくなっていた内政を見直すようになり、この國の娯楽の大元であるソールズベリーやグロスターを失い不満を訴える妖精達への対応策として人間牧場の稼働数を増やすなど劇的な変化を及ぼすほどのものではないものの、放っておけば國として立ち行かなくなるレベルの最重要事項は率先して解決に動くようになった。

 

「……やはり、か。次の厄災は一筋縄ではいかないかもしれないな」

 

そして10年。この國最大の膿であるモースの発生頻度を調べてみれば近年は一匹たりとも湧いていないという報告を聞いて眉をひそめる。

少なくとも年に二百は被害が出るというのにそれがゼロとは明らかな異常だった。

まさかオーロラの働きにより、獣神が妖精達を赦したのでは?とも思いはしたが、それならもっと段階を踏んでいる筈だし、何よりブリテン島が消滅しているだろう。

 

「彼方が本気なら数十年程度の準備期間で満足するとは思えん……となると次の大厄災か。あと五百年……」

 

短絡的に考えるなら力を溜め込んでいる。それも私とオーロラという両翼が別れた今を好機と見て本気で準備しているのではないか。

 

「狙うは両方か、それとも片方か」

 

既に壊れてしまった夢だが、自分とオーロラが統治した國は完全無欠であった。

高い民衆からの支持と高度で先進的な技術革新、クーデターなど起こりようものならオーロラがいち早く見つけてモルガンが土地ごと閉じ込め、一匹残らず鏖殺する。いくら姿形を変えて厄災が現れようと捻り潰して國は発展し続け、領土はどんどん広がっていくというまさに黄金期であった。

 

体制だけなら今の自分だけでも再現出来るが、オーロラはこの國に愛されていた。クーデターを潰すことは出来ても普通なら民達に冷酷だ、残酷すぎると不信感を抱かれてしまうところだが、オーロラがこれに関わると、あのオーロラがそう判断したのならと納得してしまうのだ。

自分が血を吐いて願っても手に入らなかったカリスマというやつなのだろう。モルガンは王になる能力はあっても才能がなかった。だから王として正しいことをしても妖精達は納得してくれない。そしてオーロラはその逆だ。独裁政治を敷けるほど優れた手腕はないが、才能があってメリュジーヌを始めたとした優れた部下に恵まれている。

きっと直ぐにオーロラ達の國は頭角を現す筈だ。それこそ厄災の準備なんて待ってやる義理はないだろう。

となると、より崩しやすいこちらを攻めてくる。

 

「………………」

 

モルガンは杖を振るい、三つの宝石を取り出した。

 

『ガウェイン』

 

『トリスタン』

 

『ランスロット』

 

其々には彼らを思わせるシルエットが刻印されている。

 

「やはり、戦力増強は必須か……」

 

これは汎人類史にある英霊の座から引っ張ってきた円卓の騎士達の霊基だ。これを与えれば並の兵士でも円卓の騎士達と同程度の力を得ることが出来る。上澄みなら更に効果は上乗せだ。

増やしすぎれば汎人類史との導線が出来てしまい、いずれこの國を滅ぼしにやってくる異邦の魔術師達の手助けになってしまうから雑兵にくれてやるわけにかいかないが、数人程度なら問題はない。あるとすれば誰に使うか……。

 

まず初めに候補に上がったライネックは先日断られてしまった。全盛期のピークを過ぎて老いていくばかりの自分に使うのは勿体ないと。

決別以前ならランスロットはメリュジーヌにと思っていたが、あれは極論オーロラが生きていれば他はどうなってもいい騎士の皮を被った狂信者なので論外。

 

現状。目ぼしい人材がいなかった。

ライネック以外にも頼りになる部下がいないわけではないが、数を絞られる以上、与えるなら生半可な者には使いたくない。

 

 

……いや、決して優れているわけでないが、バーヴァン・シーには与えるべきだろう。

 

 

これは先代の彼女が命を落としてしまったこともある。

あれは完全にモルガンの落ち度だが、このブリテンで生きていくには彼女はあまりに優しく、脆弱だった。

全てを敵だと思え……そこまで言うつもりはないが、人間を庇って傷つくだなんて過ちは正さねばなるまい。

そして悪辣な妖精達に対抗出来るようにより悪辣に……否、その考えではソールズベリーで彼女は生きていけないから無しだ。

兎に角、頑固で強力な力がいる。それでいて剣や槍があの娘に似合うとは思えないから、この中ではアーチャーの霊基で引っ張ってきたトリスタンの霊基が一番適しているだろう。

これだけの力があれば多少の事故や事件に巻き込まれても死ぬことはない。

また明日、来週、来年と先送りにし、気づけば10年の月日が流れてしまったが何れはオーロラの國に帰る彼女。たった三つしかないこの力をやるのはかなり勿体ないかもしれないが、こればかりは効率の問題ではなかった。

 

 

「よし、とすれば今日中にでも与えてしまおうか」

 

 

思い立ったが吉日と、彼女を呼び寄せる。

 

 

 

 

「ん?…………あ、そう言えば今日はソールズベリーから客人が来るのでしたね」

 

いつもなら、バタバタと聞こえてくる愉快な足音がないことで思い出した。

オーロラは先日、ブリタニアという國を設立した。

今になって新しく作ったと言うよりはモルガン派、オーロラ派と区別する國としての名称がないのは不便だから付けただけらしいが、一応使者が挨拶に来ることになっている。

下手にオーロラやメリュジーヌ、私などが顔を合わせることになれば今の微妙な國の関係を煽ってしまうので今回はお互いの立てた代理者同士の顔合わせだ。こちら側の代表はライネックの直属の部下に任せたが、外から来る存在など初めてで、一目見ようと飛び出していったのだ。

 

 

力を渡すのは決定事項だが、何も彼女の愛らしい楽しみまで取り上げて急ぐ必要ない。

モルガンは彼女が戻るまで溜まりにたまった仕事を片付けることにした。

 

 

「む?王の氏族に不穏な動きあり、か……」

 

 

 

 

 

 

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