オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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歴史的大敗

ブリタニアと王の氏族の戦争が始まった。

 

「マヴは……気でも触れたのか?」

 

蚊帳の外であったモルガンとてその情報は耳に入る。

最初は何かの冗談かと思ったが、マヴに水鏡を送ってみれば本気だと言う。

 

ー何を世迷い事を。王の氏族だけでブリタニアに勝てると思ってるのか?ー

ー簡単な話ではないわね。でも勝算がないわけじゃないわー

ーオーロラはお前の想いビトだろうー

ーええ、そうね。何百年と愛を囁いても靡いてくれないつれない人よー

ーその國を壊すのか?あれを壊しても得るものはないと言うのにー

 

マヴは野心家である。だからこのキャメロットに攻め入るというならモルガンも納得出来た。

ブリテン島の秘密。大厄災で滅んだ妖精達の蘇生法とそれを維持する仕組みなど、本来なら秘匿するべき情報を親友のよしみで過去に打ち明けていたのだ。もうその頃にはオーロラを後継に見据えていたので自分が倒れた時の保険として話したわけではないが、キャメロットを落として手に入るものはあまりに大きい。

 

反対にブリタニアには何もない。

いや、人口は多いし産業や経済は発展している。妖精にとっては住みやすい環境なのは間違いないのだが、それは政治で上手くやっているからだった。

土地が特別豊かだったり、厄災の被害が及ばないといった利点もない。

燃えるように豊かになっても次の厄災で消されるのが常。それで千年以上ソールズベリーを栄えさせているのは流石はオーロラと言ったところだろうが、ソールズベリーを首都として、点々とする都市をまとめ上げる手腕は彼女一人によるものではない。

徹底した組織管理による統治。それはオーロラが苦手としていることであり、右腕であるメリュジーヌに任せるのは論外の領域であった。

つまりブリタニアの幹部達の腕が伊達ではないという証明であり、その中核であるムリアンの能力はモルガンにして目を見張るものがある。

 

それを略奪し、あまつさえ首脳陣を入れ換えて維持出来るわけがなかった。

 

第一、ブリタニアの民として大なり小なり恩恵を受けている王の氏族達がそれを独り占めするどころか完全に失ったとなれば、逆上した怒りの矛先がマヴへと向かうのは容易に想像がつく。

 

勝っても、負けても利点はない。そして勝ち目がほぼないとくれば、気が狂ったと思うのも仕方ないだろう。

 

「陛下」

「戻ったか、それで?お前達の目で見て王の氏族の軍勢はどう映った?」

「ハッ。士気だけは悪くない、といったところでしょうか。装備の質は悪く、また軍隊としての統一性も最低限であると判断いたしました。恐らくまともな訓練を受けたことない兵が多いのでしょう。陛下の仰る通り、これではソールズベリーどころかその近隣都市を落とせるかどうか」

 

モルガンは念のため、兵や指揮官として戦場のいろはを学んだ部下達を使いに出したが、みな同じような意見だった。

 

本当に何を思ってマヴが戦争を仕掛けたのか分からない。

 

「ブリタニアからの使節団は滞在期限が迫っておりますが」

「こんな状況下で追い出せるわけもあるまい」

 

はぁ。と答えのないため息をつく。

せめてマヴが事情を話してくれれば対応も違うが現状手に入れた情報だけではモルガン派として(派閥のようで締らないので近々國の名を定めようと思っている)この戦争で動けることは何もなかった。

介入する理由がなく仲介するにしてもマヴは邪魔するなの一点張りで、オーロラには合わせる顔がない。

だとすれば静観に限るが、少なくない親交を交わしたばかりの使節団に「関わりたくないので出ていって下さい」と言えるほどモルガンも面の顔は厚くなかった。

 

「早く、穏便に終わればいいものだが……」

 

水鏡には王の氏族の兵団がブリタニアの都市の一つを標的と定めて進軍する光景を映し出している。

言葉では理想を口にするものの、王の氏族が六氏族の一つとして数えられるのもこの戦争で最後になるだろうと親友の未来を悲観して瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦力的に消耗を避けたい王の氏族はシェフィールドを仲介して一気にソールズベリーを攻め落とそうと考えるでしょう」

 

首都であるソールズベリーから離れ、シェフィールド。

ムリアンは鼻高々に地図を差して宣言する。

 

「シェフィールドは落として当然の前哨戦。まさかここに最大戦力であるお二人が待ち構えているとは夢にも思ってないに違いありません!」

 

王の氏族からの譲歩を蹴ってから間もなく王の氏族が開戦を宣言した。

ブリタニアは今回、勝てる戦争ではあるものの王の氏族がそれなりの成果でも出してしまえば、今後調子に乗った第二、第三の反乱軍が生まれかねないと完膚なきまでに完全勝利をする必要があるらしい。

そこで王の氏族の出鼻をくじく為に私たちは呼ばれたのだった。

 

 

「そうなのね。それにしても鎧って慣れないわ。よくこんなのを着て飛べるわね」

「まぁ慣れだよ、慣れ。僕達ぐらいになると薄皮一枚からして鋼以上だし。本能的に必要ないって侮っちゃうんだ。でもそれだと毒とか呪いとか、触れられたらアウトな攻撃は防げないだろ?だから戦場では必ず鎧を着るようにしているんだ」

「そうなの……」

 

ん?と第三再臨のメリュジーヌを思い浮かべて首を捻ったが、まぁあれはプレイヤーがそうさせているだけで本人としては鎧はちゃんと着こんで戦いたいのだろうと納得する。

 

「それで今回は私だけで戦うってことでいいの?」

「いえ。正面からの分は正規軍で対応いたします。マヴは牙の兵団の元副団長ガウェル様が抑えます」

「え?なら私たちの役目はなに?」

「どうやら王の氏族はマヴの一枚岩……と言うわけでもないようなのです。元は自らがブリテンの真の女王だと信じて疑わず、他の氏族に片っ端から戦争をしかけていた過激派で知られるマヴですがトネリコとの一騎討ちに敗れ、そしてオーロラ様の支配に従順する穏健派として女王歴からはその成りも潜めていました。そこで今まで通りマヴに従う者達とマヴは落ちぶれたと新しい氏族の長を立てようとする新勢力により二つに割れようとしています」

「……待って。ならこの戦争はマヴの本意じゃ!」

「いえ。残念ながら戦争を主導しているのはマヴに間違いありません。恐らく失った求心力を取り戻そうと躍起になっているのでしょう。今回お二人にお願いしたいのは後方で悠々自適に観覧している新勢力の代表らを討ち取って欲しいのです」

 

「……そんなの会議で聞いてないけど?」

 

少し機嫌が悪そうにメリュジーヌは尋ねた。

 

「勝手ながら会議でその事を告げれば王の氏族に同情し、戦争に反対の声が上がりかねないとあえて伏せさせていただきました」

「いやいや、僕たちは妖精だよ?そんな人間みたいな衝動的感情で動くわけないじゃん」

「……私ね」

「はい」

 

マヴに付き合わされて戦争をさせられる王の氏族たち。妖精の感性からしたら理由があっても攻めてきたのはお前達なのだからお前達が悪い。滅ぼされて当然だ、となるであろうが、私は彼らを哀れに思った。

 

「オーロラ様の影響は絶大です。貴方はあくまで象徴だと自らのことを卑下するでしょうが、貴方の一声は人や妖精を狂わせる。もし王の氏族は悪くないかもしれないなどど口にしていれば、こうもすんなりと正規軍を動かすことは出来なかったでしょう」

 

オーロラ。私がオーロラだから愛され、狂わせる。

私の迷いのせいで余計なロスが、犠牲が出るかもしれない。ムリアンはその危険性を誰よりも理解していた。

商人の気質なのは前から知っていたが損得勘定で判断出来る忠義者とは何と得難い存在であろうか。

 

「話を戻しますが、ここでマヴを叩いても新勢力の代表らが残っていれば王の氏族はまた力を蓄えて反乱を起こすでしょう。この戦争で憂いを絶ちきり、次代へとシフトすることが最善であると考えます」

 

「……ええ。分かったわ。代表達の居場所を教えて」

「オーロラ、」

「マヴもその代表達も必要な犠牲、それだけの話よ。もう全部が全部丸焼きになるだなんて最悪な光景は見たくないの」

 

 

その日、初めて私はまだ罪を犯していないいずれ犯すだろうヒト達を殺した。

 

 

 

 

そして王の氏族はシェフィールドの防衛を突破出来ず、撤退に追い込まれた。またムリアンの策略により中間拠点なしで、本拠地とのラインを分断され、ろくな補給もないままソールズベリーに直接攻め込むことを強いられることになる。

 

 

 

歴史的な大敗だと誰もが笑った。

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