オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
キャメロットからの使節団が戻ってきたのは、戦後三ヶ月目のことだった。
「ふぅ」
少し懐かしく感じる変わらない故郷の姿にホッと息をつく。
一週間ほどで終わる筈だった初の交流回にしては随分と長引いてしまったものだとロリカは思う。
美しい國ではあったとはいえ人間軽視のキャメロットはどこか居心地が悪く冗談抜きで一度殺されかけた。
あれは普通に外交問題だったがロリカは自己の判断で黙認とし、そのかいあって当初は予定になかったモルガン陛下と対談する機会も作れた。
ブリタニアと冬の國が今後どう言った付き合いをしていくべきか大まかに捉えることが出来たつもりだ。
この成果は次のブリタニア会議で大いに役に立つことになるだろう。
もうロリカは少し変わった子と呼ばれていたような小さな子供ではない。かつて面倒を見てくれた妖精ヴィヴィアンの名に恥じない立派な外交官として成長していた。
「ここがソールズベリーか!何か初めてきた気がしないな!」
「バッッ!!!トリスタン様!フードを取ってはダメです!」
……のだが現在、密入国の手引きをしていた。
紅い髪に青白い肌。スラリとした高身の少女である。荷車から顔を出した彼女の頭を慌てて押さえてロリカは周囲を確認した。
「良かった。誰にも見られてない」
「まだ検門前だろ?ロリカは大げさだな」
「普通の妖精なら問題ないんですよ。審査に時間は掛かるでしょうが通る物は通ります。でも貴方は
「そうだ、オーロラは私のお姉ちゃんなんだぜ!」
ブリタニアの建国理由になったモルガンとの親子関係だが、公的には未だ解消されていなかった。
このトリスタンと呼ばれる少女はモルガン直々に名を与えられ義理の娘として迎え入れられたお姫様である。
彼女と仲良くなった経緯は長いので割愛するが、別れ際にもうすぐ誕生祭の時期だと会話の中で溢すと行きたいと駄々をこね、行ける訳がないと説明すると納得したように見せて、荷車の中に忍び込んでいたのだ。
これに気づいたのが出発したばかりならロリカも引き返したが、既にブリタニアの領内に入ってから彼女は姿を現した。
こうなって引き返すと誘拐、密入国に加担した扱いとなりロリカ達の首が飛ぶのだ。物理的な話ではなく職を失うという意味だが、誰だって無職になどなりたくない。
これを解決するには書類を捏造するかオーロラが妹に会いたくてこっそり招いたとでも証言してもらうしかなかった。
「ここでは人間と妖精は対等、絶対の絶対に杭で刺したりしてはいけませんよ?」
「わーかってるって!完璧な淑女として振る舞ってみせるから!お母様の名にかけて!」
「心配だなぁ」
このトリスタンという少女。普段は優しい妖精なのだが時々使命感に駆られたように悪逆に走ることがあった。出会ったばかりはそんなことはなかったのだが、ロリカが殺されかけた後、モルガン陛下から貰ったという杭を持って目についた妖精達を殺そうとするのだ。
「嫌いなやつでもないのに殺したりしねーよ。ロリカは私の友達だし、何となくだけどソールズベリーの妖精は良いヒトがいっぱいな気がする」
「なら良いんですけど……」
いや、良くはない。仮に嫌いだからと他国の人民を殺されたりでもしたら外交問題待ったなしである。ただでさえ冬の國とブリタニアには無数の火種が燻っている。トリスタンは間違いなく危険人物だ。いくら高貴な身とはいえ普段のロリカなら自国の為を想い、潔くクビを受け入れていたのだろう。
「だけど、トリスタン様は放っておけないと言うか何というか。他人のような気しないんですよね」
「お?奇遇だな。私もロリカは他人の気がしなかったんだよ。多分私たちの相性最高だぜ。今は貸しを作ってばっかだけどロリカがババアになったら私が面倒見てやるよ」
「…はは。ババアですか。そうですね長生きしたいものです」
ロリカはブリタニアで第一世代と言われる人間だった。
現在の年齢が20歳だから最長でも10年たらずで寿命が尽きる。だから老いることはない。若い見た目のまま死んでいく。
それを不幸に思ったことはないが、この友人を悲しませるのは億劫で、どうか私が死んだ後に素敵な出会いがありますようにと願った。