オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
モース戦役
女王歴1000年
その年は大きな節目となった。
何せ女王歴から1000年目にして初の大厄災である。原作通りならモースの王(←に憑依したヴォーティガーン)を首魁としたモース軍団との戦争となるが、これまでに王の氏族が実質的に滅び、翅の氏族はムリアン以外にも生存しており、まだ覚醒する筈のないメリュジーヌが六大氏族の一つになって、更にブリタニアという知らん大国が生えてきたりと、原作の流れという物は粉微塵と化しており、原作通りになると考えるには無理がある状況だった。
前回の大厄災の記憶はないことだし、私は死にかけたとも聞く。だから準備に準備を重ねて過剰なぐらい対策してやろうと百年という年月を注いだ。
ある意味これはブリタニアが今後も存続していけるか判明する大きな節目であったわけで、結果的にみればこの準備は無駄にはならなかったのだが、一つ大きな問題が出来てしまった。
『何故、お前が前線に出てくる。あの
「貴方の魂胆なんてお見通しよ。大方、私の為にあの娘が無理をして出てくるとでも思ってるのでしょうけど……予め毒を盛って動けないようにしてきたわ」
ケルヌンノスから出された英雄探しの課題は五百年経った今も達成することは出来ていない。サボっているわけではないがメリュジーヌが見つけ出して鍛えた天才や鬼才クラスの人間は英霊の座のお眼鏡には適わなかったらしい。メリュジーヌにとってモースの毒は未だ致命的であり、今回の戦いには出すわけにはいかなかった。
それでも私が戦場に出るのなら無理をして着いてこようとするあの子だ。私は彼女を寝室に誘い、そして微量のモースの毒で動けなくさせてきた。
『クソッ計画が滅茶苦茶だ。何のために王の氏族を誘導したと思ってる』
「……あの件はあなたが絡んでいたのね」
『500年だ。いや、お前を殺そうと思ってから1200年の時が経っている。お前の愛する民を殺し、お前の街を壊して、お前に死の恐怖を味わわせて、お前の愛する家族を殺しても、お前は止まらなかった。何故だ──何故何故何故何故何故何故何故ッッッッ!!!!!オーロラ、春の女王!!!お前は一体何なんだ!!!』
「私はオーロラよ?それ以上でもそれ以下でもない……ふふ、私から大切な物を奪ったって面白いことを言うのね。思い出は私の中で何一つ色褪せていないというのに」
私がヴォーティガーンと直接対決したのは今回が初だった。これまで彼の影は何度か感じたことはあったが、会話なんてしたことがなかった。
だから少しだけ喋り過ぎてしまったのだろう。巨大な竜の姿をしたヴォーティガーンは私にキレ散らかし、その隙をついて止めを刺したウッドワスに目もくれずに呪いの言葉を残して消えた。
『つぎはおまえのすべてをうばう』
バーゲストが生まれなくなるかもしれない。
▽▲▽▲▽
い、いや。まぁ大丈夫でしょ。
ムリアンだって、ボガードにウッドワスだって何だかんだで生まれてるのだ。
運命力、歴史の修正力的なやつでバーゲストは生まれてくるはず。
ぶっちゃけ彼女が生まれなかったからと言って困ることは何一つとしてないが、それはそれとして個人を抹消してしまったかもしれないと言う責任感は人一倍感じていた。
「オーロラ!オレだ!結婚してくれ!!!」
「発情期ですかー!?毎日毎日うるさくて近所迷惑なんですけどー!?あと、オーロラは僕の番なんだよね!間に合ってるよ!この勘違い狼男!」
「ふんっ!千年かけても唇すら重ねたことすらないビッチ処女が言いよるわ!お前にオーロラは釣り合わん!潔く諦めろ!」
「はぁぁ!?唇どころかベッドに呼ばれたことありますが!!?」←(毒を盛る為)
「バカな!!?」
ソールズベリーの屋敷。大厄災を経て、無事に?私に惚れ込んだらしいウッドワスが告白する光景が日常になりつつある中、私はバーゲストの件で頭を悩ませ続けていた。
ウッドワスはライネックの次代だ。多少タイミングがずれようと生まれてくるのは分かっていた。
ムリアンもタイミングこそ分からなかったが、まだそれほど原作の流れを崩していない時期なのもあって、焦る必要もなく当たり前のように生まれてきた。
だがバーゲスト。彼女は厄災として生まれた牙の氏族であり、先代は不明かつ、そもそも存在するのか分からない。バーゲストの霊基に厄災が混ざったのか、牙の氏族という霊基を厄災側で模倣して作られたのか、原作で判明しているかは分からないが少なくともオーロラはその真偽を知らなかった。
「マーリンに聞くべきかしら?でもマーリンの千里眼って現代しか見通せないのよね……だとするとヌンノス?」
『ヌン?(呼んだ?)』
ヌンノスである。
「ちょうどいい所に。実は妖精の生まれてくる法則についてなんだけど(説明中)」
『ヌンヌンヌ(成る程。それは生まれてこないんじゃないか?)』
「やっぱり……そうよねー」
ヌンノスは本体がギリギリ生きていた頃に残した分霊である為、厄災については詳しくないらしいが、バーゲストの誕生は厳しいだろうと言う。ちなみにヌンノスは私が元人間の転生者であることは話しているが、この世界が物語であるとは話していない。あくまで未来に生まれてカルデアに近しい存在だから知っていると説明していた。
信用していないわけではないが、知っていてどうにかなる話でもないからだ。それに私なら自分が創作物のキャラクターだと言われていい気分にはならない。
『ヌンヌン(しかし、可能性がないわけでもない。お主という観測者がいる時点で、時の流れは出来ておる。お主から全てを奪う。その条件に合致するようにバーゲストとやらも生まれるかもしれん)』
「それって修正力みたいなこと?」
『ヌンヌヌ(ガイア寄りだがな。アラヤの時ほど強制力はないが、ヴォーティガーンがそれを知らない以上、無意識にバーゲストとやらを利用するように動くかもしれんのだ)』
つまりは祈るしかないという事だ。
全くもって情けない話だが、こればかりはどうしようもない。
「分かった。ありがとうね」
『ヌン(困ったらいつでも呼ぶといい)』
ヌンノスを見送り、まだ喧嘩している二人を見てオーロラは頬骨をつく。
「私から全てを奪う……か」
何をどうやって奪うのかは分からないが、今の私に残された物は何があるのだろう。
メリュジーヌ、私自身、このブリタニアという國。そして民。ムリアンやモルガンは大切だが、どうにも私の、という枕言葉はつかないように思える。
口振りからして今回はメリュジーヌを殺そうとしていたようだが、どうしてそう回りくどいことをするのか。
私が邪魔なら私を殺せばいいのに。
私は頭が良くないので考えるのが苦手だ。もしかしたら一見回りくどいこのことにも意味があるのかもしれないが、追い詰めたネズミに噛まれるよりプチっと潰せる時に潰してしまった方が楽に思えてしまう。
「もう頭に来た!躾けてやる!」
「やってみろ!オレは妖精國最強の騎士だ!」
「ハッ!見栄を張るのも大概にするべきだね!この僕こそが史上最強の騎士であるとわからせてやろう!」
拳を振り抜いたメリュジーヌとウッドワスが跳ぶ。
───あ。
その日、オーロラの屋敷は吹き飛んだ。