オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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円卓

肉の焼ける音がする。

 

「ゴホッゴホッ……何、が、起きた?」

「分かりません。ですが、いきなり何かが降ってきたようで」

 

冬の國と春の國の国境沿い。

晴天の青空から(正確には青空ではないが)ある日突然、地面が揺れるほどの大きな何かが空から降り注いだ。

偶然そこを通っていたキャラバンを狙いすましたかのように何度も降り注ぎ、爆薬を積んでいた荷車を押し潰して引火でもしたのか、辺り一面は煙と砂ぼこりが舞っている。

 

偶然にもそれらの直撃を免れた二人は這い出るように一帯から離れて、全体を見渡そうと小さな丘に登り絶句する。

 

「何だこれは、何かで抉られた?まさか今のは攻撃だったのか?」

「冬の女王でしょうか?」

「あり得る、と言うかそれ以外に考えられない」

 

まるで巨大な槍を突き刺したような大穴がそこら中にあった。こんな派手なことは人間どころか並みの妖精ですら出来やしない。

 

「クソッ!どこでバレた!」

 

あり得るとしたらモルガンぐらいで、彼らにはモルガンに狙われる理由があった。

 

 

──円卓。

 

この世界では久しく聞くことがなかったその名称。

これが最近になって現れ、急速に勢力を拡大していた。一体誰が設立したのか、指揮を取っているのは誰なのか。本拠地はどこで資金源はどこなのか。

上の構造がまるっきり謎に包まれているものの、人類解放の志を掲げて集った彼らの主な活動は、冬の國から春の國へと移住を望む人間達を送り届ける──不法移民への援助であった。

 

「生き残りは俺たちだけか」

「あと少しで春の國の境界だったのに!」

 

悔しそうに言うが、冬の國にとっても春の國にとってもその存在は迷惑極まりなかった。いくら冬の國での人間の扱いがあれとはいえ、勝手に連れてこられても対応に困る。

立場上、冬の國と春の國は同盟関係にあるのだ。不法移民を公に認めてしまえば戦争の火種にもなるだろう。

オーロラの方針で一度保護されてしまえば不法移民であろうと見捨てられることはない。それで彼らは安心だろうが、その代わり春の國は『災害』で人間という資源を失ってしまった冬の國へかなりの『援助金』を送らなければならないのだ。

 

春の國の首脳陣は真面目に円卓という存在にキレ散らかしていた。

 

冬の國も援助金という名の賠償金を貰って、人間は牧場で増やせばいいからウハウハ──ではない。彼らは冬の國が管理する人間牧場に火を着け、折角教育して()()()になった人間達を片っ端からさらっていくのだ。

 

まるで需要に供給が追い付かず、モルガンは表情には出さないものの内心キレていた。

 

オーロラ様なら何とかしてくれる。と何ともまぁ身勝手な期待の押し付けで円卓は動いていた。

 

これで両國の怒りがオーロラに飛び火しないのは彼女の人徳の深さが伺えるが、暗に円卓は見つけたら一匹残らず駆逐するように命令が下っていた。

 

 

「失礼。巨大な魔力を感じてきたがパーシヴァルはいるかい?」

 

部隊を失ったことで途方にくれていた二人の背後に音もなく仮面の騎士が降り立った。

 

「ッ!」「ランスロット様!!?」

「見たところ、この部隊はさっきの砲撃で全滅したようだが、あの子がこれぐらいで死ぬとは思えない。知っているなら教えて欲しいな。あぁもちろん、ここじゃなくても構わないんだ。場所さえ分かれば飛んで直ぐだからね」

 

ランスロット。着名を受けたメリュジーヌである。

 

「パーシヴァル様ですか?」

「いえ、私達の部隊には一度も顔を見せていませんが」

「そうか。邪魔をしたね」

 

一閃。彼らの頭を両断する。きっと痛みどころか斬られた自覚すらなかっただろう。

 

「全く、あの子の反抗期にも困ったものだ」

 

あまりにも切り口が鮮やかだったせいか、剣には血の一滴すら付いていない。

それを鞘に納めながらハァと深いため息をつく。

今どこにいるとも知れない英雄候補のパーシヴァル。何を思ったのか数年前に円卓に加入した彼を追って彼女は国中を飛び回っていた。

 

 

『生き残りは片付けたようだな』

「おっと陛下。もしかして視ていたのかい?」

『私はお前を疑っている。もし円卓に与するようなら着名を取り消し、オーロラがお前という汚物を目にすることがないよう幽閉してやるところだ』

「捕まるつもりはないけど、これがないのは困るなぁ~。これのお陰でモース戦にも加われるようになったし、オーロラがね。この姿を格好いいって言ってくれたんだ。だからプレイで使えないかって考えてる途中なんだよ」

『殺す』

「おわっ!!!」

 

いきなり念話で話しかけてきたと思ったら、ロンゴミニアドの雨が振ってきた。

慌てて飛び立ったランスロットは念話を切り、両國の境界を越える。モルガンも春の國まで追撃するつもりはないのか、ピタリと攻撃が止まり、どうせだ。このままソールズベリーに帰ろうと進路を変えた。

 

「何だか久しぶりな気がする。バーゲストは元気だろうか?アルトリアは少しぐらい魔術が使えるようになったかな?」

 

もちろん、いの一番に会いに行くのはオーロラの元だけど。

 

女王オーロラの夫。メリュジーヌ(ランスロット)

このブリテンで誰もが望む地位を手に入れたこのブリテン一の問題児が帰還する。




なお娘達からは嫌われている模様
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