オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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コヤンスカヤ

「やぁん!可愛い~!化粧なしでこれとか信じられない!この美貌、プロポーション!まさにエンジェル!!」

 

姿見を見るとゴスロリのオーロラが居る。

アルビオン化の影響で多少若返っているとはいえ普段は落ち着いた装いで固めている本人にはギャップが凄い。

我ながら「うわきつ」と口に出そうになるが、どうやら周囲の意見は真逆のようで、付き人達は顔を真っ赤にしてキャーキャー叫び、ムリアンは感涙の涙を流して気絶していた。

 

「私、これでも二児の母(片方成人済み)なのだけれど」

「二児の!?子供産んでこれとかありえねーでございます。もしやオーロラ様は翼だの角だのを切り離してお子様を産み出したのでは?」

「む。心外ね。ちゃんとお腹を痛めて産んだわよ」

「これは失礼いたしました。この私としたことがあまりの逸材を前に冷静さをかいてしまったようです」

 

かちゃっと少しわざとらしく眼鏡の位置を修正して一息吐く彼女。

ミコーンと狐耳ならぬ兎耳が立つ。何を隠そう、彼女はコヤンスカヤであり、現在は彼女の本業である商売の最中であった。

 

どうしてこうなってしまったのだろうか。

「ちなみにこちらは『ワイバーンが噛んでも破れない!』をキャッチコピーに素材を厳選しておりまして少々お高くなってしまわれるのですが」「いらなi」「買いで!買いでお願いします!!!足りなくなったら私の定期預金を解約します!」「……ムリアン」「お買い上げありがとうございます!ささっ次をどうぞ」と何処からともなく大量の衣服を出してくる様にオーロラは遠い目をする。

 

彼女がこのブリタニアでNFFサービスを展開したいというので、危険な物は売らないようにちょっと圧をかけるだけのつもりだったのに。

私を見て怯えるどころか最高のお宝を見つけたとばかりにテンション爆上となって着せ替え人形にされてしまった。

 

もう半日は拘束されている。

時計を見れば、そろそろアルトリアの授業が終わる頃だ。今日は3時のおやつ用に農家の方から貰ったとれたての林檎を剥いておこうと思っていた。バーゲストには特大のアップルパイを作ってあげようと昨日オーブンの掃除をしたが、このままムリアンが財布の中の埃までむしり取られるのを待っていては夜になってしまう。

 

「ねぇ。そろそろ終わりにしましょう?衣装や食品、それ以外にも事前にリストで通してくれるならこの國でも商売してもいいし、何なら税収額も今決めておいてもいい。だから」

「いえいえ!お言葉ですがオーロラ様!この私、次から次へと試してみたいコーデがナイアガラの滝の如く溢れてきておりまして、まだ万分の一も試せていないのです!もしよろしければうちの専属モデルとして契約しませんか?専属が難しいならモデル雑誌の業務提携だけでも!」

 

是非是非と迫られる。良い香水を付けているのか、何だかお腹の空く匂いがした。

 

「ねぇ。貴方は私が怖くないの?」

「はて、怖いとは?」

「だってベリル・ガットから聞いてるのでしょう?私が何者かは。私が本気で殺しにかかれば逃げられないんじゃない?」

ビーストには単独顕現なるものがあるが、境界の竜であるアルビオンに物理的な限界はない。彼女が次の転移先に移るまでに先回りして口を開けていることだって可能だ。

一度マーリンで似たようなことを試したが、「本気で食べられるかと思ったよ」と、冷や汗をかいていた。

 

「あぁその事ですか、はい。私の想定する完成形にまで至ったとしても貴方様には敵わないかと。そもそも人類の膿から生まれたビーストが人類史以上の質量を持つアルビオンには逆立ちしても敵いませんので。

アルビオンの一部ならともかく、器をまるごと受け継いだ妖精がいると聞かされた時点で取り込むのは諦めました。私があの男の提案に乗ったのはあくまで、オーロラ様という個人に興味を惹かれたからです」

「私に?」

「ええ!それはもう妖精國の主オーロラ!何と賢く綺麗で、純白のような存在。けれどどこまでも人間的で、穢れを知り、裏切られ、傷つけられても不変の愛を歌う愚かな愛の信徒。まるでビーストになるために生まれてきた存在ではありませんか!最強の個たるアルビオンが果たして愛の獣に堕ちるのか興味津々でした」

 

コヤンスカヤは語った。アルビオンには逆立ちしても敵わないが、畜生に堕ちたアルビオンになら勝ち目はある。だからその兆候があるかの確認もかねてこの國を訪れた。僅かでもビースト化の芽が見られたら直ぐに撤退して、何れくるであろう獣同士による人類の奪い合いを想定し、対策を練るつもりだったそうだ。

 

「ですが結果は白。人類そのものはどうでもよくて、妖精や人間、それに近しい生物一つ一つの心を愛している。つまりは自分にとって都合の良い者しか好まない、聖人どころか善人以下、当たり前の愛しか持たない貴方にビーストの適正は欠片もございません」

 

コヤンスカヤ残念~。勝算は0になりました。と、どこにしまっていたのかデフォルメされたコヤンスカヤが半泣きになっている片手看板を取り出した。

ビーストになんて成れてもなるつもりはないが、彼女の口振りからして適正があれば勝手に変質してしまうものだったようだ。

内心、中身が凡人で良かったと一息をつく。

 

「前評判に踊らされちゃったのね」

「ですが、愛した者の街を、ヒトを、國を守るため、妖精のガワすら捨て去り、数多の困難を乗り越えて、ついには冠位の竜にまで至った貴方には愛の獣として深く敬意を表します」

 

帽子を取り、敬うように頭を下げる。

これは喜んで良いやつなのだろうか?

ビーストとして敬意を表すという判断に困る評価だが、これまでを認められたようで純粋に嬉しかった。

 

「貴方が私をどう思ってるかは分かったわ。でもなんでそこから着せ替え人形になるのかが分からない」

「そりゃもう美人ですから」

「美人だから……」「これまで色々な異聞帯を回ってきましたが、ぶっちぎりの1位。いえ殿堂入りです。ギリシャ神話のアフロディーテ様は見た目こそ美の女神そのものと言った感じでしたが、あれはこれ以上いじりようがない完成された美しさ。私の商人としてのレーダーは反応を示しませんでした。ですがオーロラ様はアフロディーテ様に勝るとも劣らない美貌を持ちながら、未だに未完成。まさに宝石の原石です!」

 

ビビーン!コヤンスカヤレーダー超反応!今度はデフォルメされたコヤンスカヤが跳び跳ねる看板を取り出した。

 

「ええそうです!オーロラ様の美しさはここで終わりではありません!」

 

途中から話についていけなくなり静かにしていたものの、私の美しさならいくらでも語れるとムリアンが復活する。

 

「分かりますか」「ええ分かりますとも!」

 

ガシッと固い握手をかわす。

原作と状況が変わり、二人の関係がどうなるかは気になっていたところではあるが、どうやら意気投合したようで、様々な種類の服を出し合いながらあーでもない、こーでもないと熱い談義を繰り広げている。

 

だがその中に紐みたいな水着があって、背筋が凍った。

ふざけないでほしい。FGOは全年齢だ。そんな物を出したらR指定がついてしまう。何より体は竜でも心は二児の母な私にはキツイ以外の何物でもない。

 

さ、さぁ二人で存分に盛り上がってくれと、オーロラはこっそり抜け出そうとしたが扉に手をかけたところで肩を掴まれる。

 

「お次は、こちらのお召し物はいかがでしょうか?KIMONO と呼ばれるとある島国の伝統衣装でして」

「いきなり一ヶ月も仕事を押し付けたんですから、今日1日ぐらい独占するのなんて当然の権利ですよね?」

 

 

風の知らせで助けを呼ぼうとしたが、()()()()使()()()()()()に妖精領域持ちの氏族長とビーストを同時に相手どれる存在はいなかった。

 

ここから少し離れた地で愛娘二人達が激しい乱闘を繰り広げる中、オーロラの瞳からハイライトが消えた。

 

 


 

オーロラは何も知らされていないので、アルトリアはマーリンの授業を受けてると思っているし、ガウェインは騎士団の仕事(見回りとか)してると思っているし、カルデア一行は名無しの森で離れ離れになることもなく、ロビンを連れて楽しく談笑でもしながら、この街に向かっていると思っている。

またアルビオンとしての己を自覚したことを切っ掛けに、風の知らせの練度は更に落ちた。

今は使えないこともないが、そこらの風の氏族の方がずっと上手く使えるレベルまで劣化している。いざとなれば千里眼を使えるマーリンがいるので本人は困っていない。

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