オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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空想の王様

ブリタニアの騎士団との戦闘は劣勢を強いられた。

こちらには英霊二人と簡易召喚で呼び出した六騎の影英霊がいるとはいえ、土地の制約により大幅な弱体化を受けており、更に敵将であるガウェインには魔力喰いなる特異な能力があって、切り札である令呪は喰われてしまう。

 

「初めに言っておくよ。お姉ちゃんは私を殺せたら殺すつもりだから、肉親の情とかは期待しないで」

「え?それってどういう」

「ほら!魔力喰い対策の礼装起動!更に()()()()()式魔術!バンバン行くよ!誤射しちゃったらごめんね!」

 

アルトリアの援護のお陰で何とか食い下がれているが、このままでは全員殺されてしまう。

せめて助けてくれた彼女だけは逃がしてやりたいが、それが出来るほど余裕はなかった。

いや、アルトリアを殺したいのはガウェインだけだそうだ。どさくさに紛れて殺すつもりだと、理由までは聞けなかったが、騎士団の目的はあくまでアルトリアの保護だけ。誘拐犯のレッテルを貼られた自分達との戦闘はアルトリアを保護する為の手段でしかない。

自分達が大人しく捕まれば、恐らくガウェインはアルトリアを殺せなくなる筈だ。

 

「もし俺たちが投降すればどうなる?」

「普通なら街で裁判とかかもだけど、お姉ちゃんは街の外での裁量権が与えられてるから殺されると思う」

「なんて横暴な…って言えないのがこの島の嫌な所だ!一々裁判なんかしてたら街の外まで行列ができちまう!」

「あのガウェイン卿の霊基を受け継いだ彼女がよりにもよって肉親を手に掛けようと言うのが、気になりますが我々への判断だけは間違いない」

「何か弱点とかあれば...」「強いて言えばお母様には頭が上がらないけど」「おお!ならオーロラ様をお呼びすればいいじゃないですか!この距離だ、あの方の『風の知らせ』ならきっと届く!」

「ん?お母様は風の氏族じゃないから風の知らせは使えないよ?」

「はい?」

 

実際には使えはするのだが、もう以前のようにはいかないので、使用頻度が減り、アルトリアの前で使ったことがなかったからだった。

 

「……仕方ありません。マスター、ここは私が」

 

僅かに見えた光明が消え去り、この場での最悪を悟ったトリスタンが殿をかって出た。

 

その時である。

 

地面が揺れる。大地を踏みしめる震動が明後日の方向からやってきた。

 

百には届こう魔獣の群れがこちらへ一心不乱に駆けてくる。

 

「魔獣だ!」「何故このタイミングで」

「こっちに来るぞ!」

 

「今だ!!!」

 

全員が虚を突かれた瞬間。アルトリアが煙幕を展開した。

 

「ガウェイン様!」

「っっっっ!!!陣形変更!竜の矛であの一陣を駆け抜ける!!」

「「「はっ!」」」

 

 

「逃げるよ!」「もう一度名無しの森に行くんだね」

「いや、それよりもっと良いとこがある。今は何も聞かず僕についてきてくれるかい?」

 

藤丸達は煙幕の中、知らない声に導かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー間一髪だったね!」

 

逃げた先。そこは自然に出来た平原の中の穴蔵だった。

藤丸達を誘導した件の声の主は松明に火をつけて朗らかな笑顔を演出する。

 

「もうっ何が「間一髪だったね!」だよ。あと少しでお姉ちゃんと殺し合いになるところだったんだよ!」

 

突っかかるアルトリアを手で制止しながら彼は藤丸の前に立った。

 

「やぁ、はじめましてリツカ。出迎えが遅くなってすまない。なんて突然言われても迷惑かな?いや、迷惑だろう。そんな顔をしてる」

 

「既にアルトリアから存在を仄めかされていたかもしれないが、改めまして。僕がオベロンだ。人理に喚びだされた英霊にして、この異聞帯で君たちを助ける運命を担ったただひとりのサーヴァント。人呼んで妖精王オベロン。どうだい?カッコいいだろ?」

 

まるで絵本の中から飛び出してきた王子様のような姿。藤丸はその名を知っていた。オベロンといえば、あのシェイクスピアの作品に出てきた創作の英雄だ。

 

「オベロン……そうか。君があの時、俺たちを助けようとしてくれた」

 

霧に飲まれた直後で朧気だが、似たような声の主にこの霧に触れるな、仲間達の手を放すなと忠告を受けたような覚えがある。

 

「すまないね。バラバラになった君たちを探していて、レオナルド・ダ・ヴィンチを街まで送り届けたとこまでは順調だったんだが、このお転婆娘が街の外へ出たいと我が儘を言ったせいでその対応のため遅れてしまった」

「なっ!?この森の中に旅の従者が迷い込んだかもしれないって言ったのはオベロンでしょ!?」

「全く。断る為の方便だったって分からないかな?次に連絡した時には城門の前だって聞かされた時は肝が冷えたよ」

 

やれやれと頭を振るオベロン達の会話に割って入る。

 

「ごめん。マシュは?マシュには会ってないの?」

「すまない。彼女が自力で森の外に出たことまでは掴めたんだが、その後の行方は分からず仕舞いだ。だが一度森の外に出てしまえば記憶を取り戻すのも小さな切っ掛け待ちだろう。記憶が戻れば当初の計画通りソールズベリーに向かうんじゃないかな?」

「そうかな?マシュならそうしそうではあるけど」

 

「なら決まりだ!」

 

パンッと手を叩き、オベロンはある方角に目を向ける。

 

「この國で最も偉大で、慈悲深く、誰からも好かれて、まるでお伽噺話の中にいる都合の良い救世主みたいな女王が統治するソールズベリー。そこへ向かおうか」

 

 

理想郷は確かにそこにある。まるでそう宣言するかのようなオベロンに釣られ、そこそこの旅路のあとに彼らはソールズベリーの門を潜った。

 

 


次回「2000年と700年」

 

 

「…吐き気がする」

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