オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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娘と親

アルトリアにとってメリュジーヌとは、突然生えてきた父親を自称する変態であった。

初めて出会ったのは忘れもしない2歳の誕生日の日。(私は超絶天才児なので2歳の時には物心ついていた)姉であるバーゲストがおっかなびっくり私を抱き上げる中、無駄にカッコつけて空から降りたったソイツは、いきなりオーロラの唇を奪った。

「ふぁ!?もう、何?」

「へへっ1年ぶりだから我慢出来なくて」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!」

「やぁバーゲスト、相変わらずだね!そして君がアルトリアか。うぅーん!オーロラ似の優しい匂いがする!」

 

バーゲストが放った蹴りを軽やかに避け、ついでに腕の中にいた私を奪い取って何をするかと思えば、いきなり頬ずりをしてきた。

 

「ぅいや!()めて!」

生乾きの犬みたいな臭いだった。クサイ。

 

「うわお!もう喋れるんだ!驚き。バーゲストの時は三歳ぐらいだったのに」

「バーゲストの時は甘やかし過ぎたのかもしれないわ。二人目になってやっと子育てのコツを掴んできたかも」

「なら三人目はもっと早くに喋れるようになるね」

「流石にこれ以上は早くならないと思うけど、三人目、か……考えるとしたら巡礼の旅やケルヌンノスのお題が全部終わったあとになるわね」

「そのときになったら僕の剣が火を吹くよ。いや、聖剣だね。寝ても覚めても君の鞘にズバズバ」

 

「うわあああ!!!!死ねェェェ!!!」

 

余談だが、バーゲストはメリュジーヌがアーサー王の着名を受けていたら、モードレッドの着名に躊躇うことなく飛び付いていた。

この頃には両者共々着名を受けた後であったが、悲しきかな。力も経験も両者には埋めがたい溝があった。

 

「君の剣は、真っ直ぐ素直だ。素直過ぎる。普段はふざけているように見えるかもしれないけど二千年本気で鍛えたんだぜ?僕とやり合うならもっと意表を突かないと」

 

今のメリュジーヌは本編の頃より霊基的な意味で弱体化している。一度アルビオンの霊基を全て取り込んでから他者に譲渡するという前代未聞の荒業を試みた代償だった。一応治りはする傷のようなものであと3000年もすれば癒えるらしいが、それを補う為に彼女は鍛えた。弱体化していても大英雄クラスだったが、そんなもんじゃオーロラを守れないと剣や槍、弓に、馬術、魔術、暗殺術。(狂戦士は素)あらゆる武器や状況で万全に戦えるようになるまで磨き上げ、棒きれで鉄を斬れるまでの領域に達した。

多分、カルデアに召喚されたら『騎士は徒手にて死せず (ナイト・オブ・オーナー)』は持ってると思うし、何のクラスで召喚されるか見当もつかない。

そのかいあって、もしかしたら前より強くなったかもしれないと言っていた。これこそ嬉しい誤算というやつであろう。

 

「おまえのような者がお母様の夫を名乗るなど、娘として許せるわけがあるまい!!!!」

「おーおー!」←アルトリアもそうだ。そうだ。と言っている。

「でも、君の半分は僕だぜ?」

「違う!!!」

「僕とオーロラがセッ」

「うわあああ!!!!!!!!!」

 

耳を塞ぎ、バーゲストは逃げた。アルトリアも逃げようと暴れたが、変態は離してくれなかった。

 

「どうどう。ごめんね、1歳の誕生日の時はこれなくて。次の日送った熊の剥製は気に入ってくれたかい?」

「あれ、怖がって泣いちゃうからしまったわ」

「おっきいのは怖かったか。なら大丈夫、今回は狼の剥製だから」

「大きさの問題ではないと思うのだけど」

 

困ったように、仕方のないようにオーロラは笑う。それを見てアルトリアは、あぁこの変態はママにとって大切な人なんだなっと悟ったが、父親として受け入れるかどうかは話が別だった。

あと、あの熊お前のせいだったのか!寝て起きたら目の前にあって、おもらししちゃったんだぞ!ふざけるなばかやろう!

 

「いてて、痛くないけど。なんか心が痛い気がする」

「この子には気に入られるといいわね。バーゲストとはもう、なんか手遅れな所にきているようだけど」

「なにおう!僕はまだ諦めていないよ。いつかバーゲストにもパパ大好きーって言わせてやるんだから」

「ふふ。貴方のそういうところ、本当に好きよ。そうね、いつかは四人で食卓を囲んでみたいものだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

「いやだ!嫌だ嫌だ嫌だ!!!死んでもいやー!」

 

現在私は恥も外聞もなくバタバタと暴れていた。

 

「何が嫌なんだい?パパと一緒なら半日ぐらいで終わるんだよ?」

「それが嫌!まずデリカシーってものがない!私にとって巡礼の旅は安いものじゃないの!人生の大一番!もっとこう、大いなる使命の為に集った選ばれた仲間達と共に幾度の苦難を乗り越え!冒険の中で友情を育んで、その中の一人と良い感じになったりして、最後の鐘を鳴らした時にその人に告白とかそういうロマンチックなのを目指してるんだから!」

「ならパーシヴァルも連れてくればいいのかい?」

「え?パーシヴァル君?……パーシヴァル君かぁ……有りよりの無しかな。あの人、私のことあの手この手で太らせようとしてくるんだもん。もっと肉を付けた方がいいって。私がこのプロポーションを保つのにどれだけ苦労してるからも知らずにさ」

「まだ見つけられてないから無理なんだけど。そうか、欠点がそれだけって事はルックスは好みなんだ」

「わー!ママ!こういうとこ!こういうとこだよ!」

 

どうして優しさの塊みたいなママがこんな変態の煮凝りみたいなやつを伴侶に選んだのか理解出来ない。

実は脅迫とかされてるんじゃないだろうか?最近見た本では着替え写真を盗撮して、これを大衆に見られたくなければ言うことに従えー的なものがあったが、そういうやつではないだろうか?

 

 

「とにかく、ランスロットだけは無理だから!せめてママにしてよ!」

「私は仕事があるもの。それに母親同伴ってのもあれでしょ?」

「う、まぁーそうなんだけどさ」

 

ランスロットよりはマシだが、母親同伴は普通にキツい。

こういうのは好感度の問題ではないのだ。

 

「実はね。少し前からマーリンから巡礼の旅に出てもいいって許しは出てるのよ」

「え?ならもう授業に出なくてもいいの?」

「……一人では無謀だと言っていたわ。でもメリュジーヌ(ランスロット)のような頼りになるお供がいるなら大丈夫だろうって。このところ勉強も捗らないようだし、それならいっそのこと巡礼の旅を始めてしまおうと思ったのだけど、どうする?」

 

この勉強地獄から解放されるなら願ったり叶ったりだが、やはり肉親が同伴というのはいただけない。

 

「ならウッドワスは?」

「無理ね。いくら貴女でも長期で彼を預けていられる余裕はない」

 

ウッドワスは、アルトリアにとって親戚の気の良いおじさんポジだ。思い描くような冒険は出来なさそうだが、普通に楽しい旅になりそうだった。

 

「巡礼の旅のことをモルガンは快く思っていない。もしかしたら冬の國とのいざこざに発展するかもしれないの。団長である彼は動かせないし、生半可な子に任せることも出来ないわ」

「まぁ、最低でも氏族長クラスだね」

 

そこでアルトリアは該当者を過去の記憶から遡ったが、ムリアンやシルフなど、國の重役しか思い浮かばなかった。ウッドワスで駄目なのだから当然彼女らも同伴は無理だろう。マーリン?あれは暇そうだが論外だ。

 

「ウ~ン。ぐぐぅ……あっ!ならオベロンがいるじゃん!そうだよ!そもそもオベロンが占いで旅の従者を見つけてやるだとか嘘臭いこと言ってたけど、オベロンでいいじゃん!」

「オベロン?誰だいそれ?」

「そのヒトなら私が知っているわ」

「なら!」

「戦闘能力は少し心許ないけど、それ以外で補える範囲かしら?でも今の彼はカルデアと一緒でしょ?」

「だったら藤丸達も誘う!そうだよ!藤丸達なら戦力的にも十分でしょ?藤丸は短時間だけど、氏族長クラスの精霊を六体も召喚出来るんだよ!」

「それなら問題ないわね」

 

ママが柔和に笑う。思いつきだったが、何気に最適解ではないだろうか?

もしかしたら旅の中で藤丸とそういう関係になったりとか……やめやめ!見た目は好みだけど、それだけが目的な訳じゃない。

私の人生大一番。私が生まれた目的を果たす為の重要な旅だ。

 

……本当は、聖剣そのものとして燃やし尽くされる運命だったけど、ママが覆してくれた。

ママの為に、この旅を無事に終えてママより長生きすること。それが楽園の子としてではないアルトリア・キャスターとしての目的だ。

 

 

さっそく藤丸達にお願いを聞いて貰うのだ。それなりの準備をしなければならないと部屋を出ると、ランスロットがさりげなく付いてきた。

 

「あの、何のつもりですか?」

「やっと返事をしてくれた。もしかしたら僕が見えていないんじゃないかと思ったよ」

「さっき反応してたでしょ。これから忙しくなるんですけど」

「君との話ならいくらでも出来るけど、一言だけ伝えにきた。全部終わったら家族四人で食事をしないかい?」

 

アルトリアは振り返って彼女を見る。

淫乱な言葉で埋め尽くされた普段の彼女とはうってかわり、そこには何一つの淀みはなかった。

 

「……考えとく」

「そうか!巡礼の旅、頑張ってね、応援してる」

 

 

せめて、ママの事だけを四六時中考えるただの変態なら愛想など尽きて、敵意すら抱いていたのに、この人はどこまでも私たちの親で家族だった。

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