オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
「それで、今回の厄災は私が担当するってことでいいわね?」
『……ええ、はい』
私の背後にはマーリン。その横にはコーラル。私を含めた数人の官僚達で円卓を囲み、中央には水鏡によってリモート中継を行っている街の有力者達の姿がある。
原作にもあった水鏡による会議、そのブリタニア版である。
「本当は僕の番だったんだけどなー」
「もし何かの間違いで私たちを悪い存在だとカルデアが誤認してしまったら危ないでしょ?」
「それって僕が悪い存在に見えるってこと?僕ほど友達が多くて、伴侶もいて子供もいるリア充な妖精はいないと思うんだけど」
「公然わいせつって知ってる?」
誕生祭までいよいよ三日前となり、その最終確認と合わせて予定では2週間後に臨月となる厄災の対応について話し合いが行われていた。
『それにしても、厄災の時期と誕生祭が被らなくて本当に良かった』
『ノリッジは堪ったものではないがな!』
『そっちは第二都市があるんだから言うほど痛手でもないでしょうに』
『ええ。それに最近スプリガン氏には心強いパトロンが付いたようで』
『そうだ!おおい!ナカムラ!お前さんこっちにはいつ来るんだ?』
「ナカムラはお止め下さい、スプリガン様。私にはナーカムという新しい名があるのですから」
『何が新しい名じゃ。妖精の感性からしたら名を変えるとか畏れ多くて鳥肌が立つわい!』
「ハァァァ……頭が堅いヒトはこれだから全く。ええ、そうですね。誕生祭の当日には間に合わせますよ」
このナカムラと呼ばれているのは、原作のスプリガンだ。私が見つけ出した訳ではなく、実力でブリタニアの幹部まで成り上がってきた。
向上心と支配欲の塊のような男で、虎視眈々と私を傀儡にしてこの國を操ってやろうと狙っている。個人的には嫌いなタイプだが、それに目をつぶってもいいぐらい優秀だし今のところはムリアンがいい感じに牽制してくれているので、好きにさせていた。
『あ、あの!オーロラ様!鏡の氏族は今回、花の』
『そう言えばエインセルよ。そちらの方で『元』王の氏族が円卓と合流して不穏な動きを見せていると聞いたが、それは事実か?』
『え?今はそれどころじゃ』
『何を言う。やつらが勢いづけばまた戦争などと愚かな真似を始めるかもしれん。マヴの次代を自称する『ノクナレア』の監視はお前たちに一任されているであろう?これがオーロラ様によるお前達への信頼の証だということも理解出来んのか?』
『怠けども仕事は怠らなかったプーカ殿とは違い、エインセルにはまるで責任感というものが感じられませんね』
『ち、違います!ノクナレアは目立った動きは見せてませんし、王の氏族がうちの村を訪ねてきたことなんて数えるぐらいです。そういう未来を詠んだ子もいませんし、王の氏族の問題は鏡の氏族が完璧に管理しているので安心して下さい!!』
「ええ。頼りにしているわ」
ノクナレアは、原作のあの子ではない。
あのそっくりな容姿からしてマヴの次代であるのは間違いないが、その魔力量は生前の彼女と同じか少し劣るぐらいだった。
アルトリアの友達になれないかと一度訪ねに行ったことがあるが、性格も温厚そうで、荒事は不得意だと自分から言っていた。
エディンバラが建設されていないのだから当たり前だが、彼女はアルトリアの友達であること以外にこの舞台で活躍出来る土俵を持たなかった。
見張りは続けるが、彼女がブリタニアやカルデアの障害となることはまずないだろう。
「冬の國の来賓はトリスタン様、アーバラカルト様、ノスティン様、カルカルティア様の四名となります」
「紹介状を出した半分以上に断られてるじゃないですか~」
「ウッドワス、もしかして君が威圧してるからとかじゃないよね?」
「フンっ、あのような低俗な連中、オーロラから招待状を受け取ったという事実だけで幸せであろう」
「否定はしないんだ……まぁ素行に問題があるけど、呼ばなきゃ面倒な事になる連中だったから別にいいんだけど」
冬の國との関係は平行線上である。私もあの時は一方的に言い過ぎたと関係を修復しようとした時期はあったがとある件で流れてそれっきりだ。本人が幸せそうなことだけが幸いだが、モルガンに私からは歩み寄らない。そう心に決めている。
「……他に何か報告があるものは?」
『いえ。特には』『前回の会議で粗方話し終えましたからなぁ』
『ならっ』『ここで宣伝するのは無粋というもの、オーロラ様には是非とも本祭での我々の催しを楽しみにしていただきたい』
『そうですね。お待ちしております!』
「じゃあ少し早いけどみんな、誕生祭の準備で忙しいでしょうしお開きにしましょうか」
全員が頷くのを待ってから、マーリンが回線を切る。
そして集まってくれた官僚達も後にするなか、ムリアンを呼び止めた。
「この後ノリッジに向かうけど、その前にグロスターへ送りましょうか?」
「それはありがたいですがいいんですか?ここからだと逆に遠くなってしまいますよ」
「ええ。衣装の礼だと思って」
ブリタニアの官僚は各々の領地を持っている。だから今回のように全員集まるのは誕生祭ぐらいであり、当日は街に帰らなければならないという大変な激務に追われていた。
その中でもムリアンは頻繁にソールズベリーに足を運んでおり、せめて移動時間を短縮してあげられないかと定期的に送り迎えをしていた。
ぽんっ!と小さくなったムリアンを胸の中にしまう。
「ぐぎぎっ」
血涙を流すランスロットを横目に私はグロスターまで飛んだ。
馬車なら三日はかかるが、境界の竜なら(ムリアンの安全を考慮しつつ)たったの10分である。
「ふー!相変わらず早くて丁寧、柔らかい!オーロラ様の送り迎え券、一回税込1億ロポンド。売れますよ~これは」
「貴女が小さくなれるからこんなに速く飛べるのよ?抱えて飛ぶならもっと遅くしないと首の骨とか折れちゃうんだから」
「私も仕える主を商売道具にしようだなんて本気では思ってはいませんよ」
「よかった。私細かな調整とか苦手だから絶対怪我人が出てたわ」
仮に私が「着地任せた!」とカルデアのマスターに頼まれたら、肋とか折っちゃうと思う。肉塊になるとか、背骨を折るとか、そこまで壊滅的ではないのだが、咄嗟にそういうお願いは止めて欲しかった。
さて、次はノリッジか。
本気を出せば、殆ど空間転移レベルの速度で到着することも出来るが、私が一ヶ月留守にしていたことで不安がっている人たちもいるかもしれない。
そこで奇策を思い付いた。
わざとらしく光でも放ちながら、まるで自然現象にある本物のオーロラのような軌跡を描いてノリッジまで向かえばどうだろうか?
魔力のパターンで私がやっていると気付けるし、準備で疲れた彼らの景気づけにちょうどいいだろう。
「喜んでくれるかしら?」
オーロラは自らの竜の得体を解放し、空へと飛び立った。
「……オーロラだ」
夜も更け、キャンプを張っていた藤丸は、そのあまりに美しい光に息を飲んだ。
いや、藤丸だけではない。ブリテン全土で目撃されたそれは妖精も人間も等しく、魅了した。
「マシュも」
「先輩も」
「「これを見ているんだろうか(でしょうか)」?」
叶うことなら次は二人でと思いつつ、彼らはノリッジを目指す。
次回、厄災