オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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ツギハギ

「おはよう昨日はよく眠れたかしら?今日はとっておきの…………の?」

 

 

「……あ、うん」

 

その日の朝。俺がまず思ったのはホムロが使っていた部屋とアンが使っている部屋を分けておいて正解だったという事。

 

もし部屋を同じにしていたら、今頃俺は何故ホムロの部屋にアンがいるんだと、決してあり得ない矛盾を前に()()()を浮かべる間抜けな姿を彼女に見せることになる。そしてホムロが死んだ事を思いだし、情けない自分を見せることにもなるに違いない。

 

「フゥー。よし」

 

深呼吸。色々と溢れそうになる感情を押し潰す。

こう言う時の対処法は兎に角他の事に思考を向けるに限る。

華麗にターンを決め、一直線に向かったのはアンの部屋だ。

 

「おはよう、アン」

 

 

「んぁっ?……あぁ、おはようございます」

 

マリモみたいな頭をしたアンが寝惚けた返事を返す。

 

「ふふ、相変わらず凄い寝癖ね。朝食の準備は出来ているけど……先ずはその髪をどうにかしないと」

 

ベッドに腰掛け、魔力で作った櫛でアンの髪を梳いでいく。

 

「んぁぁぁぁ…………」

 

昔はよく髪を引っ掛けてしまったが、今では慣れた物だ。

 

「今日はどんな髪型にする?」

 

「ん………zzz」

 

「こら」

 

「んあ?……オーロラ様のお好きなように、おねがい……します」

 

「なら"オールウェーブセッティング"って言うのを試してみてもいいかしら?」

 

「いいれすよ…………」

 

無駄に凝った髪型にしたせいで今日の朝食はだいぶ遅くなってしまったが、まぁ特に予定もないし、たまにはこんな日があってもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「ひゅー!流石は陛下。百発百中、もう俺が教えられることはありませんね!」

 

「ふふ、ありがとう。うち一番の弓の名手である貴方に言われると私も鼻が高いわ。でもそうね……たまには練習しないとせっかく磨いた腕が鈍ってしまうかもしれないから、また教えてもらえないかしら?」

 

「そうはもう大歓迎すよ!陛下様の為なら例え火の中、水の中、モースの中、何処だろうと喜んで馳せ参じましょう」

 

今、目の前にいるのはロビンという青年。

彼は何となく口調が似てて弓の名手なのでロビンフッドから名前を貰って俺が名付けた――兵団『妖精の守護者(フェアリーガーディアン)』の団長だ。

 

 

そう兵団。遂に私はやり遂げたのである。

奴隷から解放した民や外からの人間、その子孫達を主に構成された私独自に動かせる兵団、それが妖精の守護者だ。

 

かれこれ設立されてから3()0()0()()。9代目となるロビンは、弱冠14歳にして団長の地位にまで上り詰めた正真正銘の天才である。

 

「頼もしいわロビン。貴方になら安心してこの街を任せられる」

 

勿論、ロビン以外の兵士も頼りにしている。

 

これを言うと慢心しているみたいに聞こえるかもしれないが、自分が1から作り上げたこの妖精の守護者(フェアリーガーディアン)は本当に強いのだ。

個としては一対一ならまずモースには負けない粒揃いで、兵士としての練度はさることながら。

特に団長クラスともなると素手で山を砕いたり、剣で湖を割ったりと英霊染みたことが平気で出来てくる。

 

初めからこのレベルだった訳ではないが、だからこそと言うべきか、余計に感傷深い物がある。

 

この世界の平均値を知らないので、妖精女王や妖精騎士など、真の強者達から見ればそんなにたいしたことではないのかもしれないが、それでも英霊相手には十分、大厄災でもなければ厄災だって解決出来るに違いない。

 

 

 

…………が。

 

 

「そりぁ嬉しい限りですが……あー、言葉の節から読み取るに此度の厄災にはやっぱり?」

 

「えぇ。妖精の守護者(フェアリーガーディアン)は此度の厄災()()参加しませんとも」

 

オーロラになりきるべく、常に意識して微笑みを浮かべていても、やはり『あの事件』絡みになると表情を暗くしてしまう。

 

「……確か俺の前の前の代の団員が、助けた筈の妖精に面白半分でやられたのが原因でしたっけ?」

 

ポリポリと頬をかきながら尋ねるロビン。

それはオーロラとして経験する二度目の厄災で起きた悲劇とも呼べないふざけた幕引きの話。

 

『カハッ……』

『やっぱり!スッゴい切れ味の良い剣だね!』

 

サラマンダーからの嘆願を受けて、ノリッジ周辺に発生した大量のモースの討伐に遠征した彼ら。モースの討伐自体はつつがなく進み、見事、早期解決、死者0という素晴らしい結果を残すも、魔が差した妖精の一刺しによって団長が再起不能の重症を負い、そのまま引退することになった。

 

あれ以来俺は人間としての尊厳が最低限保証されるように色々と手を回しているソールズベリーから人を出したことはない。

 

「そうね。厄災がソールズベリーで起これば話は別ですが、妖精の守護者(フェアリーガーディアン)はあくまでソールズベリーの妖精の為の守護者。自らが護られる立場だと自覚の持てない妖精にその守護は必要ないのです」

 

「さいですか。……まぁ陛下の言ってることは理解出来ますし、この街の外の妖精がびっくりするぐらい俺たち人間に容赦ないってのは散々伝えに聞いてますから何となく想像はつくんですけどね。男なら一回ぐらい生死を賭けた大一番に身を投じたいなんて思ったり「ロビン?」…………はいすいません」

 

良く言えば過保護。悪く言えば軟禁状態だろうか。

ここ数百年で分かったことだが、どうにも俺は人間の死を必要以上に忌避する傾向にあるらしい。妖精が目の前でスプラッタにされても微塵も眉は動かされないが、それが人間となると、ただ転んだだけで悲鳴を上げ、急いで駆け寄って手当てしたくなる衝動に駆られる。

 

多分、これは俺の目的に由来することなんだろうと思うが、まだ言語化出来るほど掴みきれていないのが現状である。

 

ロビンはその若さからか、どうにも血の気が多い。

推測だが多分、自分よりも強い相手と戦いたくて仕方がないといったところだろうか。

そんな彼にとって今回の厄災は渡りに船で、だからこそ参加しないなどと堂々と宣言されては少しは愚痴もこぼしたくなると言うもの。

 

その気持ちは理解出来るが、やはり外は危険だ。

 

「……困ったものよね。ねぇ、アン」

 

 

どうにかして彼のストレスを解消出来ないかと俺はアンと真剣に話し合った。




なお、初代団長を刺した妖精は鳥のエサにされたとする。
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