オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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島生まれの英雄

藤丸達は現在、冬の國の村に身を寄せていた。

 

「はぁ?こんな貧相な飯で我慢しろって言うのか?私は冬の國のお姫様だぞ。他国の姫だからって舐めてんならここで殺してやろうか?」

「はいはい。落ち着きなよ。ほら、持ってきたホットドッグあげるからさ」

 

「こんだけ金色畑を耕しておいて、米は一粒もねぇのか。分かっちゃいたが、食文化の違いってのは堪えるねぇ」

 

水鏡でマシュを失い、その後直ぐにブリタニアから追われる立場となったカルデア。

トリスタンという大きすぎる代償を払いながら、なんとか包囲網を突破し、妖精騎士トリスタン、ハベトロット、村正という三人の新しい仲間達と食事を取っていた。

 

「……麦粥よりはマシか。それでおい、カルデア。お前達はこれからどうするんだ?私は戦争を止める為に動くけど、これ以上は庇ってやれねぇぞ」

 

今回の騒動の発端はモルガンがアルトリアを攻撃したことだ。そして何故か時を同じくしてオーロラが倒れた。

それだけならカルデアは関係ないように思えるが、色々とタイミングが良すぎたこと、仲間の一人が不自然に行方をくらませたことで冬の國のスパイではないかと嫌疑をかけられたのだ。

 

「ロビンはそんなことをする人じゃない。きっと何かあった筈なんだ」

「ま、百人以上の英傑と縁を結んだマスターの意見だ。頭ごなしに否定する気はねぇよ。だがまさかお前、ソールズベリーに戻ろうとか考えてんじゃねぇよな?あの包囲網を突破出来たのは、弓使いの兄ちゃん(トリスタン)と、このお嬢ちゃん(トリ子)、そんで、あのお姫様(アルトリア)の協力あってのものだ。断言してやるが、あそこにたどり着くどころか、冬の國の領内から一歩でも踏み出せば死ぬぜ」

 

ガシガシと頭をかいて、村正は呆れるようにものを言う。

仮に逃げ切れても道中で助け合うことになった妖精騎士トリスタンがいなければ冬の國で門前払いを食らい、そのまま捕らえられていただろう。

 

「……妖精騎士トリスタン、我々はこの島の情勢について明るくない。そこで尋ねたいのだがこのまま戦争になれば、この島はどうなるのだろうか?」

「そんなん、どっちかが滅ぼされるまでの絶滅戦争に決まってるだろ。ストッパーの姉ちゃん(オーロラ)が倒れてんだ。お母様の首を討ち取ったぐらいで終わらねぇよ。春と冬の溝は大穴以上に深い」

「何故そこまで互いに嫌いあっているんだい?元は一つの國だったのだろう?」

「私も詳しくは知らねぇよ。分裂した後に生まれたからな。お母様と姉ちゃんが喧嘩してそのまま二つに別れて、好きなもの同士で固まった結果じゃねぇの?」

 

別れてから何か大きな事件が起きたわけでもない。

ただ自然とそういう形になった。だからオーロラもモルガンもそういう体制を取らざるをえなくなった。

 

「だから始まる前に回避しないといけない。姉ちゃんがいないなら戦力的には五分だけど、勝った後、どこまで國として形が残っているか想像も出来ねぇ」

「なぁ。この國に入ってからずっと思ってたが、そのオーロラってのはなんでそんな出鱈目に強ぇんだ?影響力もバカみたいにあって、天女様みてえなべっぴんさんだ。そんだけのやつなら汎人類史でも何かしらの功績を残してそうだが、聞いたこともねぇ」

 

まさか、オーロラという現象が人として象った存在でもあるまい。

藤丸も、推定魔神柱クラスの厄災をワンパンで弾き飛ばした姿を思い出して、不思議に思う。

 

「何でって……ん?そう言えばなんでだっけ?確か姉ちゃんは妖精でも人でもなくて凄い存在だってことは聞かされてたんだが……うーん?」

 

確実に聞かされてはいるのだろう。だがアルビオンという脅威を正しく理解出来るものはブリテンに少ない。オーロラも積極的に名乗っている訳ではないので、大昔生きていた凄い強いやつの血肉を食べて、凄い強くなったぐらいの認識だった。

 

「──アルビオン」

 

「は?」

 

「オーロラの真名はオーロラ・アルビオンだ」

 

そんな中、ハベトロットは事も無げに伝える。

藤丸達には一瞬何かの冗談かと思った。

 

「あぁそうだ!アルビオンだ!それの生まれ変わりだとか言ってた」

 

けれど、冬の國の王女に頷かれては嘘と笑い飛ばすことも出来なくなる。

 

「おい、待て……アルビオンだと?龍神様でも、地獄の閻魔様でも、何が出てきてもおかしくないとは思っていたが、よりにもよってそれが出てくるのか」

「藤丸君はアルビオンについて知っているかい?」

「うん。知ってる。竜の中のグランドだよね」

「魔術世界でその名を知らぬものはいないだろう。神秘が衰退した現代でさえアルビオンの神秘が残した霊墓は、神代の生き物達の姿が見れると聞く。あまりにも、無視出来ない、特大のビッグネームだ。しかも『生まれ変わり』だって?それが本当ならアルビオンは死を克服したことになるかもしれない。『蘇った』のならまだしも、『生まれ変わった』のなら、汎人類史でも矛盾がないんだ。そうなると、この異聞帯が消えても彼女だけは残ってしまう」

「奴さんが、星の裏側に大人しく引っ込んでくれるならいいが、暴れだしたら誰も止めらんねぇぞ」

 

もしそうなれば恐らく時計塔や聖堂教会が動くよりも先にアラヤが動くだろう。

彼女には汎人類史全てを滅ぼす権利とそれが出来る力があるからだ。たとえ本人にその気がなくても人類の永続的な繁栄を望むアラヤに彼女の存在は容認出来ない。

 

座に登録された英霊達の中にアルビオンに敵う存在がいるかは不明だが、この二つの争いの結果、地表が焦土と化しましたと言われてはカルデアのこれまでが浮かばれない。

 

藤丸とダ・ヴィンチは目を合わせて頷いた。

 

「オレ達も戦争を止めるのに協力させて欲しい」

「はぁ?何だ今になって。私たちはソールズベリーを出るまでの一時的な協力関係だろうが。それに!こいつはお母様を殺そうとしたんだぞ」

「……ま、こっちのことは気にしなさんな」

 

村正はグロスターで助けられた事に恩に感じてカルデアに手を貸していただけだ。

彼らが戦争を止めようとするだけなら、協力してやってもいいが、そのままモルガン側につくなら同盟はこれまでだった。

 

何せ村正が異星の神から仰せつかまつったのは不確定要素の大きいモルガンの排除と、オーロラの勧誘だ。

後者はあわよくばと言った感じだったので前者を優先していたが、これを放り出してカルデアに味方するほど恩義を受けたとは思っていなかった。

 

「それに、あの大盾持った女はどうするんだ。お母様の魔術で飛ばされたみたいだけど、どこにいるかはそこのチビが知ってるんだろ?」

「マシュは必ず迎えに行く。だけど、約束したんだ。誕生祭の後半も一緒に回ろうって」

 

嘘はない。事の重大さは理解しているが、それはそうとして、その約束は果たしたいと思った。

 

「……チッ。なら丁度いい、キャメロットまでの荷物持ちが欲しかったところだ。この村はジジババしかいねぇし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としても誰も文句は言わねぇだろ」

 

妖精騎士トリスタンは、カルデアと行動を共にするわけではない。あくまで村にいた人間奴隷を買っただけだ。

 

これが彼女に出来る最大限の譲歩であった。

 

それを見て村正はニヤリと笑う。

 

「そうだな。戦争の火付け役であるカルデアが冬の國の王女様といるわけがねぇ。そんなんなったら確定で黒になっちまう。カルデアとは相容れねぇが、この奴隷達には恩がある。だから付いていってやるよ」

「はぁ?何でお前まで連れていかなきゃならないんだよ。こいつらは私の奴隷だ。勝手に付いてくるんじゃねぇ」

「あ、そういや俺も奴隷だったわ。言い値で買ってくれよ。安くしとくぜ」

「くそが」

 

「こいつらって実はお人好しなのか?」

 

藤丸の肩にのっかかったハベトロットは小さく疑問を口にする。

 

彼らは戦争を止める為に、先ずはキャメロットを目指すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

──キャメロット

 

「バカな………ケルヌンノスの呪いが消えた?厄災は終わったと言うのか?」

 

大穴を見つめる彼女は目ぐるましい島の情勢など露知らず、だがブリテンの命運を左右する何かが変わったのだと、誰よりも早くに気付いていた。

 


オベロン「……ん???」

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