オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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希望の星

「──アルトリア?」

「あれ、リツカじゃん。どうしてキャメロットにいるの?」

 

固く閉ざされたソールズベリーの門を開け、大罪人である藤丸達を外へと逃がしたアルトリア。

『自分は第二王女だから大丈夫。そもそも私が被害者だし?これで裁かれるとか意味分からないから』

笑って送り出した彼女の姿を思い出す。

彼女のことはずっと気がかりだったが、意外にも再会は早かった。

 

「どうしてここに?それに、その格好は……?」

 

ソールズベリーでの装いは、お洒落にコーディネートした普段着のようであったが、今は異国の正装(スーツ)のようなものを身に纏っていた。

 

「あ、これ?似合ってないでしょ?もう一個、仕事用の服はあるんだけど、あっちは戦闘用の礼装も兼ねてるから。まだ開戦もしてないのに、あんなのを着込んでくるわけには行かなかったんだ」

「開戦……あ、そっか。アルトリアも戦争を止めにきたんだね」

「…………」

「オレ達もそうなんだ。アルトリアは春の國の代表として来たの?」

 

アルトリアは第二王女でありながら、第一王女である妖精騎士ガウェインよりも強い影響力を持っていると聞く。だから春の國の代表として話し合いをしにきたのかと思ったが、彼女は藤丸の問いかけに苦い笑みを返すだけだった。

 

「……まさか、オレたちを庇ったせいで何かあった?」

「いや、その事は少し怒られたけど全然平気。リツカ達の指名手配は解除出来なかったけど、暫くはそれどころじゃないだろうし、ソールズベリーに入らなければ春の國内でも追われることはないよ」

「まさか宣戦布告をしに来たんじゃないだろうな?」

 

妖精騎士トリスタンがずいっと前に出る。

 

「もしそうなら、ムリアンはウッドワスを寄越すでしょ。あの人は立場的にも冬の國と関わりが深いし、モルガンとも仲が良い。そのまま冬の國について、裏切ることになっても、背中を刺されるよりはマシって判断をしてさ。……でも、戦争を止めにきたわけでもないんだ。ごめんね、リツカ。こっちはもうそういう段階は過ぎてるんだ。私の仕事は、戦争が始まる前に春の國に鞍替えしませんか?って勧誘だよ。……は、はっ。敵国でそれとか嘗め散らかしてるよね。降伏勧告ぐらい出来たら良かったんだけど、私の権限じゃこれが限界だった。……始まったら最後、春は冬を根絶やしにするつもり。でも始まる前に春の國に移り住めば生き残ることは出来る……って考えたんだけど」

 

アルトリアの権限で五百人は迎え入れる用意はあるらしい。

 

「お前、こんな状況で……どこまでお花畑なんだよ。そんなの受け入れられるわけがねぇ。石だって投げられても文句は言えねぇぞ」

「うん。想像以上に認識が甘かったみたいで、今のところ一人もなし。それどころか相手にするなって言われてるのかな。皆家の中に引きこもっちゃった」

 

それを聞いて、脱力しトリ子は呆れるようにため息をついた。

 

「はぁぁぁ……いいか?こいつらは、冬の國に居心地がいいから住んでるんじゃねぇ。人間を使い潰すことでしか生きられないしょうもない連中だから残ってんだ。そんでブリテンの妖精として、それは『普通』だ。

春の國は人間と妖精を国民として数えるが、冬の國は妖精だけを数える。なのに数は殆ど同じってんだから分かるだろ?

お前らは凄いし、尊敬する。そして私はこいつらを軽蔑してるが、何もお前らのやり方に適応出来ないからって死んでも良いとは思わねぇ。だってそうだろ?おかしいのはお前らの方なんだぜ?今まで通り『当たり前』を生きてたやつらが、くたばる理由がどこにある。……人間を家畜にしてる?生きる為に必要なんだから許せよ。これは享楽や独善じゃねぇ、種族レベルの問題だ。そういうやつは今後春の國でも出てくるだろう。皆が皆、平等で公平な社会を受け入れられるわけじゃない。

そいつらが頼れる受け皿、必要悪ってやつが必要になる。冬の國は妖精の為に残す価値があるんだよ」

「……怒鳴り散らされると思ったのに、すっごいまともな説教されちゃった」

「お前は私の姪だろうが。これが見ず知らずの赤の他人なら切り刻んでるぜ」

「それでも、モルガンの築いた強いものだけが生き残る社会は間違ってると思う。妖精だけの社会を破綻させない為には理に適ってるかもしれないけど、それじゃあ、受け皿にはならない」

「手が回らないんだよ。円卓って言ったか?あいつらのせいで人間の供給量がいつまでも安定しねぇ。変えようにも地盤が整えられねぇんだ」

 

地盤さえ整えば人間奴隷の扱いも少しはマシになるだろう。だが、潰しても潰しても何処からともなく湧いてくる円卓のせいで、冬の國は良くも悪くも停滞し続けていた。

 

「…………」

 

藤丸リツカはこれに口を挟めない。

ただ人間が虐げられているだけなら声も上げられたが、あまりにスケールの大きな話だ。これは安易に口答えするべきではないと経験則から口を噤む。

 

「どうせこのまま粘っても、オケラだ。お前もついてこい」

「……うぅ。私、あの人苦手」

「春の國は戦争を止める気がないのに、手段はあるの?」

「戦争をやりたいのは春の國の総意じゃない。ましてや誕生祭を中断しての戦争だ。上のやり方に鬱憤も溜まってる筈だ。止める手立ては……まだ、ある」

 

ぐっと片腕を強く握りしめる。

アルトリアがそれを悲観するように見ていたのが印象的だった。

 

 

 

流石は冬の國のお姫様なだけあって、モルガンとの謁見の準備は手早く完了した。

一時間以上、階段を歩いた先、巨大な水晶を模した玉座の前に彼女は腰かけていた。

 

「……よく帰った。トリスタンは私の元へ、おまえたちはそこに。此度は大使や客ではなく、娘の友人としてお前達を迎えよう」

 

戯れは許さないが必要以上に畏まらなくてもいいと言いたいらしい。

思わず跪こうとしていたリツカは姿勢を正す。ダ・ヴィンチちゃんは無礼にならない程度にキョロキョロと辺りを見渡して首を傾げていた。

 

「(ベリル・ガットは……いない?絶対ここにいると思ったのに。別室で休んでる?私たちがここにくるって情報をつかんでなかったとか?まさか関係ないところで殺されたりしてないよね?)」

 

「娘を無事ここまで送り届けた。護衛としての働きをたかく評価しよう。褒美を取らす。本来であれば、我が妖精國か、ブリタニアの貨幣で報いるところだが、おまえたちの魔力資源は魔素を量子に見立てた……QPだったか?100億もあれば充分であろう。持っていくがよい」

「うちの上限超えてる!?ええ!?ここってQPの造幣所でもあるの!?」

「あるわけがなかろう。おまえたちの魔術体系を見て取り、錬金しているだけだ。持って帰れぬ量というなら、聖杯を5つほどで代替品となるか?」

「聖杯を!?どう言うこと、モルガンが聖杯を作れるなんて聞いてない」

「特異点を生成するほどの効力はない。せいぜいが霊基の補強だが、おまえたちの運用方法には適した性能だろう?」

「どうしてここまで……オレたちだって助けられたのに」

「娘の命の恩人だ。王であるまえに母として礼を払わねば、気が済まぬ」

 

※藤丸とダ・ヴィンチちゃんは後程QP派と聖杯派に分かれて、熱いディベートバトルを開催した後に、聖杯を貰うことになった。→ロンゴミニアドは普通に却下された。

 

 

 

「お母様。あのアルトリアを狙った魔術はお母様のものですか?」

 

少し間をおいて、トリ子が切り出した。

 

「私ではない。あれは私よりも高位の魔術使いが放った模造品だ」

「やっぱり、そうだった!なら、戦争をするのは本意ではありませんよね!」

「……あぁ。あちらが槍を突きつけるというなら、盾で弾き返すが、こちらも槍をもって攻めいろうとは思っていない。だがアルトリアの言動からも分かるとおり、あちらは我々を滅ぼすまで手を止めることはしないだろう」

「なら、なら!まだ取り返しはつきますわ、お母様!

お姉ちゃ……お姉様と、お母様が和解すればいいのです!先導しているのはムリアンや上層部のものであってお姉様は賛同していません。お姉様が声を上げれば上層部も従うでしょう。まだ目覚めてなくとも、お母様が正式に謝罪すると、それだけを確約していただければいいのです!」

 

「……どういうこと?」

「お母さんとモルガンは絶縁中なんだよ。10:0でモルガンが悪いから謝ればいいのに、謝らないんだ」

「なんで?」

「反省出来ないからだって。頭では謝ったら全部丸く収まるって分かってるのに、罪の意識が湧かないから、そんな状態で謝るのは違うだろうって。真面目なんだか、頭が硬いんだか、分からないよね」

 

「ならぬ。上辺だけの謝罪をオーロラが受けいれてくれるとは思えない」

 

ほら、と言いたげな顔である。

 

「お母様!諦めないで下さい!私も一緒に謝りますから!」

「……おまえだけは駄目だ」

「どうして!」

「くどい。この件は私とオーロラだけのものだ。部外者が立ち入る隙はない」

「そんな理由じゃ納得出来ません!!!お母様は民がどうなってもよいのですか!?回避出来る戦争で民の命が失われても平気だと!?」

「あいつらがどこで、どのように死のうと興味がない。全ては些事。武器がほしいと言うならくれてやるが、私があいつらの為にその身を捧げることはない」

「何故そこまで意固地になるのか私には分からない!!!どうして、どうしてなのですか!お母様!貴方は良き王になれる筈なのに、その力があるのに、どうしてそこまで民を蔑ろにするのか。民の心に寄り添ってあげないのか……!」

 

「無駄だからだ」

 

 

それから数時間におよぶトリスタンの必死の説得も空しく、リツカ達はモルガンを頷かせることは出来なかった。

 

 

 

 

「まだだ!まだ何かある筈だ!」

 

頭を抱えるトリスタン。そんな彼女の肩にアルトリアは手をおいていた。

 

「……トリスタンだけでもうちにこない?モルガンは多分、というか絶対大丈夫だよ。ランスロットもやる気ないし、ブリタニアと正面からやり合える。それで、みんなが戦争に飽きたら、止めるように促してあげればいいじゃん」

「そんなわけに行くか、私はこの國の王女だぞ」

「別に王女だからって一人の妖精でしょ?出来ることには限界があるよ。私達に出来ることはもうない。予言通りに二つの國が統一されておしまいなんだ」

 

その時、きっと部外者ゆえに俯瞰して聞いていた藤丸だからふと声に上げたのだろう。

 

「その予言ってアルトリアがやるんじゃないの?」

「え?」

「だって、巡礼の鐘を鳴らして、二つに分かれた國を統一する、んでしょ?春の國の人はみんなアルトリアが予言の子だと信じてるって言ってなかったけ?」

「いや、今さら~?もうそれどころの話じゃ」「いや、それだ。そうだ、妖精達は予言を信じている。春の國のやってる半端な扇動よりも、よっぽど説得力がある。アルトリアが真の王なら誰だって従うんじゃないか?ムリアン達も無視は出来ない───アルトリア、リツカ、私たちで速攻鐘鳴らして、戦争起きる前に統一して國の境界を失くすぞ」

 

バッと顔を上げた彼女の瞳には迷いがなかった。

 

最早、戦争を止める為にはそれしかないのだ。

 

 

 

巡礼の旅RTAが始まる予感がした。

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