オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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猪突猛進

実を言うとウッドワスはあの日どうやってオーロラとソールズベリーに戻ったか覚えていなかった。

 

「ウッドワス様!!?どうなされたのですか!その傷は!!?」

 

だが話によればオーロラを背負い、両腕から大量の血を流して門を潜ったらしい。

幸いにもオーロラに外傷はなかったそうで、そのまま屋敷に運ばれ、私は糸が切れたように倒れたのだそうだ。

 

 

 

「両腕の噛み傷は恐らく自傷によるものでしょう。肩のものは……爪で引っ掻いたのかな?アナタ様ほどの強靭な筋肉を噛みちぎるような存在は考えられませんので憶測となりますが」

 

それから丸一日ほど眠っていたらしい。

両腕の傷は処置が適切だったお陰で、目覚めた時には完全に癒えていた。肩のほうは少し違和感があったが、動きに支障はない。直に慣れるだろうとのこと。

 

「……一体何があったと言うのだ」

 

まるですっぽり記憶が抜け落ちているようだった。

ウッドワスの最後の記憶は、嘔吐して震えるオーロラの肩に手をおいたところまでだ。

 

『わ、わたしは……死ぬことも、許されない、の?誰か……お願いします……私を、ころ……』

 

明らかに正常ではない。医者に見せなければと思った。だがどうしてそこから自らの腕を噛むことになるのか。

直ぐにでもオーロラに確認したかったが、果たしてあの状態の彼女に無理をさせてもいいものかとしり込みしてしまう。

 

 

『私の子です』

『ばぶっ』

『何があった!?本当に何があった!?』

 

傷はもう癒えたのだし先ずは彼女の療養が先だと、後回しにしているうちオーロラは子宝に恵まれ、あの日の絶望がウソのように幸せそうな笑みを浮かべていた。

 

『父親は!?へェ!?』

『そりゃ僕だよ』

『ふぉはふぁ!?』

 

ムリアンが顔面崩壊を起こす中、ウッドワスは頬を弛めた。

 

……あぁ良かった。

 

ウッドワスはそれを喜んだのだ。

出来れば自分がその隣に立って支えてやりたかったが、どうやら役者不足だったらしい。

そもそも純粋な妖精である私と竜であるオーロラの間に子供が出来るとは思えない。子を持つことが彼女にとって一番の幸せなら、それは私では叶えられなかった願いだ。

だから悔しいが、私は騎士としてオーロラの愛したものを守ろう。

 

『ばぶっ?』

 

そう、バーゲストと目を合わせた時。

 

「……は?…ばか、な……」

 

 

似てはいない。体毛も薄いし、骨格からして違う。

けれど、彼女が牙の氏族であるのは疑いようもなかった。

 

何故、竜と竜の妖精との子が牙の氏族なのだ。オーロラが身籠ったわけではないのか?捨て子を拾って養子にした?……オーロラならありうる。しかし、似たようなことはこれまでにもあった。

今さら他人の子をここまで溺愛するものなのかと、とっくに癒えた筈の肩がズキリと痛んだ気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウッドワス様」

「……バーゲストか」

 

決戦前夜。誕生祭や戦争の準備で忙しなくヒトの行き帰りが絶えなかったその場所も、今はウソのように静まりかえっている。

ウッドワスは模擬戦用の剣を置いて、振り返る。

 

「どうした?……今になって怖じ気づいたか?」

「いえ……怖くないと言えばウソになりますが、決心はつきました。モルガン様は……トネリコは私が討ちます」

「ふん。トネリコ、か……」

「やはり気に入りませんか?幼き頃から心を砕いて下さったあの方からの恩を仇で返す私が」

「別に……モルガン様もそのような企みがあって、お前と接していたわけではあるまい。ムリアンの考えも暴論と唾棄するには、正統性がありすぎる。……あぁ、この戦争に正義はあるとも……長い冬が終わり、春が来ることをこの國のもの達は心待ちにしている」

「ならばウッドワス様は我々の味方と見て、よろしいのですね?」

 

ウッドワスはバーゲストの腰にある剣を見た。

竜剣と呼ばれ、戦場であらゆる武器をはね除けてきたウッドワスですらバターのように切り裂く、この國最高峰の剣を。

 

「……裏切れば、斬ると。お前も随分と偉くなったものだな。何故剣を抜いて来なかった?それを鞘から引き抜く前にお前を8度は殺せるぞ」

「……あ、これは違います!……何と言いますか、妙に馴染むもので。持っていると勇気が湧いてくるような気がして……すいません」

「謝るな。……全くお前と言うやつは……はぁ」

 

仮にもこの戦争ではオーロラの後継者としてブリタニアのトップに立つのだ。

ウッドワスはオーロラが認めたわけではないので、騎士団の中では部下にあたる彼女に畏まることはないが、こんな誰が見ているかも分からない訓練場で気軽に頭を下げる気の抜けた態度にため息をつく。

 

「その、戦場での一番槍は騎士の誉れと聞きます。私もそれに憧れがあって、出来ればご同行していただきたいな、と」

「バカか貴様!将を矢面に立たせる軍がどこにいる」

「……そうですわよね」

「これだから戦場を知らん世代は!モース狩りとは訳が違うのだ!訳が!」

 

これも和平政策が上手く行ってる証ではあるのだろう。

どうにもここ数百年に生まれた妖精達は戦争を軽視しているところがある。

バーゲストの場合、力が伴っているだけ質が悪かった。

 

「オーロラが眠っていて良かったな。お前がそんなふざけたことを口走ったと彼女が知ったら、恐ろしい目に遭っていただろう」

「……はい」

「私も今回は前に出ることはない。相手があのモルガン様だからな。転移などで単身突撃してきた場合を想定しお前やアルトリアの警護に回される」

「……その、こんなことを言っていいのか、どうか……戦争を止められないと悟ったウッドワス様はてっきり、モルガン、を殺したことにして、裏で匿うために、一番槍を買ってでるかと思っていましたわ……」

「……それも、考えなかったわけではない。だが、モルガン様の過去の所業まで暴かれたとなれば、最早ブリテンにあの方の居場所は残されていない。いつか見つかり、処刑場に引きずり出されるのを怯えて隠れるような惨めな余生を送るぐらいなら、いっそのこと、ここで終わらせた方がいいと判断しただけだ」

 

そうだ。モルガンとしての罪は妖精としてはそこまでのものではない。だから王位を剥奪しノクナレアのように監視つきで穏やかな余生を過ごすことも出来た。

だが、トネリコはダメだった。()()()()()()()()()()のか分からないが、彼女はブリテン全てのヒトに嫌われている。

生かす余地は欠片もなかった。

 

「……お婆様」

「そうだ、お前のお婆様をブリタニアは殺す。全身の肉を削ぎ、骨を生きたまま抜き取って、目玉を抉り出すのだ」

「そ、そんなあんまりです!お婆様は確かに許されないことをしたかもしれませんが、あまりに尊厳を踏みにじり過ぎている!」

「やっと理解したか?それが戦争だ。モルガン様の次は兵士が、兵士が終われば男が、男が終われば女子供が同じような目に遭う」

「私は…そこまでのことは……ブリタニアの方が強いから、直ぐに終わるって……」

「……止めようとしただけ、アルトリアの方が現実が見えていたのだろうな」

 

早朝。彼女がソールズベリーに戻ることになっている。

それを起点に戦争は始まる予定だった。

 

 

「……もう日付も変わる。お前も休んで、」

 

その時である。鐘の音が聞こえた。

 

「誰だ。こんな夜更けに鐘を鳴らしたバカは?」

「……何でしょう。この音色、聞いたこともないのに……何故か、嬉しくて、悲しくなる、ような?」

 

正午に時報として鳴らされるソールズベリーにある鐘。その音色とは違う、荘厳で、悠長な音色が響き渡る。

 

 

「バーゲスト様にウッドワス様!!!?ここに居られましたか!!」

「何だ、犯人はもう捕まったのか?」

 

風の氏族の部下が二人のもとに転がるように飛び込んできた。

 

「た、ただいま!伝令を受けまして!!!あ、アルトリア様が鐘を鳴らしたと、『分裂して同時に五つも』!」

 

「「は?」」

 

どうやら物語は虫の思い通りにはならないらしい。

ブリタニアの人々は忘れていた。アルトリアはオーロラの娘である前に魔猪の氏族だったということを。

 

 


 

虫「ああああああ!!!!!」髪の毛ブチブチ

 

 

この下、閲覧注意

 

↓↓↓

 

アンケートの結果、炎上の厄災になりそうなため没になったバーゲストの裏設定。

 

産まれて間もないオーロラの『本当』の娘を食らって、自分をオーロラの娘だと思い込んでいる精神異常者。

オーロラの娘(アルビオンの娘)という要素がデカすぎて、喰った筈が逆に侵食されるような形で赤ん坊になった(だからオーロラにはバレてない)が、徐々に適応して、己を取り戻していった結果、端から見れば成長しているように見えた。

自分はオーロラの娘である。ここぞという時にその思い込みを解いて、無茶苦茶にしようとしたのが虫である。

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