オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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私と俺と

巡礼の鐘は楽園の妖精であるアルトリアが鳴らさなければ意味がない。

鐘の役割は楽園の妖精を聖剣として完成させることだからだ。

 

だから、各々の街にある鐘をアルトリア達が手分けにして鳴らしても意味はなかった。そもそもアルトリアでなければ鐘は鳴らせないらしい。

 

「……ほ、ほんとうに必要なことだったんだよね?節約すれば1個ぐらい残せたとか後から言わないよね?」

「うおおおお!!!力が溢れてくる!もってくれよー!私の身体!巡礼の鐘5倍だー!」

 

──通常ならば。

あわあわと狼狽えるダ・ヴィンチと、地球育ちの野菜人みたいなことになっているアルキャス。

 

「ありがとう。アルトリア(セイバー)、アルトリア・オルタ(セイバー)、アルトリア(ランサー)、アルトリア・オルタ(ランサー)、アルトリア(リリィ)」

 

役目を終えた彼女達と、モルガンから報酬として受け取った聖杯が消滅するのを見送り、藤丸はほっと息をついていた。

 

「しっかし。汎人類史の嬢ちゃん達を召喚して、パシリに使うとはよく思い付いたな坊主。同じ人間なのに五人いるってことが、もう意味分からんねぇが、聖杯まで使わせるとは随分と太っ腹じゃねぇか!その度胸!男だな!見直したぜ!」

「元々この聖杯はモルガン陛下に貰ったものだしね。戦争を止める為に使うなら迷う必要はなかったよ」

「でもどうして汎人類史のアルトリアだけにしたんだい?君はもっと沢山の英雄と縁を紡いできたんだろう?……アルトリアの悪口じゃないけど、もっと凄い人も喚べたんじゃないのか?」

「うううん。ダ・ヴィンチちゃんにも計算して貰ったんだけど、聖杯で霊基を補強してブリテンとアルトリアとの縁を使っても、辛うじて現界し続けられたのがアルトリア達だけだったんだ。それに、鐘はアルトリアにしか鳴らせないからね。どのみちアルトリア達を喚ぶことは決定事項だったよ」

「そっか。よく考えて行動してたんだな!」

 

彼の肩を、村正とハベロットが叩く。

 

たまたまなのか、偶然なのか。カルデアと契約しているアルトリアの数と鐘の数は五つ(ユニバースのX師匠やオルタは、存在というか世界観からして規格外で別物らしい)。彼女たちに鐘を鳴らして貰い、鐘から受け取った材料とやらをアルトリア(キャスター)が吸収して今に至る。

 

「あれ、そう言えば、妖精騎士のトリスタンは?」

 

 

「これで、数日……最低でも2日は潰れる。その間に最後の1個を見つけねぇと」

 

皆が作戦の成功を喜ぶ中、バーヴァンシーは爪を噛んでいた。

 

「そんなに張り詰めたら身体が持たないよ。鐘までの最短ルートを導き出した君の功績が一番でかいんだし、少しぐらい喜んでもバチは当たらないと思うけど」

「まだ軽いジャブ打って怯ませただけだ。アイツらが混乱してる間に最後の鐘も鳴らさねぇと」

「その最後の鐘って何処にあるかわかる?」

「……分からねぇ。だが、あることは知ってる」

 

その最後の鐘と言うのは原作でいう鐘の氏族のエインセル、妖精騎士ガレスが元となったものだった。

だが、この妖精國ではエインセルが存命中であるにも拘わらず、鐘は建造されているらしい。

 

「盗まれたんだ」

「えっ?」

 

苦虫を噛み潰したようにトリ子は言葉を溢す。

 

「鐘はソールズベリーで生まれた。だけど、ソールズベリーに鐘は既に在ったんだ。一つの街に鐘を二つ置くことは出来ない。そういう決まりがあった。だから鏡の氏族の街に輸送していたのに、その最中で盗まれた。一昨年の話だが……冬の國はこの件に関わってないと思う。私がそう、信じたいだけなのかもしれないが」

 

トリ子はこの数日で、尊敬していたモルガンに不信感を覚え始めていた。

 

「大丈夫だよ。あんなに優しいお母さんなんだもん。君にそんな隠し事をしているとは思えない」

「そう、かな……でも。思うんだ。お母様は実は何も考えてないんじゃないかって」

 

國の運営は真面目にやっている。

モルガンは所謂、保守派・右翼というやつであり、左翼的な思考を持つ妖精を嫌って、粛清していた。

それを、確固たる國の像を持っているからだとトリ子は思っていたが玉座の間での問答もあり、思考を放棄しているだけではないのかと思うようになった。

 

「このまま冬の國が滅んだって、あぁ仕方なかった、で終わらせるような気がする。……もしかしたら、私が今、死んでも同じようなことを思うのかも」

「…………そんなことはない、なんて強い言葉、会ったばかりのオレからは言えない。だけど、歩みを止めたら、君はその答えを永遠に知る術がなくなってしまう。どんなに辛くても、足が震えても、歩き続ける人たちにだけ明日は来るんだ。もし、モルガンさんが足を止めてしまったのなら、君が手を引っ張って上げたらいいんじゃないかな?」

「……そうだよな。これからは私がお母様を引っ張っていけばいいだけなんだ」

 

彼女は決意するように立ち上がる。

 

「その為にも、さっさと最後の鐘を見つけて、戦争を終わらせないとな」

「そうだね。……一度ソールズベリーに戻ってマーリンにでも聞いてみる?」

 

「あっはっは!今の私はスーパー妖精だ!ランスロットだってワンパンでやっちゃうよー!」

 

物凄く浮かれているアルトリアを見ながら提案する。彼女だけならソールズベリーに戻るには何の問題もなかった。

それにマーリンと合流出来れば心強いことこの上ない。

 

藤丸はこの異聞帯をまだ楽観視していた。

マシュと分断されたり、英霊達の力を借りれないなどの不便も強いられるが、このまま最後の鐘を鳴らし、戦争を止められると疑っていなかった。

味方が多すぎるのだ。用意周到なまでに。身の危険を感じることもあるが、今までが嘘のように事が順調に運んでいる。

 

「……生意気なやつ。そんな空元気で、私まで騙されるかよ」

 

だからなのだろう。トリ子がボソリと呟いたその言葉は誰の耳にも入らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

目が覚めると『俺』は花畑の中にいた。

 

一体どうしてこんな場所に?

身体を起こすと、ポキポキと音が鳴る。

 

……久しぶりの感覚だ。身体が重く、頼りない。俺は昔から関節を曲げると音がなるタイプの『人間』だった。

 

あそこも復活してるのか?とズボンの中を見れば、三千年ぶりに相棒の姿があった。

 

「……そうか。俺は死んだのか」

 

事実を受け入れるように呟く。

これから座という所に運ばれ、人理の奴隷として星の終わりまで働くことが確約されているのだ。

 

「なぁ、マーリン。居るんだろ?最後に話そうぜ」

「……やぁ。その姿で会うのは初めてだね。オーロラ、それとも人間の頃の名前で呼んだ方がいいかい?」

 

ここは、いつもの夢空間なのだろう。

俺の内心を感じ取ってか、妙にしんみりした雰囲気を醸し出すマーリンが現れた。

 

「オーロラでいい。前の名前なんてもう忘れちまったからな」

「ならばそうしよう。いつものように紅茶でも出そうか?」

「あぁ。喉からっからだ」

 

いつもの椅子で、いつもの茶菓子を食べながら向かい合う。

 

「それにしても、まだ魂の形は『俺』のままだったんだな。てっきり身も心もオーロラとして染まりきってるものかと思ってた」

「メリュジーヌは君に心底入れ込んでいたからね。肉体に魂が押し潰されないように、殻を作って守ってたんだ。でもそれも、永遠ではなかった。こうして長い年月を経て、君の人間としての魂は完全に置き換わってしまった。それが定義上は人間の死としてカウントされるのはあり得ないことなんだけど、アルビオンと同化した人間なんてレアケースをアラヤが放って置くわけがなかったんだ」

「あー、てことは今の俺の存在自体、アラヤが無理やり再現したって感じ?」

 

要はスカハサ師匠やマーリンみたいな感じだろう。

いや、少し違うか?

死んでないのに、死んだことにされて、座が勝手にコピーを作成して、使い回そうとしてるってどういう状況なんだろう?……うん、よう分からん。

 

「このまま、君の本体が起きれば座は情報として抽出した君をルーラーに登録する」

「ルーラーで良かったよ。並行世界まで担当させられるか分からんけど、聖杯戦争で呼び出される頻度はずっと減りそうだし。あ、でもカルデアに呼び出されたらヤバくね?オーロラを呼び出したと思ったら、モヤシの知らん男子高校生(不登校)が召喚されるんだけど。絶対混乱するだろ」

「それは安心して欲しい。今の君は英霊としてあまりに貧弱だからね。多少のテコ入れは入ると思う」

「テコ入れって?」

「具体的には、筋肉がついたり、背が延びたりするかな。ほら、君の記憶にナポレオンはいなかったかい?分かりやすく言うと彼のような強化を受ける」

「おぉ……なるほど」

 

どうやら召喚先でリンチに遭う運命は回避出来そうである。

こうなるとどんな宝具になるか気になるところだ。

俺としてはジーク君みたいな感じで、真名解放時だけでもアルビオンボディを使わしてもらいたいのだが、高望みが過ぎるだろうか?

何にしてもこれから全部1人でやらなければならなくなる。……耐えられるのかな?俺なんかが。

 

 

「……君には謝罪しなければならない」

 

ふと、マーリンが眉をよせて、視線を下げた。

 

 

「私たちはカルデアとブリテン。その両方を救う為に、君という人間を酷使し過ぎた。運命力なんてとうに尽きていたのに、無理やり死から遠ざけて、最善を選ばせ続けたんだ。それはとても許されることではない」

「……あのマーリンが謝罪するほどって。場違いかもしれないけど、罪悪感とかあったんだ」

「私はハッピーエンド主義者だからね。どっかの妹を自称する問題児は、「さて、ここから英霊としての冒険の始まりだ。期待してるよ」と満面の笑みを浮かべているところだが、そこまで薄情になるつもりはない。重ねて言うが、本当にすまなかった。まさかあちらの私が裏切るとは……」

 

……何だろう。彼は昔、この異聞帯生まれのマーリンだと自己紹介の時に言っていたが、根っこは妖精より人間としての自覚が大きいのかもしれない。

 

妹を自称する問題児は誰のことか分からないが、汎人類史側のマーリンとは千里眼でずっと連絡を取り続けていて、このブリテンのいく末まで話は済んでいたんだそうだ。それをあちら側が急に条件を追加して俺は人理の奴隷となってしまった。

彼はそのことについて本気で怒ってるようだった。

 

「……許す。いえ、気負わなくていいよ。向こうで会ったらドロップキックしとくから」

「君は逞しいね」

「それだけが取り柄だからな」

 

二人して笑う。

 

「それで、この空間はあとどれぐらい持ちそうなんだ?」

「彼女が最果てに到達するまでだからあと48時間だ。それまでゆっくりと────あぁ、良かった。間に合ったようだ」

 

マーリンが後ろを見て、微笑むので、釣られて振り返ると、そこには酷い顔をしたメリュジーヌが立っていた。

 

「な、えっ?……なんでここにいるの?わた、俺の本体は別にいるんじゃ」

「忘れたのかい?彼女は君に惚れたんだ。君の最後に立ち会わない筈がないだろう?」

 

俺たちは多分。吸い寄せられるように互いに歩み寄った。

 

「どうして……?」

「僕も……()()君と行く!!!!君を一人に何てさせるもんか!!!君が誰で、男だって、関係ない!!!私たちはずっと一緒なんだから!」

「……それは。駄目だよ。だって今の君には守るものが多すぎる。あっちのオーロラとは結婚してるし、娘だっているじゃないか。それにウッドワスみたいな友達だって沢山……いるし」

 

拒絶を表すように一歩下がる俺の袖をメリュジーヌが掴む。でもそうなのだ。この子は女王オーロラの夫で、ブリタニア最強の戦士だ。あっちにいた方が幸せに決まってる。

この手を取るわけにはいかない。

 

「うん。だから……私も本体は置いていく。傷付き摩耗した霊基をかき集めてここにきた」

「かき集めたって……そんなことをしたら、永遠に治らなくなるんじゃないの?」

「うん。パーツを失った私は永遠に不完全になる。でもいいんだ。君を見捨てて、完全になるぐらいなら、未完成のままでも」

 

俺は言葉を失った。

 

勝手にオーロラのみてくれだけを判断して、惚れ込んだのだと思い込んでいた。でも、違った。彼女は初めから…俺のことを。

 

「愛してるから」

 

ずっと見てくれていたのだ。

 

そんな、幸せなことが、許されてもいいんだろうか?

 

「ぅ、わ……ぁ、ぁ……ぐっぅ……ひっぐっ」

 

不安だった。怖かった。でも助けなんて来ないのだから一人でやらないといけないのだと精一杯の虚勢を張った。

 

その仮面が剥がれる。

泣きじゃくる子供のようにぐちゃぐちゃになって、立っていられない。

 

「今度は私が胸を貸す番だね」

 

 

いつの間にか冷えきったていた俺の身体を彼女が包み込む。まるで欠けてきたピースが填まるみたいな安らぎに俺は嗚咽と涙を抑えることが出来なかった。

 

 

「これをハッピーエンドとは言わせないよ。これからも彼女達の困難は続く。人は死ぬまで物語は終わりない。だから人々は祈るんだ。どうか未来が幸せでありますようにと」

 


 

それから暫く、トリニティメタトロニオスにて。

 

メリュ&オ「「ここに合衆国、ブリタニアの建国を宣言する!!!」」

 

メタトロン「!!!?」

 

このメリュジーヌは1.2%ぐらいしかアルビオンの要素を持ってこれてないので、霊基的にはあんまり強くないが、オーロラバフで無限に強くなる模様。

 

今後、オーロラ(ルーラー)が召喚されると、あらゆる障害をはね除けて連鎖召喚されるメリュジーヌの構図が一般化する。

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