オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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ノクナレア

いつからだろうか。

円卓が再び、ブリテンの地に現れたのは。

 

最初は汎人類史に憧れただけの少年少女が集まっただけの集団が何時しか『人類優生思想』を掲げた歪な組織へと変貌していったのは、いつからだろうか。

 

 

 

 

 

「お初にお目にかかります。私がパーシヴァル、この第二拠点における実質的なトップになります」

 

藤丸たちはオベロンの導きにより、円卓の拠点まで足を運んだ。

そこで出迎えたのはパーシヴァルと名乗る銀髪の少年であった。

 

「えっと……ずいぶん、お若いんですね」

「よく言われます」

 

彼は今年で16になると言った。

アルトリアと同い年で藤丸よりも少し若い。もちろん強さは自分よりもずっと上だろうが、経歴からして最低でも30は越えていると思っていた。全身からこれでもかと放たれる善人オーラには圧倒されるが、一国を敵に回す武力組織の長を名乗るにはあまりに未熟に見えてしまう。

 

「これでも創設メンバーなんですが、自分は最年少で……幼少の頃なんです。あの時は騎士見習い達の憩いの場でしたが……少し留守をしている間に、いつの間にかこんな大きな組織になってしまって。私以外のメンバーが全員亡くなってしまっていたので、繰り上げ式でこの地位を任されてしまいました」

「ケッ!テロリストどものトップを嫌々任されましただぁ?よくこんな良い子ちゃんがトップで壊滅しなかったか不思議だぜ」

「ちょっと喧嘩腰はやめてよ。折角、知り合いが出てきたんだからさ。拗れると面倒じゃん」

 

トリ子は嫌悪感を隠そうとしなかった。

アルトリアは幼なじみの登場にほっと息をついていた。

 

「アルトリア……様」

「もうっ、私たちの仲でしょ?敬称はいらないって」

「そうですね、いや、そうだな。ソールズベリーを出た時、もう二度と同郷の友には会えないと思っていたが、再会出来て嬉しいよ」

 

二人は互いの手を握る。

 

「お父さ……んが、心配してたよ。パーシヴァル君のことは実の弟のように可愛がってたんだから」

「……それについては申し訳ない。私も叶うならブリタニアの騎士として剣を振るいたかった。だが、そうもいかなくなった」

「鐘が盗まれたのは、まだパーシヴァル君が学生の頃だったよね?その事で今の円卓の惨状を知ったとして、どうしてトップになったあとも、あんな無茶なことを続けさせたの?君なら円卓の人たちを説得して、罪を償うように促すぐらいやってのけると思ってたのに」

「……あぁ。それなのだが、丁度この拠点に訪れているんだ。実際に会ってもらった方が早い」

 

パーシヴァルに促され、一同は中央にあるテントの中に入った。

軍に見つかった時、もしくは気付かれる前に、拠点を移しやすくするためだろう。あまり物の置かれていないそこには一人の女性が立っていた。

 

「……は?何で、居るの?」

 

アルトリアはその後ろ姿を見て、絶句する。

藤丸も、あれ?この見覚えのあるピンク髪は……と既視感を覚えていた。

 

「お前!!!!そうか!やっぱりそうか!!!!」

「ちょっ!?」

 

途端。トリ子が杭を持って飛び出した。全員が気を抜いた一瞬の事だ。誰も制止することが出来ず、妖精騎士の、宝具の真名解放に相当する一撃が彼女へ襲いかかる。

 

「あら?アルトリアじゃない。それに、貴方は…冬の國の王女様?」

 

それを、彼女は片手で受け止めた。

衝撃が突風となって藤丸達にその威力を知らしめるが、当の本人は怯む様子もなくこちらを振り返る。

 

 

「やっぱり、お前だ!お前が犯人だったんだ!お前さえいなければよかったのに!ずっと弱いふりして猫かぶって、お母様達の寝首をかく機会を狙ってたんだろ!この悪魔が!!!!」

「はぁ?何いってるのかまるで分からないわ。糖分足りてないんじゃない?チョコレートでも食べて落ち着きなさい」

「もがぁっ!!?」

 

トリ子の口に板チョコを押し込み、適当に放り投げたと思えばアルトリアに歩み寄って頬に手を添える。

 

「………あんまり、無理をし過ぎるものじゃないわよ。貴方ったらオーロラが肩代わり出来ない状況で鐘を鳴らすなんて、無茶なことするんだから」

「こうでもしないと皆は納得してくれないもん。それに、思ったより辛くないんだ。これも鍛えたお陰かな?最後の鐘を鳴らしても多分、持つと思う。でもそれまでに『礼装』は取りに帰りたい、かも」

「はぁ……これだから。貴方はオーロラに似て自分に厳しすぎるのよ」

 

藤丸からは何を話しているかは聞き取れなかった。だが、その姿を見て、彼女達も旧知の仲であることを悟る。

 

「えっと……メイヴ?」

「あら?それってもしかして私の通り名?素敵な名前ね。でも、私の名前は、ノクナレア。元六大氏族の一つ、王の氏族の長にして、この國の真の女王となる存在よ」

 

パァァン。光が弾けたような威光が見えた気がした。

いや、実際そうなのだろう。自信に満ち溢れた彼女からはとてつもない魔力を感じると共に、僅かに漏れ出したそれがハート型の結晶となって輝いている。

……強い。恐らく神霊に匹敵する。藤丸は肌でそれを感じたが、敵意のようなものは微塵も感じなかった。

 

パーシヴァルはそんな彼女を改めて紹介して、円卓との関係を語った。

 

「今の円卓は王の氏族と協力関係にあります。彼女が女王として君臨するために円卓は動いているわけではありませんが、冬の國で不当に弄ばれる人間の解放を共通の目的として動いています」

「私は弱い人間なんかに興味はないわ、モルガンの時代遅れのやり方が気にくわないから協力しているだけ」

「えっと、つまり……冬の國を滅ぼして、ノクナレア達は春の國を乗っ取ろうとしてるってこと?」

「それは先代までの考えよ。私の妖精としての目的はブリタニアの最高幹部の席について、王の氏族を六大氏族として復権させること。春と冬が争うまでもなく、私だけで冬の國を滅ぼしてよかったんだけど、状況が変わったわ」

 

円卓とノクナレアにとって、今回の戦争は意図しないことだったのだろう。

人間を助けたい円卓と、冬の國の弱体化を図りたい王の氏族。

この二つはメリットが噛み合ったから協力しあっていたに過ぎない。

 

何れノクナレアはモルガンの首と、円卓の隠した鐘の返還で春の國の最高幹部の席を得る腹つもりだったのだ。

 

「……無駄だ。冬の國を滅ぼすだけなら、春の國の戦力だけで事足りる。横やりを入れたからって、それがお前らの手柄になんかなったりしねぇよ」

 

むしろテロリストどもがノコノコ姿を現したと、春の國は嬉々として彼らの討伐に乗り出すに違いない。

 

「ええ。だからオーロラのご機嫌取りに切り替えるわ」

「ご機嫌取り?」

「オーロラは自分には何の権限もないと言うでしょうけど。彼女の推薦があれば最高幹部の席を一つ用意することぐらいなんてことはない。ただのテロリストではない。戦争を止めた功績者として、王の氏族の復権を私は望むわ」

 

オーロラは戦争を嫌う。罪のないものが死ぬことを極端に嫌悪する。それを止めたとなれば彼女からの印象は最高のものとなるだろう。

オーロラの指示=民意、なので最高幹部の席は確約されたも当然だった。

 

「っ、それって」

「最後の鐘の場所。知ってるわよ。オークニーにある、『開かずの扉』その近くに隠してあるわ」

 

渡りに船だ。まさかここまで順調に話が進むとは思わず、アルトリアと藤丸は手を取って、跳び跳ねる。

 

「そうね。鐘は私たちで運搬するから、アルトリアはソールズベリーに儀式用の礼装を取りに行きなさい。全力で急がせれば二日で間に合うでしょう?」

 

「それだと駄目。戦争が始まっちゃう」

 

アルトリアは直接自分が鳴らしに行くと進言して、ノクナレアはあからさまに機嫌を損ねた。

 

「……なら、強行策で行くわ。鐘の運搬の人員は最低限で、残りは両軍の足止めに使います」

「な、君たちだけで春と冬の軍を押し止めるというのか!?」

「もちろん、こんな所で使い潰す気はない。罠でも何でも使える手は何だって使って、嫌がらせをしてやるのよ」

 

懸念点があるとすれば、ウッドワスやボガード。メリュジーヌといった一騎当千のエース達の存在だろう。

ボガードは既に没しているが、それを知るのはメリュジーヌただ一人。

ノクナレアはメリュジーヌ以外なら、二人がかりでも押し止められる自信があったが、別々に動かれてはどうしようもないと頭を働かせた。

 

「パーシヴァル……だけだと荷が重いわね。人海戦術が通用する相手でもないし。何よりパーシヴァルはメリュジーヌを抑えてほしいもの。あ、そこの貴方達も戦力に数えていい?いいのね?だとすれば……ウッドワスは私がやるとして、ボガードを貴方達に任せてもいいかしら?」

 

藤丸達は頷いた。

トリ子も、少しして頷く。

 

「なら決まりね!皆で戦争を止めるわよ!」

 

それから細かなすり合わせをして、アルトリアは早々に馬車でソールズベリーへと向かった。

 

 

この戦争は止められる。皆がそう信じていた。




パーシヴァル(16歳)…槍による老いがないので、肉体年齢は全盛期を迎えていない。
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