オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
メリュジーヌが顔を上げた時、朝日が彼女の視界を白く染め上げた。
「……少し、やり過ぎたみたいだね」
眼下には、深く大きなクレーターが出来ている。
これは彼女の悪い癖だった。
彼女の技量は超一流の域(燕返し等)には達していないとはいえ、それでも長年鍛え上げた技巧は超一流に肩を並べるところまでは来ている。つまり初撃で二撃、頭と心臓に命中させていたのだが、彼女の本質は竜、暴力だ。頭に血が上ると必要以上に痛め付けてしまう悪癖があった。
死体蹴りに死体蹴りを重ね、最早この世にベリル・ガットだった痕跡は僅かにも残されていない。
「もう少しだけ、もちそうだ」
体感にして、残り10分ぐらいだろうか。
既に半日近くこの形態を維持出来ていることを思えば、かなり伸びた方だと思う。
何せ初めてこの形態になった時は、3分も持たなかった。
「これも愛の力だね」
メリュジーヌは満足そうに頷いて、最後にボガードへの手向けの言葉を送った。
「奥さん達のことは任せてよ。生きていても死んでいても、これ以上、辱しめるようなことは僕が許さない」
ここまでする相手だ。残念ながら生きている可能性は低い。
それでも、その亡骸は丁重に弔う。それが今の彼女に出来る限界であり、必ずやり遂げるべき使命だった。
このまま彼の屋敷に向かうのもいいが、ランスロットの着名が剥がれてしまった以上、メリュジーヌはこと厄災関連において、慎重にならざるをえない。
先ほどモースを召喚していたことから、その弱点をベリルは把握していたと見るべきだ。
一旦、ソールズベリーに戻り、娘のバーゲストに援軍を回して貰うように頼もう。
「と、そうだった。今の僕はアルビオンだ。わざわざ飛んで向かう必要はなかった」
これも習慣のせいだ。アルビオンは境界の竜。行こうと思った瞬間には着いている。
遠い昔を思い出すように、メリュジーヌは力を使う。
だが、やはり久しぶりだったからだろう。
座標は少しズレ、バーゲストの真上になった。
「「うわっ!!?」」
▽▲▽▲▽
バーゲストは巡礼の鐘が鳴らされたことによる混乱を収めるのに必死だった。
「あぁもう!あのヒトはこんな時に何をしているのですか!」
バーゲストはオーロラの代理のつもりだが、オーロラの次に王位に相応しい存在がいるとしたら、メリュジーヌを措いて他にないと思っていた。
だが、あの年中下ネタを垂れ流す自称父親のカスは、昨夜から姿が見えない。
一体どこで何をしているのか。……これで浮気でもしているようなら、嬉々として血祭りに上げているところだが、どうせ母との性生活がいかに素晴らしいか赤の他人に自慢しているのだろうという嫌な確信がある。
次から次へと舞い込んでくる報告にあたっていれば、日が昇っていた。
明朝、冬の國に攻め入る予定だったが、そんなことを言っている場合ではない。
明日、いや明後日に延期される。
まるで思いどおりにならない。普段から平気な顔をして、望んだ道に舵を切る母の偉大さが知れた気がした。
それについては憧れを増すと共に本当にアルトリアが鐘を鳴らしたかも分からない中、頭を掻いた。
「うわっ、ミスっ」
「───ふぁ!?」
その真上に────どちゃくそ好みの『