オーロラに転生ですか? 作:オーロラ・ル・フェイ
鐘のもとに向かう最中、藤丸はオーロラと話していた。
最初はトリ子にしていたのだが、もう寝ると馬車に籠ってしまい、アルトリアは眠気を払うので忙しいのか、見るからに不機嫌そうなので、遠慮してしまう。
ダ・ヴィンチちゃん達は先に鐘の回収に向かってしまったし、村正は軍の足止めに駆り出された。このまま黙々歩き続けるのも苦ではないが、やはり誰かと話していたいと思うのが藤丸立香という人間であった。
そんな時、アルトリアの後ろを歩く彼女が目に入ったのだ。
「貴方は寝なくて大丈夫なの?」
「オレは道中で仮眠を取っていたので。馬車も一つしかないですし、今はあの子を休ませてあげたかったので」
「ふふ、優しいのね」
「オレにはこれぐらいのことしか出来ませんから」
「謙遜することはないわ。人のことを気づかえるなんて、十分立派なことだもの」
「出来ればアルトリアも休んで欲しいんですけど」
「そうよねぇ。でも、あの子。ああ見えて責任感はとっても強いから。……変に気負いすぎてないといいけど」
既に鐘を目指して歩き始めてから1日。
自分とトリ子が交代制で仮眠を取っている中、アルトリアは一睡もせずに先頭を歩いていた。
もちろん、自分やトリ子は替わろうとしたが、適当にはぐらかされてしまう。
何がそこまで彼女を逸らせるのだろうか。
トリ子の戦争を止めるのとは、少し違う。必死ではあるのだが、場当たり的で、空回りしているような努力の仕方には期待よりも不安が勝る。
「オーロラ様が言えば、馬車で休むぐらいは……」
「今の私じゃ無理ね。起きてたら素直に聞いてくれるでしょうけど、今の私が言っても寝言で片付けられて終わりよ」
そうだった。当たり前のように会話しているので忘れていたが、この人は今、寝ながら歩いているのだ。
睡眠時間も仕事が出来るように訓練したら出来るようになったらしい。
流石は、竜の冠位。人の常識が通用しない。
「そう言えば、アルトリアは『風の氏族』ですよね?オーロラ様は竜なのに、種族が違うのは何故ですか?」
「それはね。あの子の身体は私が妖精だった頃の物が使われているからよ」
「使われている?それってどういう?」
「ベースが風の氏族の私。そこにマーリンが楽園の妖精の要素を混ぜこんで、産まれたのがあの子」
「……マーリンが?それって彼が父親ということですか?」
「うーん。そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるわ。あの子の父親はメリュジーヌだけだけど……あの人の血を引いている訳じゃないし……バーゲストの時とは事情が違うから」
「事情が違う?」
藤丸はこの時、聞かれたことに素直に答えるという話を事前に聞いていながら無遠慮な質問をした自分を後悔することになる。
「
「……何ですか。それ……まるで、アルトリアが物というか、舞台装置みたいな……」
背筋がぶわりと粟立つ。
「楽園の妖精達にとって、私の娘であるという事実は鐘を鳴らすのに、都合が良いと判断したのでしょう。だから前後が違うの。アルトリアという妖精が生まれることが決まって、後から私の娘という要素を付け足す為に、楽園に還った私の妖精の身体を使うことにした」
「そんなのって……アルトリアは鐘を鳴らす為だけに造られたって言うんですか?」
「そう言うことになるわね」
「そんな!なら鐘を鳴らせば彼女はどうなるんですか!?」
「死ぬわよ(普通に鳴らすだけなら)」
「……鐘って、何なんですか?一人の命を弄ぶような真似までしで、彼女にマーリン達は何をさせたいんですか?」
「このブリテンを正しい形に戻す。鐘を鳴らすことで生まれることは様々だけど、それが最終的に行き着くところになるわね」
「それをアルトリアは……知ってるん、ですよね?」
「それは『どこまで』かしら?アルトリアを産んでいないということ?それとも、鐘を鳴らせばどうなるかということ?それとも、ブリテンを正しい形に戻すということ?」
「……全部、です」
「じゃあ知らないわよ」
じゃあ。じゃあ。って何だ。
淡白な答えに藤丸は胸の内から熱が込み上げてくるのを感じた。
その何れもが彼女が知るべきことではないのか。
「そんなの、あんまりだ」
「……そうかしら?私は知らない方があの子にとって幸せだと思うけど」
オーロラは、アルトリアのことを娘としてバーゲストと同じぐらい愛していた。
産んだ産んでないなんて彼女にとっては些細なことだ。けれど子供がそれを気にしない訳がない。だからこれは墓まで持っていく気であった。
それ以外のことについてはバッチリ対策しているし、ブリテン消失後のプランも考えているのだが、今の彼女は藤丸の質問に何も考えず答えているだけなので、そこまでは気が回らない。
藤丸の中では、オーロラはアルトリアという無垢な少女をブリテンの為に使い潰す冷酷非道な王のように見えたのだろうか?
少なくとも確かな疑念は覚えただろう。
これは会話ではなく、一方的なやり取りとなる。糾す相手が存在しない物語のようなもので、どうしても受け手の主観が全てとなる。
そして、悪い方向にばかり思考とは加速してしまうもので、アルトリアのちぐはぐな行動も、平和ボケではなく、そういう風に育てたからではないかと疑ってしまった。
「例え、アルトリア一人の犠牲で全てが救われるのだとしても、それが最善だとはオレは思えない。あの娘にも幸せになる権利はあると思います」
「そうね。見て、山の上から日が顔を出してる。あの山の向こうに鐘があるのよ。早く鐘を鳴らして、彼女を休ませてあげましょう?」
予定通りなら、もうすぐ運搬組と落ち合うことになる。
二人の間を
「…………」
朝日を除かせる山頂に目を細目ながら藤丸はやるせなさに拳を握りしめた。
メリュ子「アルトリアは僕の娘だよ。アルトリアが出来た時の体位(捏造)も言えるね」(ドヤ顔)