ミコトは常に無い歪みに導かれて、その街に入った。
「御崎市、か……」
「……尋常じゃないトーチの数……」
この市内には大きな気配が一つ。たった一つが喰らうには、余りにも多すぎる。
そしてフレイムヘイズの気配が一つ。この大きさ、統制力ならそこそこやり手の討ち手だろう。
ただ
「トーチがこれほど――! 許せん、徒」
「気を付けな相棒、ここまでの大喰らいはアタシも見たことない」
「分かってるさ、気を引き締めろつってんだろ」
髭面の討ち手と少女のような声の王。ただでさえトーチだらけで強大な王が陣取っているこの街だ、小さな気配にも視線にも全く気付かない。
気配を隠した男たちの背をこっそりと追い、敵情視察を
「炎の色は――薄い白!」
「“狩人”か!」
物陰からその王を確認した討ち手らは、静かに驚愕する。確かめたのは近代五指に入るという“フレイムヘイズを討つ殺し屋”だ。対策を練るために一度退こうとした矢先。
「折角来てくれたというのに、遊んでくれないのかい?」
“狩人”フリアグネは、討ち手が潜む物陰に真っ直ぐ目を向けて、言い放った。
「ちっ!」
「仕方ねー、ぶっつけ本番だ!」
討ち手は鉈に似た剣を引き抜き、次々と炎弾を打ち放つ。
(宝具……火除けか)
ミコトは宝具の起動を察知し、炎弾を避けるも臆するもしないフリアグネの様子から効果を推察する。
夏虫色をした炎の嵐が薄まり、その切れ目から一振りのナイフが真っ直ぐ討ち手を狙う。
「無傷、宝具か!」
「この程度のナイフ、アタシらの『ルヴィド』には無意味さ!」
討ち手が冷静に状況を把握し、王が自分たちを誇る。
ナイフそのものも何らかの力が備わっているようだが、鉈剣も同じく強力な宝具であるらしく、ナイフを弾くついでと粉々に砕いた。
「勿体ないじゃないか。このナイフ『ジェルソミーノ』は一度投げれば心臓を貫くまで戻ってこない、殺しに一途な宝具だったのに」
手札の一つが壊されたというのに、感じ取れるのは“愛しいコレクションが一つ壊された”という怒りだけ。この討ち手を殺し得る
「ほうら、こっちだ」
フリアグネがふわりと浮き上がり、広場から移動を始める。その間にも牽制のように鋭くカードを投げつけてくる。十中八九罠で討ち手らもそれに気付いているようだが、巧みな攻撃で追うしかないように誘導させられている。
ミコトも二人の戦いの余波という
封絶で覆われたビル街の屋上を飛び移る、逃げるように追い詰めていく王と追い詰めていくように逃げ道を断たれている討ち手ら。
舞台は工事中のビルの一棟、不安定な鉄骨の上でフリアグネは止まった。
討ち手が工事の足場に囲まれた、周囲より数メートル低いビルの屋上に“入った”瞬間――
一斉に現れる気配と辺りを塗りつぶす薄い白の炎。
鉄骨やビルの陰、床下に姿を隠し気配隠蔽(主の趣味からして何かの宝具の効果だろう)をしていた、おぞましいほどの数のフリアグネ自慢の“燐子”たちが炎弾を放ったのだ。
誘導されていたことに気付いていなかったら、この不意打ちで消し炭となっていただろう。しかしこの討ち手は最も近い突破口を見出していた。
それは真上。誘導者たるフリアグネが浮かんでいるそこ。
爆風を推進力に替え、討ち手はそのまま高速でフリアグネを斬りつけようとする。それより先立ち、フリアグネはまた何かを放る。
今度は軌道を鎖として残す一枚のコインで、カードやナイフと同じく鉈剣で粉砕しようとしたが。
コインと鎖はそのまま絡みつき、強い力で引かれ討ち手はバランスを崩す。
(来る!)
ミコトはこの決定的な隙に突き刺さる強すぎる殺気を感じ取る。
感じ取って、様子を見る姿勢であったばかりに“人並みの”反射神経だった彼は、何もできなかった。
次の瞬間、討ち手の気配が膨れ、夏虫色の爆発が起こった。
それは討ち手の攻撃ではない、最期だった。
(王の眠りを覚まして自爆させやがった……えぐ)
(……一撃必殺、これが“狩人”の殺し屋たる所以……)
戦利品たる鉈剣『ルヴィド』をかかげ、下僕たちに仰ぎ見られるフリアグネ。
「もう、少しだ……もう少しで、この街に十分な量のトーチが配置できる。そうすれば――」
一番のお気に入りだろうぬいぐるみ型“燐子”を抱きしめて、そのようなことを口の端に乗せた。そのつぶやきを、ミコトは
そして、気取られない内に
―*―*―*―
消えかけのトーチをいつものように摘み、そのまま取り入れず明かりとして指先に灯す。
「“十分な量のトーチを配置する”。それが目下の目的らしーけど」
「歪みが生まれ……フレイムヘイズも徒も集まってくる……それは狙いじゃないでしょうね……」
先の夏虫色のフレイムヘイズとの戦いは、目的では決してなかった。
せめて弔い合戦を、とミコトは腰を据えてトーチを解析する。“存在の力”は先の戦いのおこぼれでそれなりに潤沢だ。
解析して出てきたのは『鼓動』。新しいトーチのものは早く力強く、古いトーチのものは遅く穏やかな。同様の処理が“全てのトーチに”為されているらしいこと。
それと、“繋がり”。
「繋がりの方向は“狩人”……“狩人”はトーチを遠隔操作したいのか?」
「トーチの“燐子”化……?」
シャヘルの概念の言語化にミコトは頷く。
「じゃあ、『鼓動』はどういう意味が……うーん」
「……“狩人”の命令を受け取った後、影響するのかもしれない……」
宝具か自在法か。コレクターとしても有名な“狩人”なら前者だろうが、コレクターであるがゆえに予想は困難だ。
「なら『鼓動』は後回しだ。“燐子”化の目的から考えるか。例えば……人間の兵隊化――」
「“狩人”ならあの高水準の“燐子”で十分じゃない……?」
戦力が目的なら、このような大掛かりなことをしてフレイムヘイズを呼び寄せずとも今までやって来たように素直に“燐子”を作るだろう。
「……人々を操ってこの街を乗っ取ったり……?」
「それならトーチが少なすぎる。“正気の人間”がトーチの十倍以上いるんだぞ」
ああでもないこうでもないと説を出し合い。
「一割でこの街を乗っ取るって説が近い気がする……しっくりこないけど」
「……近いとすればそれね……。なら、なぜこの街を……」
ひと通り歩いてみたが、よくある都市部に近い日本の街でしかない。
「この街である必要は無いだろうな。“王様になって支配者ごっこ”とか」
「……日本の街である都合上難しくない?」
行政やらの都合上、仮に市長などに収まっても独裁は不可能。
「じゃあ“神様ごっこ”。この街神社あるけど信仰からは廃れてるっぽいし」
「……だから現代日本なら元々――ミコト?」
ミコトは黙り込んで空を凝視している。
シャヘルもミコトが気付いた何かを手繰り寄せようと、その意味を考えて。
「……確か、『都喰らい』は」
「『鍵の糸』でトーチ同士を繋げて、いっせいに“絆”を無くすことによる連鎖反応で都市ごと“存在の力”に変える。
「それを再現しようと……?」
「乗っ取るとか私兵化とかよりずっと現実味がある」
目的は支配者としての君臨ではなく大量の“存在の力”。実に徒らしいと二人は感じた。
「シャヘル、仮に“この数のトーチ”が同時に消えたらどうなると思う?」
「理論上は……ただ
「同感。けどさ、“あの時”ほどじゃないだろうけど……怒ると思わね?」
「……」
誰が、何が、と言わないからここまで口に“出せた”。
「これがきっかけで『大災厄』が……無いとは言えない……」
ミコトは頷く。
「説得してみっか」
「……私たちに出来ることは……それだけね……」
生きていた人のこの世の残滓をエネルギーとして保管しつつ、立ち上がった。向かう場所は強大な“紅世の王”の根城。心なしか速足だった。
―*―*―*―
「おやまた。随分小さなフレイムヘイズだね」
フレイムヘイズや“紅世の徒”にはあまり意味など無いが丸腰で、正面から訪ねていった。
「どーも。俺は――」
「“覚の嘯吟”シャヘルのフレイムヘイズ『眇理の還手』ミコト、だね」
「ご存じとはまことにこーえー」
棒読みで応じつつ、警戒して武器を向けたり威嚇して牙を向けたりしている、忠実なる燐子たちの間を進む。
「皆、“お客さん”に失礼な態度はよすんだ」
「ですが、ご主人様」
「こうして真正面に立っているのだから、
正面突破では敵にすらなれない、そう指摘されミコトは面倒そうに頷いた。
ミコトは旧依田デパートの中層、遺棄されたホールに通された。磨き抜かれたアンティークな机とベルベットのソファは、デパートの残り物ではなくフリアグネ自身の持ち物だろう。
「で、土産の一つや二つはあるんだよね」
「……」
黙って袂からサーバーやポットとカップを、懐から豆が入った缶を取り出す。
自在法どころか余分な“存在の力”の欠片すら感じない“見たままの道具”に、フリアグネは調律の外れた音程で笑った。
「いや、確かに君は
「んな訳ねーよ。他人の食いもんにケチつけんのは避けてるけど、『人喰い』だけは例外だ」
「おや、それは残念だ」
フリアグネは大げさに肩をすくめつつ、コーヒーを抽出するミコトを観察する。
「ネルドリップ……懐かしい香りだね」
「エスプレッソよりこっちのが好みと聞いて」
ふわりと芳醇な香りが、薄暗いホールに立ち上る。香りを存分に楽しんだ後、フリアグネは口に含む。
「今かの国へ行ってもエスプレッソばかりでね……いやはや、こんなところで飲めるとは。マリアンヌと出会ったころ、幸せの中よく二人で飲んだものだ……」
幸福の中に表情をとろけさせるも、当然のように付け入る隙は生まれなかった。
(ま、ご機嫌は取れたようだ)
(『“狩人”はイタリアで『運命』と出会った』……なんてどうでもいい噂が……役に立つなんて……)
フリアグネと『
「一人で“喰う”にしては、多過ぎないか?」
ミコトはコーヒーを嗜みつつ、フリアグネの惚気話を遮った。
「しかも何やら仕掛けてるし」
幸せに包まれていた表情の一部が、現実に戻って来た。
「ひょっとしたら、とは思っていたんだ――ミコト、他でもない君なら気付くんじゃないか、と……」
まだ確信は持てていないようだが、
「『都喰らい』」
ミコトがそれを口にし、フリアグネが舞台役者のように大仰に頷く。
「君はかの“棺の織手”に協力したと聞いた。トーチという繋がりを都市一つにつき一割ほど作り、一息で全てを吹き消す。
興奮と一滴の不安と、熱狂に混ざる一粒の理性。それらを含んだ問いを前のめりで投げかけて来た。
それを。
「不可能だ」
ミコトは己が知る『事実』で一蹴する。
「それは何故だい?」
「言えばお前さんそっちに舵切るだろ」
「君は人喰いを嫌っている。だからそれは嘘だ」
「お前さんの前で俺は一度も嘘を言っていない。騙すつもりなら『都喰らい』に協力する姿勢を見せて確実におじゃんにするよ」
手札をちらりと見せ、フリアグネはそれを理解する。
(つまり“おじゃん”に出来る方法を知っている、という訳だね)
心配そうに主を見上げたり何を企んでいるのかとミコトを睨んだりと忙しいマリアンヌを撫でつつ、次の手を考える。
「なら、私の計画を“おじゃん”にしかねない君を生かしておく理由は無いが」
「いいや、そのつもりは無いはずだ。“『都喰らい』の真実”を知る俺からそれを聞き出すまでは」
フリアグネは大きくため息を吐き、困り顔で笑う。
「分かった分かった。君は“『都喰らい』は阻止したいが私と敵対する気は無い”、そういうことにしておこう」
そうしてコーヒーに口をつけ、笑顔でマリアンヌを見た。
「で、君はどうしたいんだい? 私は君に何をすれば?」
「俺は『都喰らい』をやめさせようと『説得』しに来た。すぐに応じんだろうし、ここに置かせてくれ。それはお前さんにとっても――」
「『都喰らい』の
―*―*―*―
フリアグネの“大喰らい”はミコトが来たからといって緩まることは無く、御崎市の人々はただ喰われ続けた。
「その方法じゃ、ただ歪みを生んでフレイムヘイズを呼び寄せるだけだ」
「なら別の方法を教えてくれ。代替案の無い否定など何の役にも立たないよ」
トーチは配置されゆき、歪みは深まり、欠落は広がっていく。
「マリアンヌを“確固たる存在にする”んだろ。リャナンシーの自在法以外でなんか方法無いか考えてるから――」
「君がどれほどの自在師だとしても、可能性の一つを諦めるつもりはないよ」
また一人、フレイムヘイズが引き寄せられ、爆死を見送り。
「君は腐ってもフレイムヘイズのようだね、ただ見ているのも辛いようだ。どうだい、ここはひとつ状況を動かしてみては」
「ヒントだけでも教えろって? 駄目だ」
『都喰らい』を真に引き起こす鍵。絶対に渡す訳にはいかない。
「よく考えてみろ。一つの家族全員を喰らっても、家や物は消えど“存在の力”の吸収なんてできないだろ」
「家族一つと都市一つを同じにしちゃいけないんじゃないか?」
そう言うフリアグネだが、少し揺らいだ。やっと“自分の方法”では理論通りにならないのではないか、と考え始めたようだ。
「“その方法”は[
フリアグネの“真実を射抜く狩人の眼”は、確かに焦っている『眇理の還手』が出した“襤褸の影”を見つける。
「[
ミコトはごくりと唾を呑み込む。
「ああ」
「嘘だ」
『眇理の還手』は最早獲物と成り下がっている。故に“本質を見抜く”力が発動し、嘘を即座に看破した。
「つまり、[
「……」
ミコトの表情から感情が剥がれている。それが“表情を繕う余裕がなくなった結果”だと手に取るように分かる。
「“棺の織手”アシズの望みは……確か、恋人の蘇生。最終的に恋人との子供……『両界の嗣子』を生み出す最終段階で討滅された。それが
ミコトは帯から剣を引き出し、フリアグネを斬りつけようと踏み出していた。気配も膨れ上がっているところを見るに、自前で貯めていた“存在の力”も惜しみなく使う模様だ。
それでも遅すぎたため、後ろに退いて楽々躱した。
「そろそろ潮時か。ミコト、君のコーヒーはとても美味だった」
「……」
もう何も情報を与えようとしないミコトに、フリアグネは礼と共に別れを告げる。
「そう言えば君は
泳がせていた獲物を狩る時だ。
―*―*―*―
フリアグネは既に、ミコトに“切り札”を見せている。その鬼札――フレイムヘイズの内に在る王の休眠を破り爆死させる『トリガーハッピー』を、牽制として次々発砲する。
『最弱』と呼ばれようと、ミコトも伊達に戦歴を重ねている訳でもないらしい。“存在の力”によるブーストで身体能力や反射神経を激増させ、掻い潜るように“見えずとも必殺の”弾丸を躱している。
「いい剣を持っている。――“存在の力”のみを切り裂き無効化させる、ある種の『宝具殺し』だね……!」
弾丸の一つを『
(宝具も手下も厄介だが……!)
(“狩人”としての本質……それが一番危険だわ……)
見抜かれる。だから真実にたどり着くのを
だから、『
いつの間にか自分たちを囲んでいた“燐子”たちが、一点集中砲火をミコトに浴びせる。薄白い炎の全てを『
「次は別世界へと導く鏡だね。奪い取るその時を想像すれば、胸が高鳴るよ……!」
フリアグネは見たことも聞いたことも無い強力な宝具たちを見て、目を輝かせながら舌なめずりをする。ミコトは『最弱のフレイムヘイズ』でも“謎多き不死者”でもなく、罠の中で足掻く獲物としかフリアグネの目には映っていない。
「次は何を見せてくれるんだい……?」
『鏡』の中の“燐子”たちが放った炎弾を変化させ、鋭く長大な剣を射出する。フリアグネの真核目掛けて音を越えた速さで向かうが。
「残念」
対象に“敵意”がこもっているほど鋭く堅牢になる鉈剣『ルヴィド』が、ミコトの自在法の剣を粉々に砕く。すぐさま周りに散る破片を、“一定以下の重量の物体を追い払う宝具”の力でミコトに鋭い嵐としてお見舞いする。
「ぅ、ぐ……!」
避けるなど不可能な、面攻撃。全ての“存在の力”を防御に回し、耐えるが。
「貰った」
反射神経が落ちたのを確認し、悠々と『トリガーハッピー』をミコトの眉間に打ち放つ。
「多少は頑張ったようだが、いかんせん
床に落ちた剣と鏡を拾い、満足げに頷き――
「――」
弾丸に当たると同時に、残った全ての“存在の力”を解放し爆発させ、直後完全に気配を断ったミコトが。
「な――」
神器だと見せていた“
(ま、ずい――っ!)
その力が解放されれば
『眇理の還手』――ではない、ミコトの本質の一端を、理解した。
ミコトは爆発と気配遮断で全ての“存在の力”を使い果たしていた。
よって、フリアグネに二つの動作を許すこととなった。
一つ。コレクターとしての“狩人”が最も重宝した宝具の展開。
二つ。“紅世の王”として最も身近な行為。
「――!」
それによって、ミコトは『完全に』消えた。
「ご主人様!」
下手な助太刀は相手に力を与えるだけと判断し、配下の“燐子”たちと共に待機していたマリアンヌ。
「大丈夫だ、少しひやりとさせられたけどね……」
冷や汗を一筋垂らすフリアグネは、駆け寄ったマリアンヌを優しく抱きしめた。
フリアグネにとって、ミコトと共に消えた宝具たちなどもうどうでもよかった。得体の知れない相手と戦い、マリアンヌや“燐子”たちを守り通せたことにただ安堵した。
彼の手元に落ちている宝具は、マリアンヌもよく知る強力な……しかし対フレイムヘイズには全く役に立たない物だ。
「それは、『スコンジェライ』ですか? なぜ……!」
この錠前と鍵からなる宝具は、ミステスの『戒禁』を破るために使う。
「彼は、フレイムヘイズではない……」
「では、ミステス――!?」
フリアグネは首を横に振り、床に落ちている『スコンジェライ』をマリアンヌによく見えるように拾った。
「これはね、『戒禁』の他にも、
フレイムヘイズなら、契約と同時に分解が不可能となる“存在”を。
「全ての防護が剥がれ、最後に残った自在法が――それだった」
「なら――」
一瞬の間に保護の自在法を垣間見て、それを無効化する宝具を使って。
「喰った」
ミコトの人一人分の“存在の力”は、分解されフリアグネの力となった。
―*―*―*―
夜、御崎市の隅で。
「“狩人”フリアグネ……どこまで知った……?」
「これは手痛い敗北ね……」
人一人分の“存在の力”にうっすらとした紅世の気配を纏わせた――ミコトが、月明かりの下腕を組んでいた。
「でも……その様子じゃ……」
「
フリアグネの根城、旧依田デパートの方向を見上げる。
「監視はする、が、下手につつくと余計に襤褸を出すな、奴さんの『眼』なら……」
「……同感。接触は控えるべき……あなたは
シャヘルの言い方に、ミコトは苦い笑みを浮かべる。
「使い慣れてる分いつものの方が強いってまで言われたもんなぁ……アシズに」
そして、懐かしそうに目を細めた。
「……これからどうするの……?」
「いつものホームステイしながら、この街の行方を見守るさ……トーチだけは多いのが、幸いって言っていーのか……」
一つ、トーチの気配が近付く。
そのトーチは、ミコトの存在に気付かないまま足元の小石を蹴り上げた。
「――っと。危ないぜー」
ゆっくりでも着実に、進めていきます。
完結まで絶対頑張ります。