Red The Crown   作:マシロタケ

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若かりし頃ということで、傍若無人度高めな大城先生。


土下座バトル

「だから!この時間はアルタイルの貸し切り時間だといったでしょう!!」

「知らんな!..この時間は、アルキオネの時間だ。お前の手帳が間違ってんだろ?」

 

東京のとある某所にある、大きなトレーニング施設、トレセンの練習場ターフにて、男女二人のトレーナーがいがみ合う。

 

「だったら!予定管理表を見てきなさい!ちゃんと記入がありますから!!」

「お前がセコセコと書き直した管理表か?..エゲつねぇことすんだなお前も。」

「最初から変わってません!!いい加減にしてください!大城トレーナー!!」

「まぁ落ち着けよ。ここはひとつ、ナカヨク合同練習ってことでいいじゃねぇか。な?椿。」

「そういって!前回も前々回も同じことを!..私たちは、手の内を晒したくないから、貸し切りを要望してるんです!!..それをあなたという人は!!」

 

染め上げた髪色に、チャラチャラと音を鳴らすアクセサリー。そして、見た目の期待を裏切らないヘラヘラとした態度。そんな軽薄な男に対し、黒髪を後ろで束ね、スーツに身を包んだ生真面目な女性トレーナー、椿 香織は、眼鏡越しに彼を目で威嚇する。

 

「...ねぇ、大城さん。本当に今日私たちの予定で合ってるんですか?」

「..なんだクラウン、お前まで疑うのか?」

 

そんな二人のいつものケンカを、各々の担当ウマ娘たちは呆れ半ばに見ていた。

 

「..ごめんね、アルタイルの皆さん..。」

アルキオネに属するウマ娘、オートライクが申し訳なさそうにそういう。

「..まぁ、ちょっとアタシたちも慣れちゃったし。」

とアルタイルチームリーダーのホーシンカイザーは頬を搔きながらそう言った。

 

「とにかく!今日という日は譲りません!さぁ!とっとと退場願います!!」

「ツレネーとこ言うなよぉ、ツバキィ..俺らの仲だろ?」

「黙って出ていく!」

「..チッ!」

 

大城は舌打ちをして、彼女に背を向ける。

そんな大城の悪態を、椿は見逃さなかった。

 

「舌打ちですか?まったく..そんないい加減な態度、トレーナー以前、社会人としての質を疑います!」

「お前は性格キツすぎだ。..そんなんだから..行かず後家になんだぜ..?」

 

大城のその言葉に..椿はピクっと眉を動かした。

 

「..もう一度行ってごらんなさい?」

「..なんだよ?..アラサーで婚期遅れ間際のコト..そんなに気にしてのか?」

大城はニヤつきながらそう言った。

 

「..アナタだって奥さんに逃げられたロクデナシのくせに?」

「..言ってくれんじゃねぇの。」

 

二人の間に火花が飛ぶ。

 

「..なんなら勝負するか?..負けたら..土下座でもなんでもしてやるよ。」

「..言質..とりましたからね?」

 

そういって二人は背中を向け合わせる。

 

「よぉし!!お前ら!!一騎打ちだ!!このナメた連中、黙らせてやれ!」

「皆!よく聞いて!このいい加減な男に、思い知らせてあげなさい!」

 

そして、チームアルタイルVSチームアルキオネの喧嘩レースが勃発した。

 

―――――――――――

先鋒

チームアルタイルからはグランドマスターというウマ娘。

対するアルキオネからはジントニックというウマ娘。

 

共に適正は長距離のステイヤー対決。

 

「ジン!いっちょロックにかましてやれ!」

「マスター!気を抜いちゃだめよ!」

 

互いのトレーナーの言葉を背に、二人は向き合う。

 

「先鋒戦とは少し不満だが..楽しませておくれよ?アルキオネの君?」

そういってグランドマスターは手を差し出す。

「ケ!お前の手ぇなんざさわりたかねぇよ!」

対するジントニックはそうがんを飛ばした。

 

「ふふ...負けても、泣いてはいけないよ?」

「おーおー、チームの前で大恥かかせてやるよ!」

 

二人のウマ娘は勢いよくスタートを切る。

 

出だしから、中盤にかけて二人の走りはほぼ互角。

だが、最終コーナー回って大きく展開する。

 

先に仕掛けたのは、ジン。

「はっは!!これでおさらばだ!!消えな!」

全力のスパートを..かけて振り切る態勢に入る。

 

..だが。

「ふふ...焦ったね。トニック。」

マスターはわざとワンテンポ遅れて、ジンに追走する。

 

「..な!こいつ..!」

マスターはジンの背後に回り込む。

彼女にすべての空気抵抗を預け、優雅にクルージング。

 

二人の体にかかる負荷に、圧倒的な差が生まれる。

 

空気の押し戻しによる抵抗を受けたジンは..少しづつ消耗していく。

そこをマスターは狙った。

 

そして、一気に横に躍り出て...。オーバーテイク。

チームアルタイル..一勝。

 

「っくっそおおお!!」

ジンは地団駄を踏む。

「ふふ..レースは走るだけじゃない。もう少し頭を使いたまえよ..トニック。」

「ウルセェ!バカヤロ!」

そういってジンは中指を突き立てた。

 

「...チッ。」

「..まずは..一勝。..土下座の練習..しておいたら?」

「まだ終わってねぇ。」

 

――――――――――

 

次鋒戦

アルタイルからは..タックモンテルというウマ娘。

アルキオネからは..オートライクというウマ娘。

 

次は1200mのスプリンター戦。

 

「あ..あの..ごめんなさ..あ、違う..お願いします.。」

オートライクは気弱に声を上げる。

「う..うん。..よろしく。」

その彼女の態度に、少し拍子抜けを感じたモンテルは、安堵の息をつく。

(..ま、申しいないけど..この娘なら..いただきかな。)

 

..と思ったのもつかの間

 

モンテルは現実を知ることとなる。

 

スタートコールがなった瞬間。

オートライクはニトロジェットを作動させたかのよう、圧倒的なスピードで前へとぶっ飛んでいく。

 

「な..!?...嘘でしょ!」

 

わずかな気おくれを感じたモンテルは、無理に彼女に追従しようと試みるが..。

すでに手遅れだった。

 

「...っく、流石ね..。」

「トーゼンだろ。あいつ高松宮獲ってんだからヨ。お前も、土下座しやすいようにジャージでも着てきたらどうだ?」

「..たわごと!」

 

――――――――――

「うおおおおお!!」

「まけるかああああ!!」

 

二つの熱い火の玉がターフの最終コーナーを回る。

 

中堅戦。アルタイルからはスターヘッド。アルキオネからはゴールドハンター。

 

1600のマイル戦。

二人は適正のみでなく、そのスタイルも似通っていた。

ただ全力を出せるだけ出す。

勝負所も、ペース配分も..関係なし!

 

そして、ふたり揃ってゴールへ..。

 

「「どっちだ!?」」

 

二人はゴール審査を務めさせられている用務員に声をかける。

 

「いんや~こら、わからんね。同着でええんやない?」

用務員は飄々とそう言った。

 

「ぐっ!」

「こっちの勝ちでいいだろ?」

「ふざけないで!..次!」

 

――――――――――

副将戦は、アルタイルからは、ホッパーミングス。アルキオネからは、ハイゼンモーテル。

ただ、二人の適正はまるで違った。

 

ミングスがステイヤーに対して、モーデルはスプリンター。

話し合いの結果、相中を取って2000m中距離対決となったのだが。

 

「むうりいいい!!!」

スタミナで分が悪いモーデルは..沈んでいった。

 

「..これ、ノーコンじゃね?」

「話し合いの結果よ。文句ナシよ。」

 

――――――――――

そうして、勝負はいよいよ大将戦へ。

 

各チームから、代表二人が選出される。

 

チームアルタイルからはホーシンカイザー。

彼女、日本ダービーを制した正真正銘の実力者。

 

「カイザー!!!頼んだぞ!!」

「先輩!!頑張って!!」

「負けるな!!」

 

そして、アルキオネからは...近年、秋の天皇賞を制し、今最も勢いのあるウマ娘。

 

レッドクラウン。

 

「ヨォ!クラウン!..お前、負けやがったら、ダンナのケツ蹴っ飛ばしてやるかんな!」

「大丈夫ですよ..私..負けませんから!」

 

「クラウン!!」

「アルタイルなんてやっつけちゃえ!!」

「勝つのは先輩です!頑張ってください!!」

「..ねぇ知ってる?..クラウンって最近彼氏できたんだって。」

「..いーなー。」

 

 

各チームの声援を背に、二人は向き合う。

「..レースで向き合うのは初めてだね。いずれ君とは走ってみたいと思っていたよ。レッドクラウン。」

「私も..ダービー覇者と走れるなんて..光栄。よろしく、カイザー。」

 

二人はレース前の握手を交わす。

 

「位置について..!!」

 

戦いの火蓋は切られる。

 

それはまるで、模擬レースとは思えないほどの白熱したバトル。

先行、後追いが状況によって入れ替わる。

 

常に先行をしたい二人の思惑がぶつかり合って、苛烈なドッグファイトを生み出す。

 

そして現在、カイザーが先行。そのすぐ後ろにクラウンが構えている。

 

(..さすが、ダービーを潜り抜けてる足..まだ、余力がありそうね..。でも..根性勝負なら..譲らないわ!)

(..何か、仕掛けてくるつもりか?..気配が..強まってる!)

 

最終コーナー..運命の時間。

 

二人は全力モード..スパートに踏み込む。

 

コーナー出口にて、カイザーがわずかに開けたインを、クラウンは見逃さなかった。

そこに上手く差し込み、状況は中堅戦でも見た、サイドバイサイド。

 

そのあまりにも熾烈を争うデッドヒートは、二チームだけでなく、学園中の生徒やトレーナーたちがギャラリーに加わるほど。

 

そして、二人は並んで....ゴールイン。

その瞬間だけ、時が止まったようにも見えた。

 

「はぁ..はぁ...さすがだよ..クラウン。..全力を出しても..振り切れないなんて。」

「..あなたもね..カイザー。」

二人は手を取り合う。

 

「クラウンだ..。」

「カイザーよ..。」

 

トレーナー二人は、固唾をのむ。

 

そして、用務員は赤旗を挙げて叫んだ。

 

「クラウン!!1/2バ身!レッドクラウンの勝利!!!」

さっきまでいい加減だった用務員もその熱気に飲まれ、いつの間にか真剣にジャッジしていた。

 

「よっしゃあ!!!!」

大城は叫んだ。

 

「よくやったクラウン!」

「だから言ったでしょ?..負けないって。」

「サイコーだよお前!」

 

そして大城はゆっくり椿に顔を向ける。

 

「..んじゃ、俺らの勝ちだよな?」

「ネゴトいわないで..2-2でしょ?」

「はぁ?なにヌルいことを..んじゃサドンデスいくか?」

「誰が走れるの?」

 

そこに、一人の影が。

 

その陰に..二人の背筋は伸びる。

「「り..理事長」」

 

「ご苦労だ二人とも。」

年を召したその貫禄にあふれる理事長は..次期理事長、秋川やよいの先代にあたる。

 

「トレセンの中で..こうも熱いレースがみられるとは思わなかった。..二人とも、よくここまで担当を育てあげたものだ。」

「恐縮です..。」

その言葉に二人は軽く頭を下げる。

 

「どうして..理事長が...?」

 

「チーム勝負にシロクロはっきりつかないというのは、歯がゆいものだろうと思ってな。監視カメラにて第3Rの勝敗が映っておったので、報告に参っただけだ。..口頭で失礼するが...第3R...結果は..」

 

その場の全員がかたずをのむ。

 

「スターヘッド!ハナの差だ!..おめでとう!」

そういって理事長は、スターヘッドの手を取った。

 

「あ..ありがとうございます!!」

「くっくううう!!」

ゴールドハンターは悔しさのあまり、一粒の涙を流す。

 

「そう気を落とすな、ゴールドハンター。君の健闘も私は見ておった!次に期待している!」

そういって肩をたたく。

 

その瞬間、チームアルタイルの勝利が確定した。

「残念だったわねぇ?大城トレーナー?」

「...ぐっ!」

大城はバツがわるそうにそっぽを向く。

 

「それとだ..ハク、お前に言っておかねばならんことがある。」

「..俺に?」

理事長はそういって大城に向く。

 

「そう、コトの発端はどちらが今日の練習場の使用権を持っているかということは、私も把握しておる。..それでだ、二チームの予定がブッキングしていたというのが、双方の言い分のようだが..ハク。お前の予定はなかったぞ?」

「..はぁ?使用願書は出してたでしょう?」

「今しがた確認を取ったが..ハク、お前の出した願書..西暦の表記が一年ずれておったぞ?」

「..え?」

 

大城は苦い顔をする。彼の誤表記によるミスは..今回が初めてではない。

 

「まったく!いつも言っておる!お前は細かい部分が杜撰だと!だからそのような問題を起こすのだと、前もいっただろう?」

「いや..その...。」

さすがに理事長に逆らえない大城は..なんとか繕おうとはする。

 

「以後!気を付けるよう!反省を!」

 

そういって理事長は去っていった。

 

「...はぁ。帰るぞ..お前ら。」

大城はため息をついて...そういった。

 

「はぁ?..何言ってるの?..土下座....でしょ?」

大城のあの発言を許していない椿は、ドスのきいた声でそう言った。

 

「...ナンのことだ?」

「とぼけないでちょうだい。」

そういって椿はにじり寄る。

 

「..なぁ、クラウン..お前代わりにやってくんね?」

そう横目で担当を見る。

 

だがそれは..大きな間違いだった。

 

「...はあ?」

クラウンは般若のような形相で大城に凄んだ。

 

「やるのは..あなたでしょ?..大城さん..まったく..いい加減なことばっかりして..ほかのチームに迷惑かけて..少しは反省なさい!!」

クラウンは大城の体をつかんで、地面に抑えつける。

 

「いっつもいっつも、勝手なことばっかり!無茶な練習はさせるわ、練習すっぽかしたりするわ、いい加減になさい!」

「クラウン!お前!俺の担当だろうが!」

「それとこれとは別です!..ジン!ハンター!手伝ってちょうだい!!」

「はいよ!!..こんのアホトレーナー!!観念しやがれってんだ!!」

「悪く思っちゃだめだよトレーナーさん。君が言い出したことなんだからね?」

 

大城はまさかの裏切りにより、自身の担当ウマ娘たちの力にねじ伏せられ、土下座の形を作らされる。

そこには普段の恨みとも言えよう物が含まれている。

 

「...ふうん、悪くないナガメ..。」

大城の土下座を見て..椿は上機嫌だった。

 

「ぐ...もう..いいだろ..?」

「まだよ。...ちゃんと土に額をつけて..椿様申し訳ございませんでした..って言いなさい?」

「調子乗ってんじゃねぇ..!」

「早く言わないと終わらないわよ?..クラウンさん、お願い。」

「はい。」

 

そういってクラウンは大城の頭を押し付ける。

 

「往生際がわるいわよ..?さぁ..?」

「ぐ...つ..つばき..様...申し訳...ございません..でした....。」

「よく言えました!今後はちゃんとハンセイするように!」

 

そういってアルタイルは上機嫌に去っていった。

 

「..おぼえてろよ。」

大城は身から出た錆をかみしめた。

 

 




その後..焼肉屋にて。
「さ!皆じゃんじゃん頼んじゃっていいからね!」
「..なんで全員分のメシまで奢らにゃならねぇんだよ!」
「...もっかい土下座します?」
「..好きなだけ食え。」
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