ほんと皆さん読んでくださりありがとうございます。
なんか最近感謝ばっかりしている気がしますね。
本格的に冬が近くなった頃、ヴェスト一行は宿屋の一室でダラダラと過ごしていた。最近は寒さからかカズマ一行のアクアが静かで平和な時間が続いているが同じようにダクネスも見かけないのでやることがないのだ。あるとしても日課となったジャイアントトードへのリベンジかエリス様への祈りくらいである。
だが、そんな平穏な時を破るものが遂に現れた。
「あああああ!エリス様エリス様エリス様エリス様エリス様エr「自称後輩の部屋に突然訪問!我輩がきたのである!!」ピャァァァァ!?」
ちょうどヴェストがクリスの短剣(盗品)に頰が切れるほど頬擦りをしてベルディアが遠い目をしていた頃に突然同時に展開されていた防音結界もろとも蹴り破られたドア。
そこに立っていたのは燕尾服を着た仮面の男性。
「せっせっせせせせせせ先輩ィィィィ!?」
魔王軍幹部にして悪魔たちを率いる地獄の公爵見通す悪魔バニル。そんな大物がそこには立っていた。
どうやって人間の街であるアクセルに?という疑問はない。彼にとって潜入など造作もないことなのだろう。実際ヴェスト程度のものでもできたのだから。
「む?汝が持っているその忌々しい神気を放つ短剣は以前言っていた勇者のものか。ものすごい執着であるな。」
「あ、はははは...ところで先輩はなぜここに?」
素早く懐に短剣を隠したヴェストは露骨に話を逸らそうとする。その姿はまるでエロ本を隠す中学生そのものだ。
「魔王のやつに頼まれてな、この地の調査とポンコツ店主に会いにきたのだ。汝とベルディアが死んだと魔王のやつから聞かされていたが....汝はなんだかんだ生きていると思っていたがまさかベルディアがまで生きているとは思わなかったのである。」
「首だけだけどな...」
なるほど。おそらく一方的に魔王城の結界へのパスを切ったため討伐されたと思われたのだろう。ベルディアの場合は弱体化により単純にそれを維持できなくなり切れてしまったからだろうが。
「とこれでヴェスト。どこか良さげな遺跡は知らぬか?できれば自ら作りたいのだがポンコツ店主のところの金の集まりが悪くてな。」
「あー...なるほどまたですか。ポンコツ店主のことは知りませんが僕が知っている中ですと“キールのダンジョン“ですかね。最近主人がいなくなったようですし。」
「ほぉ?いいことを聞いた。感謝するぞヴェスト!」
おそらくいつもの破滅願望によるものだろう。この人はいつもそうだ。何故か自らが倒されることを望む。それが冒険者たちの絶望を得る手段だとしてもわからない。
そんなまどろっこしいことをせず手足をもぎ仲間を惨殺し心を踏み砕けばいいのではないか?そもそもその感情を生み出す魂ごと食らってしまえば早いのではないか?
ヴェストはそんなことを考えるが口には出さない。
人(悪魔)によって趣味嗜好は変わるものだからだ。
「しかし汝随分と感情が豊かになったようであるな?あの勇者のおかげか?その点では我輩も感謝せねばな。さらに美味な感情が手に入るようになった。」
「遂に僕も食べられる側になるのか...」
きっとこれから待ち受けているであろうバニルからの嫌がらせを考えヴェストはため息をこぼす。この人の嫌がらせ技術は一点ものだ。
「ああ、そうであった。言い忘れていたが汝、あの勇者に想いを馳せることはやめておいた方がいいだろう。知っていると思うが我々とアレらは相容れない存在である。」
見通したのだろう。
だがそんなことはわかっている。
神と悪魔は相容れない。それもあの方ともなればその可能性は0に限りなく近い。
だがーーー
「だからこそ面白いのではないですか。決して叶わぬ恋。面白い!僕がその初めの成功例となって見せましょう。
それに、僕はあのような素晴らしい方にこの命を捧げたいのです。この魂がどれだけ穢れていようとも。」
胸に手を当て何故か悪魔とは思えないどこか神聖な雰囲気を出しながら語るヴェスト。部屋の窓から刺す光が後光のように輝いて見える。まるで敬虔な信徒のようだ。
「汝記憶が...」
「はい?記憶?」
「いや、なんでもない。」
「ああ!そうだ先輩今はエリス様への信仰を深める時間!!儀式を再開せねば!ささ、用事が済んだのなら先輩は帰ってください!」
気のせいだったようだ。
依然ただの変態のままである。
バニルは自称後輩といえども知り合いの悪魔が天敵である女神に恋するなどというおかしい状況に複雑な顔をしながらも帰っていったようだ。
ベルディアは思った。またあの狂気的な時間が始まってしまうのか。もうこの際バニルでもいいから残ってくれ、と。
「エリス様エリス様エリス様エリス様エリス様エリス様ァァァァァァ!!!!」
◆ ◆ ◆ ◆
数日後の昼過ぎ。
ヴェストの信仰を深める儀式()がようやく終わりを迎えた頃。
彼らはカエルへのリベンジにヴェストは生き生きと、ベルディアはまたしても死んだ魚の目をしながら歩いていた。彼に救いはないのだろうか。
「ん?ミラーじゃないか。久しぶりだな。」
「ダクネス?」
突然かけられた声に振り返るとそこにはダクネス。そしてカズマ一行がいた。もちろんアクアもいる。
「久しぶりじゃないかダクネス。こんな寒い時にどうしたんだ?カエルか?」
「いや、ちょっと野暮用だ。ミラーこそそんな服装してどうしたんだ?まさか冒険者になったのか?」
「ああ、これでも剣の腕には自信があるんでね。」
「おーいダクネス急ぐぞって、知り合いか?」
急いでいたのかカズマ少年が話しかけてきた。こちらとしては随分と見知った顔だが彼にとっては素顔で合うのはこれが初めてだ。
「ああ、同じエリス教徒の...」
「ミラーだ。呼び捨てで構わない。よろしく頼むよカズマ少年。」
「え?俺のこと知っているのか?」
「うん。君はある意味有名だからね。アクセルの英雄。あとは....たしかクズマとかカスマとか呼ばれていたっけ?」
「いやー照れ...ねえよ!?なんだよその呼び名!?」
「あはははははっ!ごめんごめん。君随分と面白いね。」
思った通りからかいがいのある少年だ。
もう少し話していたいがあのアークプリーストが痺れを切らしてよってくる前に退散しなければならない。まあ行き先くらいは聞いておこうか。そのくらいの猶予はある。
「僕も用事があるからそろそろ行くとするよ。ところで君たちはどこに行くんだい?」
「ん?ああキールのダンジョンだよ。ちょっと用事があって...ってどうしたんだミラー?」
「あ、ああ、いや、うん。今そこに行くのはやめておいた方が....」
「カズマぁー!おそーい!早く行くわよー!」
「うるさい!元はと言えばお前のせいだろこの駄女神が!」
「すまないミラー。また会おう!」
行ってしまった。
ああ哀れカズマ少年。
あの遺跡にはあの悪名高き地獄の公爵がいるというのに。
もはやヴェストにはせめてあの少年少女たちの心が折れないことを願うことしかできなかった。あとはあのクソ女神をバニル先輩が倒してくれる事を願うしかできなかった。
ちょっとしたメモ
カズマ<<ダクネス<ベルディア<(復活直後)ヴェスト<ウィズ<<アクア・エリス・バニル≦(現)ヴェスト<<<<<<超えられない壁<<<<<<<ジャイアントトード<カズマ
カズマに始まりカズマに終わる。トランプの“戦争”みたいな力量関係です。めぐみんは当たればヴェスト君も死にそうになるが馬鹿みたいに長い詠唱と打った後のデメリットから除外。相性とかもあるから実際はちょっと違くなるがヴェストがジャイアントトードに勝てないのは永遠の理。