たとえこの作品が黒歴史になったとしても、あとで後悔しようとも私は匿名希望を解除するッッッッッ!
ちなみに私は夏と冬、どちらが好きかと問われたら秋が好きです。
「うぅーーーー寒っ!」
寒気が我が身を襲う時期になってきたに関わらずアクセルの街は騒がしい。
そんな中ヴェストたちは防寒具として狼の毛皮で作られたマントを羽織り、新しく買い直した同じく毛皮で作られたフカフカの袋に身を包み売られていたナニカの串焼きを貪っていた。もっちゃもっちゃ。
「そういやお前も普通に寒がるんだな。」
「この体を構成する情報の元となったのが限りなく人間に近いゴーレムだったからかな。五感は人間に限りなく近いのさ。へくちっ!」
「随分と可愛いくしゃみだなおい。」
「多分この体に釣られてるんだろうね。」
雑談をしながら歩くもどうも暇だ。
ここのところ本当にやることがないのだ。
魔王軍襲来やらアンデット大量発生やら楽しそうなイベントも何一つない。
あえて挙げるならあのバニル先輩がカズマ一行に討伐されたことだろうか。
まさかあの人が彼らに討伐されるとは思っていなかった。ヴェストのカズマ一向への認識が「カズマ君と愉快な仲間たち」から「何気に魔王軍幹部二人倒したヤベー奴ら」に変わった。ついでと言ってはなんだがデストロイヤーも討伐しているヤバい集団だ。
「先輩を倒すなんて彼ら思ったより強かったんだね。そりゃベルディアも負けるよ。」
「ちがう!俺は単純に相性が悪かっただけだ!あのクソ女神すらいなければ...!」
「はいはい、言い訳乙。」
「お前も一回負けてるんだからなぁ!?」
「君よりは酷くないね!」
「五十歩百歩だろ!」
大声で言い合ったらさすがにただの不審者なため小声でどんぐりの背比べのようなくだらない争いを繰り広げる二人。
意外と仲がいいらしい。
向かう先はもちろんギルド。ジャイアントトードへのリベンジだ。ちなみに未だあれを大剣だけで討伐できた試しはない。
「お?確かミラーだっけ?久しぶりだな。」
「げぇ!?」
噂をすればなんとやら。カエルのクエストを受けるためギルドの掲示板に向かったところ、かけられた声は今地味に会いたくないものの声。カズマ少年である。
「げぇ!って言わなかった!?俺嫌われてる!?」
「む、ミラーか。今からクエストか?」
「ああ、カエルをちょっとね。」
「え?無視ですか?ねえ?酷くない俺の扱い。」
ヴェストは良心の呵責に耐えながら...ということはなく単純にごまかし半分面白いなーと思いながら無視を決め込んだ。
「カエルか。もうこの時期だと冬眠に入るから少ないと思うぞ?」
「ああ、だから最近見かけなかったのか。クエストもないみたいだしどうするか...」
本当にやることがないのだ。
なんならエリス様への祈りを午前中丸ごと使ってするくらいしかない。
もういっそ一日中していようか。
そのせいでエリス本人が最近変な寒気を感じていることは彼は知らないし知る由もない。
「じゃあ俺らのクエストに来ないか?今からちょっと厄介そうなクエストを受けることになってな。このメンバーじゃちょっと不安なんだ。」
「ちょっとー!何言ってるのよ!私がいるじゃない!女神よ女神!あんなクエスト楽sってくっさぁ!?なにこれあんた悪魔くさいわ!」
「ちょ!お前なに失礼なこと言ってんだこのアホ!」
遂に見つかってしまったか。
この憎き似非女神に。
エリス様とは似て非なる神聖さを放つこの女はとてもじゃないが女神には見えない。
だが厄介さは折り紙付きだ。
しかも彼女には悪魔特攻をもつスキルがある。これはまずい状況だ。ここで正体がバレてしまったらせっかく作ったアンダーカバーが無意味になってしまう。
「そそそ、そんなわけないじゃないですか!僕はエリス様の敬虔なる教徒ですよ!」
「そうだぞアクア!それはあまりにも失礼だ!」
「ああもううるさい!『セイクリッドエクソシズム』!!」
「ッッッッッ!!!」
耐えろ。耐えて耐えて耐え切るのだ。
今のヴェストは封印による弱体化も抜けきり完全体に等しい。残機はないもののこの程度の魔法なら耐え切ることができる。気合いで。
さあ!今こそエリス様への忠誠心を試す時だ!
「おかしいわ?全然効かないじゃない?」
「ほら...言っただろう...?僕は、悪魔じゃ、ない...」
「アクア謝るんだ。人間であるミラーにそれを使うのは失礼すぎるぞ。」
「ちょっと待って?なんか効いてない?ミラーさんなんか疲れて...ひっ!?」
何かよからぬ事を口走りそうになっているカズマ少年にニッコニコの笑顔で殺気を飛ばす。勘がいいのも困りものだな。
だが第一関門は耐え切った。第二第三の関門がなければいいのだが...
しかしこれでこの姿が悪魔のものでないと思い込ませることには成功しただろう。
危なかった。ベルディアのアンデット臭もヴェストの悪魔臭によって隠されたようでヴェストは内心ほっと息をついた。
ところでそんなに匂うものなのだろうか。毎日しっかり街の風呂には入っているのだが。
「じゃあ僕は行くよ。流石にダクネスはともかく君たちとはほぼ初対面だし今回の誘いは遠慮させてもらうよ?」
「そうか...それは少し残念だな。」
「私も残念です。あなたからはただならぬ気配がしたのですが...特にその竜をも殺せそうな大剣!まさか振り回すのですか!気になります!」
「あはは。ま、またいつか見せてあげるよ。」
ヴェストは回れ右をしてギルドを後にしようとする。自分に恐怖心を少しでも抱いていると思われるカズマ少年をいじり倒したいが命には変えられない。さっさと退散させてもらおうか。
そうヴェストが踵を返そうとするも何者かに手を掴まれその歩みは止まってしまった。その掴まれた手から伝わってくる圧力ではない痛み。これは...
「待ちなさい!やーっぱまだなんか怪しいわ!あんたも一緒に来なさい!まさか来ないなんて言わないでしょうね?悪魔じゃないんだから!」
アクアだ。
背中を冷や汗が伝う。
まずい。まずいまずいまずい。
断ったら正体がバレて社会的死。断らずともこのクソ女神とクエストを共にすることになり下手するとバレかねない。
どっちにしろ危険な状況ならば....
「お、おいアクア?ミラーさんも迷惑だろうし...」
「いや、僕も同行させてもらうとしよう。これだけで悪魔という疑いが晴れるなら安いものだ。それに君たちとも仲良くしたいしね」
「....え?まじ?」
ヴェストは賭けに出た。
断れば疑いが強くなる。だが逆に何事もなくクエストを達成できれば疑いは晴れ信頼も勝ち取れる可能性がある。ならばやるしかないだろう。ベルディアにはもうしばらく我慢してもらおう。だからそんなストレスで吐きそうな気配を出さないでくれ。
しかしカズマ少年はそこまで怯えた目で見つめないでほしい。加虐趣味が露出してし...ん゛ん゛、流石に失礼だろう?
ぐぅぅぅ、と小さく腹の虫がなった。何故か腹が減ったようだ。